• 更新日 : 2023年11月8日

司法書士の独立開業は難しい?年収や成功のコツを解説

司法書士の独立開業は難しい?年収や成功のコツを解説

士業資格を取得してそれを活かして仕事をしたい、手に職をつけて独立開業したいと思われているなら、司法書士がいいかもしれません。

この記事では司法書士として独立開業するメリット・デメリットや司法書士事務所を開業するまでの流れ、成功するためのポイントについてご紹介します。

司法書士の独立開業は厳しい?

司法書士とは法的な手続きや公共機関に提出する書類作成などの業務を代行する法律の専門家です。具体的には以下のような業務を行います。

  • 登記又は供託手続の代理
  • (地方)法務局に提出する書類の作成
  • (地方)法務局長に対する登記、供託の審査請求手続の代理
  • 裁判所または検察庁に提出する書類の作成、(地方)法務局に対する筆界特定手続書類の作成
  • 上記1~4に関する相談
  • 法務大臣の認定を受けた司法書士については、簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟、民事調停、仲裁事件、裁判外和解等の代理及びこれらに関する相談
  • 対象土地の価格が5600万円以下の筆界特定手続の代理及びこれに関する相談
  • 家庭裁判所から選任される成年後見人、不在者財産管理人、破産管財人などの業務

参考:日本司法書士会連合会

書類の作成や手続きの代行はもちろん、条件はありますが裁判手続きの代理も可能となり、非常に幅が広いです。これらの業務は法律にのっとって正確に遂行しなければならず、一般人が自分で行うのは容易ではありません。司法書士は社会にとって、なくてはならない存在なのです。

司法書士は何年で独立することが多い?

司法書士資格を取得すれば司法書士事務所を開業できます。資格を取得してすぐ開業される方もいらっしゃいますが、まずは既存の司法書士事務所に就職して、ある程度実務経験を積まれてから開業される方が多いようです。

開業までの年数に関してはその人のスキルや状況にもよりますが、3年程度経験を積んで独立される方が多い傾向があります。

司法書士として独立開業するメリット

司法書士として独立開業することで、以下のようなさまざまなメリットが得られます。他の業種で開業するよりも有利な面も多々あるため、興味がある方はぜひ検討してみましょう。

少ない資金で開業できる

まず司法書士として独立開業するメリットとしては、開業資金が少なくて済むという点が挙げられます。たとえば飲食店なら物件を借り、内装工事を行い、調理機器や器具などをそろえなければならず、何百万円単位の開業資金が必要です。

司法書士業務は大掛かりな物件や設備は要りません。自分が作業する場所と顧客が来られた際に話をする応接スペース、パソコンや電話、FAXなどがあれば十分です。自宅で開業し、すでにある設備や家具を使えば、ほとんど元手をかけず開業することもできます。実際に日本司法書士会連合会が発行した『司法書士白書 2022年版』によると、居宅内で事務所を開いている司法書士の割合は3割程度という調査結果が出ています。

年収アップ・高収入を狙える

厚生労働省 職業情報提供サイト(日本版O-NET)によると、司法書士の平均年収は971.4万円とされています。2022年度の日本の給与所得者の平均年収は458万円なので、独立開業することで平均以上の年収が得られる可能性もあります。

また、会社員の場合は昇給しなければ収入は上がりません。開業すれば報酬の額を自分で設定することができ、やったらやった分だけ収入も上がります。自分で事務所を経営している司法書士の場合、年収1,000万円以上の高収入を得ている方も少なくないようです。実際に年間の売上額を問うアンケートを実施したところ、「1,000~4,999 万円」と回答した司法書士が最も多かったという結果が『司法書士白書 2021年版』に掲載されています。

仕事の自由度が高い

自由な働き方ができるのも独立開業する魅力です。会社員であれば指定された勤務日・勤務時間に出社しなければならず、会社の方針や就業規則、上司の指示に従って業務を進めていかなければなりません。

司法書士として独立開業すれば休日や就業時間を自由に設定することが可能です。顧客の要望には応えなければなりませんが、基本的には自分のペース・やり方で仕事を進められます。

女性が活躍しやすい

司法書士は事務的な仕事が中心であり、力仕事はほとんどありません。そのため、知識やスキルさえあれば男女関係なく活躍することができます。

むしろ、女性の相談者や顧客に安心感を与えられる、女性ならではの視点で相談に乗れるなど、女性であることの利点を活かせる仕事です。さらに前述のとおり独立開業すれば自由な働き方も可能となるため、家庭との両立もしやすくなります。

廃業のリスクが低い

司法書士業務は資格がないとできません。不動産登記や法人登記、訴訟関連、相続、財産管理、成年後見、その他相談など、業務領域も非常に幅広いため、安定的な需要があり、食いっぱぐれが少ない仕事であるといわれています。

『司法書士白書 2021年版』によると、2019年度の司法書士の登録者数は22,632人、登録取り消し者数は628人でした。資格を失って司法書士業務ができなくなった人の割合は3%程度です。正確な廃業数はデータがなく、これより高いと考えられますが、資格があるかぎり司法書士の業務は行うことができます。

起業してから1年で廃業する割合は個人事業主で3割、法人が2割程度といわれているので、それを考えると司法書士は安定して続けやすい仕事といえます。

司法書士として独立開業するデメリット

以上のように司法書士として独立開業するメリットは数多くありますが、一方でデメリットも少なからずあります。特に以下の点は念頭に置いて独立開業を検討しましょう。

収入の不安定・経営失敗のリスク

これは司法書士事務所には限りませんが、独立開業した場合、顧客からの仕事の依頼がない限り収入を得ることはできません。前述のとおり、司法書士業務は社会においても需要が高いといえますが、それでも事務所によって仕事の量は異なります。人気が高い事務所ならどんどん仕事の依頼が舞い込む一方で、まったく依頼が来ず売り上げが立たないという事務所もあります。

集客のための営業力が必要

仕事の依頼を獲得するためには集客が重要です。まずは地域の人々に司法書士事務所の存在を知ってもらいましょう。また、司法書士業務は複雑な法律や手続きが絡み、その人や会社の今後を左右する事柄も多いため、相談者はその司法書士の信頼性を厳しく見極めます。知識やスキルがあり、誠実で信頼できる司法書士であるというブランディングをしないと、なかなか顧客を獲得するのは難しいです。

司法書士として独立開業までの流れや手続き

それではここからは司法書士として独立開業するまでの流れや手続きを順番に見ていきましょう。

1.司法書士試験に合格する

まずは司法書士試験に合格しなければなりません。司法書士試験自体は年齢、性別、学歴に関係なく誰でも受験できますが、合格率は4%程度(日本司法書士会連合会発表)という非常に難関な資格です。対策をしっかりとしないと合格するのは難しいでしょう。

2.新人研修を受講する

司法書士試験に合格したら日本司法書士会連合会が主催する新人研修に参加します。また、少額訴訟ができる認定司法書士になるためには、新人研修に加え特別研修の受講と「簡裁訴訟代理等能力認定考査」の合格も必須となります。

3.司法書士の登録をする

新人研修が修了したら日本司法書士会連合会と開業する地域の司法書士会への登録が必要です。これらに登録しないと司法書士業務を行うことができません。登録するためには数十万円の費用がかかります。

4.実務経験を積む

以上の4つのステップを踏めば司法書士事務所を開業することができますが、実務未経験の方はまず既存の司法書士事務所に就職して実務を経験されることをおすすめします。実際の仕事の流れややり方、顧客とのコミュニケーションの仕方などを学びましょう。

5.独立のための事業計画を立てる

勤務司法書士として働きながら独立開業の計画を立てましょう。開業場所や事務所のコンセプト、事業内容、開業資金の額や調達方法、開業後の資金計画など、考えるべきことはさまざまです。事業計画がしっかりしており、それに基づいて事務所を経営していけば、失敗するリスクを軽減できます。

6.事務所や設備の準備

事業計画が固まったら準備にうつりましょう。事務所やパソコン、電話、FAXなどの設備、机や椅子などの家具の調達を行います。前述のとおり、自宅で開業する場合、すでにある設備や家具を活用することで、開業費用や手間を大きく削減することが可能です。

7.人脈づくりや営業

司法書士事務所を経営していくためには仕事を依頼してくれる顧客を獲得しなければなりません。開業前に営業活動や広告を打つなどして司法書士事務所の存在を知ってもらいましょう。異業種交流会などで司法書士の顧客層となる経営者や投資家、資産家などとの人脈を構築しておくことで、依頼の獲得につながります。また、士業交流会で税理士等からの設立案件や相続案件の紹介も期待できるでしょう。

司法書士として成功するポイント

最後に、司法書士として独立開業して成功するための3つのポイントをご紹介します。ぜひ、以下のようなことを意識して開業準備を進めましょう。

営業力を身につける

司法書士として安定的に仕事を獲得するためには営業力の向上が必須です。前述のとおり司法書士業務は正確性が求められるため、顧客から「この人なら信頼できる」と思ってもらわないとなかなか依頼が獲得できません。異業種交流会や商工会議所などのイベントに参加して見込み客と積極的に人脈を構築する、ホームページやSNSなどで情報を発信する、セミナーを開催するといった方法で信頼性を高めることで、顧客の獲得につながります。

また、信頼性が重視されるという点から、司法書士は既存の顧客からの紹介で新規の顧客獲得につながるケースも多いです。相談者の話を親身に聞く、コミュニケーションを積極的にとる、既存の顧客のフォローを行うといった姿勢で仕事に向き合うことで、「信頼できる誠実な司法書士」というブランディングが構築でき、紹介につながる可能性も高まります。

業務のIT化を検討する

司法書士として独立開業すれば、やったらやった分だけ報酬につながります。逆にいえば、仕事をこなさなければ収入は得られないということになってしまいますので、業務効率化は必須です。

高性能な業務ソフトやITツールを導入することで、業務のスピードと質を高めることができます。チャットシステムやオンライン通話システムなどのツールを使うことで、顧客とのスムーズなコミュニケーションが実現でき、顧客満足度の向上にもつながるはずです。

法律や制度の改正などに加え、ITに対しても常にアンテナを張り、業務が効率化できそうなツールやテクノロジーがあれば積極的に導入・活用を検討してみましょう。

他事務所との差別化をする

司法書士は食いっぱぐれが少ない仕事といわれますが、それでも多くのビジネスと同様、他の事務所との顧客の奪い合いという競争にさらされることになります。特色がない事務所、目立たない事務所では競争に負けてしまい、廃業に追い込まれかねません。

たとえば不動産登記を専門的に行っている、訴訟の実績が豊富、相続や財産管理が得意など、ご自身の得意分野を決めて見込み客にアピールすることで、顧客の獲得につながります。

他にも「相談がしやすい」「話を徹底的にヒアリングする」「アフターフォローを万全にしている」といった人柄の面、「駅前だからすぐに立ち寄れる」「オンライン相談にも対応している」「夜間や土日や祝日にも対応できる」といったサービス面、「どの司法書士事務所よりも安い」といった価格の面など、さまざまな角度で差別化が可能です。ただし、安易に値下げをすると他の事務所と価格競争に陥り十分な収入が得られなくなってしまうリスクもあるため、慎重に検討しましょう。

また、実務経験を活かして経営や不動産活用、相続に関するセミナーの開催やコンサルティングといった、司法書士以外のサービスを追加することで仕事の幅が広がります。

信頼性と独自性がある司法書士として独立開業を目指しましょう

司法書士資格は難関国家資格であるため希少性が高く、社会的な需要も絶えることはないため安定的に仕事が続けられる可能性が高い、魅力的なビジネスといえます。

とはいえ、失敗するリスクがないわけではありません。顧客や見込み客から信頼されなければ、仕事が獲得できなくなり、収入が得られないという事態に陥る可能性もあります。地道に営業活動や人脈づくりを行い、真摯に一つ一つの仕事に向き合いながら信頼性を高めていくのが成功するコツです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事