- 作成日 : 2024年10月18日
経営顧問とは?相談役との違いや報酬相場、メリット・デメリットを解説
経営顧問とは、企業の経営課題解決や成長戦略策定などを継続的に支援してくれる外部の専門家のことを指します。経営者にとって頼れる存在となり、企業の成長を後押ししてくれるでしょう。
この記事では、経営顧問を置く際に知っておきたい相談役との違いやメリット・デメリット、選び方などを解説します。
目次
経営顧問とは?
経営顧問は、企業の経営課題解決や成長戦略策定に向けた支援などを役割とする、外部の専門家のことです。客観的な視点から経営者にアドバイスを行い、また、具体的な解決策を提示するなど、経営陣の仕事をサポートして企業の成長を後押しします。
経営顧問のサポート内容
経営顧問は、企業の経営陣に対して幅広いサポートを提供します。主な役割は、経営戦略の立案や実行支援、リスクマネジメント、組織改革、事業拡大に関するアドバイスです。また、財務や人事、マーケティングなどの専門分野において経営陣が直面する課題に対してもサポートを行うなど、その役割は多岐にわたります。
経営顧問と相談役の違い
経営顧問と相談役は、どちらも企業の経営に助言を行う役割ですが、その立場や役割には違いがあります。相談役は一般的にその企業の元社長・元会長など、内部の経験者が就任します。そして、当該企業で経営に携わってきた長年の経験に基づき、経営に関するアドバイスや意見を述べます。
一方の経営顧問は社外の専門家であり、特定の分野における専門性の高さを活かし客観的な視点から助言をしたり、解決策を提示したりします。
経営顧問と参与との違い
参与も企業の経営に関わる職務を担う存在ですが、経営に関する全般的な支援を行う経営顧問とは異なり、企業の特定分野に特化して経営の意思決定を支援したり業務執行に関与したりする存在です。
企業によって参与の役割・権限に違いはありますが、一般的には特定分野において経営に深く関与し、意思決定にも参加するという点、また内部から選任されることが多い点でも経営顧問とは異なる特徴を持っています。
経営顧問の平均報酬
経営顧問への報酬は、契約形態、専門性、経験年数、事業規模、業務内容など、さまざまな要素を総合的に加味して決定します。顧問料の相場も「月額10万円~60万円」と幅広く、特に規模の大きな企業などであればさらにこれを上回る顧問料が発生する可能性も十分に考えられるでしょう。
また、固定で毎月報酬が発生するのではなく、成果報酬型で「売上高の○○%」などと報酬額を定めるケースもあります。この場合の割合についても企業の規模や目標の難易度の高さなどに応じて変わりますが、一般的には数%程度で設定されることが多く、業界や成果の内容によって変動します。
経営顧問を設置するメリット
経営顧問の設置は、企業に多くのメリットをもたらします。ここでは、代表的な3つのメリットを紹介します。
質の高い客観的なアドバイスを得られる
経営顧問は「経営のプロフェッショナル」です。企業の内部にいるだけでは気づきにくい問題を見つけ、新たな視点から解決策を提示してくれるでしょう。
日々の業務に追われている経営者の場合、視野が狭くなってしまったり、主観的な判断に偏ってしまったりしがちですが、経営顧問を設置することで客観的に企業の状況を分析することができます。社内の人間関係や過去の経緯にもとらわれず、冷静な判断に基づくアドバイスを提供してくれます。
また、法律・財務・人事・マーケティングなど、経営顧問の持つ専門性を自社の課題解決のために活かすことができ、経験だけに頼らない、より質の高いアドバイスを得ることができるでしょう。
経営課題の早期解決につながる
経営課題を放置すれば企業の成長を阻害するだけでなく、業績悪化や倒産リスクを高めることにもなりかねません。経営顧問を設置することで、迅速かつ効果的な課題解決を図ることができます。
前項で説明した、質の高い支援が受けられるというだけでなく、経営に特化した専門家を近くに置くことで「特定の課題に素早く注力できる」というメリットも得られるのです。
また、すでに発生している課題に対処するだけでなく、経営顧問の豊富な経験と鋭い洞察力により潜在的な問題を早期発見して対処していくことも期待できます。実際にトラブルが起こる前に原因を特定することができれば、損失も発生することなく安定的に事業活動を続けていけるでしょう。
幹部候補の育成を促せる
企業の将来を担う幹部候補の育成は、企業の持続的な成長にとって不可欠です。そして経営顧問の存在は幹部候補の育成にも大きく貢献します。
契約内容にもよりますが、「経営者に対するコーチング」「幹部候補の育成」などに対応してもらえるケースもあります。
また、明示的に育成を行わなくても、経営顧問を設置し経営課題に向き合う姿勢を示し続けることが、周囲の幹部候補に対し良い影響を与えることも期待されます。
そのため、現状において大きな課題があるという場合でなくても、次の世代の経営幹部を育てていきたいという場合には経営顧問を設置するメリットは大きいといえるでしょう。
経営顧問を設置するデメリット
経営顧問の設置は、企業にとって多くのメリットをもたらしますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。導入を検討する際にはデメリットについても十分に理解しておきましょう。
高額な報酬がかかる場合がある
経営顧問への報酬は、その専門性の高さや実績、企業規模、契約内容などに応じて大きく変動します。特に、著名な経営コンサルタントや専門性の高い分野の顧問を依頼する場合、高額な報酬が必要となる可能性が高いです。
企業の財務状況によっては顧問料が大きな負担となる場合もあるため、導入前に予算と費用対効果を慎重に見極める必要があるでしょう。
内部の反発が生じることがある
社外の専門家である経営顧問が社内の業務や意思決定に関与することに対し、社内の者から反発が生じる可能性があります。特に、長年企業に貢献してきたベテラン社員やプライドの高い管理職層だと、「外部の人間に口出しされたくない」という感情を抱かれるかもしれません。
そのため経営顧問導入の際には、社内に対する丁寧な説明や理解を求める努力が必要となるでしょう。
企業内での問題解決能力が低下するおそれがある
経営顧問に依存しすぎることで社内での問題解決能力が低下する可能性もゼロではありません。
問題に直面するたび経営顧問に頼り、深く考えないまま経営顧問からのアドバイスをそのまま実行しているだけだと、自ら考え行動する習慣が薄れてしまいます。
経営顧問はあくまで外部のサポート役であり、最終的な責任は経営者が負うことを忘れてはいけません。
経営顧問の種類
就任する方が元社内の人物なのか、それとも全く関与のなかった人物なのか、この違いに着目して経営顧問は2つにわけることができます。
それぞれの特徴と、どのような場合に適しているのかを理解し、自社の状況に合わせて適切なタイプの顧問を選びましょう。
内部顧問
内部顧問とは、その企業の元役員や退職した社員など、当該企業内部で働いていた方が就任する場合の顧問を指します。
内部顧問であることの強みは実際に勤務経験を積んでいることにあり、企業の文化や風土、社内事情などを深く理解している点が特徴です。そのため、社内の人間関係や過去の経緯などを考慮したアドバイスや解決策を提案してくれることが期待できます。
【内部顧問が適しているケース】
- 社内の事情を理解している人物からアドバイスが欲しい
- 企業文化や風土を尊重した改革を進めたい
- 従業員とのコミュニケーションを円滑に進めたい
- コストを抑えたい など
外部顧問
外部顧問は、弁護士や会計士、税理士、中小企業診断士など、特定の分野における専門家が就任する場合の顧問を指します。
当該企業に所属していなかったからこその客観的な助言が期待でき、冷静に企業の状況を分析してもらうことができるでしょう。また、一定の分野に特化した高い専門性を持つため、経営判断の質・精度向上にも貢献します。
【外部顧問が適しているケース】
- 特定分野の専門知識やノウハウが欲しい
- 社内にはない、第三者としての客観的な視点が欲しい
- 経営改革・事業構造の改革など大規模な変革を検討している など
経営顧問を依頼する前にしておきたいこと
経営顧問の導入を成功させるために重要なポイントを以下にまとめます。
自社の課題と期待する成果を明確にする
経営顧問に依頼する前に、自社が抱える課題や、経営顧問に期待する成果を明確に定義しておくことが重要です。漠然とした悩みや要望だけでは、適切な顧問を見つけたり、効果的なサポートを受けたりすることはできません。具体的な目標を設定し、それを達成するためにどのような支援が必要なのかを明確にしましょう。
顧問税理士に依頼できるか検討する
企業が交わす顧問契約の中でも比較的よく利用されているのが「顧問税理士」です。税理士は税務に関する専門家ですが、財務面からの経営アドバイスを受けられます。顧問税理士が、すでにいるのなら、まずはその方に経営顧問としての職務にも対応してもらえないか、聞いてみるとよいでしょう。
顧問税理士は自社の財務状況も詳細に把握しているので、その観点からより質の高い経営アドバイスをしてもらえます。
予算を確認する
先述の通り、経営顧問には高額な報酬が必要となる場合もあります。そのため導入前には自社の予算を確認しておき、費用対効果について十分に検討を進めておきましょう。無理のない範囲で経営顧問を利用すること、適切な報酬額を設定してくれる顧問を選ぶことが大切です。
社内からの理解を得ておく
経営顧問の導入は、社内にとって大きな変化となる可能性があります。従業員から反発が生じる可能性も考えられますので、導入前には経営陣のみならず、従業員に対しても経営顧問の役割や導入目的を丁寧に説明し、理解と協力を得ておきましょう。
経営顧問の選び方や依頼方法
経営顧問の設置を検討するとき、以下の方法により依頼先を探すことができます。
- 取引先や知人からの紹介:信頼できる取引先や知人から紹介してもらうことで安心して依頼できる
- 顧問税理士からの紹介:顧問税理士に経営顧問になってもらうことができなくても、同じ士業仲間である弁護士や中小企業診断士などを紹介してもらえることがある
- マッチングサービスの利用:経営顧問など、専門家とのマッチングをサポートするWebサービスを利用する。当該サービス内にて専門分野や報酬額などの希望条件で絞って検索していけば、知人等のコネがなくても専門家とつながることができる
- セミナーや交流会への参加:経営に関するセミナーや交流会に参加することで、直接経営顧問と知り合う機会を得られたり、他の経営者から評判のよい専門家を教えてもらえたりもする
依頼先候補が見つかったときは、一度ミーティングを行いましょう。実際に話し合い、自社の方針にマッチする方かどうかを見極めるのです。高い能力を持っていたとしても、人柄や考え方が自社の空気感と全く合わなければ費用対効果は小さくなってしまいます。
経営顧問で企業の成長を促そう
経営顧問の導入は、企業の成長を促すための重要なステップとなるでしょう。依頼前には顧問の専門性や実績をしっかりと見極めると同時に、自社の経営方針や組織文化との相性も慎重に検討する必要があります。適切な顧問を見つけることができれば、企業の問題解決能力や意思決定の質が大きく向上し、さらなる成長を後押しする強力なサポートとなることが期待できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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