• 作成日 : 2025年1月28日

屋号なしでも個人事業主は開業できる?デメリットや屋号の決め方を解説

屋号なしでも開業することはできます。開業届や確定申告にも屋号欄がありますが、空白でも問題ありません。

ただ、事業内容が伝わりにくい、融資を受けられない可能性がある、などのデメリットもあります。反対に屋号があれば、ブランディング効果に期待できるほか、屋号付き口座の開設も可能です。

屋号なしでも個人事業主は開業できる?

個人事業主は、屋号なしでも開業可能です。開業届に屋号を記入する欄がありますが、空白でも受理されます。

また、後から屋号をつけることもできるため、屋号ありで活動したい人は必ず開業までにつけないといけないわけでもありません。後から屋号をつけたい時は、確定申告書の屋号欄に記入して提出すればOKです。

そもそも屋号とは、個人事業主がビジネスで使用する事業用の名前を指します。お店を営んでいる人なら「◯◯商店」、事務所を構えている人は「◯◯オフィス」などとつけることもあります。

ただし、「◯◯株式会社」「◯◯法人」といった法人と誤解されそうな屋号はNGです。「◯◯銀行」「◯◯証券」のような特定の業種名を使用するのも禁止されているため注意してください。

個人事業主が屋号をつけるメリット

個人事業主が屋号をつけることには、メリットがいくつか存在します。

サービスや事業内容をアピールできる

屋号で活動すると、事業内容が伝わりやすくなります。

例えば、デザイナーとして活動している場合、個人名だと可能な業務がイメージしにくいです。対して「◯◯デザイン」や「◯◯制作事務所」のような屋号があれば、ひと目でデザイナーだと判断してもらいやすくなります。

屋号があれば、名刺やホームページなどにも記載できるため、事業内容をアピールすることも可能です。印象にも残りやすくなり、認知度の向上や新規顧客の獲得にも期待できるでしょう。

屋号入りの銀行口座を作成できる

屋号をつけるメリットとして、屋号入りの口座を開設できることも挙げられます。

屋号入りの口座を作成すると、事業用の口座であることを明確にでき、取引先から振込先を間違えられにくくなることも魅力です。

さらに、事業用の口座と会計ソフトを連携させれば、帳簿付けや仕訳の手間も格段に減ります。屋号入りの口座は何かと便利なだけでなく、本人確認書類や事業内容が確認できる書類などがあれば開設できるので、ぜひ検討してみてください。

請求書・領収書などの書類に記載できる

屋号があると、請求書領収書などの書類にも記載できます。請求書や領収書に屋号が記載されていれば、認知度が向上したり安心感を与えられたりするでしょう。

また、帳簿付けや確定申告の際にも役立ちます。プライベートの領収書と混じったとしても、すぐに見分けがつくためです。屋号で領収書を受け取るようにしておけば、分別の手間も省けます。

屋号宛の郵便物をバーチャルオフィスで受け取れる

屋号宛の郵便物をバーチャルオフィスで受け取れることも、メリットに挙げられます。

自宅を事務所として利用できない人、ネットショップを営んでいて自分の住所を公にしたくない人などは、バーチャルオフィスを契約することが多いです。

屋号名でバーチャルオフィスに登録すれば、屋号宛の郵便物を受け取ったり、自宅に転送してもらったりすることもできます。

自宅を事務所利用できなくて困っている人やネットに自分の住所を公開するのに抵抗がある人は、屋号名でバーチャルオフィスを契約するのがおすすめです。

法人化の時も引き継げる

屋号は法人化(法人成り)した時も引き継げて、屋号をそのまま商号にするのが一般的です。商号には使用できない文字や記号がありますが、ルールに則っていれば屋号を引き継げます。

法人化した後の商号と個人事業主時代の屋号が一致していれば、過去の実績も示しやすくなるという点も魅力です。

もし、将来的に法人化を考えているのであれば、会社名としても利用できそうな屋号を考えてつけましょう。

個人事業主が屋号をつけるデメリット

屋号をつけることには、いくつかデメリットもあります。デメリットも考慮して屋号をつけるか検討しましょう。

屋号の決定や変更に手間がかかる

屋号の決定や変更には少々手間がかかります。屋号を決める際は、事業内容がイメージしやすい名前や覚えやすい名前を考えなければなりません。他の会社名や個人事業主の屋号と似た名前は避けた方がいいため、苦手な人は屋号を決めるのに時間がかかるでしょう。

また、屋号を変更する際も、いくつか手続きが発生します。例えば、新しい屋号を申告したり、取引先に連絡したりしなければなりません。飲食業や建設業の人は、別途で手続きが必要です。

業務内容が狭まる可能性がある

屋号があると、業務内容が狭まる可能性があります。屋号に関連した案件は獲得しやすくなりますが、屋号に関連していない依頼は来にくくなることもあり得るでしょう。

具体的には、ライターとデザイナーの業務ができる人が「◯◯ライティング事務所」と屋号をつけると、ライターの仕事しか来なくなることも考えられます。事業拡大に支障が出るケースもあるでしょう。

本当にやりたい業務・得意な業務と屋号が結びついているかを念頭に置いて決めるのがおすすめです。

個人事業主が屋号を決めるコツ

ここからは、屋号を決めるコツをいくつか紹介します。また、避けた方が無難な屋号も載せているので注意して決めてください。

事業やサービスがイメージできる名前にする

屋号を決める際は、事業やサービスがイメージできる名前にしましょう。お店やネットショップを営む人は「◯◯ショップ」、フリーランスのエンジニアは「◯◯テック」などがおすすめです。

ひと目で事業やサービスを連想できる屋号なら、マーケティングや認知度アップにも効果を期待できるでしょう。

事業と関連した屋号のサンプル集を下記にまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

覚えやすい名前にする

屋号は、覚えやすい名前にするのもポイントです。個性的な屋号や誰でも読みやすい屋号にすると、覚えてもらいやすいでしょう。

ただ、取引先やユーザーが覚えにくい屋号、一般的ではない専門用語を用いた屋号などは、おすすめできません。事業内容が分かりにくくなってしまったり、ネットで検索しにくくなってしまったりする可能性があるためです。

不安な方は、知人や家族に相談してみるのも良いでしょう。事業内容を端的に表した覚えやすい屋号を考えてみてください。

インターネット検索を参考にする

屋号を決める際は、インターネットで検索した結果を参考にするのも一つの手です。同業種・同職種の人が、どのような屋号を使っているのかリサーチしてみましょう。

リサーチをすることによって、似たような屋号を避けられます。有名会社と似た屋号をつけると混同される可能性もあるため、避けた方が無難です。

また、競合が自分の名前をアピールしているのか、サービスや事業内容をアピールしているのかを分析することも可能となります。分析することで、屋号を決める際のヒントを得られることもあるでしょう。

避けた方が良い屋号

「◯◯会社」や「◯◯法人」などを屋号で使うのは、法律で禁止されています。「◯◯銀行」や「◯◯証券」も使用できません。

また、大企業や有名サービスと似た屋号も避けた方がいいでしょう。混同されやすいだけでなく、誤解を招いてトラブルに発展する可能性もあるためです。

馴染みの低い外国語やフリガナがないと読めない漢字、一般的ではない専門用語などを使った屋号もおすすめできません。取引先や消費者が覚えにくく、マーケティングにも影響するリスクがあります。

【業種別】個人事業主の屋号サンプル集

ここでは、屋号のサンプル集を業種別に紹介していきます。それぞれ10個程度の例をまとめました。

ライター

ライターの人は、自分の名前を使ったり、専門ジャンルを入れたりするのがおすすめです。

  • ◯◯ライティング
  • ◯◯ライティングオフィス
  • ◯◯編集部
  • ◯◯編集
  • ◯◯事務所
  • ◯◯専門ライター

もしくは、ペンネームを屋号として利用するのも良いでしょう。

ホームページ作成・デザイン

制作系の仕事をされている人は、「◯◯デザイン」や「◯◯制作」などにすると事業内容が分かりやすいです。

  • ◯◯デザイン
  • ◯◯制作
  • ◯◯スタジオ
  • ◯◯ラボ
  • ◯◯企画
  • ◯◯チーム
  • ◯◯制作事務所
  • ◯◯オフィス
  • ◯◯クリエイティブ
  • ◯◯グラフィック

エンジニア

フリーランスエンジニアの人は、「◯◯テック」や「◯◯システム」などがおすすめです。

  • ◯◯テック
  • ◯◯システム
  • ◯◯ソリューションズ
  • ◯◯プロジェクト
  • ◯◯テクノロジーズ
  • ◯◯テックラボ
  • ◯◯開発
  • ◯◯デジタル
  • ◯◯エンジニアリング

エンジニアはカタカナを入れることが多いので、あえて漢字やひらがなを入れてみるのもいいでしょう。

コンサルタント

コンサルタントの人は、得意分野を屋号に入れるのがおすすめです。新規顧客の獲得に繋がりやすくなります。

  • ◯◯コンサル
  • ◯◯コンサルティング
  • ◯◯アドバイザー
  • ◯◯コンサルタント
  • ◯◯アドバイザリー
  • ◯◯コンサルオフィス
  • ◯◯コンサル事務所
  • ◯◯専門アドバイザー
  • ◯◯総合コンサルティング

建設業・リフォーム

建築業やリフォーム業の人は、得意分野を屋号に入れると決まりやすいでしょう。

  • ◯◯リフォーム
  • ◯◯建築
  • ◯◯土木
  • ◯◯建設
  • ◯◯工業
  • ◯◯大工
  • ◯◯工務店

また、地域に根差した事業を営んでいる人は、地域名を入れるのもおすすめです。

配送・運送業

配送業や運送業の人は、以下の屋号にするのが一般的です。

  • ◯◯配送
  • ◯◯運送
  • ◯◯運輸
  • ◯◯物流
  • ◯◯急便
  • ◯◯エクスプレス
  • ◯◯便
  • ◯◯キャリー

そこまで一般的ではありませんが、運ぶ・飛ぶことを連想させて鳥の名前を入れるというアイデアもあります。

小売り・ネットショップ

小売業の人やネットショップを運営している人は、主力の商品を屋号に入れることが多いです。

  • ◯◯ショップ
  • ◯◯ストア
  • ◯◯工房
  • ◯◯店
  • ◯◯モール
  • ハンドメイド◯◯
  • ◯◯専門店
  • ◯◯オンライン
  • アパレル◯◯
  • ◯◯コスメ

飲食業

飲食業の人は、専門のジャンルを屋号に入れると分かりやすいです。

  • ◯◯カフェ
  • ◯◯ベーカリー
  • ◯◯コーヒー
  • ◯◯ラーメン
  • ◯◯堂
  • ◯◯バーガー
  • ◯◯ごはん
  • ◯◯中華
  • ◯◯商店

また、フランス語やイタリア語で言い換えた単語を入れると、おしゃれになるでしょう。

屋号を決めたら開業届や確定申告に記入する

屋号を決めたら、まず開業届に記載してください。屋号を書く欄があるので、ふりがなも忘れず記入します。

個人事業の開業届出・廃業届出等手続

引用:個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

また、確定申告をする際にも屋号を記載しましょう。青色申告決算書や収支内訳書にも屋号を書く欄があります。ただ、屋号を書き忘れても特に問題はありません。

個人事業主が屋号を変更したい場合

屋号を変更したい場合は、確定申告書に新たな屋号を記載するだけでOKです。屋号の変更届のような特別な手続きはありません。もし、変更した証拠を残したいなら、開業届を提出し直すという方法もあります。

また、屋号付き口座を保有している人は、名義変更を行ってください。取引先にも新しい屋号を早めに連絡しましょう。

なお、屋号を後からつける際も、次に提出する確定申告書の屋号欄に記載するだけで完了します。開業届は開業から1ヶ月以内に出さないといけないため、じっくり屋号を考えたい人は後からつけることも多いです。

個人事業主は屋号をつけることを検討してみましょう

屋号があると、屋号入りの口座を開設できたり、事業内容をアピールできたりとメリットも多いです。ネットショップを運営したい人や事務所を構えたい人も屋号があると、活動する上で便利でしょう。

屋号は後からつけることもできて手続きも簡単です。この記事を参考に、ぜひ検討してみてください。


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