• 更新日 : 2023年11月29日

人材派遣会社を起業する条件を知りたい!申請すれば個人も開業OK?

人材派遣業はこれまでの経験や人脈を活かしやすく、まだまだ成長の余地があるため、起業するだけの価値があります。許認可事業としては比較的参入しやすいため、個人事業主としての開業も可能です。この記事では、人材派遣会社を起業する際の許可要件や、費用の目安、人材紹介業との違いを解説しますので、参考にしてください。

人材派遣は起業するだけの価値がある?

人材派遣業は起業するだけの価値がある事業です。その理由を以下で解説します。

これまでの経験や人脈を活かしやすい事業

まず、人材派遣業は、これまでの経験や人脈を活かしやすい事業です。人材派遣業を立ち上げるためには、取り扱う業界についての基本的な知識がなくてはなりません。また、実際に顧客となってくれる派遣先企業を開拓する必要もあります。そのため、たとえば製造業で働いていた経験がある人は、その経験から得られた製造業に関する知識と、さまざまな企業との人脈を、派遣事業の運営に存分に活かすことが可能です。このことは、多くの業界に関して同様にいえます。

労働市場のニーズに応える企業には成長の余地あり

また、人材派遣業は、労働市場のニーズに応える企業には今後も成長の余地があります。人材派遣業はコロナ禍以前には堅調に拡大していました。新型コロナ拡大により有効求人倍率が低下し、特に宿泊業・飲食業の採用ニーズが激減したため大きな痛手を被りましたが、有効求人倍率は現在では回復し、むしろ人手不足の状況となっています。

ただし、コロナ禍により働き方に大きな変化がありました。まず、リモートワークが当たり前の状況となっています。また、働き方の多様化により転職者も多くなっていくでしょう。これらの変化に対応できる人材派遣サービス企業は、これからも成長が十分可能であると見込まれます。

許認可事業としては比較的参入しやすい

人材派遣業は個人でも開業できます。なぜなら、許認可事業としては比較的参入しやすいからです。

人材派遣業の起業には後述のとおり、原則として2,000万円以上の基準資産額が求められます。ただし、「事務所の数が1つのみ」で「常時雇用している派遣労働者数が10人以下」の小規模派遣元事業主に関しては、求められる基準資産額が1,000万円以下へと大幅に緩和されるのです。

また、起業に必要な派遣元責任者の資格は、一定の雇用管理経験があれば講習の受講で取得できます。派遣事業は許認可事業ではありながら、他の許認可事業と比べれば参入障壁が低いといえるでしょう。

労働者派遣事業の許可要件は?

人材派遣業(労働者派遣事業)の許可要件を見ていきましょう。

基準資産額

労働者派遣事業の許可要件は、まず財産的基礎の要件として、資産の総額から負債の総額を控除した「基準資産額」が、派遣事業を行う事業所ごとに「2,000万円以上」であることが定められています。

また、基準資産額は負債総額の7分の1以上であること、自己名義の現金・預金の額が、事業所ごとに1,500万円以上であることも必要です。

ただし、事業所が1つのみで、常時雇用している派遣労働者が10人以下である「小規模派遣元事業主」については、基準資産額が1,000万円以下、自己名義の現金・預金の額が800万円以下へと要件が緩和されます。

事務所設置要件

事務所の設置要件は、派遣事業に使用できる面積が20㎡以上あることが必要です。また、風俗営業や性風俗特殊営業などが密集するなど、事業の運営に好ましくない位置に設置されてはなりません。

派遣元責任者の資格

派遣事業を行う事業所は、派遣労働者100人に対して1人以上の「派遣元責任者」を置かなければなりません。派遣先企業と派遣労働者のあいだでトラブルが起きたたり、苦情が出たりした場合には、派遣元責任者が迅速な処理や解決を図ります。

派遣元責任者は、禁錮刑や懲役・罰金刑を受けて5年を経過しないなどの欠格事由に該当しない、派遣元責任者の業務に専任できる、3年以上の労務管理経験があるなどの要件を満たさなければなりません。また、3年以内に派遣元責任者講習を受講していることが必要です。

派遣労働者に対する教育訓練の機会提供

派遣事業を行う事業所は、派遣労働者に対する教育訓練の機会を提供しなければなりません。教育訓練は、派遣労働者の全員を対象に、有給かつ無償で、派遣労働者のキャリアアップに役立つものを提供する必要があります。

入職時は必ず行い、最初の3年間は毎年1回、その後もキャリアの節目ごとに行わなければなりません。キャリアコンサルタントの有資格者と相談のうえ、研修やOJT、eラーニングなどの計画・実施が必要です。

人材派遣会社を起業する費用の目安

人材派遣会社を起業する際には、前述の基準資産額や現金・預金のほかにも必要な費用があります。その目安を紹介します。

定款認証にかかる費用

会社の設立にあたっては、発起人全員の同意のもとで定める定款を公証人に認証してもらわなければなりません。定款の認証費用は以下のとおりです(資本金の額が300万円以上の場合)。

定款認証手数料5万円
定款謄本作成手数料2,000円程度
印紙代(電子定款の場合はゼロ)4万円

法人登記にかかる費用

会社の設立にあたっては、法務局で法人登記も必要です。法人登記には以下の費用がかかります。

株式会社の登録免許税資本金の金額×0.7%
登記簿謄本600円
印鑑証明書300円程度

許認可手続きにかかる費用

派遣業の許認可手続きを厚生労働省で行うためには以下の費用がかかります。

登録免許税9万円
収入印紙代12万円
※複数事業所の場合、2事業所目からは1事業所につき5万5,000円を加算

人材紹介業との違いは?

人材業界の事業として人材派遣業のほか、人材紹介業もあります。

人材派遣業と人材紹介業の違いは、第一に派遣労働者の雇用主です。人材派遣業の場合には、人材派遣会社が労働者を正社員として雇用して、就業先の企業に派遣します。それに対して人材紹介業では、雇用主は就業先の企業です。

就業先企業は人材派遣会社に対しては、一定率のマージンを派遣労働者の給与に上乗せして月々払えばいいのに対して、人材紹介会社へは採用決定時に、人材の理論年収30%程度の手数料を一括で支払います。そのため、「派遣の方が助かる」という企業も多く、市場規模は人材派遣業の方が大きいのです。

その一方、人材派遣業のように労働者を雇用せず、社会保険料などの支払いも必要ない人材紹介業は、コストを抑えられるため、利益率が高くなります。また、人材紹介業の資産要件は、派遣業が2,000万円であるのに対し500万円とされているため、起業がより容易です。個人事業主として起業しようと考えている場合には、人材紹介業も視野に入れて検討するのがよいでしょう。

人材紹介会社向け事業計画書のテンプレート、ひな形

事業計画書のテンプレート・フォーマット

人材紹介会社の許認可を取得する際のひな形は、厚生労働省であらかじめ定められています。厚生労働省のホームページから「有料・無料職業紹介事業計画書(様式第2号)」をダウンロードし、事業計画書を作成しましょう。

参考:令和5年4月1日から適用される職業紹介事業の業務運営要領|厚生労働省

銀行へ提出する事業計画書も、テンプレートやひな形を活用した方が便利です。以下のページでは、人材紹介の事業計画書のテンプレート・作成例をダウンロードできます。

人材ビジネスの起業を検討してみませんか

コロナ禍で起きた働き方の変化により、転職者の増加が見込まれるため、人材ビジネスは今後成長の余地が十分あります。市場規模は人材派遣業が大きいのですが、個人で起業するなら利益率が高くて参入障壁が低い、人材紹介業も検討するのがおすすめです。万全の準備を整えて、人材ビジネスを起業しましょう。

よくある質問

人材派遣業と人材紹介業との違いは?

雇用主が異なります。人材派遣業の場合には、人材派遣会社が労働者を正社員として雇用して、就業先の企業に派遣します。それに対して人材紹介業では、雇用主は就業先の企業です。詳しくはこちらをご覧ください。

預金と現金を合わせても2000万円には足りません。個人で開業できますか?

「小規模派遣元事業主」については、基準資産額が1,000万円以下、自己名義の現金・預金の額が800万円以下へと要件が緩和されていますので、2,000万円あれば人材派遣会社を開業できます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事