- 作成日 : 2024年10月18日
合同会社の創業融資は難しい?資金調達方法や審査のコツを解説
合同会社は創業融資が難しいといわれることがあります。合同会社が創業時に資金調達するには、どのような点に注意するべきなのでしょう。この記事では、合同会社におすすめの日本政策金融公庫などからの資金調達方法や必要な自己資金、審査のコツについて解説します。
目次
合同会社の創業融資は難しい?
合同会社の創業融資は、株式会社と比べて難しいと言われています。理由の一つとしては、出資者である合同会社の社員の影響力が強いためです。一般的に、株式会社と比較して、経営の柔軟性が低くなる可能性があることから、トラブル回避などの理由で創業融資が難しくなることがあります。
株式会社との違い
株式会社と合同会社は同じ会社ではありますが、いくつかの違いがあります。株式会社は株主と経営者が分離しており、経営者と所有者が異なる場合が一般的です。一方、合同会社は出資者が経営権を持つ社員となるため、経営者と所有者が同一します。
また、株式会社のみ株式を交付できること、合同会社の方が手続きや設立費用が株式会社よりも少なく、設立しやすいなどの違いがあります。
合同会社の主な創業融資、資金調達方法
合同会社は株式会社と比べて創業融資を受けるのは難しい可能性があると説明しました。ただし、創業融資を受けられる余地はあります。合同会社を創業しようとする方向けに、主な資金調達の方法や条件などについて解説します。
日本政策金融公庫の創業融資制度
融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金は4,800万円) | |
---|---|---|
返済期間 | 設備資金 | 20年以内(うち5年以内の据置期間の設定が可能) |
運転資金 | 10年以内(うち5年以内の据置期間の設定が可能) |
日本政策金融公庫は、中小企業や小規模事業者の資金調達の支援のほか、国民のセーフティネットとしての機能も有する政策金融機関です。日本政策金融公庫では、主に「創業・スタートアップ・新事業」「事業再生」「事業承継」「ソーシャルビジネス」「海外展開」「農林水産業の新展開」の6つの成長分野などの支援に力を入れています。
日本政策金融公庫の「新規開業資金」は、個人企業や小規模企業向けの小口の創業融資制度です。新規で開業する場合や事業開始からおおむね7年以内である場合に利用できます。新規で開業する事業者や税務申告を2期終えていない事業者は、無担保・無保証人、一律で利率0.65%(雇用の拡大に取り組む場合は0.9%)引き下げられた状態で融資を受けられます。
平均融資額1億円を超えるような規模の大きい合同会社を設立する場合は、中小企業向けの「新規事業育成資金」の利用を検討してみるのもよいでしょう。国民事業の新規開業資金と比較して、融資を受けられる上限額が7億2千万円まで拡大する点が異なります。
地方自治体による制度融資
先に紹介した日本政策金融公庫による融資は、政府系の制度融資です。政府系以外には、都道府県や市町村といった地方自治体による制度融資も存在します。制度融資のメリットは、民間の金融機関と比較して、利益を目的としていない分、融資を受けられる可能性があることです。
ただし、日本政策金融公庫の規模で融資が行われていないため、融資上限額が日本政策金融公庫の創業融資と比較して低い可能性があります。また、融資の申込みにあたり、信用保証協会の利用が条件となっているケースが一般的です。信用保証協会に支払う保証料が必要になります。
都道府県や市町村で融資の内容は異なるため、自治体の窓口やホームページなどで利用できる制度がないか確認してみましょう。
例えば、東京都の場合は、東京都中小企業制度融資として創業融資の制度があります。都内に新規で開業する中小企業者で、創業から5年以内などの条件に該当する事業者が対象です。融資額の上限は3,500万円で、設備資金は10年以内(うち1年以内の据置期間の設定が可能)、運転資金は7年以内(うち1年以内の据置期間の設定が可能)です。
信用保証協会の保証付融資
保証付融資とは、信用保証協会が保証する融資のことです。保証付融資を利用するメリットは、創業間もない合同会社でも、民間の金融機関(銀行など)から融資を受けやすくなることです。公的な機関である信用保証協会が万が一のときの保証をする仕組みで、資金調達が難しい開業直後の事業者をサポートします。信用保証協会が保証することにより、融資可能額の拡大も期待できるでしょう。原則として、担保や合同会社の代表社員などの連帯保証は必要ありません。
なお、保証付融資は、あくまで事業者が融資を受けやすい環境を構築する制度です。返済が滞り、信用保証協会が代わりに返済をした場合でも、返済の義務はなくなりません。代位返済した信用保証協会に対して返済する義務があります。代位返済時には一括で融資残額の請求があることに注意しましょう。
保証付融資の融資額や利率などは、実際に融資を申込む金融機関で異なります。また、信用保証協会の保証つきであっても、申請の内容によっては審査に通過しない可能性もあることに注意しましょう。
少人数私募債
合同会社では株式を発行して出資を募ることができません。しかし、社債の発行はできます。合同会社の資金調達方法としておすすめなのが、少人数私募債です。50名未満を対象に、直接募集をかけます。合同会社であれば、社員の親族や従業員、取引先など、直接関係のある人に対して募集が考えられるでしょう。
少人数私募債を発行する場合は、募集人数が50名未満である関係上、一口あたりの金額は、発行総額の50分の1以上になるように設計することが求められます。また、発行後も50名未満である条件を満たさなければならないため、譲渡により人数が増えないよう譲渡制限の設定が必要です。
少人数私募債のメリットは、融資と異なり、返済条件をある程度柔軟に発行者である会社が決められることです。保証人や担保も必要ありません。ただし、社債の一種である少人数私募債は、償還期限に一括で返済しなければならないため、資金繰りに注意が必要です。
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者の生産性向上に資する取り組みを支援する補助金制度です。正式名称を、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金といいます。ものづくり補助金の支援枠には省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠があります(第18次公募の場合)。
省力化枠は、デジタル技術などの導入により、革新的な生産プロセスの効率化などの取り組みを実施する中小企業者などを支援する枠です。製品・サービス高付加価値化枠には、通常類型と成長分野進出類型の2種があります。通常型は革新的な製品開発などに必要な設備の支援、成長分野進出類型はDXやGXに資する革新的な製品開発などに必要な設備の支援を行う枠です。グローバル枠は、海外事業により国内の生産性を高めようとする中小企業者などを支援する枠です。補助額や補助率は申請する枠や類型で異なります。
枠・類型 | 補助上限額 | 補助率 | |
---|---|---|---|
省力化枠 | 750万円~8,000万円 | 2分の1(2分の3) | |
製品・サービス高付加価値枠 | 通常類型 | 750万円~1,250万円 | 2分の1(2分の3) |
成長分野進出類型 | 1,000万円~2,500万円 | 2分の3 | |
グローバル枠 | 3,000万円 | 2分の1(2分の3) |
※補助率の( )は小規模事業者や再生事業者などの場合
いずれも、生産性向上に資する機械装置やシステムの導入、外注費、専門家の報酬などの経費を補助する内容です。グローバル枠のみ、海外旅費や通訳・翻訳費、広告宣伝や販売促進費を補助対象にできます。また、補助事業終了後に3~5年で大幅な賃上げを行う場合は、補助上限額に100万円~2,000万円の上乗せがあります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が制度変更に対応するための販路開拓の取り組みを支援する補助金制度です。補助金の対象は以下に該当する規模の小さい事業者に限られます。
商業・サービス業 | 常時使用の従業員5人以下 |
---|---|
宿泊業・娯楽業 | 常時使用の従業員数20人以下 |
製造業その他 | 常時使用の従業員数20人以下 |
補助の対象になるのは、小規模事業者が持続的な経営のために取り組む生産性向上に資する経費や業務効率化に資する経費です。機械装置費、広報費、WebサイトやECサイトの開発費、展示会などの出展費、新商品開発費などが対象になります。
申請できるのは、通常枠、賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠の5つの類型です。(第16回公募の場合)それぞれ補助上限と補助率が異なり、いずれもインボイス特例の要件を満たす場合は、補助上限に50万円の上乗せがあります。
補助上限額 | 補助率 | |
---|---|---|
通常枠 | 50万円 | 3分の2 |
賃金引上げ枠 | 200万円 | 3分の2 (赤字事業者は4分の3) |
卒業枠 | 3分の2 | |
後継者支援枠 | ||
創業枠 |
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用の従業員のキャリアアップの促進を目的に設けられている厚生労働省の助成金です。キャリアアップ助成金には、以下の種類があります。
助成金の種類 | 要件 |
---|---|
正社員化コース | 有期雇用の従業員を正社員にした場合 |
障害者正社員化コース | 障害のある有期雇用の従業員を正規雇用にした場合 |
賃金規定等改定コース | 有期雇用の従業員の基本給の賃金規定を改定し3%の増額があった場合 |
賃金規定等共通化コース | 有期雇用と正規雇用の従業員の共通の賃金規定を規定・適用した場合 |
賞与・退職金制度導入コース | 有期雇用の従業員を対象に賞与や退職金の規定を設け、支給や積み立てをした場合 |
社会保険適用時処遇改善コース ※令和8年3月31日まで | 有期雇用の労働者を新たに社会保険に適用し処遇を改善した場合など |
創業したばかりの合同会社であれば、規定の整備が条件の「賃金規定等共通化コース」の申請などが検討できるでしょう。賃金規定等共通化コースについては、中小企業の場合、1事業所あたり60万円の助成金の支給となります。
合同会社が創業融資を受けるために必要な自己資金
合同会社の創業に必要な開業資金の一部は、自己資金でまかなうのが一般的です。必要な自己資金について明確な数字はありません。事業の規模などに応じた自己資金の用意が必要です。
日本政策金融公庫総合研究所の新規開業実態調査によると、創業資金のうち自己資金の割合は約24%を占めることがわかりました。平均的としてどの程度の自己資金を用意すればよいか一つの目安になるでしょう。
自己資金なしの場合
自己資金がない場合でも融資を受けられる可能性はあります。しかし、自己資金を理由に期待する額の融資を受けられない可能性もあります。自己資金が用意できない場合は、融資以外の方法も検討してみましょう。親族や知人から借りたり、少人数私募債の発行を行ったりする方法なども考えられます。
合同会社が創業融資を受ける流れ
合同会社の創業融資を受ける手続きは、一般的に以下の流れに従って進めます。
- インターネットや窓口で融資を申込む
- 面談に必要な書類を準備する
- 金融機関の担当者と面談する
- 融資の審査が実施される
- 審査結果が通知される
- 融資の実行により指定の口座に入金される
基本的に、創業融資を受ける場合には担当者との面談が行われます。面談時に、事業の内容や創業後の計画について質問があります。十分な説明ができるように準備しておきましょう。
面談後は融資を実施するかどうかの審査が行われます。申込みから融資の実行まで時間がかかるため、早期に創業融資の手続きは進めておきましょう。一般的に、申込みから融資実行まで1カ月程度が目安と言われています。
合同会社が創業融資を受けるときに必要な書類
合同会社が創業融資を受ける場合には、融資の判断材料として複数の書類の提出が求められます。提出が必要な書類は、金融機関など融資を受ける機関で異なります。例えば、日本政策金融公庫の創業融資の場合、以下の書類の提出が必要です。
- 創業計画書(事業計画書)
- 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)
上記に加え、設備資金の融資を希望する場合は設備に関する見積書、担保を提供する場合は不動産の登記簿謄本の提出が必要です。許認可が必要な事業は許認可証、生活衛生関連の事業は都道府県知事の推薦書なども提出が求められます。
面談に備え、上記の書類のほか、事業計画のうちキャッシュフローの詳細がわかる書類や店舗の予定地に関する書類なども準備しておきましょう。
創業融資に必要な事業計画書の書き方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
事業計画書とは?書き方・作り方を簡単解説!テンプレ70個以上!
合同会社が創業融資の審査に通るポイント
創業融資が一般的に難しいといわれる合同会社でも、創業融資は受けられます。審査通過の可能性を高めるには、公的機関の融資を受ける、公的機関の保証つきで融資を受けるなどの方法があります。適した融資の申請先を選定したうえで、審査に通過する可能性を高めるには、以下のポイントを意識しましょう。
- できるだけ自己資金を準備しておく
- 必要な資金を明確に算出しておく
- 事業計画書はしっかりと作り込む
- 事業計画書には実現可能な数字を落とし込む
- 十分にシミュレーションして返済計画を立てる
合同会社でも創業融資は受けられる
株式会社と比較して融資が難しいといわれる合同会社でも、創業融資は受けられます。合同会社が創業融資を受けるには、合同会社に適した金融機関を選択し、事業計画書を実現可能な内容でしっかり作り込むことが重要です。事業の展望や返済の見込みを担当者に伝えられるように、創業融資申請後の面談に向けてしっかり準備しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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