• 更新日 : 2024年1月9日

作業療法士が開業するには?フリーランスなどの方法や注意点を解説

作業療法士が開業するには?フリーランスなどの方法や注意点を解説

作業療法士は、身体が不自由な方に対して「作業・動作」を通したリハビリテーション(機能訓練)を実施する職業です。主な勤務先は総合病院やリハビリテーション施設、介護施設などで、中には雇用された働き方ではなく独立開業して働く作業療法士も存在します。

雇用されない働き方の場合、収入は青天井となるため、開業を検討する作業療法士も多くいるでしょう。そこで今回は、作業療法士の概要から基本的な開業方法、さらに開業のメリットと注意点までを詳しく紹介します。

作業療法士(OT)とは?

作業療法士(OT:Operational Technology)とは、身体が不自由な方に対して「作業・動作」を通したリハビリテーションを実施し、社会復帰に向けたサポートを行う職業です。

医療機関の患者さんや介護施設の利用者さんに向けて適切なプログラムを作成し、日常生活における応用的動作の訓練やレクリエーション活動を行って、患者さん・利用者さんの心身機能の回復を図ります。

高齢化が急速に進み、医療従事者や介護従事者の需要が高まる中、作業療法士は将来性の高い職業としても知られています。

理学療法士との違い

作業療法士と混同されやすい職業に、「理学療法士(PT:Physical Therapist)」が挙げられます。

理学療法士とは、病気やケガなどによって身体が不自由となった方や何らかの障がいの発生が予測される方に対して基本的動作の回復や身体機能の維持に向けたリハビリテーションを実施し、自立した日常生活を送るための支援を行う職業です。

作業療法士と理学療法士はいずれもリハビリ専門職に分類されますが、双方が提供する療法に違いがあります。

理学療法士は日常生活を送るうえで欠かせない「座る」「立ち上がる」「寝返る」といった基本的動作の回復に重点を置いている一方で、作業療法士は「料理をする」「食事をとる」「仕事をする」といった応用的動作・社会適応能力の回復に重点を置いていることが特徴です。

作業療法士(OT)が開業する方法は?

作業療法士は医療・介護・福祉分野において需要の高い職業である一方で、日本では開業権がありません。つまり、作業療法士が単独でその資格により開業することは不可能です。その理由として、作業療法士は医師の指示のもと作業療法を行う職業であり、業務の可能範囲が限られていることが挙げられます。

出典:e-Gov法令検索|理学療法士及び作業療法士法

しかし、作業療法士としての専門知識や経験を活かして開業する方法はいくつかあります。ここからは、作業療法士としての専門知識や経験を活用した開業方法を5つ紹介します。

整体院やサロンを開業する

作業療法士が行う作業療法は、医療行為に該当するため医師の指示がなければ実施できません。しかし、整体院やリラクゼーションサロンで提供する民間療法は医師の指示がなくても行えます。そのため、作業療法士資格を活かして整体院・サロン開業を選択する方も多くいます。

整体院やサロンの開業に必要な資格はありません。作業療法士として働く中で培った知識や療法スキルは、整体院やサロン運営において大きな強みとなるでしょう。

訪問看護やデイサービスを開業する

介護分野における作業療法の技術や知識を活かして、訪問看護ステーションやデイサービス、さらに訪問介護事務所などを開業する方法もあります。

団塊の世代が全員後期高齢者(75歳以上)となる2025年以降、訪問看護やデイサービスなどはさらなる需要の高まりが見込まれています。特に、リハビリ特化型のデイサービスであれば、作業療法士資格は大きな強みとなるでしょう。

しかし、訪問看護やデイサービスなどの開業には多額の資金調達が必要となるほか、人員確保といった開業準備も欠かせません。加えて、経理・経営に関する知識も必要です。

フリーランスで働く

独立開業した作業療法士の中には、自分が経営者となって特定の店舗を開設・経営するのではなく、「複数事業所の業務をこなすフリーランス」として起業する方も存在します。

事業者と業務委託契約を締結し、フリーランス作業療法士として現場でリハビリ業務を行いつつ、セミナー講師として医療・介護従事者向けの研修会や講演会を開催するなど、具体的な働き方は多種多様です。基本的にフリーランスとして独立開業する作業療法士は、自身のキャリアやスキルを活かした働き方をする傾向にあります。

なお、フリーランスとして働く場合は、案件受注のために医療・介護事業所に個人で営業をしに行ったり、SNSやホームページを作成したりする必要があることも覚えておきましょう。

ICTサービスで開業する

作業療法士の中には、これまでの現場経験を活かし、ICTサービスの開発・販売分野で開業する方もいます。ICTサービスとは、「Information and Communication Technology」の略称であり、インターネットを活用した情報通信・共有の技術のことです。

医療分野においてはオンライン診療や電子カルテ作成、介護分野においてはケアプラン作成・訓練プログラム立案などにICTサービスが導入されています。近年では、介護現場のICT化が推進されていることもあり、ICT導入事業所数は年々増加しています。

出典:厚生労働省|介護現場におけるICTの利用促進

介護施設での勤務経験がある作業療法士は、現場業務の問題点を解決できるICTサービスの開発において大きな強みをもちます。過去に少しでも「この業務を効率化させるためにも、こういうシステムがあったら良いのに」と考えたことがあるなら、ICTサービスでの起業も検討してみましょう。

開業資格を取得し開業する

作業療法士として培った技術・スキルを活かしつつ開業する方法には、ほかにも「開業権のある資格を取得して開業する」という方法もあります。特におすすめなのは、柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師の3つです。各資格の取得によって開業権を獲得できる店舗は、下記の通りとなっています。

柔道整復師整骨院・接骨院
あん摩マッサージ指圧師マッサージ院・訪問マッサージ
鍼灸師鍼灸院

上記の資格はいずれも国家資格であり、専門学校の卒業・国家試験の合格が必須となります。お金も時間も必要になるものの、活躍の場が大きく広がる選択肢と言えるでしょう。さらに、作業療法士と各種資格のダブルライセンス保有者は少ないため、競合との差別化が図りやすくなる点も大きな魅力です。

作業療法士(OT)が開業する強みやメリット

作業療法士の開業には、メンタルケア・ストレスケアを含むサポートができる点に強みやメリットがあります。

医療・介護分野で働く一般的な作業療法士は、医師の指示のもと対象となる患者さんや利用者さんに対して、応用的動作・社会適応能力の回復に向けたリハビリを行うことが基本です。

しかし、独立開業した作業療法士は働き方の自由度が高まり、単なる応用的動作・社会適応能力の回復に向けたリハビリだけでなく、何らかの障がいを抱える方やその家族に向けた心身両面へのサポートも可能となります。

また、近年では作業療法士の得意分野でもある「自閉スペクトラム症」や「注意欠陥多動性障害(ADHD)」といった発達障害の支援体制も注目されています。こうした社会的ニーズを踏まえて、就労移行支援事業所や児童発達支援センターなどの開業も視野に入れてみるのも良いでしょう。

作業療法士(OT)が開業する際の注意点

作業療法士が開業する際は、下記の注意点をおさえておきましょう。

「広告表現」に関する注意点

フリーランスとしての独立や店舗の開設にあたって、Webサイトやチラシ・パンフレットを作成して営業・宣伝活動を行うときは、広告表現に注意が必要です。近年では厳しい広告規制が定められており、「腰痛を治す」「体の痛みがなくなる」など治療を思わせる表現は禁止されています。

また、医師の指示にもとづいた作業療法を行わない場合は作業療法士を名乗ることもグレーゾーンとなるため、作業療法士資格者であることを前面に出してアピールするのも避けておいた方が良いでしょう。

「収入・申告」に関する注意点

開業した作業療法士は、仕事がなければ当然収入が発生しません。特に開業当初は案件数も少なく、収入が不安定になりがちです。そのため、赤字経営が続いても乗り切れるようにある程度の資金を準備しておくことをおすすめします。

また、正社員で働いていたときと違って、開業後は毎年確定申告をしなければなりません。正しく申告するためには、常にお金の流れを把握しておく必要があります。経理知識も少なからず必要となるため、不安な方は経理システムや外部リソースを導入することもおすすめです。

作業療法士の専門知識を活かせる分野で開業しよう

リハビリの専門家である作業療法士には開業権がなく、作業療法士資格による単独開業は不可能です。

しかし、「作業療法士は開業する術がない」というわけではありません。作業療法士が有する専門性の高い知識を活かし、プラスαの技術を身につけることで、整体院・サロンや訪問看護・デイサービスの開業、さらにICTサービスでの起業など、幅広い選択が可能となります。

また、作業療法士が開業するときは、広告表現の規制に加え、正社員と比較して収入が不安定になりやすい点や経理作業が必要となる点にも注意しておかなければなりません。「1人ですべてをこなせるか不安」という場合は、適切なツール・システムや外部リソースの導入を検討すると良いでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事