• 更新日 : 2024年9月6日

地域創造的起業補助金とは?創業時に使える補助金・助成金

地域創造的起業補助金は、補助金の交付により起業をサポートする制度です。募集は2018年のみで、それ以降は行われていません。一方で、それに代わる別の制度として創業支援等事業者補助金が用意されました。

この記事では地域創造的起業補助金の概要および、創業支援等事業者補助金の概要とメリットデメリット、活用の流れなどを解説します。

地域創造的起業補助金とは?

地域創造的起業補助金とは、創業に要する経費の一部の補助により地域創業を促進し我が国経済の活性化を図る制度です。経済産業省により、2018年にのみ募集が行われました。ここではまず地域創造的起業補助金の対象者と、対象となる経費を詳しく確認しましょう。

地域創造的起業補助金の対象者

地域創造的起業補助金の対象者は、以下のとおりです。

  • 募集開始日以降に創業する、個人および中小企業・小規模事業者
  • 補助事業期間完了日(2019年3月31日)までに代表者として個人事業主や法人などを設立する方
  • 産業競争力強化法における認定市区町村で創業する方

産業競争力強化法では、地域の創業を促進させるため市区町村が民間事業者等とともに創業者を支援する取り組みを行っています。地域創造的起業補助金の対象となるのは、産業競争力強化法で認定された市区町村での創業に限ります。

2024年6月25日時点で産業競争力強化法によって認定されているのは、1,506市区町村です。中でも、宮城県や栃木県、埼玉県、群馬県、石川県、福井県、山梨県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、広島県、山口県、愛媛県、福岡県についてはすべての市町村が認定を受けています。それ以外の都道府県については、中小企業庁のホームページをご覧ください。

参考:中小企業庁 産業競争力強化法に基づく認定を受けた 市区町村別の創業支援等事業計画の概要

補助の対象となる経費

補助の対象となる経費の一例は、以下のとおりです。

経費一例経費として認められないもの
  • 人件費
  • 店舗等借入費
  • 設備費
  • 材料費
  • 知的財産権等関連経費
  • 謝金
  • 旅費
  • 外注費
  • 委託費
  • マーケティング調査費
  • 広報費

※振込手数料は原則として認められない

  • 事業内容に照らして当然備えているべき機器・備品(机、椅子、書棚等の什器類、事務機器等)の購入費用
  • 事業実施中に発生した事故・災害の処理のための経費
  • その他事業に関係ない経費

地域創造的起業補助金では、補助対象経費の2分の1以内が補助されます。補助上限額は以下のとおりです。

  • 外部資金調達がある場合:200万円
  • 外部資金調達がない場合:100万円

補助金の支払いのタイミングは原則として、事業終了後です。補助対象経費のうち、帳簿類および領収書等により実際に支出を要したと認められる費用が、補助金の対象となります。なお、補助金で受け取った資金について返済義務はありません。

参考:中小企業庁「地域創造的起業補助金」に係る事務局の募集要領

地域創造的起業補助金から創業支援等事業者補助金に名称変更

地域創造的起業補助金は、2019年に創業支援等事業者補助金へと名称が変更されました。名称の変更に伴い、補助金が支払われる対象が以下のように変わっています。

  • 地域創造的起業補助金:起業する本人
  • 創業支援等事業者補助金:市区町村と連携し創業支援等を行う民間の事業者

創業支援等事業者補助金では、起業する本人に直接補助金は支払われません。起業する方は、民間事業者が実施する起業セミナーや勉強会、相談会などを通じて創業のサポートを受ける仕組みです。

創業支援等事業者補助金とは?

創業支援等事業者補助金の概要は、以下のとおりです。

項目概要
対象事業
  • 特定創業支援等事業
  • 創業機運醸成事業
補助上限額1,000万円(下限50万円)

※小規模な事業計画向け補助は100万円

補助率補助対象経費の3分の2以内
補助対象経費人件費や謝金、設備費、会場費など

ここでは、補助の対象となる特定創業支援等事業および創業機運醸成事業を詳しく解説します。

参考:中小企業庁 令和元年度予算「創業支援等事業者補助金」の公募を開始します

特定創業支援等事業とは

特定創業支援等事業とは、「経営・財務・人材育成・販路開拓に関するすべての知識の習得が見込まれる支援」を創業者等に向けて行う事業です。支援の一例としては、創業者研修やスクール、個別創業相談会などがあげられます。

支援事業を修了した起業家は、後述するさまざまなメリットが受けられます。創業を検討している方は、ぜひ積極的に活用したい制度の1つといえるでしょう。

創業機運醸成事業とは

創業機運醸成事業とは、創業に無関心な方に対して創業への関心や理解を高める取り組みです。具体的には、以下の3つがあげられます。

  • ビジネスプランコンテスト
  • 起業家教育
  • スタートアップカフェ

スタートアップカフェとは、創業に無関心な方でも利用できる施設をワーキングスペースとして提供する取り組みです。実際に墨田区では小学3年生以上を対象とした「夏休みスタートアップゼミ」が開催されるなど、創業機運醸成事業では若い世代への働きかけも積極的に行っています。

参考:墨田区公式ウェブサイト 【創業機運醸成事業】「夏休みスタートアップゼミ」を開催します!

創業支援等事業者補助金を活用するメリット

特定創業支援等事業を受けた創業者は、登録免許税が軽減されるなどのメリットを受けられます。

ここでは、創業支援等事業者補助金を活用するメリットを4つ解説します。なおここで解説する内容は、創業する市区町村により異なる可能性があるため、利用の際は事前に確認をしてください。

登録免許税の軽減

メリットの1つめは、以下の登録免許税の軽減措置が受けられる点です。

設立形態通常の税率軽減措置適用税率
株式会社資本金額×0.7%

※ただし15万円に満たないときは1件につき15万円

資本金額×0.35%

※ただし7万5,000円に満たないときは1件につき7万5,000円

合同会社資本金額×0.7%

※ただし6万円に満たないときは1件につき6万円

資本金額×0.35%

※ただし3万円に満たないときは1件につき3万円

登録免許税が軽減されることで、会社設立のコストを抑えた起業ができます。

日本政策金融公庫における新規開業資金の金利が低くなる

メリットの2つめは、日本政策金融公庫における新規開業資金の金利が低くなる点です。具体的には、基準金利から0.65%引き下げられた金利が適用されます。

創業にあたり、資金調達の1つとして融資を利用する方も少なくありません。売上の安定が難しいとされる創業直後は、利息の支払いをできるだけ抑えたいと考える方も多いでしょう。融資の借入金利が低くなることで、利息額の軽減を実現できます。

創業関連保証の特例を前倒しで利用できる

メリットの3つめは、創業関連保証の特例を前倒しで利用できる点です。創業関連保証特例は原則として、創業2ヶ月前から利用可能です。しかし特定創業支援を受けた方は、事業開始6ヶ月前から利用できます。

創業にあたっては設備費用や運転資金、会社設立資金など、まとまったお金が必要です。創業前の資金調達の方法が増えることは、大きなメリットといえるでしょう。

自治体における中小企業融資制度の優遇や助成金・補助金の申請ができる

メリットの4つめは、自治体によっては融資の優遇や助成金・補助金の申請が可能になる点です。優遇措置や補助金を活用すれば、創業に必要な資金調達の負担を軽減できます。詳細は各市区町村窓口またはホームページで確認してください。

参考:中小企業庁 産業競争力強化法に基づく創業支援について

創業支援等事業者補助金を活用するデメリット

創業支援等事業者補助金を活用するデメリットとしては、起業セミナーや創業スクールなどへの参加が必要なことがあげられます。先述のメリットを享受するには、特定創業支援の受講により市区町村から発行される証明書が必要です。

創業支援等事業者補助金にかかる優遇措置を受けたいと考えているのであれば、計画的に手続きを進めましょう。

創業支援等事業者補助金を受ける流れ

特定創業者支援等事業のメリットを受けるには、証明書が必要です。ここでは、各種講座の受講から証明書の取得までの一般的な流れを解説します。

支援事業を受講する

優遇措置を受けるにはまず、特定創業支援等事業による支援(個別面談、セミナー、研修等)を受講しましょう。開催状況を各自治体の窓口やホームページで確認し、受講の申し込みをしてください。

支援の内容によっては参加希望者が多く、予約が難しい場合もあります。参加を希望するのであれば、定期的に開催情報をチェックすることが肝心です。

創業計画書を作成

自治体により提出が求められる場合は、創業計画書を作成しましょう。創業計画書に記載するおもな項目は、以下のとおりです。

  • 事業内容
  • 創業の動機
  • 経営者の略歴等
  • 取引先・取引関係等
  • 従業員
  • 借入状況
  • 必要な資金と調達方法
  • 事業の見通し

自身での作成が難しいときは支援事業における相談員または、中小企業診断士や税理士といった専門家に相談しましょう。

なお、事業開始後に事業の見直しや資金調達が必要になったときは、事業計画書を作成します。事業計画書の作成方法を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

https://biz.moneyforward.com/establish/basic/49689/

申請書類の作成と提出

セミナーなどの受講と創業計画書の作成が完了したら、申請書類を作成し市区町村に提出します。申請書類は市区町村窓口またはホームページで入手可能です。

提出方法は自治体によって異なりますが、一般的にオンラインまたは窓口、郵送のいずれかで受け付けています。証明申請書類が受理されてから証明書が送付されるまでの所要日数は、自治体によります。会社設立の日程などが決まっているときは、余裕を持って手続きを進めましょう。

創業支援等事業者補助金の募集の例

ここでは、自治体と民間企業が行っている支援事業の一例を紹介します。

東京

実施する自治体支援の名称概要
中央区出張経営相談
  • 中小企業診断士が希望の場所に出向いて相談受付
  • 年度内5回まで利用可能
  • 現在は事業を営んでおらず、区内で創業予定の方が対象
起業家塾
  • 区内で創業予定の方や創業後5年未満の方が対象
  • 年2回開催予定
  • 夏期は主に創業前の方、秋期は主に創業後5年未満の方に向けた内容
渋谷創業者面談事業4回の面談により創業の知識を学び創業計画書を完成させる
シブヤソーギョーベース2024創業に必要な知識やテクニックを学ぶ。全5回

大阪

実施する自治体支援の名称概要
大阪市起業プログラム「立志庵」ワークショップや個別面談を通して、起業への課題解決を支援
ソフト産業プラザTEQS(テックス)<インキュベーションオフィス>テクノロジービジネスやサービスに特化した支援
堺市創業支援セミナー・創業ゼミ参加・体験型を中心とするプログラム。開業に必要なノウハウやネットワークの獲得を支援
起業家育成キャンパス、起業家支援事業企業支援の専門家がマンツーマンで、事業計画作りから事業開始までをサポート

福岡

実施する自治体支援の名称概要
福岡市福岡起業塾
  • 1年以内に起業したい方対象
  • 起業に必要な知識を習得するため、4日以上の日程で講義を開催
  • 希望者には融資相談も実施
女性のための起業ゼミ
  • 中小企業診断士や税理士、WEBコンサルタントによる起業のノウハウ等の講義
  • 2ヶ月にわたり5日程度実施
久留米市創業塾、創業支援塾事業経営における基礎知識や新規開業時の具体的な事業計画・資金計画の立て方を学ぶ
若年層向け創業人材育成プログラム
  • 次世代を担う若年層等の創業創出
  • 新ビジネスや価値の創造
  • 各学校での創業機運醸成イベントを開催

創業支援等事業者補助金以外の補助金・助成金

創業支援等事業者補助金以外にも、起業で役立つ補助金があります。ここでは一例として、IT導入補助金とものづくり補助金を紹介します。

IT導入補助金

IT導入補助金とは、生産性を上げるためのITツールの導入について受けられる補助金です。補助金の対象となる費用の一例には、以下があげられます。

  • ソフトウェア購入費
  • クラウド利用料(最大2年分)
  • セキュリティ対策費用
  • 保守サポート費用

上記のほか導入関連費や、導入にあたり外部コンサルタントを招いた際の報酬も補助の対象です。起業時にIT設備を整えたい場合は、ぜひ活用したい補助金の1つといえます。

ものづくり補助金

ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者の製品開発などを支援する補助金です。補助の対象となる費用の一例には以下があります。

  • 働き方改革や賃上げ、インボイス制度などへの対応
  • サービス開発
  • 試作品の開発
  • 設備投資

ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者の革新的なチャレンジを支援する制度として、上限金額が大きく設定されています。補助金の上限額は申請枠や類型、賃上げ内容などで異なるため、事前に確認しましょう。

創業時に使える補助金を確認し負担を抑えた起業を目指そう

地域創造的起業補助金は、補助金により起業をサポートする制度です。2018年に実施以降新規募集は行われず、2019年に創業支援等事業者補助金へと名称が変更されました。

創業支援等事業者補助金は、市区町村と協力し起業をサポートする民間企業に支払われる補助金です。起業する方は、民間企業や市区町村が行うセミナーや相談会、スクールなどを受講することで、起業に関する知識やノウハウを得られます。

セミナーや相談会に参加し証明書の発行を受ければ、登録免許税の軽減や日本政策金融公庫における新規開業資金の特別金利での借入ができるといったメリットがあります。活用を希望する方は、創業する市区町村の窓口またはホームページで確認しましょう。


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