- 更新日 : 2024年4月23日
【テンプレート付】カフェ・喫茶店開業の事業計画書の書き方・記入例
カフェは厨房設備が比較的シンプルであり、初期投資も他の飲食店に比べると高額ではないため、飲食店の中では人気の業種と言えます。また、コーヒーや紅茶などの飲み物と一緒に提供する食事も軽食が多いため、本格的な調理技術がなくても開業しやすい業種です。
この記事では、カフェ開業にあたって事業計画書を書くために注意すべき点について解説します。
※事業計画書のテンプレートをお探しで当記事を訪れられた方は、こちらをご活用ください▼
・カフェ向けの事業計画書・創業計画書テンプレート・作成例のダウンロード方法
目次
カフェ開業のための事業計画書とは?
画像:カフェ向け事業計画書のテンプレート(こちらからダウンロード可能)
自分の好きなことを仕事にしたいとカフェの開業に踏み切った場合、必ずしも自己資金だけで開業できるとは限りません。そのために必要となるのは「資金」です。
事業計画書が必要な理由
カフェの開業資金として自己資金だけでは足りず融資を受ける場合には、金融機関から事業計画書の提出を求められます。事業計画書とは、事業の概要や将来の見通しを記載した書類であり、金融機関は事業計画書を基に、事業の将来性や収益性、返済可能性などを判断して融資の可否や融資額を決定します。
また、借入が不要な場合でも補助金申請などで事業計画書を求められますので、事業計画書について心得ておくことは個人事業主としてメリットが多いと言えます。
事業計画書はいつから作成するべき?
事業計画書を本格的に作成するのは、必要な資金や調達方法がほぼ決まり、どこで借入をするかが具体的に決まってからです。しかし、それ以前にわかるところから少しずつ書きはじめてもよいでしょう。
まずは、ターゲットとする客層、具体的な場所、カフェのコンセプト、設備、賃料などについて資料を集めましょう。そして、資料を検討して構想が固まり、開業に必要な資金が見えてくれば、金利や保証人も含めて「どこで借りるか」をよく検討しましょう。金融機関にしても、日本政策金融公庫のような公的な機関もありますので借入条件をよく比較してみてください。
カフェの開業を成功に導く事業計画書の作成ポイント
融資のために事業計画書を提出し、審査の結果融資が受けられるようになるためのポイントを解説します。
事業計画には5W2Hを活用する
5W2Hとは情報を論理的に整理するときの頭文字をとったものです。事業計画書では以下の箇所において、5W2Hを意識することによって情報を整理できます。
5W2H | 意味 | 事業計画書における記載箇所等 |
---|---|---|
When | いつ | 開業予定日 |
Where | どこで | 店舗の場所、ロケーション |
Who | 誰が | 経営者を含め、従業員等の予定 |
What | 何を | 事業内容、具体的なサービスメニュー |
Why | なぜ | 創業動機や目的 |
How | どのように | セールスポイントやターゲット、市場や分析結果 |
How much | いくら | 必要な資金と調達方法、事業の見通しなど |
数字には根拠を持たせる
事業計画書に実際に記載する数字はそんなに多くありません。しかしながら、事業計画書に記載する数字については、すべてにおいて根拠を明らかにしておきましょう。
計画段階のため実行時と差はでますが、説得力がある事業計画とは目的が明らかで、かつ、市場や競合分析ができており、そしてそれを具体的な数値に落とし込みができているものです。
数字だけが一人歩きしないように、事業の目的や経営環境との整合性を考えた上で、次に財務的な視点から積み上げた数字を事業計画書に記載します。
お店の強み・コンセプトを明確にする
カフェ開業にあたっては次のような思いがあるはずです。
- どんなお客様に来てもらいたいか
- どんなサービスを提供したいか
- どんな価値を創造したいか など
これらの要素から開業するカフェの方向性や差別化要素が明確になります。お店のセールスポイントやコンセプトが考えるたびに変わるようであれば、立ち止まってゆっくり考えましょう。根源的な部分でブレないことが大切です。
カフェ向けの事業計画書のひな形、テンプレート
マネーフォワード クラウド会社設立では、カフェ向け事業計画書のひな形、テンプレートをご用意しております。
無料登録後のページにある「会社設立ナビ」にて、カフェ向け事業計画書を含む、40種類以上の事業計画書をダウンロードしていただきますので、ぜひお気軽にご利用ください。
事業計画書について融資元から書式を提示された場合は、それぞれの書式に従って作成します。しかし、決まった書式がない場合にはそれぞれの業界ならではの特徴を活かして独自の事業計画書を作成するのがよいでしょう。
記載すべき事項の漏れを防ぐためにもテンプレートの利用をおすすめします。
カフェの事業計画書の書き方・記入例
ここでは、新規にカフェを開業する場合に自己資金だけでは足りず、借入する場合を想定して事業計画書の記入例を見ていきましょう。
創業の動機・目的
創業の動機とは、事業を始めるに至ったきっかけのことです。目的では、「どのような事業にしたいか」「どんな付加価値が可能か」などを記載します。「どのような」「どんな」をさらに具体化すると、「この事業の着眼点はどこか」ということです。
開業に至った経緯を端的に文章に落とし込み、さらにそこから事業の着眼点を挙げます。専門用語を使うのではなく、わかりやすく記載しましょう。
経営者の職歴・事業実績
経営者自身の経歴や資格などについて記載します。上記の創業の動機や目的のきっかけとなった事項などを、数値を交えて分かりやすく記載するとよいでしょう。
取扱商品・サービス・戦略・現状分析
提供予定の主な商品やサービスについて、価格帯を付して具体的に記載します。
価格は最終的なものである必要はありませんが、価格を示すことは売上に直結するだけでなく、「客からの評価の期待値」となります。販売価格(=原価+利益)のうち、利益部分はその商品について客から「支払う価値がある」と評価を得た部分と言えます。
また、事業戦略としてターゲットとする顧客層や集客方法、営業時間、サービス内容などを簡潔に記載します。現状分析としては、顧客の志向や地域性、競合他社との比較における優位性などをアピールします。
取引先・取引関係
販売先については、対象とする顧客を想定して記載します。クレジットカードやキャッシュレス決済を取り入れる場合には、入金タイミングが異なるためこれらを導入する場合には、掛取引になります。
カフェの場合、緊急的に近くのスーパーなどで仕入れをするケースもあるなら、どのスーパーにするのかも確認しておきましょう。また、従業員として派遣要員を利用する場合には、外注先として記載します。
従業員
従業員を雇う場合や家族従業員がいる場合には別々に記載します。従業員が多い場合、給与だけでなく福利厚生費なども発生し、資金繰りにも影響しますので、支払日の予定があれば書いておきます。
借入の状況
事業計画書作成時点で、すでに個人的な借入金があればすべて記載しておきます。開業後は個人的な返済も事業での儲けから支払うことになるためです。また、新規開業の場合は過去における事業実績がないため、過去における個人的な評価も審査の対象になり得ます。
必要な資金と調達方法
必要な資金については、設備投資と運転資金に分けて記載します。店舗設備などについては施工業者から見積書を入手しておきましょう。居抜きの場合でも、リフォーム費用、什器類は見積書をもらっておきましょう。店舗が賃借物件である場合、敷金などの初期費用もよく確認しましょう。
運転資金とは、事業が安定するまでに必要となるお金です。必要額は規模によって異なりますが、月末にまとめて支払う資金が不足すると経営危機に陥ります。運転資金は少し余裕をもって記載しておくほうが無難です。事業計画書には簡単に結果のみを記載しますが、個々の計算明細はしっかり持っておきましょう。
資金の調達方法については、必要な資金をどこから、どのような形で調達するのかを調達先別に記載します。親族、配偶者からの借入については事前に了解を得ておきましょう。最終的に、必要な資金の合計と調達資金の合計が一致するように調整します。
事業の見通し
事業開始当初と1年後の月平均の売上高や必要経費を損益計算書の形で大まかに表します。
当初は必要経費も多く利益は少なくなりがちですが、「1年後または軌道に乗った後」については、月平均を求めて損益計算書として記載します。記載する数値はあくまでも月平均ですので、月ごとの違いや季節的な売上変動なども予測して明細を作成し、12で割って平均を求めます。
事業計画書の事業(利益)の見通しの考え方
利益の計算については、損益計算書に準じて次の式にあてはまるように記載します。
事業の見通しについて一つの考え方を示しておきます。
① 固定的な必要経費(人件費、家賃、利息)に減価償却費などを加えて、売上高に関係なくかかるものを計算します。
年払いや半年払いの費用などがあれば該当月に入れていきます。具体的な根拠がある場合には計上した理由を記録しておきます。
② 売上高を計算します。
売上高は業界、立地、規模などによって大きく変動します。
金額ベースで考える前に、単価と販売数量、営業日数などに分解して今後の見通しを立てます。
③ 売上高に比例して変動する売上原価をメインとする変動費を計算します。
売上高に占める原価の割合を原価率といい、実際には商品によって原価率は異なります。
計画の段階では原価率を20〜40%ぐらいに設定しながら④で調整するとよいでしょう。飲み物がメインの場合にはやや原価率が低くなる傾向にあります。
④ ①は固定的に発生するものとして、②と③を比較して必要な利益を得るための売上高と売上原価の組み合わせとなるように調整します。
実際は各種税金、健康保険料、プライベートの返済もありますので、黒字の幅を考える必要もあります。
融資担当者がカフェ開業の事業計画書で確認するポイント
融資の内容にもよりますが、融資担当者がよく見るポイントをいくつか挙げておきましょう。
- 経営者の年齢や今までの経歴、過去の借入額、職種や店の規模などの基本情報等を確認することにより、「経営体制における問題点」はないか確認します。
- 仕入先から顧客提供までの商品やサービス等の流れについて、その店の独自性を踏まえた売上構成要素(平均単価、販売数量、人数、稼働率)であるかを確認します。そして、自社の強みや弱みが見えるかどうかも重要です。
- 事業の見通しから創業時と1年後を比べて変動状況と、その変動原因の確認ができるかという点もポイントです。借入金の返済が本格化する1年後の損益について、計算根拠に基づいて説明ができるようにしておきましょう。
事業計画を通じて、資金の使い道が「客にとって価値がある」と判断できるような説明が求められます。
なお、事業計画書についての詳細は、下記記事をご参照ください。
また、カフェの開業に関する情報としては、下記記事もぜひお読みください。
雰囲気のよいカフェを続ける意義とは?
カフェには実に様々な店があります。サロンのようなカフェでゆったりとした空間を演出できれば、街の名所にもなり得ます。テラス席や眺望のよい窓際席など、生活にうるおいを提供できるカフェは地域に新たな憩いの場を増やします。決して経営者の独りよがりではなく、そこを訪れる客の代理人となって、居心地の良さや店独自の雰囲気を醸成し続けることが大切です。
イメージだけでは事業は続けられませんが、心のオアシスとなるカフェが近くにあれば、誰しも一度は行ってみたいものです。そのような憩いの場を堅実に続けるために、事業計画書はしっかりとした根拠に基づき、漏れのないように仕上げましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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