- 更新日 : 2023年9月15日
経営者視点とは?経営者視点を養う方法
オーナー社長であっても、株主としてではなく、経営者の立場に立って、組織や事業の全体的な方向性や戦略を考えることは「経営者視点」に立っていると言えます。しかし、経営者視点は経営者のみに求められるものではありません。
この記事では、経営者視点の重要性とともに、従業員が経営者視点を持つことについて考えていきます。
目次
経営者視点とは?
何をもって「経営者視点」というかは、その会社の置かれている状況によることもありますが、一般的に経営者として認識すべき項目には次のようなものがあります。
市場と自社の状況を理解している
経営者は、自社がどのような市場にあるかを熟知している必要があります。自社を取り巻く市場の規模や成長率、自社のシェア、自社の強み・弱みなどを正しく認識しておく必要があります。
まず、市場を正しく捉える前に次のことがらを明らかにしておきます。
- 「どのような顧客(人や組織)」を対象に
- 「どのような商品やサービス」を
- 「どのような時期や頻度」で
- 「どのようにして売り出す」か?
そして、自社の状況として財務状態や組織の構造、業務プロセスなどを理解しておくことが重要です。状況が変われば対応も変える必要がありますので、経営者は市場と自社の状況を常に確認し、最新情報の把握に努めるべきです。現状把握があってこそ新たな課題や改善策も見えてくるからです。
社内の活動や人員の配置状況
経営者は、従業員に自ら自社のビジョンを明確に伝え、次のような活動を継続し、人的資源の最適化を図ることが重要です。
- 従業員との定期的、継続的なコミュニケーション
- 従業員のスキルアップ(教育やトレーニング)
- 従業員の個人的な成長と組織への貢献のための明確な目標設定
- ワークライフバランス(柔軟な勤務時間や場所の選択肢提供)
- 公正な評価と正しい報酬(従業員のモチベーションアップ)
さらに、チームワークや協働を促進し、従業員同士の関係を強化することも大切です。経営者のこれらの活動を通じて、生産性や効率性を向上させられるからです。
競合他社や顧客、取引先の動向を把握している
経営者は、自社の「競争優位性」を常に意識する必要があります。競合他社の戦略や製品・サービスなどを調査し、必要な対策を講じます。
また、取引先のニーズや満足度などを把握し、商品やサービスの改善や開発に反映させることも重要です。これらの結果として、取引先との良好な関係が生まれ、信頼性や協力性を高めることができ、最終的に自社の競争力や収益力を強化することができます。
収益を生み出すための戦略を立てる
経営者は、業績向上のための目標や方向性を決め、継続的な利益獲得のために経営戦略を立案する必要があります。
経営戦略は、社内でよく調査・相談し、具体的かつ実現可能なものであることが求められます。また、経営戦略は実行の傍ら常にフィードバックを求め、必要に応じて修正や改善を行います。経営者は失敗を恐れない「トライアンドエラーの精神」を忘れないことが重要です。
世の中の動向を捉えている
経営者は、自社だけにとどまらず外部環境にも目を向ける必要があります。政治や経済、技術、法律、環境などの会社を取り巻く事象から、自社にとっての機会やリスクを見極める姿勢が必要です。
特に、新しい技術やトレンドなどを自社製品やサービスなどに取り入れることができないかという視点は重要です。これらの活動を継続することで、実際の市場での競争力を培っていけます。
なぜ経営者の視点が重要なのか
以上で述べてきた経営者視点は、実は従業員であっても備わっているほうがよいと考えられます。従業員でも経営者視点を持つほうがよいとされる理由としては、次の2つが挙げられます。
会社の戦略に沿った組織の判断や行動が早くできる
従業員が経営者的な視点を持つと、会社の戦略に沿った判断や行動が早くできるというメリットがあります。会社の目標や方向性を理解し、自分の立ち位置における役割や責任を明確にできます。
また、自分を取り巻く環境を理解して行動するという経営者視点を持つことによって、自分の仕事だけではなく、他部署や外部との関係性を考慮して行動することができます。
このような従業員が多い会社では、組織全体として効果的な判断や迅速な行動ができるようになります。
今後の人材不足と人材の流出に備える
経営者視点で物事を見ると、人材不足と人材の流出に備えるというメリットがあります。現状だけを見るのではなく、会社の将来性や成長性を考えることができます。
そして、経営者視点に立って問題を解決する中で、自分のキャリアやスキルの向上にも積極的に取り組むことができます。経営者視点を持つ従業員は、会社の競争力や持続力を高める重要な資源となります。
結局、従業員が経営者視点を持つことによって、従業員個人だけでなく、会社全体にも好影響を与えることが期待されます。
従業員が経営者の視点を持てない理由
経営者視点を持つことの利点は理解できていても、実際問題として従業員がなかなか経営者視点でものを見られないという現実があります。その理由としては、次の事項が考えられます。
従業員の業務内容が経営ではないから
従業員の業務内容には多岐にわたりますが、現場での作業が中心となると、その中で経営者視点を持つことが難しいケースも多いと言えます。
会社のルールを守り、かつ、求められる作業をこなす中で、さらに経営者視点を養うとしても現実には、作業時間内に仕事をこなすだけで精一杯というケースもあります。
管理者ではあるが経営者ではないから
グループのリーダーであったり、管理的な仕事を任されていたりする従業員であっても、中間管理職的な立場では経営者視点からの発言をしづらい状況もあります。
あまり経営者視点が浸透していない状況において、経営者視点を統率力や指導力のツールとして活かそうとすると部下からの反発も予想されかねません。そのため、積極的に経営者視点を発揮できない場合も出てきます。
経営者視点があいまいだから
経営者視点は多岐にわたるものなので、どれをどこまで極めればよいというものではありません。政治や経済、技術、法律、環境などの会社を取り巻くさまざまなことすべてに傾注するのは困難で、日々研鑽を積み重ねるものでもあります。
したがって、一概に「経営者視点」といっても、何を学べばよいのか、いつ取得できるのかなどと近視眼的に考えても難しい話です。従業員が経営者視点を身に着けることは、「〇〇検定に合格する」というような具体的なものではなく、形式や方法が一通りではないため、あいまいな部分もあります。
経営者視点を持ってもらう方法
視野を広げる意味で従業員であっても経営者視点を持ち、事業に貢献することは望ましいことです。そのために、従業員にどんな働きかけをすべきでしょうか?ここでは、4点ご紹介します。
経営戦略や目標を共有し浸透させる
経営者は自ら、自社の経営戦略や当期の目標などを積極的に社内に発信し続けることが大切です。経営者と従業員が自社の戦略や目標を共有することで、チームワークやコミュニケーションが向上し、それは、業務の効率や商品・サービスの品質に影響すると言えます。
これによって従業員の仕事に対する責任感やモチベーションが高まり、また、経営者は従業員の意見やフィードバックを受け入れやすくなります。さらに経営戦略や目標の共有により、組織の一体感を高めることから組織の競争力や持続可能性を強化することにつながります。
そして、経営者が戦略や目標を共有する際は、「自分の言葉で」従業員に届けるような形が好ましいと言えます。
社内研修を実施する
社内研修は、経営者にとっても従業員にとっても有意義なものです。社内教育の実施により、経営者は従業員の能力やニーズがわかるため、より適切な人材育成や配置につながります。
従業員は、研修により仕事に対する深い理解が得られるとともに、自分の強み・弱みを知り、スキルアップに役立てることができます。結果として、社内研修により業務効率や品質の向上、イノベーションの創出などにつなげることができます。
社員に仕事を任せる
従業員に思い切って仕事を任せることで、自分の仕事に対して主体的になり、自信ややりがいを感じるようになります。従業員は仕事を任されることによって仕事に対する責任感を持ち、業務への提案や改善を積極的に発信するようになります。そして、経営者と従業員との信頼関係やコミュニケーションが向上します。
このように従業員に仕事を任せることによって、従業員の創造性や革新性を促進し、最終的には、組織の競争力を高めることにつながります。
また、すべての従業員に仕事を任せ、各々が主体的に仕事に取り組めば、マネージャーの負担を軽減することができます。マネージャーは、細かな指示や監督を減らして、より戦略的な業務に集中することが可能になります。
収益や数値を強く意識してもらう
経営者が従業員に会社の収益や数値の状況を説明することは、個々の従業員にとっても非常に重要です。成果としての収益などの数値は、従業員のパフォーマンスを評価する材料と言えます。従業員が目標と合わせて収益や実績値を意識することで、仕事の質や効率について新たな提案や改善点を見つけられるからです。
収益などの数値は経営者にとって、会社の競争力や市場シェアを高めるための動機付けとなりますが、それは従業員にとっても同じです。毎期の収益や数値に従業員が関心を持つことで、自分の業務に誇りや責任感を持ち、会社に貢献しようという意欲が高まります。
特に人事部門において経営者視点が必要な理由
人事部門に必要なものは、組織全体の状況や市場の動向を把握し、将来の変化に対応できる能力です。この人事部門の従業員には、特に経営者視点が必要とされます。その理由としては、次の社内の重要な資源となる人材を取り扱う人事部門の活動において経営者視点に基づく判断が必要とされるからです。
- 採用活動
会社がどんな人材を必要としているか、今後はどんな人材が必要となるのかを理解して必要な人材を見極め、競争力の高い採用戦略を立てる - 人材育成
個々人のスキルやキャリアを会社のニーズに合わせて開発し、キーパーソンとなる人材の流出やモチベーション低下を防ぐ努力をする - 人物評価
従業員の業績や貢献度を会社の目標や方針に照らして適正に測定し、報酬や昇進などのインセンティブを偏りなく設定する - 人材配置
会社の方針に沿って、従業員の能力・適性を考慮して最適なポジションに配置し、パフォーマンスや効率を向上させる
単なる経営視点ではない「経営者視点」を持つということ
自分の目の前の業務だけでなく、担当する業務範囲や部門の成果や責任を考えて行動したり指示したりするのは、「経営」視点に基づいていると言えます。「経営」視点には現場の実態を捉えながら、短期的な目標や計画を立て、問題や課題を解決しながら改善や効率化を図る能力が求められます。
しかしながら、「経営者」視点での考え方は、さらに長期的なビジョンや目標を持ち、市場や競合他社の動向を分析し、最終的にはイノベーションや改革の推進を目指します。従業員の立場から、「経営」視点で身近な現実を把握しつつも、「経営者」視点へと視野を広げてはいかがでしょうか?
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