• 作成日 : 2024年6月28日

合同会社設立時の社会保険【簡単に】いつから?手続きは?

合同会社設立にあたっては、社会保険の手続きが必要です。そもそも社会保険とは何か、どのような手続きがいつまでに必要なのか、手続きを怠った場合に罰則はあるかなどについて解説していきます。

そもそも社会保険とは?種類について

社会保険には、健康保険、介護保険、厚生年金保険、国民年金、雇用保険、労災保険などがあります。なお、このうち、健康保険、厚生年金保険、国民年金(介護保険を含む場合もある)を社会保険というくくりで表現することもあります。それぞれどのような特徴があるのか、代表的な社会保険の種類について解説します。

健康保険

健康保険は、病気やケガなどの医療にかかわる社会保険制度です。日本では国民皆保険とされており、公的医療保険については、すべての国民は、全国健康保険協会(中小企業に勤める会社員など)、健康保険組合(大企業に勤める会社員など)、共済組合(公務員など)、国民健康保険(自営業者など)のいずれかに加入する必要があります。

75歳以上の高齢者については、後期高齢者医療制度での保険の加入が必要です。

合同会社では、会社を通して、代表社員を含むすべての社員が健康保険に加入しなくてはなりません。

介護保険

介護保険は、高齢者の介護を社会全体で支えるために2000年に創設された制度です。海外居住者などを除き、原則として40歳以上のすべての人が加入しなければなりません。会社で健康保険料を社員から徴収している場合は、介護保険料も健康保険料に加算して徴収されることになります。

厚生年金保険・国民年金

公的年金は、高齢の方や事故などで障害を負った方、家族の主な働き手を亡くした遺族を支える社会保険制度です。国内に住む20歳以上60歳未満の人すべてに加入が義務付けられている制度で、会社員や公務員は厚生年金保険、自営業者などは国民年金に加入します。合同会社の社員は、厚生年金保険の加入が必要です。

なお、国民年金については、すべての国民が加入する基礎年金であるため、合同会社の社員も加入していることになります。

基本的に正社員などの加入を想定した制度ではあるものの、従業員数101人以上の会社では、パートやアルバイトでも一定の条件に該当する場合は、社会保険(健康保険と厚生年金)の加入が義務付けられています。

雇用保険

雇用保険は、雇用の安定と労働者が失業した際の生活の安定などを目的とした制度です。合同会社でも、労働者を1人以上雇用している場合は適用事業者となり、雇用保険の加入義務が発生します。

なお、合同会社の社員は、株式会社の取締役と同じ扱いとなるため、原則として雇用保険に加入できません。ただし、部長や課長などの労働者としての身分も有していて、実際に労働者だと認められる場合には、合同会社の社員でも雇用保険の加入が認められます。

労災保険

労働者災害補償保険(労災保険)は、業務中の事故によるケガや病気などについて、被災した労働者や遺族を保障する制度です。従業員を1人でも雇用している事業所は加入の義務があります。

なお、合同会社の場合、従業員は労働者として労災保険の対象となりますが、出資者兼役員である社員は労働者に該当しないため、労災保険に加入することはできません。

合同会社設立時に社会保険は必須?

合同会社の設立にともなう社会保険の加入について解説します。

社会保険の加入が義務化される合同会社の要件

健康保険や厚生年金保険は、事業所単位での加入が義務付けられています。事業主だけであっても法人の場合は適用事業所に該当するため、新規適用の手続きが必要です。合同会社も例外ではなく、適用事業所の手続きを行わなくてはなりません。

なお、従業員の社会保険の加入については個別に判断する必要があります。フルタイムの従業員については、社会保険に加入させなければなりません。

パートやアルバイトについては、従業員数により扱いが異なります。2024年9月までは101人以上、2024年10月からは51人以上の従業員を抱える会社では、以下に該当するパートやアルバイトは社会保険の加入対象となります。なお、従業員数が少ない会社のパートやアルバイトの社会保険の加入は任意です。

【パートやアルバイトの社会保険の加入要件(すべて満たす)】

  • 雇用の見込が2カ月を超えること
  • 学生でないこと
  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 所定内賃金が月8.8万円以上であること

労災保険や雇用保険については、従業員を1人でも雇用している場合は合同会社にも加入が義務付けられます。

合同会社設立時に、いつから社会保険に入る?

合同会社の設立にともない、速やかに加入の手続きを行う必要があります。

健康保険と厚生年金の加入については、会社設立の事実発生から5日以内に「新規適用届」を所轄の年金事務所に提出しなければなりません。介護保険は健康保険に付随することから、別途手続きをする必要はありません。

雇用保険と労災保険については、従業員を雇用し、保険関係が成立した日から10日以内に所轄の労働基準監督署に「保険関係成立届」を提出するほか、後述のように複数の手続が必要になります。

社会保険加入の必要がないケースは?

社会保険のうち、雇用保険や労災保険は、基本的に合同会社の社員は対象としていません。そのため、従業員のいない合同会社では、雇用保険や労災保険の加入の必要はありません。

しかし、健康保険や厚生年金保険については、役員(合同会社では社員)を含めて常時従業員を使用する場合に加入が義務付けられます。

そのため、雇用保険や労災保険の加入が必要ない合同会社は存在しますが、健康保険や厚生年金保険の加入が必要ない合同会社は存在しないことになります。

合同会社設立時の社会保険の手続き・必要書類

すべての合同会社に加入が義務付けられている健康保険と厚生年金保険を中心に、加入の手続きや必要書類について解説します。

適用を受ける合同会社を設立したとき

合同会社は、健康保険と厚生年金保険の適用事業所です。そのため、設立後は、「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」の手続きを要します。新規適用にともない、以下の書類が必要です。

合同会社は法人事業所に該当するため、新規適用届に商業登記簿謄本を添付して提出しなければなりません。コピーは認められておらず、90日以内に交付された商業登記簿謄本の原本が必要です。

提出先は日本年金機構で、管轄の年金事務所の窓口、または郵送、または電子申請により提出します。

対象の社員が加入するとき

従業員の加入対象となる従業員を雇用した場合、あるいはパートやアルバイトを任意で社会保険に加入させる場合は、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」が必要です。

「被保険者資格取得届」に必要事項を記入して、管轄の年金事務所などに窓口持参、郵送、あるいは電子申請、電子媒体で提出します。従業員の加入にあたっては、加入者の氏名や生年月日、個人番号(または基礎年金番号)、被扶養者の有無などの情報が必要です。

労働保険に関する手続き

従業員を1人以上雇用する場合は、労働保険(労災保険と雇用保険)の加入手続きが義務付けられます。手続きにあたり、以下の書類を作成して提出しなければなりません。

  • 保険関係成立届
  • 概算保険料申告書
  • 雇用保険適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届

それぞれの提出先は一元適用事業と二元適用事業で異なります。二元適用事業とは、労災保険と雇用保険の適用を区別する必要がある農林漁業や建設業などに該当する事業です。一元適用事業は、二元適用事業以外をいいます。

一元適用事業を例に挙げると、従業員を雇用し、保険関係が成立した日から10日以内に所轄の労働基準監督署に「保険関係成立届」を提出する必要があります。さらに雇用保険については、同じく10日以内に「雇用保険適用事業所設置届」を所轄の公共職業安定所に提出しなければなりません。

従業員については、「雇用保険被保険者資格取得届」を雇入日の翌月10日までに所轄の公共職業安定所に提出します。そして、保険関係成立日から50日以内に「労働保険概算保険料申告書」を所轄の労働基準監督署または都道府県労働局に提出するとともに日本銀行(代理店、歳入代理店(全国の銀行・信用金庫の本店または支店、郵便局)に概算保険料を納付することが求められます。

なお、二元適用事業の場合は、「保険関係成立届」および「労働保険概算保険料申告書」は、それぞれ労災保険分は所轄の労働基準監督署、雇用保険分は所轄の公共職業安定所に提出することになります。

合同会社は社会保険料の費用をいくら負担する?

社会保険のうち、健康保険、介護保険、厚生年金保険については、会社と従業員で折半です。全国健康保険協会の場合、令和6年3月分からの東京都での保険料率は、厚生年金保険が18.30%、健康保険が9.98%(介護保険を含むと11.58%)となっています。

標準報酬月額30万円の人の場合、健康保険(介護保険を含まない)は29,940円のため、会社負担分は折半後の14,970円です。厚生年金は、54,900円で、折半後の会社負担分は27,450円になります。

出典:令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|協会けんぽ

労災保険は会社が全額負担するものです。保険料率は業種によって異なります。令和6年度の保険率は、2.5~88分の1,000です。労災リスクの高い業種ほど、保険料率も高い傾向にあります。

出典:労災保険料率表(令和6年4月1日施行)|厚生労働省

雇用保険は、会社と従業員で負担割合が異なります。令和6年度については、一般の事業の場合、従業員負担が1,000分の6で、会社負担は1,000分の9.5です。

出典:<令和6年度の雇用保険料率>|厚生労働省

合同会社設立後、社会保険に未加入の場合の罰則

社会保険の加入義務があるにもかかわらず、合同会社設立後に加入しなかった場合は、何らかの指導を受けたり、罰則を適用されたりする可能性があります。

加入指導や強制徴収

社会保険の加入を怠った場合、まず、健康保険や厚生年金保険であれば年金事務所から、労働保険や雇用保険であれば労働基準監督署などから加入指導が行われます。

再三の加入指導にもかかわらず加入が確認できない場合は、立ち入り検査や保険料額決定の後に、過去にさかのぼって強制的に差し押さえなどにより徴収される可能性があるため注意しましょう。

助成金などへの影響

社会保険の加入を要する事業所が未加入のままでいると、助成金の受給にも影響をおよぼす可能性があります。特に影響が考えられるのが雇用調整助成金です。雇用に関わる労災保険や雇用保険などの加入が適切に行われていないと、未加入を理由に受給できないこともあります。

悪質な場合の罰則

社会保険の加入については、罰則も設けられています。悪質と判断された場合の罰則は、健康保険や厚生年金保険が未加入の場合で、6カ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金です。労災保険や雇用保険が未加入の場合は、6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

合同会社設立前に社会保険について確認しておこう

合同会社は、法人に該当するため、社会保険のうち、健康保険と厚生年金保険には必ず加入しなければなりません。また、従業員を雇用する場合は、労災保険と雇用保険の加入が必要です。なお、会社の設立関係の届出だけでなく、従業員個別の加入の手続きは別途行う必要があります。合同会社設立前に社会保険の加入についてよく確認しておきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事