- 更新日 : 2023年8月23日
レンタルスペース経営の基礎知識!危ない?個人でも運営可能?
会社のオフィスや会議室などのスペースを提供するサービスに「レンタルスペース経営」があります。一般的な賃貸借契約と異なり、必要なときに必要な期間、物件を提供することができるのが特徴です。今回は「レンタルオフィス経営は危ない?」「開業するにあたって許可は必要?」といった疑問などについて解説します。
目次
レンタルスペース経営とは?
レンタルスペースとは、一般的な賃貸借契約と同様にオフィスや会場などのスペースを利用者に提供するサービスです。借地借家法が適用される賃貸借契約と異なり、簡単な利用契約を結ぶだけでスペースを提供できるのが特徴です。
レンタルスペースの種類
利用者のニーズに合わせて、以下のように様々な種類のレンタルスペースが提供されています。
1.レンタルオフィス
ビジネス用のデスクや椅子、電話やネット環境などが備え付けられており、オフィスとして利用できるレンタルスペースです。1人で個人事業を営んでいて、自宅外にオフィスが欲しい方などには使い勝手のよい施設です。また、開業にあたって充分な開業資金を用意することができないようなケースでは、レンタルスペースを本店登記し、ビジネスの拠点とすることも可能です。
2.パーティー向けレンタルスペース
知人とちょっとしたパーティを開きたい方におすすめなのが「パーティー向けレンタルスペース」です。テーブルや照明器具のほか、モニターやオーディオ機器など様々な設備が用意されており、準備に手間と費用をかけることなくパーティーを開くことができます。
3.レンタルルーム
「パーティー向けレンタルスペース」が会場のレンタルであるのに対して、アパートのような部屋をレンタルできるのが「レンタルルーム」です。ソファーやテーブル、調理器具や家電製品などが用意されており、自宅にいるような感覚で利用できます。少人数の友達と自宅で楽しく過ごしたい方などにおすすめです。
4.トランクルーム
会社や自宅などにある物を収納するスペースが足りない方には「トランクルーム」をおすすめします。収納が目的ですので家具など滞在するために必要な設備はありませんが、書類や道具など物があふれてスペースの確保に困っているようなケースでは非常に重宝されます。
レンタルスペース経営のメリット
ではレンタルスペースを経営する際のメリットをいくつか挙げてみましょう。
1.一般的な賃貸借より単価が高い
例えばアパートの一室を月額60,000円で賃貸借した場合、一時間当たりの賃貸料は60,000円÷30日÷24時間=約83円と非常に低価格となります。利用目的や立地条件等によりレンタルスペースの料金設定に幅がありますが、一般的な相場としては1時間当たり数百円~数千円でレンタルするケースが多いようです。賃貸借より高い単価で物件をレンタルすることができるのがレンタルスペースの大きなメリットです。
2.収入を得るための手間と時間を省ける
レンタルスペースは設備の準備さえできれば、他の不動産賃貸と同様にあとは貸し出すだけで収入を得られます。物品販売のように商品を仕入れるコストがかからず、飲食店のように接客にかかる人件費も必要ありません。経営していくうえで発生する仕入れコスト、人件費コストを抑えつつ売上を上げることが可能です。
3.未利用の施設を活用することが可能
相続や贈与などで家屋やマンションなどを取得したものの、利用する必要がないため使わず放置している物件をレンタルスペースとして活用するのも1つの方法です。レンタルスペース経営を始める際に発生する設備投資を抑えながら、遊休資産を活用して収入を得ることができます。
レンタルスペース経営が「危ない・失敗しやすい」と言われる理由
レンタルスペース経営は「危ない」「失敗しやすい」との指摘があります。では、その理由について列挙してみましょう。
1.設備投資にかかる資金がかかりすぎる
レンタルスペースを開業するにあたって必要な物件の建設や内装工事、備品関係の調達、スペースを賃借する際に必要な敷金・礼金・手数料など、ある程度まとまった初期費用を用意しなければなりません。また、開業後もレンタルスペースを維持管理していくための費用も考慮しなければなりません。
2.空き時間があるほど利益率が下がる
レンタルスペースが常に満室で24時間収益を上げることができれば、単価の高さによるメリットが活きてきます。しかし、裏をかえせば空き時間が長くなればなるほどそのメリットが薄れてきます。設備投資に見合うだけの収益が得られなければ、投資を回収することはおろか経営を維持していくことも難しくなります。
3.供給過多の地域では利益が薄くなることも
自身が経営するのと同じようなレンタルスペースが乱立しているような地域では、価格競争によりレンタルの単価を下げざるを得ない状況になることがあります。同様の設備でも、レンタルスペースの供給が少ない地域より得られる利益が薄くなることもあり得ます。
レンタルスペースの経営・運営は個人でもできる?
レンタルスペースを経営するにあたって経営組織に法的な制約はありません。したがって、結論からいえば資金さえ準備できれば個人でも経営することは可能です。一般的には継続して事業を営んでいくことになりますので、所轄の税務署に「開業届」を提出してレンタルにかかる所得を確定申告することになります。
ただし、レンタルスペースを賃貸借した場合には許可が必要になるケースがあります。例えば、レンタルスペースを賃借により準備しそれをレンタルする、いわゆる「又貸し」を行う場合には、オーナーに転借する旨の許可を得る必要があります。また、部屋の利用目的がレンタルに変わりますので消防法の許可(防火対象物使用開始届など)や、飲食物の提供を行う場合には保健所の許可が必要になることもあります。
レンタルスペース経営にかかる費用
次に、レンタルスペースを開業するにあたってかかる初期費用や、その後のランニングコストがどれくらいかかるのかについて解説します。
開業資金(初期費用)
レンタルスペースの種類によって用意する物件の広さや立地条件、内装工事や備品調達にかかる費用は異なります。
1.スペース確保にかかる費用
レンタルスペースを自己資金で建てる場合には、建設資金が必要です。賃貸借により調達する場合は、賃貸借契約にかかる敷金・礼金・手数料・保証料といった費用がかかります。
2.内装工事にかかる費用
居抜きで賃借するケースを除いて、レンタルスペースの種類に合った状態で使用できるようにするためには内装工事が必要になります。レンタルスペースの室数が増えれば増えるほど、内装工事にかかる初期費用は増加していきますので、まとまった開業資金を準備しなければなりません。
3.備品等設備にかかる費用
レンタルスペースの種類に応じた家具や機器、事務用品などを用意するための費用です。内装工事と同様に、レンタルスペースの室数が増えればそれだけ備品等設備の準備費用も増えていきますので、リース契約による調達を検討するのも1つの方法です。
ランニングコスト
1.ハウスクリーニング費用
レンタルが終了した後、次の利用者に提供できるよう部屋を綺麗に清掃するための費用です。パーティー向けレンタルスペースやレンタルルームなどは特に人の出入りが多いので、その分ハウスクリーニング費用も増加します。
2.備品等設備の維持管理費用
長期間の使用で備品等が消耗したため、修理したり入れ替えたりするのに必要な費用です。ティッシュやタオルといった日常消耗品や利用者の過失により生じた破損等は利用者が負担するのが一般的ですが、備品等の設備の維持管理費用は経営側が負担しなければなりません。
3.レンタルスペースの賃貸料・更新料
レンタルスペースを賃貸借によって準備した場合には、毎月定額の賃借料が発生します。また、賃貸借契約によっては一定期間を経過すると更新料が必要になるケースもありますので注意してください。
レンタルスペース開業のために必要な許可は?
前章でも述べましたが、レンタルスペースを開業する際には、許可が必要になるケースがあります。
1.物件オーナーの許可
レンタルスペースを賃貸借により借りている場合、開業する前にあらかじめ物件オーナーの承諾を得ておく必要があります。賃貸借契約によっては借主以外の第三者への賃貸(転借)を禁止しているケースがあるからです。また、室内の内装工事を行う場合にも「どの部分をどの程度内装するか」を事前に報告し、許可を得ておけば退去時のトラブルを回避することにもつながります。
2.消防法上の許可
一般的な居住用住宅と違い、レンタルスペースには不特定多数の人が数多く出入りしますので、消防法上は「特殊建造物」として建築目的が変わってきます。物件によっては、避難誘導設備や消火器など消防設備の設置を義務付けられ、内装工事を行った場合には「防火対象物使用開始届出書」の提出が必須となるケースもあります。
事前に消防署に相談し検査を受け、必要な許可を確認しておくのも1つの方法です。また、施設内で火器を使用する場合にも別途、許可が必要になりますので注意してください。
3.保健所の許可
レンタルスペース内で飲食物を調理し販売を行う場合には、レンタルする会社が保健所に対して「営業許可」をとらなければなりません。注意点としては、許可を受けるのがレンタルの利用者ではなくレンタルスペースの経営側であるという点です。キッチンなどの調理スペースをレンタルするようなケースでは無許可にならないよう注意してください。
レンタルスペース経営で事前に考えておくべきこと
最後に、レンタルスペースを経営するにあたって開業前にあらかじめ考えておかなければならないポイントについて解説します。
予約管理の方法
レンタルスペース経営で重要な項目の1つが予約管理です。空き時間が生じればそれだけ収益が落ちますので、常に満室になるような方法を考えなければなりません。パソコンやスマホなどネット環境が普及した現在では、ネットを使ってレンタルスペースを予約することが一般的になりつつあります。自社のHPを開設し、サイト内で空室状況の確認や予約を完結できるシステムの構築を検討しましょう。
清掃面の対応
レンタルスペースの利用者が退去した後、次の利用者のために部屋を清掃する必要があります。ハウスクリーニングについては自社の社員が行うパターンと、外部のハウスクリーニング業者に委託するパターンがあります。
パーティー向けレンタルスペースやレンタルルームのように頻繁に出入りがあるケースでは自社の社員、レンタルオフィスやトランクルームのように出入りが少ないケースであれば業者に委託というように、種類に応じて使い分けするのが費用を抑えるポイントです。
設備の充実度
ネット環境やSNSの普及により、レンタルスペースの需要は利用者の評価によって左右されるようになりつつあります。利用者に満足してもらうためには、必然的にスペース内の設備には特に気を配らなければなりません。
レンタルオフィスであればプレゼン用のプロジェクター、レンタルルームであればリラクゼーション装置など、利用者に喜ばれるような設備が何なのか充分に検討し揃えていくようにしましょう。
現場スタッフの有無・鍵の受け渡し
特に人の出入りが多いレンタルスペースを経営していくためには、レンタルスペースの管理人が必要不可欠です。レンタルスペースがある場所に管理人を常駐させるかどうか、ウェブで予約してきた利用者に対して部屋の鍵をどうやって受け渡しするのかなど、利用者とのやり取りの流れを決めておく必要があります。
レンタルスペース経営は計画性が重要
レンタルスペース経営を成功させるためのコツは、いかに空き時間を作らないかということです。そのためにも開業する前に、物件周辺のレンタルスペース利用者がどのようなニーズを持っているのかあらかじめリサーチしておくことをおすすめします。
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