- 更新日 : 2022年4月21日
青色申告承認申請書とは?書き方や提出期限について解説!
個人事業主の場合、青色申告で確定申告をすれば節税できるというメリットがあります。開業と同時に青色申告を始めることを検討しているのであれば、税務署に開業届を提出する際に、併せて青色申告承認申請書を提出しなければなりません。
本記事では、青色申告のメリットや注意点、青色申告承認申請書の作成・提出方法について説明します。
目次
青色申告承認申請書とは?
青色申告を開始する場合には、税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受けなければなりません。ポイントとしては、その他の届出書と違い「承認を受ける」必要があるという点です。提出後、税務署から承認できない旨の通知がこなければ、承認されたものとみなされます。
この「所得税の青色申告承認申請書」は、開業届と同時に提出することも可能です。
また、白色申告をしていた個人事業主が、「所得税の青色申告承認申請書」を提出することにより、白色申告から青色申告に切り替えることができます。
そもそも青色申告とは
確定申告には、青色申告と白色申告があります。
白色申告とは実は、「青色申告以外」という意味です。
青色申告は所得税法に定められた一定の帳簿を備え付け、取引を記録し、帳簿や書類を一定期間保管する納税者のみが選択できる確定申告方法です。
青色申告の対象となるのは、不動産所得、事業所得、山林所得の3種類だけです。納税地の税務署長に青色申告承認申請を行い、承認を受けると青色申告ができます。
青色申告のメリットは?
青色申告による確定申告を行うと、以下のような税務上の特典を受けられます。
青色申告をすることで得られる税務上のメリット |
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(1)青色申告特別控除
税金の計算をするときに、青色申告特別控除として10万円~最大65万円を所得から控除できます。青色申告を行う最大のメリットです。
ただし、青色申告で55万円(または65万円)の控除を受けるためには、複式簿記で記帳しなければならず、手間がかかります。
また、申告書の提出が確定申告の期限を過ぎてしまうと控除額は10万円となってしまいます。
詳細な条件などは以下の記事で解説しています。
(2)純損失の特別控除
赤字が出た場合、翌年以降3年にわたって、黒字の所得から控除できます。
詳細な条件などは以下の記事で解説しています。
(3)純損失の繰戻し還付
当年に生じた赤字分を前年の所得から控除して、前年に支払った税金の還付を受けることができます。
(4)青色事業専従者給与の必要経費算入
青色事業専従者である親族に払った給与を全額必要経費に算入できます。
詳細な条件などは以下の記事で解説しています。
(5)貸倒引当金の計上
原則として、売掛債権(売掛金、受取手形など)の5.5%を貸倒引当金として必要経費に計上することができます。(金融業の場合は 3.3%になります。)
(6)少額減価償却資産の即時費用化
取得価額30万円未満の少額減価償却資産は、年間計300万円までは必要経費として計上できます。
詳細な条件などは以下の記事で解説しています。
青色申告を行うメリットについては以下の記事でも詳細に解説しているので、合わせて読んでみてください。
青色申告承認申請書の入手方法
「所得税の青色申告承認申請書」の入手方法は主に3つです。
青色申告承認申請書の3つの入手方法 |
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書面で青色申告承認申請書を書きたい人は国税庁のホームページからダウンロード可能になっています。また、直接税務署に行って書式をもらうこともできます。
オンラインで完結したい人はe-Taxやマネーフォワード クラウド開業届のようなサービスで作成・提出を行うことも可能です。
なお、マネーフォワード クラウド開業届なら開業届の提出と合わせて青色申告承認申請書も無料で作成・提出ができます。
マネーフォワード クラウド開業届で作成できる書類一覧 |
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青色申告承認申請書の書き方
青色申告するためには、「所得税の青色申告承認申請書」に必要事項を記入し、税務署に提出する必要があります。
ここからは青色申告承認申請書の書き方を項目別に解説していきます。
宛名
納税を行う税務署名を記入します。したがって「納税地(自身の住所)」を管轄する税務署名を記入することになります。
提出日
窓口に提出する日を記入します。郵送であれば投函日を記入します。
納税地
「住所地・居所地・事業所等」の中で該当するものを選択し、住所と電話番号の記入をします。
- 住所地:住民票のある場所であり、納税地は一般的には住所地になります
- 居住地:国内に住所を持たず、居所のみある人は居所地が納税地となります
- 事業所等:国内に住所、居所のどちらかがあり、かつ、事業所などがある人はその事業所などの所在地を納税地とすることができます
上記以外の住所地、事業所等
上記の納税地以外に住所地・事業所等がある場合は記入します。
氏名、生年月日、職業、屋号
職業:実際の事業内容を記入します。
屋号:店名、社名などを記入します。
※屋号がない場合は記入しなくても問題ありません。
所得税の申告年
青色申告による申告を開始する年を記入します。
事業所又は所得の基因となる資産の名称及びその所在地
事業所や資産の名称(「本店」「○○支店」「○○営業所」「○○荘」「山林」など)と所在地や電話番号を記入します。記入しきれないときは適宜用紙に書いて添付してください。事務所などが複数ある場合は、すべてを記入します。不動産所得、山林所得のある方は、所有している物件名・山林名、その所在地をすべて記入します。
所得の種類
事業所得、不動産所得、山林所得の中で該当するものを選択します。所得が複数ある場合には該当する所得を全て選択します。
いままでに青色申告承認の取消しを受けたこと又は取りやめをしたことの有無
青色申告承認の取消しを受けたり、又は取りやめの届出をしたりしたことの有無を記入します。
なお、過去に承認の取消しを受けたことがある場合、その通知を受けた日から1年以内は、申請が却下されます。
本年1月16日以降、新たに業務を開始した場合、その開始した年月日
1月16日以降に開業した場合には、その日から2か月以内に青色申告承認の申請を行う必要があります。
相続による事業継続の有無
相続によって、事業の承継があった場合には(1)を選択し、創造開始年月日を記入します。
その他参考事項
- 簿記方式は、簡易簿記、複式簿記、その他から選択します。
なお、簡易簿記の場合と複式簿記の場合では、控除額が以下のように異なります。
簡易簿記:青色申告控除が最大10万円
複式簿記:青色申告控除が最大65万円 - 備付帳簿名は、青色申告のために備え付ける帳簿名を選択します。
関与税理士
税理士に開業届を依頼する場合は、顧問税理士の名前を記入します。
開業届の書き方
商売や不動産の賃貸などの事業を始めた場合には、所轄税務署に「開業届」を提出しなければなりません。
「開業届」は事業開始の日から1か月以内に提出する必要がありますが、仮に提出を失念してもペナルティはありません。
ただし、開業と同時に青色申告の承認を受けたい場合には、「青色申告承認申請書」と併せてこの「開業届」を提出しなければなりません。
開業届について詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。
青色申告承認申請書・開業届の提出期限
次に、青色申告承認申請書・開業届の提出方法や提出期限について解説します。提出期限については、青色申告の適用開始時期にも関わる重要な部分ですので特に注意が必要です。
青色申告承認申請書は開業日から2か月以内
青色申告承認申請書は、納税地の税務署の窓口に持参するか、郵送によって提出できます。初心者には多少わかりにくいかもしれませんが、e-Tax(国税電子申告・納税システム)により電子申請することも可能になっています。
青色申告承認申請書の提出期限は、開業時に提出する場合と、開業後に白色申告から切り替える場合とで次のような違いがあります。
(1)開業後最初の確定申告から青色申告したい場合
開業日から2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。開業日から2か月経過してから出した場合には、最初の年分については青色申告ができません。
(2)途中から青色申告に切り替える場合
既に事業を行っている方が白色申告から青色申告に切り替える場合には、「所得税の青色申告承認申請書」を、青色申告を開始したい年の3月15日までに提出しなければなりません。3月15日を過ぎて提出した場合には、提出した年の翌年から青色申告になりますので注意が必要です。
開業届は開業日から1か月以内
「開業届」は、事業を開始した日(開業日)から1か月以内に所轄の税務署に提出しなければなりません。特に、開業と同時に青色申告を始める場合には「青色申告承認申請書」とセットで提出する必要があるため注意してください。
なお、「開業届」については、提出しなかった場合のペナルティはありません。提出がなくても確定申告はできますが、金融機関で融資を受ける際などに提出を求められるケースがあります。事業を開始したときには忘れずに提出するようにしましょう。
青色申告承認申請書・開業届を提出するときの注意点は?
青色申告ができるのは「不動産所得」「事業所得」「山林所得」がある場合のみです。
したがって、給与所得や雑所得しかないときには、青色申告の各種特典を受けることはできません。
また、青色申告は「事業として行う」ことが前提となります。事業規模でない不動産の賃貸の場合には、青色申告の55万円(あるいは65万円)控除を受けることはできません。簡易簿記で作成した帳簿の備え付けによる10万円控除のみです。
ただし、不動産所得と事業所得の両方がある場合に限り、不動産所得が事業規模でなくても55万円(あるいは65万円)控除を受けることができます。
「不動産所得」「事業所得」「山林所得」を事業として行う際には、「開業届」の提出も忘れずに行いましょう。
期限に注意して青色申告承認申請書・開業届を提出しましょう
青色申告をする個人事業主は、青色申告特別控除などの税務上の特典を受けられます。個人事業を始めたら、青色申告をして節税を考えるのがおすすめです。
「所得税の青色申告承認申請書」には提出期限もあります。開業して最初の確定申告から青色申告したいなら、開業届と一緒に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しておきましょう。
よくある質問
青色申告承認申請書とは何ですか?
節税のメリットのある青色申告を適用するために、税務署長に提出する申請書です。詳しくはこちらをご覧ください。
青色申告承認申請書の提出期限は?
開業直後に申請する場合は、開業日から2か月以内に提出する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
青色申告承認申請書の提出方法は?
税務署窓口持参、郵送、e-Tax(電子申請)の3つの提出方法があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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