- 更新日 : 2023年9月21日
変更登記とは?手続きは自分で可能?費用も紹介
法人などが一旦登記した事項に変更があった場合、内容変更する登記を変更登記と言います。定款の変更、役員の変更などがあった場合の法人の変更登記にはどの程度費用がかかり、どのような手続きが必要なのでしょうか?また、専門家に頼らず、自分でできるものなのでしょうか?
この記事では変更登記について解説します。
目次
変更登記とは?
会社法では、株式会社や合同会社が一旦登記した事項について変更があった場合には、変更登記しなければならないとしています。ここでは会社法における変更登記について見てみましょう。
変更登記の手続き期限は基本的に2週間以内
会社法第915条1項は次のように規定されています。
会社において第911条第3項各号又は前3条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、2週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
ここで第911条第3項は株式会社について、前3条とは持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)についての設立登記を指しますので、これらの法人については一旦登記した事項に変更があるときは、2週間以内に登記変更の手続きが求められています。
変更登記すべき期間の経過後手続きの手続きとなると、登記申請を怠ったとして代表取締役に対し、罰金(過料として100万円以下)が科せられることがあります。どのくらいの期間手続きを放置していたかについては、ケースバイケースのようですが、手続きを怠っていた期間が長ければ長いほど過料も上がります。
変更登記は法的な手続きであり、法人の適切な運営や法人関係者の権利保護を目的としています。したがって、自社のためだけでなく、ステークホルダーも含めた上で法的に必要な手続きです。
変更登記が必要なタイミングと費用(登録免許税)
ここで変更登記が必要なタイミングと費用について概要を見ていきましょう。なお、ここでは目的別に記載していますが、複数案件を同時に変更登記したい場合には1つの申請書で複数の変更登記を行うことができます。
役員変更登記
法人の取締役や監査役などの役員に変更が生じた場合には、変更登記が必要となります。例えば、新たな役員の就任や辞任、役職の変更などが該当します。
役員の任期が満了し、直後に同役員が役員に再任された場合でも、役員変更の登記(この場合は「重任」となります)が必要となりますので注意しましょう。
参考:役員の変更の登記を忘れていませんか? 再任の方も必要です|法務省
変更登記の際には登録免許税がかかります。役員変更の場合は1件について3万円となります。なお、以下の変更登記費用(登録免許税)についてもこの国税庁のサイトを参照願います。
目的変更登記
例えば、今までは商品販売だけであったが損害保険代理業を追加する場合や、今までは古物商も扱ってきたが今後は取扱いをやめる場合など、法人においては経営環境などの変化から事業内容を変更することがあります。
法人の事業目的は定款の登記事項となっているため、目的変更登記が必要です。
定款に記載された事業の目的を変更するためには、株式会社では株主総会での特別決議が、合同会社では総社員の同意が必要となります。それぞれの議事録や同意書の原本を添付して申請します。
目的変更登記における登録免許税は、1件について3万円です。
目的変更登記申請書については、マネーフォワードサイトで無料フォーマットが利用できますので、是非ご参照下さい。
住所変更登記
登記されている法人の住所に変更があった場合には、住所変更登記が必要です。定款には本店所在地を記載しますが、例えば「本店を○○県△△市に置く」とした場合、△△市内における本社移転であれば定款の住所変更は不要です。
定款の変更には、株式会社では株主総会の特別決議が必要となります。
なお、行政区画等に変更があった場合においては登記があったものとみなされますので住所変更登記は不要です。
住所変更登記における登録免許税は1件について3万円です。
商号変更登記
登記されている法人の商号(社名)変更には、商号変更登記が必要です。目的変更登記などと同様に、株主総会の議事録などを添えて申請します。
商号変更の場合、その変更後は、税務署、税事務所、市役所、労働基準監督署やハローワークなどの機関にも届け出る箇所が多くなります。商号の場合にはさらに、建物の看板やホームページから、各種の社内書式や従業員の名刺にまで影響が及びますので、変更タイミングを考えて実施するほうがよいでしょう。
商号変更登記における登録免許税は1件について3万円です。
株式分割登記
株式分割とは、株式会社においてすでに発行されている株式を、1株を2株、1株を10株などと分割することであり、全体の株式数が増え1株あたりの株価が下がるため、株主数が増え株価安定の要因にもなります。
発行済株式の総数は登記事項になっているため、株式を分割した場合は必ず株式分割登記が必要です。目的変更登記などと同様に、株主総会の議事録などを添えて申請します。
株式分割登記における登録免許税は1件について3万円です。
その他のタイミング
その他、登記事項の変更には次のようなものがあり、定款の登記事項にかかる変更は1件3万円です。
定款変更を考えると、定款作成にあたってはある程度先のことまで見越して記載するほうが費用の節約になることもわかります。
変更登記は自分でできる?
定款の変更登記における登録免許税について見てきましたが、費用としてはこれ以外に登記内容変更後に登記簿や抄本を請求する場合の手数料や、司法書士などに依頼する場合の費用は別途かかります。
できれば、費用が少ないほうがよいため、小さな変更であれば自分でしてしまいたいものです。変更登記を自分でする場合と司法書士などに依頼する場合を見てみましょう。
自分で手続きするメリット・デメリット
自分で変更手続きをした場合のメリットは、登記免許税や印紙代などの必要最低限の費用だけで済む点です。また、インターネットを利用してスピーディーに手続きを進めることが可能です。
自分で変更登記をする場合は、法律や手続きに関する知識や経験があっても十分な注意と確認が必要ですが、「手軽で速い」というメリットはあります。
しかしながら、法人において自分で変更手続きをするためには、揃えるべき書類や手順などをよく確認して、間違いのないようにしなければなりません。複雑な案件になればなるほど、知識や経験の裏付けがないため手続き等がスムーズに行えないリスクがあることがデメリットになります。
例えば、商号登記手続き変更が終わって金融機関への届出をしようとしても、新しい商号の銀行届印ができていなければ届出ができません。専門家に依頼すると法的な手続き以外にも相談に乗ってもらいスムーズに進むでしょう。
司法書士や弁護士に依頼するメリット・デメリット
司法書士や弁護士に一連の変更手続きを依頼した場合のメリットは、専門家は必要な知識や経験が豊富であるため、間違いや不備が少なくなり、一方で経営者自身は事業に集中できる点です。
専門家が書類の提出や受理を代行してくれるため、待ち時間もなく、さらに手続きに関する相談やアドバイスを受けることもできます。
デメリットは、司法書士などの専門家に変更登記を依頼した場合には報酬が発生することと言えます。さらに、依頼先の信頼性や能力などによっては、思っていたサービスが得られない場合もあります。また、初めての場合は依頼先との打合せや調整が必要となるため、業務時間内において時間や手間がかかることがデメリットとして挙げられます。
変更登記の手続きの流れ
司法書士などに依頼する場合には打ち合わせによって確認ができますが、自分で変更登記する場合を想定して手続きを確認しておきましょう。
変更登記の手続きは、必要書類を準備し、法務局に書類を提出して審査を受け、登記完了となります。審査は法務局において申請書類が正しいものかどうかを確認する作業ですので、ここでは書類の準備とその提出に絞って解説します。
必要書類を用意する
どの変更登記にも登記申請書が必要となります。例えば、商号変更登記の場合には次のような申請書が必要となります。
引用:商業・法人登記の申請書様式|法務局、株式会社変更登記申請書
この場合には添付書類として、株主総会議事録(原本)、株主リスト、委任状(必要な場合のみ)などが添付書類として必要です。それ以外の書類は登記内容によって異なりますので、よく確認しましょう。
各法務局では対面、電話、WEBなどでの相談窓口が設けられていますので、管轄の法務局に連絡して申請方法や添付書類について確認してみましょう。
法務局へ必要書類を提出する
必要書類ができたら、窓口だけでなく郵送による方法でも提出可能ですが、郵送の場合には2週間の手続き期限を考慮しましょう。登記所から「補正」を依頼されることもありますので、十分日程を確認しておきましょう。
窓口に持参する場合には、その地域を管轄する登記所を確認します。取扱時間などについても確認の上、出向くようにしましょう。
なお、申請書の提出については、オンラインによる登記も可能です。例えば、株式会社の役員変更の登記の場合は、代表取締役本人が自分のマイナンバーカードを使用してオンラインで登記申請をすることも可能ですので、利用する機会が多いものについては慣れておくと便利です。添付書類などは持参または郵送により管轄の登記所に提出します。
参考:登記・供託オンライン申請システムによる登記事項の提出について|法務省、オンラインによる登記事項提出手続の流れ
変更登記を忘れないようにスケジューリングしておこう
変更内容にもよりますが登記内容の変更が生じた場合には予めスケジュールを組んで、期限内に済ませるようにしましょう。依頼する司法書士などがいる場合には、事前に面談をして、スケジュールや費用について確認しておきましょう。
法人の登記申請中は、原則としてその法人の登記事項証明書・印鑑証明書の発行ができませんので他への影響も考えておきましょう。
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