• 作成日 : 2024年9月26日

ベンチャー企業向けの資金調達方法は?出資や融資、助成金の特徴を徹底解説

ベンチャー企業資金調達を成功させるためには、さまざまな資金源を理解し活用することが重要です。本記事では、出資、融資、助成金といった多様な選択肢を解説し、それぞれの特徴や利点を比較します。

ベンチャー企業が資金調達をする主な方法

ベンチャー企業は事業を拡大したり、軌道に乗せたりするために資金調達を行うケースが多くあります。資金調達のタイミングとしては、事業に資金が必要なときや市場が成長しているときです。資金調達の主な方法とその特徴は、下表のとおりです。

資金調達方法特徴
出資投資家からの資金提供を受ける方法で、返済義務がない。主にベンチャーキャピタルやエンジェル投資家が出資元となる
融資銀行や信用金庫などの金融機関から資金を借り入れる方法。 返済義務があり、利子を上乗せして返済する必要がある
助成金・補助金政府や自治体から提供される資金で、返済の必要がない。申請書類の準備や審査が必要で、受領までに時間がかかる
手持ち資産の売却不動産や株式などの手持ち資産を売却して資金を調達する方法。即時に資金を得られるが、将来的な資産価値の喪失リスクがある
ファクタリング売掛金を早期に現金化する方法で、資金繰りを改善する手段として利用される。返済義務はないが、手数料が発生する
ビジネスローン事業目的で利用できるローンであり、主に金融機関から借り入れる。返済義務があり、利子はかかるが、資金調達が比較的早い
クラウドファンディングインターネットを通じて多数の人から少額の資金を集める方法。事業のアイデアに共感する支援者から資金を集められる

企業の成長段階や資金ニーズに合わせて、最適な方法を選択することが重要です。

ベンチャー企業の資金調達方法①:出資を受ける

成長を続けるために、ベンチャー企業にとって資金調達は必要不可欠です。代表的な出資者として、ベンチャーキャピタル(VC)とエンジェル投資家が挙げられます。 ここでは、それぞれのメリット・デメリットを踏まえながら、両者の特徴を詳しく解説していきます。

ベンチャーキャピタル(VC)

ベンチャーキャピタル(VC)は、成長が期待される企業に対して担保なしで資金を提供することが大きなメリットです。企業の成長により、VCは上場後やM&A時に株式売却益を得ることが目的です。

また、VCからは資金提供に加え、人材紹介や事業拡大支援などのサポートも受けられる可能性があります。ただし、デメリットとして、VCの経営方針に従う必要が生じ、場合によっては経営陣が送り込まれ事業運営に影響を与える可能性があります。

エンジェル投資家

エンジェル投資家は、創業間もない企業に対して出資を行う個人投資家です。彼らの主な目的は株式売却益などのキャピタルゲインですが、起業家を応援するために出資する人もいます。

エンジェル投資家は、企業の将来性やビジネスモデルを重視するため、実績が乏しい創業初期の企業でも資金調達が可能です。金融機関の融資よりも迅速に資金を調達でき、返済義務がない点も大きなメリットです。

ただし、出資額が比較的少なく、多額の資金調達には他の方法を併用が必要なケースもあります。また、一部のエンジェル投資家が経営に関与する場合があり、その対応が必要になることもあります。

ベンチャー企業の資金調達方法②:融資を受ける

ここでは、ベンチャー企業が利用できる「融資」に焦点を当て、それぞれの特徴を解説します。

日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫は、国が100%出資する政府系金融機関であり、中小企業や小規模事業者、起業・開業を目指す人への融資を行います。その中でも「新規開業資金」は、無担保無保証人で最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)までの融資に対応しています。

金利が民間金融機関よりも低く、返済期間も長めに設定されているため、資金計画が立てやすいのも特徴です。ただし、実際の融資額は審査状況によって決まることから審査期間が長く、申請から融資実行まで時間がかかる場合もあるため、早めの準備が求められます。

また、民間の金融機関と比べると金利が低めに設定されていますが、自治体や金融機関、信用保証協会が連携して実施する制度融資に比べて金利が高くなることもあるため、慎重な検討が必要です。

信用金庫・信用組合の融資

信用金庫・信用組合は、地域密着型の金融機関として中小企業や個人事業主に対して積極的に融資を行います。これは、信用金庫・信用組合が地域社会の発展を目的としているためです。

信用金庫・信用組合の特徴は、親密な関係を築きやすい点にあり、定期的な訪問やヒアリングを通じて企業の状況を深く理解し、柔軟な対応をすることです。ただし、銀行からの借入に比べて金利が高めであり、大口融資には限界があります。

銀行融資

銀行融資は、メガバンクや地方銀行から資金を調達する方法であり、審査が厳しい分、企業の信用力向上が期待できます。融資商品は多様で、企業の状況や目的に応じた条件が優遇される場合もあります。

特にメガバンクでは、上場を目指す企業向けのコンサルティングサービスが提供されることもあり、成長支援を得やすいです。ただし、審査基準が厳格であり、手続が複雑なため、事前準備が必要です。

マル経融資

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)は、商工会や商工会議所の経営指導を受ける中小企業や個人事業主を対象とした制度です。無担保・無保証で最大2,000万円の融資が可能で、運転資金や設備資金に利用できます。

ただし、創業資金は対象外であり、また申し込みには6ヶ月以上の経営指導を受ける必要があります。融資までに1ヶ月以上かかるため、早めの準備が重要です。また、対象は従業員20人以下(一部業種は5人以下)の法人または個人事業主に限定されます。

消費者金融の融資

消費者金融の融資は、ベンチャー企業にとって審査が緩やかで、利用しやすい点が特徴として挙げられます。手続はオンラインで完結し、短期間で融資が可能なため、資金調達が急務の際に便利です。

ただし、上限金利が18%と高く、返済期間も短いため、資金繰りには十分な注意を要します。返済遅延は企業の信用度に悪影響を与える可能性があるため、事前に確実な返済計画を立てることが重要です。

ベンチャー企業の資金調達方法③:補助金・助成金

補助金・助成金は、国や自治体から提供される返済不要の資金であり、ベンチャー企業にとって有力な資金調達手段です。創業初期の企業向けの制度も多く、事前に利用可能な制度を調査することが重要です。

例えば、IT導入補助金やものづくり補助金は業務効率化や設備投資に活用でき、助成金は雇用管理改善や人材確保を支援します。返済義務がないため、経営権を維持しつつ資金調達できますが、申請には厳しい条件があり、資金受領までに時間がかかる点には注意が必要です。

ベンチャー企業の資金調達方法④:その他の方法

ここでは、従来の方法とは異なる、新たな資金調達方法を4つ紹介します。

手持ち資産の売却

手持ち資産の売却は、ベンチャー企業が資金を迅速に調達する手段の一つです。不要な資産を売却することで、短期間で現金化が可能です。保養所や社宅、有価証券などが具体例として挙げられ、資金繰りの改善につながります。

ただし、売却先が見つからない場合や、重要な資産を手放す場合にはリスクが伴うため、慎重な判断が求められます。この方法は、資産を保有している企業にとって有効な資金調達手段です。

ファクタリング

ファクタリングは、ベンチャー企業が売掛債権を迅速に現金化するための方法です。ファクタリング会社に手数料を支払うことで、最短10分程度で資金を確保できるため、急な資金繰りに苦労している企業には有効です。

ただし、審査が必要であり、取引先の経営状況次第で利用が難しくなる場合もあります。また、手数料が発生する点にも留意しなければなりません。

ビジネスローン

ビジネスローンは、事業資金を迅速に調達できる手段として、ベンチャー企業に適しています。銀行や消費者金融などが提供しており、無担保・無保証人での申し込みが可能です。

資金は新規事業や設備投資、運転資金などに利用でき、最短で即日融資も受けられます。ただし、公的機関や銀行融資に比べて金利が高く、借入可能額は比較的少額です。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、インターネットを通じて多数の人々から少額ずつ資金を調達する方法です。専用サイトにプロジェクトを登録し、広範囲から支援を募れます。

これにより、事業実績が乏しいベンチャー企業でも資金を集めるチャンスがあります。また、消費者の反応を知り、事業のファンを増やすことも可能です。ただし、目標額に達しない場合や、リターンが遅れるリスクも存在します。

ベンチャー企業が資金調達を成功させるポイント

ここでは、ベンチャー企業が資金調達を成功させるためのポイントを3つ解説し、資金調達における成功確率を高めるための道筋を示します。

資金調達のタイミングを見極める

資金調達を成功させるためには、タイミングを見極めることが重要です。経済状況や金融市場のトレンド、顧客ニーズを考慮し、業界が注目している時期に調達を行うと、投資家の関心を引きやすくなります。

また、企業の成長段階に応じて適切な資金調達方法を選ぶことも必要です。初期段階ではエンジェル投資家やベンチャーキャピタルを、成長段階では銀行融資やクラウドファンディングなどを活用することが効果的です。

積極的に申請を行う

補助金・助成金の申請は、返済不要であり、資金調達の有効な手段です。申請手続が複雑であっても、積極的に取り組む価値があります。

また、創業間もないスタートアップであっても、金融機関からの融資や、エンジェル投資家・ベンチャーキャピタルからの出資といった選択肢を諦める必要はありません。積極的に検討し、資金調達の幅を広げていきましょう。

事業計画書の作成

資金調達を成功させるには、具体的な事業計画書が不可欠です。事業計画書は、事業概要や収支計画を明示し、投資家や銀行、補助金申請などで活用されます。

投資や融資を受けるためには、事業の展開や将来性を具体的に示さなければなりません。計画書を綿密に作成することにより出資者や金融機関からの信頼が得られるため、資金調達の成功を後押しします。

下記のサイトでは、事業計画書のテンプレートをダウンロードできるため、利用してみてください。

https://biz.moneyforward.com/establish/basic/49689/

ベンチャー企業の資金調達に税金はかかる?

ベンチャー企業が資金調達を行う際、税金の取り扱いには注意が必要です。まず、出資によるベンチャー企業の資金調達には税金面での注意が必要です。出資による資金調達では、資本金の増加に税金はかかりませんが、株式発行には登録免許税が発生します。

銀行融資は直接的な税金がかからず、支払利息営業外費用として計上されるため、法人税に影響します。また、助成金や補助金は課税対象です。

資産売却による利益も譲渡所得として課税されます。「エンジェル税制」は、スタートアップ企業に投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を得られる制度であり、投資家と企業の双方にメリットがあります。

ベンチャー企業が資金調達する際の注意点

ベンチャー企業が資金調達を行う際は、いくつかの注意点があります。出資を受けると、出資者が経営に介入する可能性があり、経営方針の変更や意見の対立が生じることもあります。

また、融資には返済義務が発生し、利子を含む返済計画の策定が必要です。助成金や補助金の申請には期日が定められ、手元に資金を受け取るまでに時間がかかるため、迅速な資金調達が必要な場合は、タイムラインに注意が必要です。

適切な資金調達で事業を成長させよう

ベンチャー企業の資金調達には、出資・融資・助成金など多様な方法があります。各手段の特徴を理解し、自社の状況に合わせて最適な方法を選択することが重要です。

資金調達を成功させるには、適切なタイミングの見極め、積極的な申請、具体的な事業計画書の作成が鍵となります。税金や注意点にも留意しながら、自社の成長戦略に合った資金調達方法を慎重に検討しましょう。


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