• 更新日 : 2024年6月12日

保育園の事業計画書の書き方は?テンプレートを基に記入例を解説

保育園の事業計画書は、金融機関から融資を受ける場合だけでなく、施設の開園や運営にも使用されます。また、小規模保育園を開設する際には、公募している自治体に事業計画書をはじめとする申請書類を提出しなければなりません。

第三者が見ても保育園を開設する目的や保育方針、資金の必要性などがわかるように具体的に記載しましょう。この記事では、保育園の事業計画書の書き方や作成のポイントについて解説します。

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保育園向けの事業計画書・創業計画書テンプレート・作成例のダウンロード方法

事業計画書_テンプレート

保育園の事業計画書とは?

保育園の事業計画書とは、経営に必要となる経費や保育方針、人員配置、経営戦略などを記載した計画書のことです。

昨今では、待機児童の解消のために、保育施設の数は年々増えています。しかし、保育園を新たに開園するためには、事業計画書を自治体に提出し、計画承認書が発行されなければなりません。

補助金や助成金、融資を受ける際にも事業計画書の提出が必要になるので、開設動機や保育方針などは、根拠を持って説明できるようにしましょう。「子どもが好きだから」「元気な子どもに育って欲しいから」などの抽象的な理由では、審査に通らないおそれもあります。

参考:「保育所等関連状況取りまとめ(令和5年4月1日)」を公表します

小規模保育事業認可申請に使用する

小規模保育施設の開園を検討している場合、開園予定の市区町村に申請を出す必要があります。小規模保育事業の設置許可申請には、以下の3つの区分があります。

  • 小規模保育事業A型
  • 小規模保育事業B型
  • 小規模保育事業C型

各市町村によって設置基準は異なりますが、厚生労働省が全国共通の以下のガイドラインを発表しています。

小規模保育事業A型小規模保育事業B型小規模保育事業C型
必要な資格保育士

国家戦略特区限定保育士

全職員の2分の1以上が保育士か国家戦略特区限定保育士

そのほかの職員は要研修

家庭的保育者
必要な職員数(※1)0歳:乳児3人に1人

1〜3歳未満:幼児6人に1人

4歳以上(※2):児童30人に1人

0歳:乳児3人に1人

1〜3歳未満:幼児6人に1人

4歳以上(※):児童30人に1人

家庭的保育者1名で乳幼児3人以下

家庭的保育補助者と保育する場合は5人以下

必要な保育室の面積

(幼児1人あたり)

0〜2歳未満:3.3平方メートル

2歳以上:1.98平方メートル

0〜2歳未満:3.3平方メートル

2歳以上:1.98平方メートル

0〜2歳未満:3.3平方メートル

2歳以上:3.3平方メートル

※1:配置基準にさらに1人加えた人数以上が必要です。
※2:3歳以上は対象外としている自治体も多くあります。
※出典e-Govポータル:平成二十六年厚生労働省令第六十一号 家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を参考に筆者が作成

事業の見通しを立てる

事業計画書を作成することで、保育方針や人員配置、必要な経費などが明確になるため、事業の見通しを立てられるようになります。事業の見通しが立てられれば、経営戦略を修正することもできるので、保育園の規模が大きくなっても対応しやすいでしょう。

また、保育園を運営するスタッフや保育士にも、事業の方向性を共有できるのもメリットです。

金融機関からの融資を受ける

金融機関から融資を受ける際には、事業計画書の内容が審査されます。

一般的に、社歴が長い企業であれば、決算申告書をはじめとする過去のデータだけで審査が可能です。しかし、新しく事業を始める代表者には実績がないため、資金計画や経営計画についての事業計画書を提出しなければなりません。

事業計画書がしっかりと作り込まれていれば、金融機関に返済能力を認めてもらえるので、十分な融資をしてもらえる可能性があります。

保育園の事業計画書のひな形、テンプレート

保育園の事業計画書の書き方は?テンプレートを基に記入例を解説

基本的に保育園の事業計画書に決まったフォーマットはありませんが、ひな形やテンプレートを活用すると項目に沿って記入するだけで過不足のない事業計画書が作成できます。

無料登録後のページにある「会社設立ナビ」にて、保育園向け事業計画書を含む、40種類以上の事業計画書をダウンロードしていただきますので、ぜひお気軽にご利用ください。

保育園の事業計画書の書き方・記入例

保育園の事業計画書を作成する際には、以下の項目の記入が必要です。

  • 創業の動機・目的
  • 職歴・事業実績
  • 取扱商品・サービス
  • 取引先・取引関係
  • 従業員
  • 借入の状況
  • 必要な資金と調達方法
  • 事業の見通し

それぞれの項目の書き方と記入のポイントを紹介するので、第三者が納得できるような根拠と具体性のある事業計画書に仕上げましょう。

創業の動機・目的

保育園を開設する目的や動機を記載します。

これまでに、保育施設の運営経験があれば、具体的に経験を伝えることで、実績のアピールになるでしょう。保育園を初めて開園する人でも、保育士や保育事業に携わっていた経験があれば、事業に活かせると判断してもらえる可能性があります。

保育園を開設する理由を記載する際は、「なぜこの場所なのか」「どうして開設したいのか」を具体的に明記するのが重要です。

職歴・事業実績

職歴・事業実績には、事業に関連する経歴を優先的に記載しましょう。

特に、チームリーダーや主任などのマネジメント経験がある人は、実績や肩書を明記することで、経営者としての素質を評価してもらえる可能性があります。

勤め先を記入するだけでなく、具体的な経験やスキルなども記入しておくとよいでしょう。保育に関連する学歴がある人も強みになるので記載するのがおすすめです。

金融機関に事業計画書を提出する場合は、最近の収入状況と自己資金を関連づけて見ているので、正直に記入しましょう。

取扱商品・サービス

取扱商品・サービスでは、簡潔に魅力を伝えられるようにするのが重要です。

「誰にどのようなサービスを提供するのか」「どのような特色があるのか」を経営者の経験と関連づけながら、わかりやすい言葉で記載しましょう。市場調査の結果も記載しておくと、保育園開設のニーズをアピールできます。

取引先・取引関係

清掃や点検など外部の業者との取引がある場合は、もれなく記載しましょう。

実績のない経営者の場合、不利な条件で契約を結ばれることも少なくないため、信頼できる取引先を探すのも重要です。信用できない取引先だと、保育園に通う子どもたちに不利益が生じるおそれもあるので、慎重に選ぶ必要があります。

従業員

保育園を開設する際は、なるべく少ない人数から立ち上げをするのも欠かせません。事業が安定するまでは、1人分の給料を支払うのも簡単ではないので、人件費が負担にならないような人数を検討しましょう。

ただし、保育施設は、子どもの年齢や人数に応じて最低限配置すべき教員の数が決まっています。人件費を意識するあまり、必要な人員まで削ってしまわないように注意が必要です。

借入の状況

借入がある人は、正直に残高や返済額を記入してください。資金調達をしたいからといって、嘘の申告をしてはいけません。

ただし、カードローンや消費者金融からの借入のように金利の高い借金がある場合は、審査のうえでマイナスになるので、早めの返済がおすすめです。借入がある場合は、返済額を稼げるような経営プランを立てる必要があります。

必要な資金と調達方法

必要な資金と調達方法は、融資を受ける際に最も重要視される項目で、設備資金と運転資金に分かれています。

設備資金は、保育園の建設費や改装費など、事業を始めるうえで必要不可欠な投資であると証明しなければなりません。業者からの見積書のような投資金額が妥当であるかを判断できる資料を提出しましょう。

運転資金は、「事業の見通し」の項目に記載する経費と整合性の取れるように記載します。
一般的な運転資金の目安は、3〜4ヶ月分程度の経費相当の金額です。ただし、自己啓発費のような一部の費用は経費と認められないため注意しましょう。

自己資金を2割程度上乗せして、融資の計画を立てましょう。

事業の見通し

一般的に、保育園を開設した直後からの黒字経営は難しい場合がほとんどです。そのため、事業の見通しでは、半年や1年以内に黒字になるような経営を計画する必要があります。

実現可能な根拠を提示したうえで、早期に黒字化できるような計画を考えましょう。事業の見通しの最後の欄には、利益の合計に、税金を考慮した金額が、借入金の返済元金以上になるのが理想的です。

保育園の事業計画書作成のポイント

保育園の事業計画書を作成する際のポイントは以下のとおりです。

  • 保育園の基本方針を明確にする
  • 商圏調査を行う
  • 損益分岐点を想定する
  • 父母のニーズを踏まえる
  • 地域との連携を図る
  • 安全の確保に努める

事業計画書を作成する際は、抽象的な内容にならないように具体的に記載しましょう。

保育園の基本方針を明確にする

保育園の基本方針が抽象的だと、審査する各機関に方向性や具体的な事業内容が伝わりません。第三者が見ても保育の方向性が伝わるように、具体的な内容を記載しましょう。

保育園の基本方針や指導方針が明確でないと、保育士によって対応が異なってしまい、子どもたちに十分な保育を提供できない可能性もあります。そのため、保育の方針や職員の指導方針なども記載することで、保育事業への取り組みやスタンスを示せるでしょう。

昨今では、保護者のニーズも多様化しているので、どのような方向性で事業を展開していくのかを明確にしておくのが重要です。

商圏調査を行う

商圏調査を行うことで、競合の状況を把握し、どこで差別化をするかの戦略を立てられます。以下のような点を調べておきましょう。

  • 近隣の保育施設の数
  • 近隣の保育施設の特色
  • 開設しようとしている保育園と似た特色を持つ保育園の現状
  • 開設を予定しているエリアの子どもの数

競合の現状を把握できれば、どの程度の売上が見込めるかやアピールできる強みなどを明確にできるため、円滑に経営を進めていけるでしょう。

損益分岐点を想定する

損益分岐点を想定していないと、十分な利益を上げられません。また、経営を安定させていくためにも、損益分岐点を意識するのが重要です。

損益分岐点が0を下回ると、赤字経営になり、事業の維持が難しくなります。以下の計算式を利用することで、損益分岐点が0になる売上高の算出が可能です。

損益分岐点=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}

事業開始前に正確な変動費や売上高は把握できませんが、想定される数値を基に、予想される損益分岐点を算出しましょう。

父母のニーズを踏まえる

保護者が保育園に求めるニーズはさまざまです。保育園としてどのようなニーズに答えていくかを明確にして、事業計画を立てましょう。

たとえば、小規模保育事業の場合、給食の提供が求められるため、食育を取り入れて欲しいというニーズも考えられます。また、昨今では災害や事故・子どもを狙った犯罪も増えていることから、防災や防犯・事故防止に対しての要望も想定できるでしょう。

すべての保護者のニーズに応えるのは難しいので、保育園の方針と照らし合わせながら検討していく必要があります。

地域との連携を図る

保育園でできる子どもたちの保育や教育は限られています。地域との連携を図りながら社会全体で保育を提供するのが重要です。地域住民や近隣の学校との交流によって、保育園だけでは得られなかった保育を提供できるでしょう。

また、保育園を開設する際は、子どもの声によるトラブルを防ぐために近隣の住民の理解も欠かせません。必要に応じて説明会を開催して地域と良い関係が築けるようにする必要があります。

安全の確保に努める

保育園を運営する際には、子どもの安全確保が最優先事項です。屋内外でのリスクを抑えるためにも、施設の安全性の担保や定期的なメンテナンスが欠かせません。

そのため、保育園の設備点検の頻度や安全面への工夫なども事業計画書に記載しておく必要があります。また、自然災害や火災、感染症対策なども事前に考えておくのが重要です。

園外保育を実施する場合は、どのような安全対策を施すのかも考えておきましょう。

保育園の必要性が伝わるような事業計画書を作成しましょう

保育園の事業計画書は、開設を希望する自治体に保育の必要性を伝えるための重要な書類です。今までの経験を活かしてどのように事業を展開していくのか、どのような経営戦略を立てているのかを具体的な数値を交えて記載しましょう。

金融機関に融資を依頼する際に、事業計画書の内容が根拠のある具体的な内容だと返済能力を認めてもらえるため、十分な借入ができる可能性があります。

これから保育園の開設を検討している人は、ぜひこの記事を参考に、具体的な内容の事業計画書の作成を進めてみてください。事業計画書のテンプレートは、以下から無料でダウンロードできます。

保育園の経営については、以下の記事でも詳しく解説しています。


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