- 作成日 : 2024年10月4日
建設業で必要な許認可とは?種類や要件、申請方法を個人・法人向けに解説
建設業における許認可は、事業運営の基盤として重要な役割を果たします。個人や法人が建設業を営む際に必要な建設業認可の種類や要件、さらに具体的な申請方法について知識を深めることは、事業の信頼性を高めるために欠かせません。
本記事では、建設業認可が必要なケースから申請手続の流れまでを詳しく解説し、経営者が安心して事業を展開できるための情報を提供します。
建設業において許認可が必要なケース
建設業を営む上で、欠かせないのが建設業許可です。軽微な工事以外は、建設業許可を取得しなければ事業を行えません。ここでは、建設業許可が必要となるケースと概要について解説します。
建設業許可が必要な場合
建設業許可は、以下の建設工事に該当する場合に必要です。
- 請負代金が500万円以上の工事を請け負う場合
- 建築一式工事(※)については、木造住宅以外の工事で1,500万円以上、または木造住宅で延べ床面積が150平方メートル以上の工事
※総合的な計画・指導・調整を行いながら建築物を施工する工事のこと。新築工事、建築確認が必要な増改築工事、建物の大規模な改修工事などが該当する。
建設業許可は元請・下請や、個人・法人に関係なく必要です。また、公共工事と民間工事の区別もありません。
建設業許可が必要ではない場合
建設業許可が必要ではない工事は、以下の軽微な建設工事が該当します。
建設業許可を受けなくてもできる工事(軽微な建設工事) | |
---|---|
建築一式工事 |
|
建築一式工事以外の工事 |
|
建設業許可の有効期限
建設業許可の有効期間は、5年です。たとえ期限の末日が土日や祝日であっても、期限は変更されません。建設業を引き続き営む場合は、有効期限の30日前までに更新手続が必要です。
更新手続を怠ると、許可は期間満了と共に無効となります。更新の際は、過去5年間の変更届(決算変更届や役員変更届など)の提出が前提であり、決算変更届は毎年の提出が求められます。
建設業の許認可の種類
建設業の許認可は、主に以下の3つの観点から分類されます。
- 国土交通大臣、または都道府県知事が許可する
- 建設工事ごとに許可を取得する
- 一般建設業か特定建設業か
ここでは、それぞれについて解説します。
国土交通大臣、または都道府県知事が許可する
建設業許可には、国土交通大臣許可と都道府県知事許可の2種類があります。営業所が複数の都道府県におよぶ場合は国土交通大臣許可、単一の都道府県内のみであれば都道府県知事許可が必要です。同一法人が両方の許可を同時に取得することはできません。
国土交通大臣許可は、広範囲での事業展開が可能であり企業規模や社会的信頼の向上などのメリットがある一方、申請費用が高額であり、審査期間が長期化する傾向もあります。一方、都道府県知事許可は、国土交通大臣許可に比べて申請費用が低額であり審査期間も短い点がメリットとして挙げられます。
建設工事ごとに許可を取得する
建設業の許可は、工事の種類ごとに取得する必要があります。工事の種類は29業種あり、2つの一式工事と27の専門工事に分かれています。新たに許可を取得する際は、その工事が許可対象であるかどうかを確認することが重要です。許可を得ていない工事の請け負いは、建設業法違反となるため注意しましょう。
建設工事の種類 | |
---|---|
一式工事 | 土木一式工事 |
建築一式工事 | |
専門工事 (27種類) | 大工工事 |
左官工事 | |
とび・土木・コンクリート工事 | |
石工事 | |
屋根工事 | |
電気工事 | |
管工事 | |
タイル・れんが・ブロック工事 | |
鋼構造物工事 | |
鉄筋工事 | |
舗装工事 | |
しゅんせつ工事 | |
板金工事 | |
ガラス工事 | |
塗装工事 | |
防水工事 | |
内装仕上工事 | |
機械器具設置工事 | |
熱絶縁工事 | |
電気通信工事 | |
造園工事 | |
さく井工事 | |
建具工事 | |
水道施設工事 | |
消防施設工事 | |
清掃施設工事 | |
解体工事 |
一般建設業か特定建設業か
建設業許可は「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の2種類に分かれます。特定建設業許可は、元請として、4,500万円以上(建築一式工事では7,000万円以上)の工事を下請に出す場合に必要です。この許可を取得するには、一般建設業許可よりも厳しい要件があり、特に専任技術者の資格や財産的基礎が求められます。
一般建設業と特定建設業との違いをまとめると、以下のとおりです。
許可の種類 | 一般建設業許可 | 特定建設業許可 |
---|---|---|
下請に出す工事の金額 | 4,500万円未満(建築一式工事は7,000万円未満) | 4,500万円以上(建築一式工事は7,000万円以上) |
主なケース | 下請として工事を行う場合や、元請で工事を下請に出す場合 | 元請として大規模な工事を下請に出す場合 |
許可取得の要件 | 一般的な許可要件 | 専任技術者の資格や財産的基礎が厳しく求められる |
建設業許可を取得する要件
建設業許可を取得する要件は、次の5つです。
- 建設業務の管理責任者を設置すること
- 専任技術者を設置すること
- 一定の資金力がある
- 請負契約に関して誠実性があること
- 欠格事由に当てはまらないこと
それぞれについて、解説します。
建設業務の管理責任者を設置すること
建設業許可の取得には、主たる営業所に経営業務の管理責任者を常駐させることが求められています。経営業務の管理責任者になるための要件は、以下の「イ」「ロ」2つのパターンです。
【イのパターン】
常勤役員の中に、次のいずれかの条件を満たす人がいる場合。
- 建設業で5年以上、経営業務の管理責任者としての経験がある人
- 建設業で5年以上、管理責任者に準ずる地位にあり、経営業務の管理を担当した経験がある人
- 建設業で6年以上、管理責任者に準ずる地位にあり、管理責任者を補佐する業務について行った経験がある人
【ロのパターン】
複数人(経営業務管理責任者+補佐者)で経営業務管理をする体制です。以下の条件を満たす必要があります。
経営業務管理責任者の場合:
- 「取締役や執行役員として建設業の経営について2年以上の経験」と「建設業について財務・労務・業務運営いずれかについて役員等に次ぐ地位での経験」の通算が、5年以上である人
- 5年以上役員等としての経験(建設業を問わず)を有し、かつ建設業に関して2年以上役員等としての経験を有している人
専任技術者を設置すること
建設業許可を取得するには、営業所に専任技術者を置くことが必須条件です。専任技術者とは、許可を受けようとする建設業に関する一定の資格や経験を持ち、営業所に常勤して専らその職務に従事する者を指します。
一般建設業許可の場合、専任技術者には、国家資格の保有・建設業における実務経験・国土交通大臣の認定などの要件のうち、いずれかを満たしている必要があります。
一定の資金力がある
財産的基礎等は、以下のとおりです。
許可の種類 | 要件 |
---|---|
一般建設業許可 (右のいずれかの要件を満たす必要がある) | 自己資本が500万円以上であること |
500万円以上の資金調達能力があること | |
許可申請直前の過去5年間に許可を受けて継続して営業した実績があること | |
特定建設業許可 (右のすべての要件を満たす必要がある) | 欠損の額が資本金の20%を超えていないこと |
流動比率が75%以上であること | |
資本金が2,000万円以上、かつ自己資本が4,000万円以上であること |
請負契約に関して誠実性があること
請負契約に関する誠実性とは、不正や不誠実な行為を行う恐れがないことを指します。この誠実性の判定対象は、申請者である法人やその役員、個人事業主です。
不正な行為には詐欺や横領などの法律違反が、不誠実な行為には契約違反が該当します。また、暴力団との関係がある場合は誠実性が認められず、許可が下りません。
欠格事由に当てはまらないこと
欠格事由に該当しないことが建設業の許可取得には必要です。これは、申請書類に偽りや重要な記載の欠如がないこと、役員や個人事業主が破産者でないこと、心身の故障がなく適正に業務を遂行できることなどが含まれます。
また、過去に不正な手段で許可を受けた後に取り消された場合や、禁錮以上の刑を受けて5年が経過していない場合も該当します。さらに、適用事業所では社会保険への加入が必須です。
建設業許可を申請する流れ
建設業許可を申請する流れについて、順を追って解説します。
取得する許可の種類を決める
建設業許可の取得には、営業所の所在地や請負う工事の規模・種類によって適切な許可を選ぶことが重要です。営業所が1都道府県内なら「知事許可」、複数県にまたがる場合には「大臣許可」が必要です。
また、工事規模に応じて「一般建設業許可」か「特定建設業許可」を選び、「工事の種類に応じた業種の許可」の取得を目指すようにしましょう。
建設業許可取得の要件を確認する
建設業許可を取得するには、いくつかの要件を満たす必要があります。具体的には、業務管理責任者や専任技術者の設置、一定の資金力の確保、請負契約における誠実性の保持が求められます。また、欠格事由に該当しないことも必要です。これらの要件を確認し、取得を目指す許可の要件をクリアしているかどうかを確かめるようにしましょう。
許可申請のための書類を作成・収集する
建設業許可の申請には、多岐にわたる書類の準備が必要です。申請書類一式は、許可の種類や申請先によって内容が異なるため、事前に申請先のホームページなどで確認しましょう。
また、履歴事項全部証明書や身分証明書など、公的機関が発行する証明書も必要です。証明書の取得には時間を要する場合もあるため、余裕をもって準備を始めましょう。
許可行政庁に申請書を提出する
必要な書類がそろった段階で許可行政庁へ申請を行い、審査を受けます。申請先は、国土交通大臣許可の場合は国土交通省の地方整備局長、都道府県知事許可の場合は都道府県知事です。
申請方法には、窓口提出・郵送・電子申請などがあります。申請先によって対応が異なるため、事前に確認が必要です。また、事前予約の要否なども確認しておきましょう。
建設業許可申請の手数料
建設業許可の申請には、手数料の支払いが必要です。新規で許可申請を行う場合、都道府県知事許可では9万円、国土交通大臣許可では15万円の手数料がかかります。
手数料の支払い方法は、収入印紙を申請書類に貼付するのが一般的です。ただし、申請先によって異なる場合があるため、あらかじめ申請先に確認しておきましょう。
審査期間を経て許可を取得する
建設業許可の審査期間は、申請先や内容によって異なりますが、一般的に都道府県知事許可で約30日、国土交通大臣許可で90〜120日程度かかります。
申請先によっては、ホームページなどで標準処理期間を公開している場合もあるため、事前に確認しておきましょう。審査期間の短縮はできないため、余裕をもったスケジュール管理が重要です。
建設業許可を取得して事業の未来を拓こう
建設業許可は、事業規模や内容に応じて必要となる重要な認可です。国土交通大臣許可や都道府県知事許可、一般建設業や特定建設業など、さまざまな種類があります。
取得には経営管理責任者や専任技術者の配置、財務基盤の確立などの要件を満たさなければなりません。個人事業主も法人も、適切な許可を取得することで、建設業界での信頼性と競争力を高められます。法令を遵守し、信頼される建設業者として、着実に事業を発展させていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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