• 更新日 : 2023年11月30日

保育園の経営に必要な資格は?開業準備や費用、課題についても解説!

保育園の経営に必要な資格は?開業準備や費用、課題についても解説!

「保育園の経営はどのようにしたらいい?」「資格は必要?」などとお考えの方もいることでしょう。保育園の経営に資格は必要ありません。また、近年では保育園が不足しているため、地域の信頼を獲得していけば、事業の継続・拡大は十分に可能です。

この記事では保育園の開業準備や設置基準、費用、課題などについて解説します。保育園の経営を検討している方はぜひ参考にしてください。

保育園の主な種類は?

最初に、保育園の主な種類を見ていきましょう。保育園には認可保育園と認可外保育園の2種類あります。

認可保育園

認可保育園とは、児童福祉法に定められた以下のような基準を満たし、国からの認可を受けて運営される保育園です。

  • 職員数:子どもの年齢および人数に対する職員の人数(0歳児は3人に1人以上、4歳児は30人に1人以上など)
  • 設備:乳児室、保育室、屋外遊戯場などの子ども1人あたりの面積
  • 給食:自園調理または委託

ただし、都道府県や自治体がさらに厳しい基準を設けている場合もあります。

認可保育園は、国や自治体から運営費の補助を受けられます。経営は安定しますが、基準が細かく定められているため、自由度が低いのが特徴です。

認可外保育園

認可外保育園とは、児童福祉法に定められた基準を満たしていないものの、各都道府県がそれぞれで設けた基準に従い認可している保育園です。自由度が高いため、園の特徴を打ち出しやすいのがメリットとなっています。

例えば、認可保育園は庭の設置が義務付けられるため、マンションの一室や駅ビルなどに設けられた保育園は認可外になってしまいます。開所時間が11時間と定められているため、24時間保育なども認可外保育園に含まれます。

入所申し込みを認可保育園は市区町村に行うのに対して、認可外保育園はその園に直接行うため、利用者が園を自由に選べるのもメリットといえるでしょう。

保育園を開業するために必要な準備は?

保育園を開業するために必要な準備を紹介します。

1. 保育園の種類を決める

最初に、認可保育園にするのか、認可外保育園にするのかを決めます。認可保育園・認可外保育園ともさまざまな形態があるため、どのようなニーズに応えようとするかを決める必要があるでしょう。

2. 保育施設・施設長を決める

次に、保育施設を決めます。保育施設は、保育園の種類に応じた基準を満たしていなくてはなりません。また、このときに保育施設の運営を実際に行う施設長も決めておくのが良いでしょう。

3. 事業計画書作成・提出・建築工事

施設を決めたら、事業計画書を作成します。事業計画書には保育方針や施設配置図、人員配置、保育時間、経営戦略などを記載します。作成した事業計画書を自治体に提出し、計画承認書が発行されたら、建築確認申請を行なって保育施設の工事です。

4. 保育士を採用・教育する

工事の間に保育士を採用します。保育士の人数は認可・認可外ともに基準が定められているため、それを満たさなければなりません。採用後は質の高い保育を維持できるよう、研修も実施しましょう。

5. 承認を受けたら開業

保育施設の工事が終わったら、自治体から現地確認を受けます。現地確認で追加工事の指示がなければ、次は許可申請です。申請が承認されたら、いよいよ開業となります。

保育園を経営するために必要な資格・設置基準は?

保育園を経営するために必要な資格・設置基準を解説します。

保育園を経営するために必要な資格

保育園を経営するために必要な資格はありません。保育園の経営者に必要なのはあくまでも経営のスキルであり、保育士の資格や保育士としての実務経験などは一切不要です。

ただし、保育園の従業員には、保育士の資格保有者が一定人数いなければなりません。認可保育園では、子どもの年齢および人数に応じて保育士の人数が定められています。認可外保育園では、保育者のおおむね3分の1以上は保育士または看護師であることが必要です。

保育園の設置基準

認可・認可外保育園の設置基準の概略は、以下の通りです。

形態
認可保育園
認可外保育園
保育士の人数
・0歳:子ども3人に保育士1人
・1~2歳:子ども6人に保育士1人
・3歳:子ども20人に保育士1人
・4歳以上:子ども30人に保育士1人
・保育時間が11時間以内の場合は認可保育施設と同一の配置基準(保育者の3分の1以上が保育士または看護師)
・保育時間が11時間以上の場合は、保育されている児童が1人である場合を除き、常時2人以上を配置
施設の面積
・0歳、1歳児
 乳児室:1.65㎡/人
 ほふく室:3.3㎡/人
・2歳児以上
 保育室:1.98㎡/人
 園庭:3.3㎡/人
乳幼児1人あたり1.65㎡以上
開所時間
原則11時間無制限
自治体の審査
あり開業時の届出のみ

保育園を経営するために必要な費用は?

保育園を経営するために必要な初期費用、および運営費用を見てみましょう。

初期費用

保育園を開業するための初期費用は、一般に500万円~600万円が目安といわれています。内訳は、以下の通りです。

項目
費用
物件取得費
150万円
内装工事費
150万円
設備費
140万円
備品・消耗品費
100万円
広告宣伝費
50万円
合計
590万円

一般的な起業には1,000万円程度の初期費用がかかるといわれているため、保育園開業の初期費用は低めだといえるでしょう。認可保育園の場合なら補助金を受け取れるため、初期費用も上の金額より抑えられます。

運営費用

保育園の日常的な運営費用は、月額200万円~300万円が目安です。内訳は以下のようになります。

項目
費用
人件費
180万円
賃貸料
45万円
水道光熱費
6万円
給食費
12万円
合計
213万円

保育園は人材が欠かせない事業であるため、人件費が多くなります。運営費用に関しても、認可保育園では補助金での充当が可能です。

保育園の経営に使える補助金・助成金は?

認可保育園の経営に使える補助金・助成金のうち、よく活用されるものを3つ紹介します。

就学前教育・保育施設整備交付金(旧保育所等整備交付金)

施設整備や防音壁設置の費用に対する補助です。補助率は事業費の1/2。待機児童解消プランに参加する場合は、2/3にかさ上げされます。

保育所等改修費等支援事業

賃貸物件を活用して保育園を設置するなどの際に、認可外保育施設が認可保育施設の設置基準を満たすために、必要な改修費が補助されます。補助率は1/2です(待機児童解消プランに参加する場合は2/3にかさ上げ)。

保育体制強化事業

清掃や遊具の消毒、給食の配膳、寝具の用意・片付けなど、保育の周辺業務を行う人の配置を支援するものです。配置1件あたり月額10万円など。

保育所等におけるICT化推進等事業

保育の周辺業務や補助業務を行うためのICTを活用したシステム導入を支援するものです。1施設あたり最大100万円。

保育園を経営するリスク・課題は?

保育園を経営するうえでのリスクや課題を解説します。

経営が軌道に乗るまで時間がかかる

保育園経営の大きな課題として、まず経営が軌道に乗るまで時間がかかることが挙げられます。

経営を安定させるためには、十分な人数の園児を集めることが必要です。保育園の不足が話題となる近年なので、保育園を作ればすぐに園児が集まると考えるかもしれません。しかし、保護者の信頼がまだ確立していない新規の保育園で園児を集めるのは簡単ではありません。認可外保育園の場合には、認可保育園と比べて信頼度の面で保護者が躊躇するケースも多々あるため、なおさらです。

園児を集めるためには、保護者のニーズに合った保育を提供することはもちろん、安心・安全な保育を丁寧に行なっていくことで、保護者の信頼を勝ち得ていくことが必要でしょう。

保育士の確保が難しい

保育士の確保が難しいのも、保育園経営の課題です。保育士の確保ができず、当初の予定より少ない定員でスタートを切る保育園も決して少なくありません。

保育士の有資格者でありながら保育に従事していない「潜在保育士」は、有資格者の6割にものぼるといわれています。採用に注力するとともに、待遇や職場環境を改善し、働きやすい職場を作っていくことが大きな課題となるでしょう。

事故などの際に行政処分を受けることがある

保育園経営のリスクとして挙げられるのは、保育園内での事故や感染症などの発生により、管理責任を問われて行政処分を受けるケースがあることです。処分を受けることにより園の評判が悪化し、園児が集まりにくくなる事態もあり得ます。

子どもの安全を第一に考えた保育園経営を行うこととともに、子どもを預かる責任の重さを肝に銘じることが必要でしょう。

保育園の経営に成功する秘訣・方法は?

保育園の経営に成功する秘訣・方法を紹介します。

保育ICTシステムの活用で業務効率化

保育園経営のポイントとしてまず挙げられるのは、保育ICTシステムの活用による業務効率化です。システムを導入すればシフト作成や給与計算が自動化され、勤怠管理や各種書類作成が容易になります。事務作業が軽減されれば、空いた時間を保育士の研修など質の向上に使うことも可能でしょう。

保育補助、パート・アルバイトの活用で人件費抑制

保育園の経費で最も大きな割合を占めるのは人件費となります。人件費の抑制には、登降園の対応や電話応対、清掃や事務などを担当する保育補助や、パート・アルバイト保育士の活用が必要でしょう。育児や介護などの家庭環境があっても働きやすいパート・アルバイトの活用は、保育士の採用を容易にするメリットもあります。

保育士派遣の活用で採用コスト抑制

保育士の採用には1人あたり40万円~50万円がかかるといわれ、また採用してもすぐに離職してしまうリスクがあります。保育士派遣を活用すれば、採用コストを減らせます。「紹介予定派遣」という形を選び、派遣として働いてもらって様子を見てから本採用することも可能です。

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こちらから自由にお使いいただけるので、ぜひご活用ください。

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保護者からの信頼を勝ち得て事業を拡大していこう

認可保育園・認可外保育園とも行政により基準が定められているため、開業にあたっては行政とのすり合わせが必要です。初期費用、運営費用ともそれなりにかかりますが、補助金を活用できれば経営は安定するでしょう。地域の保護者の信頼を勝ち取りながら、事業を拡大していきましょう。

よくある質問

保育園の経営に必要な資格は?

保育園経営に資格は特に必要ありません。詳しくはこちらをご覧ください。

保育園を経営するために必要な費用は?

初期費用として500~600万円、運営費用として月額200~300万円がかかるといわれています。詳しくはこちらをご覧ください。


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