• 作成日 : 2024年10月10日

会社設立時の借入額の目安は?適切な金額や審査のポイント、融資の注意点

会社設立時の借入額の目安は、約800万円です。この記事を読めば、「会社を設立する場合、いくら借りればよいかがわからない」「借入を受ける際の注意点は?」という悩みを解決できます。本記事で、会社設立時の借入額の目安や適切な借入額の決め方について確認していきましょう。

会社設立時の借入額の目安

会社設立時の借入額の目安は、約800万円です。日本政策金融公庫が実施した調査によると、2023年度の開業時の借入金額は平均768万円でした。しかし、借入を受ける機関によって融資の金額は変動するため、各機関の融資制度を知る必要があります。

参考: 日本政策金融公庫総合研究所 2023年度新規開業実態調査

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫には新規開業資金という融資制度があります。融資限度額は最大7,200万円で、運転資金の限度額は4,800万円です。

しかし、融資限度額の範囲内であっても希望する融資額を借りられるとは限りません。2023年の新規開業実態調査でも借入平均額は768万円となっていましたが、必ず借りられる金額ではないため注意が必要です。

信用金庫・信用組合

信用金庫や信用組合は、地方銀行よりも地域に密着した支援体制になっていることが特徴です。信用金庫には、プロパー創業融資という独自の制度があります。保証無しで融資を受けられるため、保証料を削減できるでしょう。

プロパー創業融資制度の例として、横浜信用金庫の創業融資「創る」の限度額は500万円で、必要資金の20%以上を自己資金で用意するなどの条件があります。

銀行

銀行からの融資額は一般的に300万円から2,000万円程度が目安といわれています。

銀行融資の場合は、返済能力や担保の有無が審査の重要なポイントです。中でも新規事業の場合は、詳細な創業計画書が必要になるでしょう。

銀行は審査が厳しいといわれていますが、担保を提供することで融資額を大きく引き出せる場合もあります。したがって融資の際、有利になるための情報を集めておく必要があります。

地方自治体

地方自治体は、低金利・無担保・無保証・全期間利率固定などの補助制度を設けている場合が多いです。

たとえば東京都には「女性・若者・シニア創業サポート事業」という融資制度があります。融資限度額は1,500万円で、無担保かつ無保証の制度です。女性・若者(39歳以下)・シニア(55歳以上)という性別や年齢の条件や、創業計画を保有しているか創業後5年未満という細かな条件を達成している必要があります。

会社設立時に適切な借入額の決め方

創業時の借入金額は個人事業主と法人で目安となる金額が異なります。たとえば、個人事業主として融資を受ける金額は、一般的に300万円から500万円が目安です。個人事業主の場合は自己資金が多いほど融資の審査が有利になるため、開業前にできるだけ多くの自己資金を貯めておきましょう。

法人の融資を受ける金額は、個人事業主よりも大きくなる傾向があり、一般的に300万円から1,000万円が目安となります。法人は信用力が個人事業主に比べて高いと判断される傾向にありますが、融資を受ける時は事業計画書やキャッシュフロー計算書等の詳細な資料が求められるでしょう。

融資額の基準は自己資金の3倍程度が目安となります。たとえば、自己資金が100万円の場合は300万円程度の融資を受けることが可能です。法人設立後は、返済の実績を積むことで信用力が増して大きな融資額を受けることもできます。

定期的な財務報告や業績を上げて実績を作ることは、金融機関からの信頼を得ることにつながるでしょう。

自己資金がなくても会社設立時に借入はできる?

一般的に融資を受ける際は融資金額の3割程度は自己資金が必要です。そのため、自己資金がない人でも会社を設立したい時のために創業融資制度があります。

一般の会社員だった人が新しく事業を始める場合も多いため、自己資金が無くても創業できる制度があるおかげで、誰でも事業を開始する可能性があるといえるでしょう。

自己資金無しでも創業融資を受けられる方法を5つ紹介します。

  • 新規開業資金(旧:新創業融資)
  • 中小企業経営力強化資金
  • 挑戦支援資本強化特例制度
  • 自治体の制度融資
  • 銀行、信用金庫の融資

5つの融資制度のなかで、自身の環境に合った制度を選んで見てみましょう。

新規開業資金

日本政策金融公庫の新規開業資金は小規模事業者の場合、最大7,200万円まで融資可能です。2024年3月31日までは新創業融資という名称でしたが変更され、また自己資金の要件が無くなり融資限度額も拡張されたため、以前の制度よりも使いやすくなっています。

女性や若者、シニアなどの融資対象者が幅広く用意されているため、要件に合致する人には借りやすい制度となっているでしょう。

中小企業経営力強化資金

日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金は、小規模事業者の場合、融資限度額が7,200万円です。2種類の要件があり、適用しやすい要件は以下の通りです。

  • 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用予定の人
  • 事業計画書を策定する人

事業計画書は認定支援機関と呼ばれる専門家に作成と指導を依頼すると、日本政策金融公庫の融資に通りやすくなるというメリットもあります。

挑戦支援資本強化特例制度

日本政策金融公庫の挑戦支援資本強化特例制度は、小規模事業者の場合、融資限度額が4,000万円です。次の融資制度を活用した上で、地域経済の活性化にかかる事業を行うことが要件となります。

  • 女性、若者/シニア起業家支援資金
  • 再挑戦支援資金
  • 新事業活動促進資金

資本性ローンに該当するため、融資額を資本扱いとして処理されることで、他の金融機関の融資制度と併用する場合に有利になるでしょう。

自治体の制度融資

都道府県や市区町村といった地方自治体では、企業向けに制度融資と呼ばれる融資を実施していることがあります。制度融資は自治体が金融機関と連携して、信用保証協会の保証が付いた融資をするものです。

たとえば東京都では、「東京都中小企業制度融資『創業』」を実施しています。融資限度額は3,500万円で、創業した日から5年未満の中小企業者です。

制度融資の注意点は、実施していない自治体があることなので、事業を始める自治体に制度融資があるかどうか調べておきましょう。

銀行、信用金庫の制度融資

銀行や信用金庫にも信用保証協会の保証付き融資があります。メガバンクには創業融資はないようですが、地方銀行や信用金庫には積極的に扱っているところがあるでしょう。

たとえば、城南信用金庫の創業・起業者向け協調融資「Approach」では、融資限度額が5,000万円です。創業より3年以内の事業者が要件のため、会社設立時に活用できます。

民間の金融機関では、自己資金無しの融資申し込みが通りにくいといわれているため、事業計画の準備は念入りに行いましょう。

参考:城南信用金庫 創業・起業者向け協調融資「Approach」

会社設立時の借入に必要な書類

銀行から融資を受ける際には、審査に必要な書類の提出を求められます。提出する書類は、融資制度の種類や申込者の状況に応じて異なりますが、法人で共通する必要書類は下記の通りです。

事業計画書(創業計画書)テンプレート

事業計画書は、創業の動機や必要な資金と調達方法、事業の見通しを記載する計画書です。事業計画書の書き方は、決まったフォーマットがないため、テンプレートを参考にしながらオリジナルのものを作成する必要があります。

下記サイトでは、事業計画書のテンプレートを70個以上紹介しているサイトです。自分が気に入ったテンプレートを活用して、事業計画書を作りましょう。

会社設立時の借入審査で確認されるポイント

一般的に創業融資で審査の基準となるポイントは、以下の4つといわれています。

  • 自己資金
  • 経験・能力
  • 返済可能性
  • 資金使途

4つの中でも特に重要視されるポイントは自己資金です。自己資金を持っていると資金を貯めた実績を評価してもらえる他に、自己資金割合も評価されることが多いでしょう。

自己資金の割合は、借りたい金額の3分の1を用意しておくとよいといわれています。通常の融資よりも創業融資の方が自己資金を重視するため、できるだけ資金を貯めておくべきでしょう。

また、自己資金の確認手段として1年分の個人通帳の提出を求められる場合もあります。貯めている資金が他の借入によるものではなく、給料等の正しいルートで入金されているかを確認されます。

会社設立時に借入を受ける際の注意点

これから創業融資を申し込む予定の人は、審査を受ける上での注意点を知っておく必要があります。会社設立時に借入を受ける際の注意点は下記の4つです。

  • 自己資金を用意しておくこと
  • ローン返済等の滞納履歴がないこと
  • 業界での職歴が十分か経験を振り返ること
  • 返済能力が証明できる証拠を残しておくこと

自己資金を用意しておくこと

自己資金額は、自身がどれだけの熱量をもって起業に向けて準備してきたかを図る判断基準となります。なぜなら自己資金を貯めるには、ある程度長期間継続して行動する計画性が必要となるためです。

たとえば、毎月の取引先やお客様から収益を上げている事が分かる預金通帳や、積立貯金のように、長年定期的にお金を貯めてきたことが分かる履歴を提示するとよいでしょう。

ローン返済等の滞納履歴がないこと

過去にクレジットカードやローンの支払いの遅延や滞納の履歴がある場合、金融機関が融資した資金を自身の借入金返済に使う可能性があると思われてしまいます。クレジットカードの滞納履歴は、一生記録されるわけではありません。一般的には、滞納し完済後5年間経過すれば信用情報はクリアになるといわれています。

過去の支払いで遅延や滞納があったかどうか不明な人は、信用情報機関へ確認してみましょう。

業界での職歴が充分か経験を振り返ること

起業する業界の経験があるかどうかが審査基準に良い影響をもたらすことが多いです。業界未経験の場合は、起業したい業界関係の仕事に就いて、1年程度の勤務経験を積めば審査に有利になるかもしれません。

起業する業界での職歴が十分かどうか、今一度自身の経験を振り返ってみましょう。

返済能力が証明できる証拠を残しておくこと

返済能力とは借りた資金を返済する能力を表します。そして、定期的な収入を得ていることが分かる資料は返済能力の証明に活用できます。

たとえば、飲食店を開業する場合は、売上を書いた手書きの伝票や年間の売上を集計したエクセル等の資料、過去の来店客からの予約が確認できる書類が当てはまるでしょう。

会社員であれば給料が入金されている通帳などが該当します。

借入先別の創業融資制度を押さえよう

借入先別の創業融資制度は以下の通りです。

  • 日本政策金融公庫の新規開業資金
  • 各自治体の制度融資
  • 銀行、信用金庫の制度融資

自己資金が少ない場合でも、創業融資制度を活用することで融資を受けられます。まずは今回紹介した3つの借入先で融資制度を活用することで、他の人よりも有利に融資の審査を進められるでしょう。


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