• 作成日 : 2024年9月6日

駐輪場経営とは?適した土地やメリット、リスク、費用や税金面を解説

土地を所有しているのであれば駐輪場を経営することで利益を得られる可能性があります。この記事では駐輪場経営のメリット・デメリットや適した土地の条件、かかる費用や税金などについて解説します。

駐輪場経営とは?

駐輪場経営とは駐輪場を貸し出し、その対価として利用料を得るビジネスモデルです。今、健康志向や環境保護意識の高まり、あるいはガソリン代の高騰や物価高、税負担の増大などによって自動車に代わって自転車を通勤や通学、買い物などの移動手段に使う方が増えてきています。それに伴い特に駅前などでは駐輪場の需要が高まっているのです。

駐輪場の形態

駐輪場の経営形態には主に時間課金と月極という2種類があります。時間課金とは時間単位あるいは日数単位で利用料がかかる仕組みです。買い物や観光、ビジネスなどで一時的に駐輪場を利用したい方が対象となります。自動車の駐車場でいえばコインパーキングのようなイメージです。

月極とは1か月~数か月単位で契約を結んで利用料を徴収する仕組みです。毎日所定の場所に通う通勤客や通学客が主なターゲットとなります。月極駐車場をイメージするとわかりやすいです。

駐輪場経営の主な管理方法

駐輪場の管理方法としては大きく分けて「自主管理」「管理会社に委託」「サブリースで貸し出す」という3つの方法があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

自主管理

自主管理とは、駐輪場の管理を自ら行う方法です。駐輪場の清掃やメンテナンス、不具合箇所の修繕、セキュリティ管理、料金徴収、契約締結、利用者への対応などの業務をすべてもしくは一部を自分で行います。管理費用がかからないので出費が抑えられる一方で、数多くの業務を行わなければならず手間と時間がかかるのがデメリットです。

管理会社に委託

上記でご紹介したような駐輪場の日常的な管理業務を駐輪場の管理会社などに委託する方法もあります。これによって駐輪場の所有者は、管理業務にかかる手間や時間を大きく削減できるメリットを得られます。会社員の方や他に事業を営まれている方が副業で駐輪場経営を行う場合、複数の駐輪場を経営していて管理業務を自分では担えないといった方におすすめの形態といえます。一方で管理費用を管理会社に支払う必要があり、利益が目減りしてしまう点には注意しておきましょう。

サブリース管理

サブリース管理とは、駐輪場をサブリース業者などに貸し出して、その会社が駐輪場経営を行う方法です。駐輪場を経営するというよりは第三者にまるごと貸し出すとイメージするほうがわかりやすいかと思います。サブリース業者から賃料が得られるので利用者が少なくても安定的な収入が得られる、駐輪場を管理する手間がかからないメリットがあります。一方で、得られる利益が目減りしてしまう点がデメリットです。

駐輪場経営に適した土地

駐輪場経営の成否は立地によって大きく左右されます。例えば駅前やバスターミナルの付近、商店街など、自転車の利用者が多い場所であれば利用者が多く見込まれます。また、自転車の放置が条例などで規制されている区域、放置自転車の取り締まりや撤去が強化されている地域もお勧めです。自転車の利用者はもちろん、放置自転車の減少にもつながり地域社会にも貢献できるでしょう。

逆に駅や商店街などから少し離れてしまうと、一気に需要がなくなってしまいます。極端な話、土地が有り余っていて施設がない郊外のエリアに有料駐輪場を開設してもほとんど利用されないでしょう。可能であれば駅から300m以内もしくは徒歩3分圏内の土地を確保しましょう。

駐輪場経営をするメリット

駐輪場を経営することで以下のようなメリットがあります。特にすでに遊休不動産(活用していない土地)を所有されている方は駐輪場経営を検討されてみてもいいかもしれません。

初期費用があまりかからない

不動産を活用した事業で個人ができるものとしては、他に賃貸経営が挙げられます。しかし、マンションやアパート、一戸建てを購入するにせよ建築するにせよ、多大な資金が必要です。駐輪場であれば土地を舗装して駐輪設備やプレハブ製の管理棟などを設ければいいので、賃貸経営よりも大幅に初期費用を抑えられます。

土地活用しやすい

特に更地を所有されている方は、比較的手っ取り早く土地活用ができるのもメリットです。前述の通り建物を建築するような大規模な工事は必要ありません。その分、早期に収益を得ることが可能です。また、賃貸経営の場合は建物の維持管理や入居者への対応など、運営していくのにも手間がかかります。駐輪場は運営面でも賃貸経営ほどの労力はかかりません。

狭小地や変形地も利用できる

狭い土地やいびつな土地に建物を建築するのは困難といえるでしょう。駐車場を設けるにしても狭小地や変形地では十分なスペースが確保できません。一方で自転車の駐輪には場所がそれほど必要ないため、狭小地や変形地でも十分収益が得られる可能性があります。

駐輪場経営をするデメリット・リスク

駐輪場経営には以上のようなメリットがある一方で、さまざまなデメリット・リスクも存在します。駐輪場経営をはじめるのであれば以下の点にも考慮しましょう。

収益性が低い

駐輪場は駐車場と比較して料金の相場も低めです。時間課金の場合は1回あるいは1日数百円、月極の場合は1か月あたり3,000円程度が相場です。よほど広大な駐輪場で利用者が多くない限り、駐輪場経営だけで生計を立てていくのは難しいのが実情といえます。

また、特に土地を購入して駐輪場経営を行う場合、初期費用がかかりますので黒字化には時間がかかる可能性もあります。融資を受けて土地を購入する場合は事業計画と返済計画を綿密に立てて開業準備を進めましょう。

駅前など立地を選ぶ

駐輪場は駅前などの立地がよい場所でない限りなかなか厳しいでしょう。前述の通り駅から300m以上離れている、あるいは徒歩3分圏内から外れていると、一気に需要が低下してしまう傾向があります。

また、駅前は安価に利用できる公営駐輪場が設置されているケースもあり、こうした競合とも戦っていかなければなりません。

固定資産税の軽減を受けられない

不動産を所有していると固定資産税や都市計画税などの税金がかかります。土地を住居用として使用している場合は、税額が最大1/6になる軽減措置が受けられます。逆にいえば住居用の土地をそれ以外の用途で利用する場合はこういった措置を受けられなくなってしまいます。

特に住宅を解体して駐輪場に転用する場合は、固定資産税や都市計画税が一気に跳ね上がる可能性が高いので注意しましょう。

減価償却費として計上できない

建物の場合は減価償却が可能です。例えば木造アパートは耐用年数が22年、RC造のマンションは47年と定められており、その間に減価償却費を計上していきます。しかし、駐輪場の場合は減価償却できる資産が限られています。ちなみにアスファルト舗装や駐輪場設備の耐用年数はともに10年、側溝は15年です。

未払いの発生リスク

駐車場に関しても未払いが発生するケースがありますが、駐輪場はさらにそのリスクが高くなります。自転車は免許が不要なうえ安価で購入できるため、学生や所得が低い人でも乗ることができ、現金を持ち合わせておらず料金を回収できないケースも想定されます。また、自転車を処分するのが面倒で駐輪場に駐輪したまま放置されるケースもよく見られます。

未払いを防ぐためには監視カメラを設置する、料金が未納状態の場合はロックされるような装置を設置する、管理者を常駐させるなどの対策を講じる必要があります。

駐輪場経営の始め方

ここからは土地を購入して駐輪場経営をはじめることを想定して、開業までのステップをご紹介します。

1.事業計画・資金計画の策定

どこで、誰をターゲットに、どのような駐輪場を経営するかを計画し、必要な資金や見込まれる収益についてもシミュレーションします。

2.土地の選定

不動産会社などに相談し駐輪場を開設する土地を選定します。すでに土地を所有されている方は6まで飛ばしてください。

3.売買契約締結

駐輪場を開設する土地が決まったら不動産会社を通じて土地の売買契約を締結します。

4.融資の申込み・契約締結

融資を受けて土地を購入する場合は金融機関に申込みをし、審査に通過したら融資契約を締結します。

5.土地の引き渡し・登記手続き

売買契約が成立したら売り主から土地を引き渡してもらい、変更登記手続きを行います。

6.舗装工事

自転車が通行しやすいよう土地をアスファルトやコンクリートで舗装します。

7.駐輪設備の設置

自転車のスタンドや屋根、集金装置(ボックス)、管理棟、看板など駐輪場に必要な設備を設置します。

8.管理会社の選定・契約

管理会社に管理を委託する場合は管理会社を選定して契約を締結します。

9.集客

駐輪場を利用してもらえるようチラシや広告、ネットなどを通じて宣伝します。

土地探しからはじめる場合はおおむね3か月程度、すでに土地を所有されている方は1か月程度で開業できます。

駐輪場経営の成功のコツ

最後に駐輪場経営で成功確率を高めるためのコツをいくつかご紹介します。

ニーズをしっかりと調査する

まずはその土地を駐輪場にしてニーズがあるかどうかを綿密に調査しましょう。駅やバスターミナル、企業や学校、商業施設など、候補地の周辺にどのような施設があって、人々がどのような動きをしているのかを調べておきましょう。

駐輪場を利用するのは主に通勤、通学客なので、特に駅やバスターミナルなどとの位置関係は非常に重要です。

適切な料金を設定する

自転車はスペースを取らず、駐車禁止の取り締まりの対象ともならないため、有料で停めるという考え方があまり浸透していません。歩道や商業施設の駐輪場、公園など、どこでも駐輪できます。また、特に駅前などでは公営の駐輪場が無料もしくは低価格でサービスを提供しているケースもよくあります。

利用料金を高く設定しすぎるとまったく利用してもらえないという事態もあり得るでしょう。とはいえ、料金を下げすぎてしまうと赤字になる可能性もあります。周辺の相場と損益分岐点を考慮しながら料金を設定しましょう。

信頼できる管理会社を選定する

駐輪場の管理を外部に委託する場合は管理会社選びも重要です。信頼できる管理会社であれば駐輪場を適切に管理してくれて、収益を上げるためのアドバイスももらえる可能性があります。逆に管理費だけ請求して何もしてくれない、アドバイスもくれないといった管理会社も存在します。

どのようなことをしてくれるのか、アドバイスももらえるのか、しっかりと担当者から話を聞いたうえで管理会社を決めましょう。

補助金や助成金を活用する

駐輪場を開業するための資金調達法として融資が挙げられますが、これ以外にも助成金・補助金制度の活用も検討してみましょう。国や自治体では経済振興や雇用促進、新たな産業の創設を目的としてさまざまな制度を運営しています。補助金や助成金は融資と異なり返済が不要であるため、特に資金が不足しがちな開業時には有効な手段といえます。

リスクヘッジをする

前述の通り、駐輪場は客単価が低いため、駐輪場経営だけで生計を立てるのはなかなか難しいというのが実情です。また、近隣に競合となる駐輪場ができた場合、そこに利用者が流れてしまう可能性もあります。

安定的に収入が得られるよう月極の利用者を確保する、複数の駐輪場を経営する、他の事業も行うなど、リスクを分散しておきましょう。

駐輪場経営なら土地を有効活用できるけどリスクには要注意

使っていない土地があるのなら駐輪場を経営することで収入が得られる可能性があります。しかし、駐輪場経営には今回ご紹介したようにさまざまなリスクが存在しています。これらを踏まえたうえで綿密な事業計画・資金計画を立て、立地の選定や料金設定などの準備を進めていきましょう。


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