• 更新日 : 2023年10月23日

ケアハウス経営の収益性を知りたい!需要や補助金など経営課題を解説

ケアハウス経営の収益性を知りたい!需要や補助金など経営課題を解説

ケアハウスは、高齢者に向けて生活支援サービスや介護サービスを提供する施設です。安定した収入を見込みやすいケアハウスの開業・経営は、急増する介護サービス需要にも対応できる社会貢献性の高いビジネスです。今回は、ケアハウス経営は儲かるのか、経営状況の実態や経営のメリット、経営課題や失敗してしまう原因などを解説します。

ケアハウス経営の実態

ケアハウスとは、高齢者向けの居住施設であり、自立して生活できるように配慮された、サービス付きの賃貸住宅のことです。

ケアハウスの入居者は、日常生活のサポートとなる以下のようなサービスを受けられます。

  • 食事介助
  • 入浴介助
  • 排泄介助
  • リハビリ
  • 病院への付き添い

以前は、医療法人や社会福祉法人など、一部の法人のみしかケアハウスを開設できませんでした。しかし、2001年度から、民間企業がケアハウスを開設し、運営できるようになりました。そのため、介護分野で起業したい方には、ケアハウス経営に挑戦するという選択肢もあります。

ケアハウスの種類と他の老人ホームとの違い

ケアハウスは、一般型と介護型に分けられます。それぞれの違いを、以下の表にまとめました。

概要提供サービス特徴
一般型自宅での生活に不安がある高齢者向けの施設
  • 掃除・洗濯・食事提供などの生活支援サービス
  • 緊急時の対応 
  • など

  • 介護サービスを受けたい場合は、外部のサービスを利用する必要がある
  • 要介護度が上がった場合、別の施設に転居が必要になる可能性がある
特定型(介護型)介護保険法における「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設
  • 生活支援サービス
  • 介護サービス
  • リハビリ
  • 看取り 
  • など

  • 要介護度が上がっても住み続けられる
  • 人気が高く、入居待ちも多い

一般型では、介護サービスを提供しません。自立しているものの、自宅での生活が不安な方に向けて、身の回りをサポートするサービスを提供します。

一方、介護型は介護の必要な方が対象です。生活支援サービスに加えて、介護サービスや看取りにも対応しています。

高齢者向け施設には、ケアハウス以外にも以下のような施設があります。

<国や地方自治体などが運営する公的施設>

  •  特別養護老人ホーム
  •  養護老人ホーム
  •  介護老人保健施設
  •  介護医療院

<民間企業が運営する民間施設>

  •  介護付き有料老人ホーム
  •  住宅型有料老人ホーム
  •  健康型有料老人ホーム
  •  サービス付き高齢者向け住宅
  •  グループホーム
  •  シニア向け分譲マンション

ケアハウスは、民間の老人ホームに比べると入居者の経済的な負担は比較的少ないのがポイントです。また、同じく費用が高くない公的施設の中では、入居対象者が幅広いという特徴があります。

ケアハウスの利用者とは?

ケアハウスの入居対象者は、以下のとおりです。

年齢要介護度
一般型60歳以上自立〜要介護
特定型(介護型)65歳以上要介護

一般型は、自立している高齢者の方でも利用できます。自宅での生活に不安があり、身のまわりのサポートを受けたい方に適した施設です。

特定型では、生活支援サービスに加えて介護サービスも提供しており、要介護の方が入居できます。

どちらのケアハウスを開業するかによって、ターゲットや提供すべきサービスが異なります。必ず違いを理解しましょう。

ケアハウス経営に将来性はある?

ケアハウス経営の将来性については、独立行政法人福祉医療機構が発表した「2021年度 軽費老人ホーム(ケアハウス)の経営状況について」というレポートが参考になります。レポートでは、ケアハウス経営の将来性について、以下の点が明らかになっています。

<一般型>

  • サービス活動収益の減少によって、赤字施設の割合が 44.8%まで拡大している
  • 人件費は減少しているが、原油価格や物価の高騰によって、そのほかのコストが増加している

<特定型>

  • サービス活動収益対サービス活動増減差額比率が上昇した
  • 一方、赤字施設割合は36.7%と拡大している
  • 一般型と介護型を比べると、特定型のほうが赤字施設割合は少ない

このように、ケアハウス経営をすれば必ずしも成功するとは言えない状況です。特に、一般型では特定型に比べ赤字施設の割合は多いことがわかります。

しかし、将来性がないわけではありません。高齢化が急激に進んでいる日本では、高齢者向けサービスの需要がどんどん高まっていくことが予想されます。経営を工夫し、利用者のニーズに対応できる施設を運営することで、経営に成功する可能性は十分に期待できるでしょう。

参考:独立行政法人福祉医療機構 2021 年度 軽費老人ホーム(ケアハウス)の経営状況について

ケアハウスの収支モデル

ケアハウス経営の見通しを立てるためには、収入と支出の内訳を理解することが大切です。ケアハウスの収入源は、入居者から徴収する費用と介護報酬です。また、初期費用や運転資金として、さまざまな費用がかかります。

ここでは、ケアハウスの収入例と支出例について見ていきましょう。

さらに、経営にかかる費用を削減し、安定経営を実現するためには規模を大きくすべきか、についても解説します。

ケアハウスの収入例

ケアハウス経営における収入は、以下のとおりです。

<初期費用>

  • 入居一時金

<月額利用料>

  • 家賃
  • 管理費
  • 食費
  • そのほかサービス費

<介護報酬>

  • 介護報酬

入居一時金とは、入居時に支払ってもらう初期費用のことです。公的施設では入居一時金がかからないケースがほとんどですが、民間施設では、入居一時金を徴収するケースが多く見られます。

入居一時金の費用相場は0〜30万円前後、月額利用料の費用相場は10〜20万円前後です。もちろん、施設が提供するサービスや立地、規模などによって費用は異なります。

ケアハウスの支出例

ケアハウス経営では、以下のような支出が発生します。

<初期費用>

  • 土地購入費用
  • 建設費用
  • 会社設立費用
  • 設備・備品費
  • 広告費
  • 求人費用
  • 不動産取得税、固定資産税等

<運転資金>

  • 人件費
  • 水道光熱費
  • 施設維持管理費
  • 食費やそのほかのサービスに関する費用
  • 通信費
  • 消耗品費
  • 広告費
  • リース料(設備や備品をリースする場合)
  • 車両費・ガソリン代(車両を保有して入居者の外出をサポートする場合)
  • 固定資産税等

ケアハウスの広さや立地、規模などによって、必要な金額は異なります。土地や建物の取得から始める場合は、約3億円以上もの初期費用がかかる場合もあるため、注意が必要です。

また、開業初期は入居者の募集から始めないといけないため、売上が少ない時期も続くでしょう。利益が出るまでにかかる、数ヶ月分の運転資金を事前に確保しておくことも大切です。

定員規模が大きい方が経営は安定する?

経営を安定させるためには、定員規模が大きいほうが望ましいのでしょうか。

独立行政法人福祉医療機構の調査では、一般型のケアハウスについては、定員規模が大きくなるほど、利用者1人あたりのサービス提供にかかる費用は減少していることが明らかになりました。

規模が大きい場合には「スケールメリットが働くため経営は安定する」という仕組みです。また、利用者10人あたりの従事者数も少なくなり、人件費が抑えられていることがわかります。

ただし、規模が大きくなると、自社のスタッフだけで運営するのが難しくなります。業務委託を活用して人員を確保する必要性が高まり、業務委託費率が高くなる点には注意が必要です。

一方、この傾向は、特定型のケアハウスには当てはまりません。特定型の場合、定員規模が小さいほうが利用率が高く、サービス活動増減差額比率が高い傾向にあります。

人件費率については、一般型と同様に、規模が大きい方が低くなりやすいです。しかし、一般型に比べると人員配置が手厚くて業務の内製化が可能であるため、規模の差による人件費率の変化はあまり見られないと考えられます。

特定型については、定員規模が大きい方が必ずしも経営が安定するというわけではありません。

参考:独立行政法人福祉医療機構 2021 年度 軽費老人ホーム(ケアハウス)の経営状況について

ケアハウス経営のメリット

ケアハウス経営には、以下のようにさまざまなメリットがあります。

  • 安定した収入が見込める
  • 税の優遇や補助金などが受けられる
  • 施設の設置場所を問わない
  • 社会貢献になる

国内市場の多くが、少子高齢化によって縮小すると考えられています。しかし、ケアハウスのような高齢者向けビジネスにとっては、大きなチャンスです。

土地を有効活用でき、社会貢献につながる方法であるのも大きな魅力です。

ここでは、ケアハウス経営のメリットを解説します。

安定した収入が見込める

ケアハウスをはじめとする高齢者向け施設は、需要が高く、利用者を獲得しやすいのが特長です。入居したいと思ってもらえる施設づくりを実現できれば、安定した収入を獲得できるでしょう。

高齢者向け施設の場合は、施設を終の住処とする入居者も多く、長期の契約になりやすいという特徴があります。マンションやアパート経営に比べると、収入を安定的に確保できる可能性が高いです。

また、ケアハウスが行政主導の総量規制の対象である点も、経営においてはメリットと言えます。総量規制とは、高齢者向け施設の数に対して、地域内で設けられている制限のことです。総量規制があるため、ケアハウスを建てたあと、近隣に競合施設が乱立して入居者をとられてしまう、というリスクを避けられます。

税の優遇や補助金などが受けられる

土地を所有している場合は、土地を活用してケアハウスを経営することで、節税につながる可能性があります。マンションやアパート経営と同様、相続税や固定資産税などの節税につながるかもしれません。

また、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けることで、設備の準備に対して補助金制度を利用できる場合があります。各自治体が独自に補助金制度を設けている場合もあり、うまく利用すれば初期費用負担を軽減できるでしょう。

さらに、条件を満たせば以下のような助成金も利用できます。

  • 中小企業労働環境向上奨励金
  • 特定求職者雇用開発助成金
  • トライアル雇用奨励金

補助金や助成金の有無や対象、条件などは、年度によって変わる可能性があります。情報をこまめにチェックして、期限内に申請できるようにしましょう。

施設の設置場所を問わない

ケアハウスは、駅からあまり近くなかったり、近くに商業施設がなかったりするような土地でも、一定の需要があります。

たとえば、利便性があまり高くない土地にある施設は、「都会の喧騒から逃れてのんびり暮らしたい」というニーズに対応できます。また、自宅や家族の近くにある施設に入居したい、という方も少なくありません。

このように、マンションやアパート経営では不利とされる立地でも開業できるのは、高齢者向け施設ならではのメリットです。

もちろん、ある程度の広さを確保できる立地であることや、少なからず交通手段があることが求められます。

社会貢献になる

ケアハウスは、自宅での生活に不安を抱える方の生活をサポートしたり、介護を必要とする方に然るべき介護サービスを提供したりする施設です。ケアハウスを開業することで、サポートを必要とする高齢者の役に立ち、社会貢献につながります。

今後、高齢者の増加や核家族化が進むと、介護や生活支援を必要とする高齢者の数はますます増えるでしょう。

また、ケアハウスを経営するということは、雇用を生み出すということでもあります。

起業に挑戦したい方や介護領域でのビジネスに興味がある方、保有している土地を活用したい方には、社会貢献につながるケアハウス経営がおすすめです。

ケアハウス経営が失敗してしまうのはなぜ?

ケアハウスは需要が高いビジネスですが、ケアハウスを開業したからといって、必ずしも成功するとは限りません。ケアハウス経営が失敗してしまうリスクも十分にあります。

失敗を防ぐためには、経営に失敗する原因を理解し、対策しましょう。

ここでは、ケアハウス経営が失敗してしまう主な理由について解説します。

  • 介護報酬の改定が財務状況に直接影響する
  • 人材の確保が難しい
  • 提供するサービスが地域のニーズに応えられない
  • 将来的な競争に備える必要も

介護報酬の改定が財務状況に直接影響する

ケアハウス経営を左右する要素の1つが、介護報酬の改定です。

介護施設の収入の1つである介護報酬は、厚生労働大臣が定めた基準で算定され、変動することがあります。介護報酬の改定は、経営状況に直接影響する重要なポイントです。

介護報酬は、介護施設側が自由に設定できる収入ではありません。改定によって、収入が減少してしまうリスクがある点には注意が必要です。

人材の確保が難しい

ケアハウスをはじめとする多くの介護施設が、介護人材不足に悩んでいます。介護は、精神的にも肉体的にも大変な仕事です。そのハードなイメージにより、人材を獲得できない施設が少なくありません。せっかく獲得した人材も、仕事内容や業務量などを理由に、離職してしまう可能性が十分に考えられます。

人材が減少すると、入居者に対して充実したサービスを提供できなくなります。また、介護施設には、必ず満たさなければならない人員基準が設けられているのがポイントです。基準を下回ってしまうと、そもそも経営を続けられなくなってしまいます。

入居者の確保だけでなく、求人を工夫したり、職員が働きやすい環境を整備したりと、人員確保に注力することが欠かせません。

提供するサービスが地域のニーズに応えられない

地域によって、ケアハウスや高齢者向け施設へのニーズは異なります。地域のニーズに応えられなければ、入居者を集められず、経営が傾いてしまうでしょう。

要介護認定されている方が多い地域なら、介護サービスを提供できる特定型ケアハウスが適しています。近くに外部の介護事業所があったり、事業所への送迎サービスを行ったりしているケアハウスのニーズも高いです。

富裕層が多く暮らしている地域なら、入居一時金や月額費用の安さよりも、設備の豪華さやサービスの充実度を重視して施設を選ぶ方が多いと考えられます。

地域のニーズを理解し、ニーズに合ったサービスを提供できるようにしましょう。

将来的な競争に備える必要も

ケアハウスは、高齢化によって需要が高まっていますが、ケアハウスを開業すれば必ず入居者が集まるわけではありません。

介護施設需要の増加に伴い、多くの民間企業が施設経営に参入しています。今後、介護施設間の競争が激化し、価格競争に発展する可能性も否めません。安定して経営を続けるためには、近隣施設との差別化が重要です。

介護施設への入居希望者は多いですが、一方で、自宅を離れたくないと考える高齢者も多く存在する点を忘れてはいけません。そうした高齢者が抵抗なく入居できるよう、建物設備を整えたり、自宅よりも安心して快適な生活が送れるようなサービスを充実させたりすることがポイントです。「入居したい」と思ってもらえるような施設づくりを心がけましょう。

収益性も社会貢献度も高いケアハウス経営をしてみませんか

ケアハウス経営は、安定した収益が期待できるだけでなく、社会貢献にもつながります。介護領域での起業に興味がある方は、ケアハウス経営に挑戦してみるのがおすすめです。

ケアハウス経営に成功するためには、地域のニーズに応え、入居したいと思ってもらえる施設づくりを徹底しましょう。介護人材を確保するための工夫も必要です。

初期費用や数ヶ月分の運転資金を確保したうえで、着実にケアハウス経営に向けた準備を進めましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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