- 更新日 : 2023年8月29日
学生も個人事業主として起業できる?税金の特例や確定申告についても解説!
学生の方が起業家としてスタートする際に、会社を作る(法人設立)場合と個人事業主(個人)のケースがあります。設立費用や資金調達などの兼ね合いから、個人事業主としてある程度事業を拡大してから法人化(法人成り)するのが一般的です。本記事では、個人事業主として事業をスタートした際のメリットや税金面、学生が受けられるさまざまな特例について解説します。
目次
学生も個人事業主として起業・開業できる?
学生だけでなく一般の方も共通ですが、個人事業主として起業・開業した際は、事業を開始してから1ヵ月以内に税務署へ開業届を提出します。提出しないことによる罰則はありませんが、開業届と提出後「所得税の青色申告承認申請書」を提出することで、確定申告で青色申告が可能となります。所得税に関するさまざまな特典が受けられますので、あらかじめ開業届を出しておきましょう。
学生が個人事業主として起業するメリットは?
学生が個人事業主として起業するメリットは、資金面などのリスクを抑えてスタートすることができることです。開業手続きにおいて、法人設立のための費用と比べると安く済みます。一方、法人設立の場合は、現行のルールでは資本金1円からスタートすることができますが、法人登記にかかる費用や資金調達などのある程度の費用負担が必要になってきます。
個人事業主や会社を作る(法人設立)ほかに、アルバイトをすることも選択肢の一つになります。アルバイトは、会社に雇用されるため、給料の見込み額などの計算は計画しやすいですが、時間給で働くことが一般的のため金額の限度があります。さらに、自分のしたいビジネスができないことの方が多いです。個人事業主の場合は、仕事さえ受注できれば稼げるだけ稼ぐことが可能なので、成功体験から自信が得られ、やりがいも感じられるでしょう。
個人事業主として起業した際は、屋号や事業主用の銀行口座を作ることができますので、必要に応じて融資や補助金などの各種助成金を申請することも可能です。
学生が個人事業主として起業する場合にかかる税金は?
さまざまな税金の種類がある中で、学生が個人事業主として納める主な税金は、所得税、住民税、個人事業税、消費税の4つです。それぞれの税金の概要について説明します。
所得税
所得税は、収入から必要経費を差し引いた所得にかかる税金です。計算期間は1月1日~12月31日までの所得を、原則、翌年2月16日~3月15日までに確定申告によって納税します。所得税の最低税率は5%から最高税率45%と所得金額が多ければ多いほど段階的に税率が上がっていく超過累進税率が採用されています。
住民税
住民税とは、都道府県や市区町村がおこなう教育や福祉、行政サービスなどを維持するために必要な経費を分担して支払う税金で、1月1日現在の住所地に納税する地方税です。所得税と同様、毎年かかります。また、住んでいる地域や収入によって住民税の金額が異なります。
住民税は、前年の1月~12月までの所得に応じて決まります。また、所得に応じて決まる「所得割」のほか、所得に関係なく全員に課される「均等割」があり、2つ合わせて住民税と呼びます。税率は自治体によって多少変わることもありますが、おおむね10%ほどです。
個人事業主の納税方法は、所得税の確定申告で住民税額が確定すると、その後自治体から納税通知書が届くので、一括もしくは4回(6月、8月、10月、1月)に分割して納めます。
個人事業税
個人事業税とは、前年の所得が290万円を超えた場合に、都道府県へ納める税金です。一定以上の事業収入がある場合に課税されます。副業収入などがある場合は別ですが、会社員やアルバイトなどの雇用関係にある場合には関係しない税金です。納税時期は、原則として8月末日と11月末日の2回となっており、8月頃に都道府県事務所から納税通知書が送られてきます。税率は、業種によって3~5%の税区分となります。所得税や住民税と違い、所得金額など一定の条件に該当すれば課税されるのが特徴です。
消費税
個人事業主の消費税は、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えるがどうかで決まります。この基準期間は「2年前」(前々年)を意味します。1,000万円を超えると、売上にかかった消費税から仕入にかかった消費税を差し引いて課税事業者として消費税額を納めます。
仮に1,000万円を超えない場合は、次に特定期間の課税売上高を確認します。この特定期間は「1年前の上半期」(前年の上半期)です。個人事業主の場合は1月から6月です。この特定期間の課税売上高が1,000万円を超えない場合は消費税を納める必要はありません。これを免税事業者といいます。課税事業者になった場合は、税務署に「消費税課税事業者届出書」を提出して翌年3月31日までに消費税額を納めます。
学生の個人事業主が利用できる特例とは?
次に、学生が個人事業主として活動するにあたり、税金や社会保険のさまざまな特典を受けることができます。ぜひ活用しましょう。
勤労学生控除
勤労学生控除とは、働きながら学校に通う学生の税負担(所得税、住民税)を軽減する制度です。所得税や住民税の計算において、収入(売上)から必要経費を差し引いて合計所得を算出し、そこから個人的な事情に関する所得控除を控除して課税所得を求めます。そして、課税所得に税率をかけて納付税額を求めます。勤労学生控除は所得控除に該当します。
合計所得が75万円未満であるなどの条件をクリアすれば、所得税は27万円、住民税は26万円の控除を受けることが可能です。つまり、勤労学生控除を利用することで、税負担を軽減して手取り額を増やすことができます。ただし、親の扶養に入っている場合は、合計所得が48万円を超えると扶養から外れてしまい、親の税負担が増える可能性があるので注意が必要です。
国民健康保険のマル学
国民健康保険のマル学とは、学生が親元を離れ別の市区町村に転出した場合であっても、引き続き転出前の市区町村の国民健康保険が利用できる制度です。そのため、本来支払うべき転出先の市区町村に対する国民健康保険料が免除されます。ただし、学生であっても就労して生計を立てている場合などは、この特例は利用できません。
学生の個人事業主として起業している場合は、生計を立てている可能性が高いので、この特例を利用できないことが多いでしょう。
国民年金保険料の学生納付特例制度
学生納付特例制度とは、一定の所得以下であれば、国民年金保険料を一定期間猶予する制度です。猶予とは将来支払いますという意味で、保険料の支払期日を延長してくれるということです。
学生も個人事業主として利益が出たら確定申告が必要!
所得税は、原則、年間の所得を自分で計算して翌年2月16日~3月15日までの間に納税する申告納税方式です。確定申告とは、自分が稼いだ所得を税務署に申告する手続きです。学生や一般の方であっても支払うべき税金があると確定申告が必要になります。
また、住民税については、この確定申告した所得が住民税額を計算する基準となります。
まずは、個人事業主として事業をスタートしよう!
学生が起業する方法として、個人事業主と会社を作る法人設立の2つがありますが、資金面や手間などの違いから、まずは個人事業主としてスタートしてみてはいかがしょうか。
そして、学生の方は、税金面での勤労学生控除や社会保険の国民年金保険料の学生納付特例制度など、さまざまな特例を受けられますので、ぜひ活用しましょう。
よくある質問
学生も個人事業主として起業できる?
個人事業主として起業・開業した際は、事業を開始してから1ヵ月以内に税務署へ「個人事業の開業届」を提出します。詳しくはこちらをご覧ください。
学生が個人事業主として起業する場合にかかる税金は?
学生が個人事業主として納める主な税金は、「所得税、住民税、個人事業税、消費税」の4つです。原則、所得税と住民税は毎年かかる税金で、個人事業税と消費税は、所得等の条件に該当する場合にかかる税金です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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