- 更新日 : 2026年7月15日
旅館経営は厳しい?実態調査・平均年収・成功事例を紹介
旅館経営は市場拡大が期待される一方で、低い利益率や高齢化など多くの課題を抱えており厳しい状況です。
- 宿泊業の平均営業利益率はマイナス20%
- 経営者の8割超が50歳以上で高齢化
- 地域性やIT活用による差別化が重要
Q. 旅館経営者の平均年収は?
A. 小規模旅館では年収300万〜600万円程度が目安です。
旅館経営は、国内旅行需要の回復やインバウンドの増加により、市場拡大が期待される一方で、人件費・光熱費・修繕費の上昇、経営者の高齢化、後継者不足など多くの課題も抱えています。
本記事では、旅館経営の現状や平均年収、成功事例、必要な許認可などを解説します。
旅館経営の実態は?データをもとに解説
旅館業法上の旅館業は、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業を指し、現在は「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」に分けられます。旅館経営を検討する際は、施設数、宿泊需要、売上規模、収益性、経営者の高齢化などをデータで確認することが重要です。
旅館・ホテル営業の施設数は5万1,038施設
厚生労働省の「旅館業の概要」によると、令和6年3月末時点の旅館業の営業許可施設数は9万3,475施設で、前年度より2,725施設増加しています。このうち、旅館・ホテル営業は5万1,038施設、簡易宿所は4万1,909施設です。以前は旅館営業とホテル営業が分かれて集計されていましたが、現在は旅館・ホテル営業として扱われているため、古い統計と単純比較する際は注意が必要です。
参考:旅館業の概要|厚生労働省
国内旅行者数はコロナ禍から回復し高水準で推移
観光庁の「旅行・観光消費動向調査 2025年年間値(確報)」によると、2025年の日本人国内延べ旅行者数は5億5,313万人で、前年比2.4%増でした。このうち宿泊旅行は2億9,997万人、日帰り旅行は2億5,316万人です。コロナ禍で落ち込んだ国内旅行需要は回復しており、旅館経営にとって国内客の取り込みは引き続き重要です。
参考:旅行・観光消費動向調査 – 2025年 年間値(確報)|国土交通省
訪日外国人数は2025年に過去最多を更新
日本政府観光局(JNTO)によると、2025年の訪日外客数は4,268万3,600人となり、年間で過去最多を更新しました。2024年の3,687万人を大きく上回っており、インバウンド需要は旅館・ホテル業界の成長要因になっています。外国人宿泊客を取り込むには、多言語対応、キャッシュレス決済、食事制限への配慮、OTAでの情報発信が重要です。
旅館・ホテル市場は2025年度に6.5兆円規模へ拡大
帝国データバンクの「全国『旅館・ホテル市場』動向調査(2025年度見通し)」によると、2025年度の国内旅館・ホテル市場は、事業者売上高ベースで6.5兆円に達し、過去最高を更新すると見込まれています。インバウンド需要や国内観光・出張需要の回復が追い風ですが、同調査では債務超過企業が約3割を占めるともされており、売上拡大と利益改善は別に考える必要があります。
参考:全国「旅館・ホテル市場」動向調査(2025年度見通し)|帝国データバンク
旅館業は法人経営が多いが小規模では個人経営も残っている
厚生労働省の「旅館業の実態と経営改善の方策」によると、旅館業は従業者規模が大きくなるほど法人経営の割合が高く、「20人以上」規模では96.2%が法人です。一方で、「1人」規模では77.8%、「2人」規模では80.2%が個人経営とされています。つまり、旅館業は大規模施設では法人化が一般的ですが、小規模旅館や家族経営では個人経営も多く残っています。
旅館経営者は高齢化しており事業承継も課題
厚生労働省の「旅館業の実態と経営改善の方策」では、旅館業の経営者年齢は60〜69歳が33.1%で最も多く、70歳以上も26.8%を占めています。50歳以上を合計すると8割超となり、旅館業では経営者の高齢化が進んでいます。今後は、既存旅館の承継、リニューアル、若い経営者による再生、外部人材の活用も重要なテーマになります。
旅館経営者の平均年収は?
旅館経営者の平均年収を直接示す公的統計は確認しにくいため、旅館の売上、利益率、借入返済、人件費、修繕費、経営者が現場に入る度合いによって判断する必要があります。小規模旅館では高収入を得られるとは限らず、稼働率と客単価の改善が重要です。
小規模旅館では年収300万〜600万円程度が一つの目安
小規模旅館の経営者年収は、300万〜600万円程度が一つの目安です。ただし、これは黒字経営ができている場合の目安であり、赤字や借入返済が重い場合は、経営者の手元に残る金額がさらに少なくなることもあります。日本政策金融公庫の「小企業の経営指標」では、宿泊業の売上高営業利益率は平均マイナス20.0%、黒字かつ自己資本プラス企業の平均でも6.0%です。実際の利益率は、立地や客室数、稼働率、借入状況などによって大きく異なってきます。
年商5,000万円なら営業利益300万円前後が目安
黒字企業平均の売上高営業利益率6.0%を前提にすると、年商3,000万円の旅館では営業利益は約180万円、年商5,000万円では約300万円、年商1億円では約600万円です。ただし、ここから借入返済、設備修繕、税金などを考慮する必要があります。法人経営の場合は役員報酬として受け取り、個人経営の場合は事業所得として残るため、年収の見え方も異なります。
年収を上げるには稼働率と客単価の改善が必要
旅館経営者の年収を上げるには、単に宿泊者数を増やすだけでなく、客単価と利益率を高めることが重要です。高単価プラン、食事付きプラン、温泉・地域体験、インバウンド対応、直接予約の強化などにより、OTA手数料や値引きに頼りすぎない経営を目指します。人件費や光熱費、修繕費が増えると利益は残りにくいため、売上とコストを同時に管理することが欠かせません。
温泉旅館経営の成功事例とポイントは?
温泉旅館の経営では、単に宿泊場所を提供するだけでなく、地域性、料理、温泉、接客、予約管理、宿泊プランの工夫によって選ばれる理由を作ることが重要です。
【島宿真里】地域資源を活かした料理と滞在体験で差別化
香川県小豆島の「島宿真里」は、小豆島の醤油文化や瀬戸内の食材を活かした料理を打ち出している宿です。公式サイトでは、小豆島醤油と瀬戸内の旬の食材を使った「醤油会席」が紹介されており、地域ならではの食体験を宿泊価値の中心に据えています。また、2025年には客室リニューアルや島の夕日を楽しむミニツアーなどの情報も発信されています。温泉旅館では、建物や温泉だけでなく、地域の食文化や体験を組み合わせることで、価格競争に巻き込まれにくい宿づくりができます。
参考:島宿真里
【HATAGO井仙】井仙は駅前立地と地域体験の組み合わせ
新潟県の「HATAGO井仙」は、越後湯沢駅を出てすぐの立地を活かし、魚沼地域の旅の拠点として宿を位置づけています。公式サイトでは、コシヒカリ、酒、そば、スキー、スノーボード、夏のイベントなど、魚沼・越後湯沢ならではの地域資源を前面に出しています。単に駅近の宿として訴求するのではなく、「地域を楽しむ入口」として見せている点が特徴です。旅館経営では、アクセスの良さに加え、周辺観光、食、アクティビティを提案することで、宿泊単価やリピート利用を高めやすくなります。
参考:HATAGO井仙
【元湯陣屋】IT活用で業務効率化とサービス品質向上
神奈川県の「鶴巻温泉 元湯陣屋」は、老舗旅館でありながら、宿泊施設向け管理システム「陣屋コネクト」を自社開発した事例として知られています。陣屋グループの公式情報では、現場の課題を見直し、クラウド型の宿泊施設向け管理システムによって、業務の可視化、標準化、効率化を進めてきたと説明されています。旅館業界では人手不足や属人化が課題になりやすいため、予約管理、顧客情報、社内連絡、勤怠管理などをデジタル化することは、接客品質を保ちながら生産性を高めるうえで重要です。
参考:鶴巻温泉 元湯陣屋
【つなぎ温泉 愛真館】多様な宿泊プランによる需要の取り込み
岩手県の「盛岡つなぎ温泉 愛真館」は、公式予約ページで複数の宿泊プランを展開しています。たとえば、夕食バイキング、ドリンクインクルーシブ、季節メニューなどを組み合わせたプランが掲載されており、利用者の目的や予算に応じて選びやすい構成になっています。客室数が多い旅館や温泉地の宿では、画一的な1泊2食プランだけでなく、家族旅行、記念日、地元利用、グループ利用、長期滞在など、利用シーン別にプランを設計することが重要です。宿泊プランを細かく見直すことで、閑散期の集客や客単価向上につなげやすくなります。
参考:つなぎ温泉 愛真館
温泉旅館経営では「地域性・効率化・プラン設計」の組み合わせが重要
成功している温泉旅館には、共通して「その宿を選ぶ理由」があります。地域の食材や文化を活かす、駅や観光地との接点を明確にする、ITで業務を効率化する、宿泊プランを利用シーン別に設計するなど、取り組み方は宿によって異なります。ただし、いずれの場合も、単に温泉があるだけでは不十分です。旅館経営では、客単価、稼働率、口コミ評価、リピート率、業務効率を継続的に確認しながら、自館の強みを磨くことが大切です。
温泉旅館に必要な許認可は?
温泉旅館を開業するには、通常の旅館業営業許可に加え、温泉を浴用・飲用に使うための許可、消防関係の届出、飲食を提供する場合の食品衛生関係の許可が必要です。物件や源泉の状況によって手続きが変わるため、保健所、消防署、自治体の温泉担当部署へ事前相談しておきましょう。
旅館業営業許可
温泉旅館として宿泊料を受けて宿泊させるには、旅館業法にもとづく営業許可が必要です。旅館業を経営する者は都道府県知事、保健所設置市長または特別区長の許可を受ける必要があり、構造設備基準や衛生基準に従う必要があります。客室、換気、採光、照明、防湿、清潔保持などの基準を満たせるか、物件契約や改修工事の前に保健所へ確認しましょう。
温泉利用許可
温泉を大浴場、露天風呂、貸切風呂などで公共の浴用に使う場合は、温泉法にもとづく温泉利用許可が必要です。環境省は、温泉を公共の浴用または飲用に供しようとする場合、温泉法にもとづく利用許可等が必要になります。必要な手続きは温泉の利用形態や自治体によって異なるため、事前に都道府県等の担当部署へ確認をする必要があります。また、利用許可を得た施設では、温泉の成分、禁忌症、入浴上の注意などの掲示も必要です。源泉を新たに掘削する場合は、別途、温泉掘削許可が必要になる点にも注意しましょう。
飲食店営業許可
温泉旅館で夕食、朝食、宴会料理、喫茶、バーなどを提供する場合は、飲食店営業許可が必要になることがあります。厚生労働省の食品衛生申請等システムでは、営業許可申請や営業届出をオンラインで行えると案内されています。ただし、必要な許可や施設基準は、調理内容や提供方法、自治体の運用によって変わります。厨房、シンク、手洗い設備、冷蔵設備、給湯設備などを整える前に、管轄保健所へ確認しましょう。
消防関係の届出
温泉旅館は宿泊者が滞在する施設であり、防火・避難体制の整備が重要です。東京消防庁は、建物や建物の一部を使用し始める場合、使用開始の7日前までに「防火対象物使用開始届出書」を管轄消防署に届け出る必要があると案内しています。また、建物工事を行う場合は「防火対象物工事等計画届出書」、消防用設備を設置した場合は「消防用設備等設置届出書」が必要になることもあります。
防火管理者選任届出
収容人数や建物用途によっては、防火管理者の選任が必要です。宿泊施設では、火災時に宿泊者が建物に不慣れな状態で避難するため、消防計画、避難誘導、消防設備の点検、従業員教育を整える必要があります。防火管理者を選任した場合は、管轄消防署へ防火管理者選任届出を提出し、消防計画も作成して届け出ます。大規模旅館や宴会場を備える施設では、早めに消防署へ相談しましょう。
旅館経営は需要回復を追い風にしながら収益管理と差別化を進めよう
旅館経営は、国内旅行需要の回復や訪日外国人の増加により、市場全体としては追い風を受けています。一方で、宿泊業の利益率は決して高いとはいえず、人件費、光熱費、修繕費、借入返済が経営を圧迫することもあります。旅館経営を安定させるには、施設数や宿泊者数などの市場データだけでなく、自館の稼働率、客単価、口コミ評価、リピート率を継続的に確認することが重要です。地域の食材や温泉、体験価値を活かした差別化、ITによる業務効率化、利用シーンに合った宿泊プランの見直しを進め、価格競争に頼らない経営を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会社設立の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
開業 サービス業の関連記事
新着記事
-
# 事業計画書
飲食店の事業計画書の書き方・記入例は?無料でダウンロードできるテンプレートつき
飲食店を開業する際、資金調達や協力者を得るために必要なのが「事業計画書」です。事業計画書には、創業の動機や収支計画、取扱商品・サービス、人員計画などを記載します。飲食店の開業を検討…
詳しくみる -
# 開業
電気工事士が独立すると年収はいくら?稼ぐコツや必要な準備を解説
電気工事士が独立すると年収はどのくらいになる? 中間マージンをなくし集客を整えれば、独立後に年収500万円以上も目指せます。 独立1〜2年目の年収目安は300万〜500万円になる …
詳しくみる -
# 開業
ネイリストの独立で年収はいくら?働き方やサロン開業の方法を解説
ネイリストが独立した後の年収は? サロン勤務時の平均年収(約320万円)を上回る可能性がありますが、収入は集客力や家賃・材料費などの経費管理に左右されます。 開業費用:自宅なら30…
詳しくみる -
# 開業
自動車整備士の独立で失敗する原因とは?開業準備と成功のコツを解説
自動車整備士の独立で失敗する主な原因は? 技術力不足ではなく経営知識や資金計画の甘さです。高額な初期費用に加え、認証取得の遅れや集客不足が重なると、開業早々に資金ショートを起こすリ…
詳しくみる -
# 開業
電気主任技術者として独立するには?資格・届出・安定収入のコツ
電気主任技術者が独立するには何が必要? 資格・実務経験・届出を整えれば、電気主任技術者として独立できます。 独立には第三種以上の資格と、種別に応じた実務経験が求められる 協会登録・…
詳しくみる -
# 開業
Webマーケティング独立で失敗する原因と回避策とは?AI時代に選ばれるために
Webマーケティングで独立して失敗しないためには、何を準備すればよい? 独立前に案件獲得ルートを確立すれば、収入の急落を防げます。 副業で月10万円を3か月以上安定させる 生活費6…
詳しくみる