• 作成日 : 2024年12月5日

太陽光発電を法人化するタイミングは?メリット・デメリットや手続きを解説

個人が行っていた太陽光発電への投資は、法人化することができます。ただし、法人化する場合、タイミングなどを見極めて、資産や負債の移転を適切に行うことが重要です。

この記事では、太陽光発電の法人化を考えている方向けに、法人化を検討したいタイミングや法人化のメリット・デメリットなどを解説します。

太陽光発電の法人化を検討するタイミング

太陽光発電の投資について法人化を検討すべきタイミングの基準となるのは、年間所得や売電収入です。年間所得とは、太陽光発電のほか、会社員の給与所得など、全ての所得を合算した金額のことです。所得税は、所得に応じて税率が増加する仕組みになっています。一方、法人化した場合にかかる法人税率は一定で、所得税のように所得に応じて税率が増加することはありません。

所得税と法人税を比較して、所得700万円前後を基準に法人化を検討することもあります。ただし、所得税や法人税以外の税金や社会保険なども考慮する必要があるため、詳しい計算は専門家に相談されることをおすすめします。

所得所得税率法人税率(普通法人)
195万円以下5%23.2%

※中小法人(資本金1億円以下の法人など)は課税所得800万円以下の部分については、15%または19%

195万円超330万円以下10%
330万円超695万円以下20%
695万円超900万円以下23%
900万円超1800万円以下33%
1800万円超4000万円以下40%
4000万円超45%

出典:No.2260 所得税の税率|国税庁No.5759 法人税の税率|国税庁をもとに作成

そしてもう一つ、太陽光発電を法人化するタイミングとして考えられるのが、売電収入が1,000万円を超えるタイミングです。なお、課税売上高1,000万円を超えると消費税の課税事業者になります。法人の場合、設立から2年以内は基本的に所得税が免税されることから、売電収入が1,000万円を超えたタイミングで法人化を検討することもあります。

太陽光発電を法人化するメリット

個人で行っている太陽光発電への投資は法人化すべきなのでしょうか。太陽光発電を法人化する主なメリットを取り上げます。

節税効果がある

所得税と法人税では仕組みが異なるため、ある一定の所得を超えると所得税率が法人税率を上回ります。そのほかの税負担なども考慮する必要はありますが、所得が高額な状態で法人化すると、税金の負担を軽減できる可能性があります。

個人事業主では利用できない中小企業経営強化税制を適用できるのも法人化のメリットです。中小企業経営強化税制とは、経営力向上のために対象の設備を取得する事業者を優遇する制度です。要件を満たした上で手続きを行うことで、通常は長期にわたる減価償却が必要な太陽光発電設備の即時償却、または取得価額の10%の税額控除のいずれかを適用できます。中小企業経営強化税制は、太陽光発電設備の取得に活用できる制度です。

損失の繰越期間が長くなる

青色申告により確定申告書を提出している場合、太陽光発電投資などで生じた赤字は翌年以降の税務申告で繰越控除できます。損失の繰越控除とは、翌年以降の利益と過去の赤字を通算できる制度です。個人事業主の場合、損失の繰越控除は、原則として過去3年に限られます。

一方、法人であれば過去10年の繰越控除が可能です。太陽光発電投資により継続して赤字が出ているような場合は、法人化により、これまで繰越控除しきれなかった分を翌年以降に繰り越して、税負担を軽減できます。

経費として計上できる範囲が広がる

個人事業主と比べて、経費にできる範囲が広がるのも法人化のメリットです。例えば、個人事業主ではすべて個人の所得に計上されていた利益分を、個人と法人に分け、個人分に分配した分を役員報酬として経費に計上できます。

ほかにも、経営者や経営者の家族に対する退職金、契約者を法人とする一定の生命保険料などを経費に計上できます。法人化によって経費にできる範囲が広がることから、個人事業主のときと比べて税負担を軽減できる可能性があります。

融資の審査が通りやすい

個人に比べて、法人の方が、金融機関からの融資を受けやすいメリットがあります。法人を設立するには登記が必要で、法人の設立は基本的に継続を目的としたものだからです。個人と比較して法人の方が信用があることから、融資にプラスになる可能性があります。太陽光発電の投資規模を拡大しようとしている場合に有利です。

太陽光発電を法人化するデメリット

太陽光発電の法人化にはデメリットもあります。主なものを2つ紹介します。

事務作業の工数が負担になる

太陽光発電を法人化することによって、事務作業にかかる時間が増加します。個人事業主と比べて、税務申告などが複雑化することが理由です。経営者個人が社会保険に加入する必要もあるため、社会保険関連の手続きも追加されます。

ランニングコストが発生する

個人事業主のときには発生しなかったランニングコストが発生する可能性があるのも、法人化のデメリットです。例えば、複雑な税務申告を税理士に依頼することにより発生するコスト、社会保険関係の手続きを社会保険労務士に依頼することにより発生するコストなどがあります。

事業拡大を目指して法人化する場合で、法人化により太陽光発電投資の規模を大きくする場合は、メンテナンスなどのコストがこれまで以上にかかります。

太陽光発電を法人化する流れ

太陽光発電の法人化は、以下の手順で行います。

  1. 法人の設立
  2. 太陽光発電設備の所有権の移転
  3. 太陽光発電設備の負債の移転

太陽光発電を法人化するには、法人の設立が必須です。まず、株式会社や合同会社などの法人の形態を決めます。会社設立にかかる登録免許税などのコストを抑えて設立したい場合には、合同会社が選ばれます。

会社形態を決めた後は、定款の作成や認証(認証は株式会社の場合)が必要です。その後、法人設立に必要な資本金(または出資金)の出資を行い、法人設立登記の手続きを行います。

法人設立後は、個人から法人への太陽光発電設備の所有権の移転手続きが必要です。売却や譲渡により移転を行います。

太陽光発電設備の設置にともない融資を受けている場合は、ローンの契約を法人に移行する手続きを行います。

個人の太陽光発電投資は法人化できる

個人で行っている太陽光発電への投資は法人化できます。ただし、法人化にはメリットだけでなくデメリットもあるため、十分に検討したうえで法人化を進めていくことをおすすめします。本業がある方は、法人化に伴う事務負担などが重荷になる可能性もあるため、バランスを注意しましょう。


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