• 更新日 : 2023年9月21日

設立前に知っておきたい登記事項の決め方

設立前に知っておきたい登記事項の決め方

日本では毎年約12万社の会社が設立されています。現在起業の準備をされている方、いつか起業を考えられている方も多いのではないでしょうか。
一方で起業をしても10年後には3割の会社しか生き残らないともいわれています。
会社を存続させ成長を続けるためには、創業前後に正しい知識をもっておくことが重要です。

今回は、起業の準備をされている方、そして設立を終えいよいよ事業をスタートされる方に向けて、はぎぐち公認会計士・税理士事務所 萩口氏より、「会社設立前後に押さえておくべきポイント」について、全3回のシリーズでお伝えしていきます。

第1回となる今回は、会社を設立する前に決める登記事項について、注意するべきポイントをこれまでの経験をもとにお伝えします。

会社名は覚えやすく、呼びやすいものに

名は体を表します。創業時はだれもその会社の名前を知りません。会社名から会社の事業内容を想像できるといいでしょう。

また、会社名は覚えやすく、呼びやすいものをつけるのもおすすめです。
例えば領収証をもらうシーンで、「領収書の宛名はどうしますか?」と聞かれたときに、会社名を何度も口にすることがあります。
私の会社は「株式会社 HG&カンパニー」なのですが、領収書をもらうのも一苦労です(笑)。さらっと言える社名のほうが何かとスムーズでしょう。

>>「会社名の決め方」にまつわるルール・ポイント

資本関係どうする?

出資と融資の違い

最初に事業を始めるときに、お金を調達する方法としては大きくわけて「出資」と「融資」があります。
「融資」とは、銀行や日本政策金融公庫などから借り入れるお金のことです。返済が必要で、金利がかかります。
「出資」とは、ベンチャーキャピタルなどの投資家から出資を受けて調達するお金のことです。第三者に会社の株を買ってもらうことで資金を得ます。仮に事業が失敗したとしても返済は不要です。出資者は、会社の株をもらい株主になります。

共同経営の場合に気をつけること

出資の割合については、とくに注意が必要です。2人で共同経営をされる場合、半分の50%ずつ株をもって創業されるケースは非常に多いです。しかしながら、途中で意見が割れてしまうケースをこれまで何度も見てきました。株式会社の意思決定は株主の過半数以上の賛成によってなされますので、もし意見が割れてしまうと議論の収集がつかなくなります。
せめて51対49にするなど、「最終的には会社の事業は誰のものなのか」ということを決めておき、事業の所在を明確にしておく方が、共同経営の関係も継続しやすいように思います。

第三者からの出資がはいる場合は?

創業者が資金のサポートを受けるために、親戚の方やベンチャーキャピタルなど、共同経営者以外の方が出資をされる場合、出資者はみな会社の持ち主になります。つまり、利益の配当を得る権利、株主総会で意見をいう権利があるということになります。出資が多額で多くの株式を発行すれば会社の方向性を決めることも可能になります。

それを防ぐためには、議決権のない株式を発行したり、設立時には出資を受けず、事業が成長してから別の評価基準で出資を受けたりするといった方法もあります。会社の持分に関わる重要なことであり、利害調整が必要となる部分なので、慎重に検討し、契約書も綿密にチェックしてから契約を結んでいただければと思います。
重要性を鑑みると、資本関係に詳しい税理士等の専門家に相談するのもおすすめです。

決算期はいつにする?

一般的な決め方は、設立から初回の決算までの期間が長くなるように決算月を決めるという方法です。
例えば4月に設立をする場合、3月決算にすることにより、設立から初回の決算までが約1年になります。決算の手間がより後になりますし、消費税の観点からは(例外もありますが)設立から2期までは、免税となるため、免税期間をできるだけ長くとるということを考えてもこのような決め方は合理的でしょう。

税務の観点から、税金を減らす・発生遅らせるということを重視すれば、閑散期直後・繁忙期前を決算月に設定する方もいます。閑散期直後・繁忙期前に決算を迎えると、繁忙期の売上が決算に入ってこないのでその期の税金は低くなります。

逆に繁忙期が終わったところで決算を迎えると会社の成績表である財務諸表の見え方が良くなり、現預金や売掛金の残高も増え、資金調達はしやすくなります。会社を早く大きくしたいという経営者はこのような視点から決算月を決めるとよいでしょう。

>>決算月はいつにする?決算月の決め方とポイント

役員と従業員の違い

社長以外の方のコミットメントを高めるために、役員に指名することがあると思いますが、会社に携わるメンバーを役員に任命するか、従業員として雇用するか決める際に、2つおさえておいて頂きたいポイントがあります。

役員は給与を変更しにくい

役員報酬は、基本的に一度決めたら1年間同額を支給しなければなりません(定期同額給与)。
役員の賞与に関しても、設立後2ヶ月以内に決めて税務署に届け出をする必要があり(事前確定届出給与)、届け出した金額を全額支給するか、全く支給しないかのどちらかという選択になります。
1期目はどのくらい利益がでるのか、事業が安定するのか見えにくい時期だと思いますが、1期目の初期に役員報酬の月額と賞与を定めなくてはならないので、業績が予想外によいと役員の給与が低すぎたり、業績が予想外によくないと役員報酬を支給するのが厳しくなるケースがあります。
一方で、従業員であれば給与改定は自由ですし、賞与付与に関しても自由なので、利益状況をみながら調整することができます。

助成金や補助金の申請について

雇用関係の助成金の一つにキャリアアップ助成金というものがあります。短時間労働者や派遣労働者といった非正規雇用労働者のキャリアアップを目的として、正社員化や処遇改善の取組を実施した事業主に対して「助成金を支給」する制度です。
最新の助成内容については厚生労働省のホームページをご確認ください。

また、人件費に対して一定割合の補助がでるような補助金もありますが、このような助成金や補助金は、役員報酬は対象外であることがほとんどです。
創業時は特に資金が潤沢でないことが多いので、国等から受けられる補助はできるだけ受けて、資金を確保するべきという考え方もあると思います。
なお、補助金、助成金は利益になります。

事業目的の決め方

将来、事業を行う可能性があれば、あらかじめその事業内容を定款に記載しておきましょう。
法人は事業を行うために人格を与えられた存在です。登記した事業内容をやらないのは問題ありませんが、登記していないことをやってしまうと違法になります。
登記後に事業目的を変更することは可能ですが、手数料がかかりますのでできれば登記の際に将来に手掛ける可能性のある事業まで想定して記載することをお勧めします。

>>司法書士が提案「事業目的の決め方のポイント」


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