• 更新日 : 2024年5月28日

特養(特別養護老人ホーム)の事業計画書の書き方は?ひな形を基に記入例を解説

特養(特別養護老人ホーム)の事業計画書は、創業動機やサービス内容、売上高などを記載する書類です。事業計画書にはテンプレートを活用しましょう。

テンプレートは項目が決まっているため、指定や融資を受ける際に具体的な情報を記載できます。本記事では、特養の事業計画書について、目的や書き方などを解説します。事業計画書のテンプレートが必要な場合は、以下からダウンロード可能です。

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事業計画書_テンプレート

特養(特別養護老人ホーム)の事業計画書とは?

特養の事業計画書について概要を理解するため、以下の3つのポイントを解説します。

  • 介護事業者指定申請に使用する
  • 事業の見通しを立てる
  • 金融機関からの融資を受ける

介護事業者指定申請に使用する

事業計画書は、自治体に指定申請するために必要な書類です。介護保険が適用される特養では、介護保険法に基づき介護事業者として指定(許可)を受ける必要があり、申請を受ける必要があります。

指定申請では、厚生労働省が定める「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」※1に従い、新たに開設する施設が基準を満たしているかどうか、各自治体が確認を行わなければなりません。

特養で満たすべき基準を確認し、具体的に記載しましょう。

※1出典:厚生労働省|指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準

事業の見通しを立てる

事業計画書は、サービス内容や競合調査、資金面など、事業の全体を詳細に記載するため事業の見通しを立てやすくなります。
たとえば「サービス内容に独自性があるのか」「当面の運営資金は足りるのか」など、問題点やリスクなどを考慮しながら、計画を練り上げることが可能です。

調査や情報収集を行った上で、問題の解決策や事業の見通しに関する根拠を示し、実現可能な計画を立ててください。

金融機関からの融資を受ける

金融機関は返済が滞るリスクを避けるため、事業の実現可能性を考慮した上で、融資可否を判断します。事業計画書に記載する内容では、市場調査や他施設の傾向などを基に緻密に計画を立てられているかどうかが、重要です。

さらに、創業動機・サービス内容から、代表者が事業にかける想いも確認しています。融資担当者に事業への想いが伝わるよう、単純な計算ミスや誤字などにも注意し、読みやすい事業計画書を作成しましょう。

特養の事業計画書のひな形、テンプレート

特養(特別養護老人ホーム)の事業計画書の書き方は?ひな形を基に記入例を解説

特養は、各種届出や申請をするにあたって、自治体が指定するフォーマットの事業計画書を求める場合があります。国や自治体のフォーマットを一度ご確認ください。

また、無料登録後のページにある「会社設立ナビ」にて、40種類以上の事業計画書をダウンロードしていただきますので、ぜひお気軽にご利用ください。

特養の事業計画書の書き方・記入例

以下の8項目について、特養の事業計画書の書き方・具体的な記入例を解説します。

  • 創業の動機・目的
  • 職歴・事業実績
  • 取扱商品・サービス
  • 取引先・取引関係
  • 従業員
  • 借入の状況
  • 必要な資金と調達方法
  • 事業の見通し(月平均)

創業の動機・目的

創業動機・目的は、事業に対する想いや熱意を示す項目です。金融機関の融資担当者は利益面だけでなく、代表者がどのような考えで設立し、なにを目的にしているかも、融資判断の重要な材料にしています。

これまでの経験を踏まえた想いや、事業を立ち上げるために築いてきたことなど、事業計画書を読んだ方が共感できるような内容にしてください。

具体的には「介護業界で長く経験を積むうち、利用者にとってより快適な施設を自分自身で作りたいという思いが強くなってきた」のように、事業をはじめようと思った理由を記載しましょう。

職歴・事業実績

職歴や・事業実績は、自身の経営能力を知ってもらう重要な項目です。たとえば、管理職に就いていた経験や、同業種または他業種の経営経験があるほうが、経営能力が高い印象をもつ方が多いでしょう。

「勤務先」「役職」「経験年数」「資格」の項目では、介護事業でコツコツと信頼を積み上げてきたのか、他業種ではあるが介護業界に活かせる経験があるのかなど、事業の実現可能性を判断する要素となります。介護事業との関連性や共通点が多いほど融資担当者へアピールできるため、間接的に関係がある職歴や実績も記載しましょう。

取扱商品・サービス

取扱商品・サービスは、サービスの強みや実現可能性を示す項目です。たとえば「レクリエーション等も積極的に行い、充実した入居生活が送れるように体制を整える。」など、他施設との具体的な違いを記載してください。

競合・市場などの分析には「〇〇市は全国平均と比べて人口が多く、高齢者率も高い。」「介護を要する方に対して老人ホーム等の施設数が少ない。」のように、実際の調査の結果、重要があることを記載するとよいでしょう。

取引先・取引関係

取引先・取引関係は以下4つの項目に分けて記載します。

  • 販売先
  • 仕入先
  • 外注先
  • 人件費の支払

創業時点で仕入先や外注先が未定の場合は記載する必要がありませんが、具体的な販売先や仕入先が決まっていると事業の安定性があると判断されやすくなります。
たとえば、仕入先に独自のルートがあれば差別化がアピールできる上に、外注するものと内製化するものを明確に分けられているかを示せるためです。

従業員

従業員の項目で記載する内容は以下の4つです。

  • 常勤役員の人数
  • 従業員数(3ヶ月以上継続雇用者)
  • うち家族従業員数
  • うちパート従業員数

特養の従業員数は、厚生労働省が定める人員配置基準※1が適用されるため、施設長や介護職員、医師などの最低人数が決まっています。基準を下回らないよう注意してください。

※1引用:厚生労働省|介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

借入の状況

借入の状況は、代表者の個人的な借入をすべて記載してください。具体的な内容は以下のとおりです。

  • 住宅ローン
  • 車のローン
  • 教育ローン
  • カードローン
  • クレジットカードのキャッシング
  • 親族や知人からの借入

借入状況を隠したり嘘を記載したりせず、正しく記載しましょう。金融機関が信用情報機関でローン情報を調べた際、記載内容と相違があると信用を損なう恐れがあります。

必要な資金と調達方法

必要な資金と調達方法は、資金の用途と調達する方法を「設備資金」と「運転資金」に分け詳細に示します。

特養の場合、設備は居室や介護用品、洗面など、厚生労働省の定める設備基準※1を満たす必要があります。また、土地や建物の購入から行うと数千万円~数億円単位の設備資金が必要でしょう

運転資金は、人件費や水道光熱費消耗品費などがあげられます。特養がサービスを提供し報酬を受け取るタイミングは、サービス提供月の翌々月です。運転資金は3~4ヶ月分を計算しておきましょう。

最後に「必要資金」と「調達資金」は差し引きしてプラスマイナスゼロになるよう作成してください。

※1出典:厚生労働省|指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準

事業の見通し(月平均)

事業の見通しは以下の内容について記載します。

売上高や経費を計算し「創業当初」と「1年後または軌道に乗った後」に予想される利益を記載してください。市場調査に基づいて利用者数を算出し、再現性の高い収支計画を立てましょう。

「見通しに関する根拠」を記入する際、1年後に利益が増える想定をする場合は「同業種の実績を考慮の上、利用者数10人増」のように、増加する理由とどれくらい増えるのかを具体的に記載すると丁寧です。

特養の事業計画書作成のポイント

特養の事業計画書を作成する際のポイントは以下の6つです。

  • 特養の基本方針を明確にする
  • 商圏調査を行う
  • 報酬体系について理解しておく
  • 制度の改定を把握しておく
  • 利用者に寄り添ったサービスを提供する
  • 地域の保健・福祉・医療と連携をする

特養の基本方針を明確にする

立ち上げる施設の特徴や他施設との違いを事業計画書で示すために、基本方針を明確に制定しましょう。特養に限らずどの業種でも、主なサービス内容に大きく差はでないため、差別化を図ることが大切です。

たとえば「職員には定期的に研修に参加」「地域の専門家とも連携」などを基本方針として掲げれば、施設の内外に「質の高い介護を提供する特養」としてアピールできるでしょう。

商圏調査を行う

商圏とは、施設の利用者が通える範囲をいい、主に施設からの距離で定めます。定めた商圏内を多角的に調査し、経営戦略を立てる際の材料にしてください。
商圏調査の主な内容は以下のとおりです。

  • 人口
  • 世帯数
  • ターゲット数
  • 競合施設の特性

特養の利用条件は原則として「年齢65歳以上・要介護3以上の認定を受けた方」です。ターゲットとなる特養の利用条件を満たす方が商圏内にどれくらいいるかで、売上見込みや施設の規模などが異なるため、ターゲット数の調査は特に入念に行いましょう。

要介護認定者数は厚生労働省「介護保険事業状況報告(暫定)」※1で確認できます。
人口や世帯数、高齢者の人数は、総務省が整備しているポータルサイト「政府統計の総合窓口」※2を確認してみてください。

※1引用:厚生労働省|介護保険事業状況報告(暫定)
※2出典:総務省|政府統計の総合窓口

報酬体系について理解しておく

特養の報酬は、厚生労働省が定めた「単位」を基準に計算され、給付費として自治体の公費でまかなわれています。1単位当たりの金額は自治体によって異なりますが、サービスに対する単位数は全国で共通です。

単位数は「要介護度」や「サービス内容」に応じて※1定められます。また、基本報酬とは別に「看護体制加算」や「看取り介護加算」など、決められた基準を満たしている場合に加算される単位もあります。

※1出典:厚生労働省|介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の報酬・基準について②

制度の改定を把握しておく

介護報酬改定は、3年ごとに見直しが行われるため、制度の最新の改定を把握しておきましょう。
制度の改定で介護報酬基準額が変動すると、同時に売上高も変動する可能性があるためです。

直近の改定では、令和6年に厚生労働省より介護報酬改定※1が施行され、特養の基本報酬が引き上げられました。新設される加算もあり、介護報酬が大きく変わると考えられています。

※1 出典:厚生労働省|令和6年度介護報酬改定における改定事項について
※2 出典:厚生労働省|介護報酬の仕組みについて

利用者に寄り添ったサービスを提供する

事業を安定して継続していくには、利用者が求めているサービスを提供する必要があります。利用者が求めていることを理解し、利用者に寄り添ったサービスを提供できるよう、市場や競合他社をよく調査しましょう。

厚生労働省の調査※1によると、特養の事業所数と利用者数は平成19年から令和4年まで、毎年増加を続けています。需要があり成功しそうな事業と考えられますが、同時に競合も増えています。利用者に寄り添ったサービスを提供しなければ、生き残れないとも考えられるでしょう。

※1出典:厚生労働省|介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

地域の保健・福祉・医療と連携をする

厚生労働省が2024年1月に発表した「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」※1では「地域包括ケアシステムの深化・推進」を掲げています。地域包括ケアシステムとは、団塊世代が75歳以上の高齢者となる「2025年問題」の解決に向け、令和3年から国が行っている施策です。

特養では、協力医療機関との連携をより適切に行うため「協力医療機関との連携体制の構築」が必須とされています。

出典:厚生労働省|令和6年度介護報酬改定の主な事項について

事業が成功する事業計画書を作成しましょう

高齢化社会に伴い、特養の需要は今後も増加すると考えられますが、一方で競合も増えるため、他施設との差別化や特徴を強くアピールしなければ事業の継続は困難です。
事業計画書を作成しながら事業の強みやリスクを整理し、調査・差別化が足りないと感じる部分は、計画を練り直してみましょう。

事業計画書作成には、テンプレートの活用がおすすめです。マネーフォワードでは事業計画書や定款のテンプレート、記入見本を用意しているので、併せて活用してみてください。テンプレートは以下から無料でダウンロードできます。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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