- 作成日 : 2023年5月26日
法人化するメリットを再点検!ポイントは?インボイス制度の影響は?
個人事業主として数年が経ち事業が拡大傾向にある場合、流れとしては会社設立を検討し始めることがあります。
この記事では、個人事業主が法人化した場合に所得税に代わって法人税が課せられるだけでなく、どのようなメリットがあるのかを解説します。また、インボイス制度導入における考え方にも触れていきます。
目次
法人化するメリット
法人化とは、個人で行っていた事業を会社として組織化することです。法人化するメリットは種々ありますが、最もよく知られているのが節税効果です。ここでは、節税効果をはじめ6つのメリットをご紹介します。
節税効果
法人化にはいろいろなメリットがありますが、なかでも特に注目されるのが節税効果です。個人事業主と法人の税率、つまり所得税と法人税の違いが挙げられます。
個人事業主の場合、所得税は超過累進課税であり、所得が多くなるほど税率が高くなります。所得税の最高税率は45%であり、さらに住民税も考えると所得の半分以上が税金となるケースもでてきます。
一方、法人の場合の法人税の税率は、所得に関係なく23.2%の税率であり、さらに資本金1億円以下などの場合には所得800万円までの税率は15%です。所得税のような累進課税はありません。
このように、個人事業主と法人では税率に大きな差があり、所得が高いほど、個人事業主よりも法人の方が節税効果が大きくなります。
経費が拡充
個人事業主の場合、経費として認められるものは限られています。例えば、自宅兼事業所として使用している場合、家事関連費として家賃や光熱費などの一部しか必要経費として計上できません。
一方、法人の場合は費用として認められるものの範囲は拡大します。例えば、自宅兼事業所として使用している場合、仕事で使用する部分は家賃として費用に計上し、残りの自宅部分は社宅の費用として計上することができます。
この場合、必ず一部自己負担する必要があるものの、費用として計上できる金額は多くなります。(この場合、必ず法人としての賃借契約を締結することが重要です。)
他にも、その法人として契約しているものであれば、水道光熱費などの経費についても原則として全額を費用とすることが可能です。
社会保険への加入
法人化すると、社会保険に加入することが義務付けられます。社会保険への加入はまず、従業員にとっては福利厚生の充実と言えます。病気やケガ、失業などの際に、一定の給付や手当が受けられ、従業員の安心感や満足度につながります。
また、経営者にとっても法人成りして厚生年金保険に加入すれば、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受け取ることができます。これは国民年金よりも高額であり、メリットと言えます。
社会的信用が上がる
法人成りは、一般に個人事業主に比べて社会的信用が高くなると言えます。これは、法人設立では登記を行い、会社の所在地や資本金などの事業の概要を公開することが、取引先や金融機関から見ると透明性や信頼性とにつながるからです。
また、法人は個人と事業を切り離すことができるため、仕事とプライベートの区別が明白であり、折衝や取引においても相手に信頼を与えやすくなります。
有限責任になる
株式会社の株主は有限責任であり、事業に関する責任を出資した範囲内に限定することができます。
しかし実際には、個人事業主がそのまま法人化し、株主としての立場だけでなく事業主本人が会社の代表者になるケースがよくあります。代表者になると訴訟リスクなどが考えられるため、責任範囲は広がるケースも考えられます。
一方、個人事業主は無限責任であるため、事業に失敗した場合、自分の財産や家族の財産まで巻き込まれる可能性があります。
事業継承が容易
一般には個人事業主が死亡した場合は、相続によって事業承継を行います。この場合、相続税が課され、個人事業主が保有する資産の価値に応じて高額になる可能性があります。また、相続発生時においては遺産分割協議や許認可の取得などの手続きが必要です。
一方、法人の場合、事業承継は自社株の移転となります。自社株の移転には節税方法もあります。
また、銀行口座や取引先との契約書などにおいても名義変更の必要がありません。法人は個人とは別であり、たとえ社長が死亡しても会社は存続します。そのため、事業の運営に大きな支障が出ることも少ないと言えます。
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法人化を判断する際のポイント
では、法人化するかどうかはどのような判断に基づけばよいのでしょうか?業種やタイミング、規模にもよりますが、ここでは判断ポイントとして3つ挙げておきます。
年間の所得額や売上額
法人化の判断のポイントの一つとして、年間所得を基準に考える方法があります。つまり、個人事業主としての所得税や住民税などの納税額と、法人としての法人税や消費税などの納税額を比較して、どちらが有利かを計算します。ここでのポイントは最終的な手取り額までをしっかり計算することです。
あくまでも目安ではありますが、年間所得が1,000万円以上、または年間の売上が5,000万円以上になれば法人成りを検討してはどうでしょうか?適切な判断をするためには、過去の実績や今後の見通しについての資料とともに専門家に相談することをおすすめします。
融資が必要かどうか
将来的により大きな案件や取引先との契約を考えている場合、融資も必要となってきます。
先述のように法人登記によって会社名称や所在地、代表者の氏名、資本金や事業目的などの情報が記載され、登記情報として公開されることで第三者からの信用度が高まり、金融機関も法人登記をした会社に対しては、個人事業主よりもより安定した経営体質や将来性を見込む可能性が出てきます。
したがって、まとまった融資を必要とする場合の法人化には合理性があります。
新規事業の展開に伴う人員確保・許認可の取得
業種や現事業の規模にもよりますが、法人化のメリットとしては人員確保や許認可の取得における有利性も挙げられます。
新規事業の展開には、市場調査や商品開発、販売戦略など多くの工程が必要となります。これらを効率的に進めるためには、今までのスタッフ以外に専門的な知識やスキルを持った人材が不可欠です。
この場合、個人事業主では、例えば、社会保険などの福利厚生を充実しきれないため、優秀な人材を引き寄せることが難しいと言えます。そこで法人化によって、社内の待遇を魅力あるものにして、高いスキルをもった人材を迎え入れるわけです。
また、新規事業展開には、業務内容や規模に応じて様々な許認可が必要になる場合があります。許認可の種類にもよりますが、審査基準や手続きが厳格であったり、組織形態や財務状況の明確化が必要であったり、資本金や役員の条件が高かったりすると、個人事業主には手が出せない場合もあります。
そのような場合には、法人成りすることで許認可の取得に必要な条件を満たすことができます。
インボイス制度の影響
令和5年10月から導入開始の消費税のインボイス制度は、法人、個人にかかわらない制度ですが、どんなことを考えておくのがよいのでしょうか?
消費税額を把握して適格請求書発行事業者になるかのを判断
インボイス制度を導入するかどうかは、その個人事業主や法人の任意です。したがって、インボイス登録事業者とならずに現行の「区分記載請求書」を利用する方法も残されていますが、インボイス制度導入直後には税の軽減措置も設けられています。
インボイス制度を導入するかどうかは、取引先との関係をよく考えて判断しなければなりません。まずは、次の4つのケースが考えられますので、インボイス導入の判断による影響を検討しましょう。
| 現行の立場 | インボイス制度開始後の立場 | |
|---|---|---|
| 免税事業者 | インボイス登録しない (免税事業者のまま) | インボイス登録する |
|
| |
| 課税事業者 | インボイス登録しない | インボイス登録する |
|
| |
*消費税課税事業者選択届出の手続きをしている場合を除きます。
考え方として、請求先が消費者である場合には、基本的にはインボイスを交付する必要はないのでインボイス制度を登録する必要はなさそうです。
また、請求先が簡易課税を適用している場合にも請求先はインボイスが不要なので、従来の請求書で問題ないと言えます。
制度導入前に法人化するべき?
基本的にはインボイス制度に合わせて法人化を考える必要はありません。法人設立には購入するものも多く、売上は変わらなくても出費は増えることが多いものです。
そのような場合には消費税の還付も想定され、敢えて一次的に課税事業者となるケースも考えられますが、これもインボイス制度とは直接関係はありません。
令和5年度改正により、免税事業者がインボイス制度を導入した場合には、「売上税額の2割相当額」のみを納付する「2割特例」なども準備され、税額はかなり軽減されます。しかし、これも3年間の期限がありますのでもう少し長期的な視点からインボイス制度の導入を考えたほうがよさそうです。
適切なタイミングで法人化を目指そう
法人化については、事業そのものの特性や将来性などを考えながら検討するのがよいと言えます。また、その事業に専念できる優れた従業員や役員など人材の確保もタイミングによると言えるため、法人化には諸条件が揃う必要があります。
法人化については、ある程度の期間をかけて、人的基盤や投資資本などの拡充を図り、適切なタイミングを見計らって行うという正攻法で臨むのがよいと言えます。
よくある質問
法人化すると赤字を出しやすくなりますか?
法人化すると、個人事業主に比べて欠損を繰越控除できる期間が長くなります。赤字が出しやすいという考え方ではなく、節税効果が長く続く程度に考えるとよいでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
子供に店を残したい場合は法人化するべきですか?
個人商店のままか、法人化するかによる節税効果については、その店の資産価値によって変わってきますが、事業承継を検討するのであれば法人化も一つの方法です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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