• 作成日 : 2025年1月30日

歯科医院の資金調達方法は?開業資金の平均や失敗しないポイントも解説

歯科医院の開業を検討する際、最初に着手することが「資金がいくら必要なのか」「資金をどのような方法で調達するか」という計画です。開業資金の準備は、医院の成功を左右する重要なステップであり、綿密な計画と効率的な資金調達が求められます。

本記事では、歯科医院の開業資金にまつわる事例や具体的な資金調達方法を解説します。

歯科医院の開業資金は平均いくら?

歯科医院を開業するには、資金が必要です。では、どのような部分に費用がかかるのでしょうか。以下、具体的な項目を挙げて確認していきましょう。

賃貸契約費用

歯科医院の開業において賃貸契約は、重要な出費項目の一つです。特に、都市部では賃料が高額になりやすく、立地選びが開業資金に大きな影響を与えます。賃貸契約に必要な費用には、敷金、礼金、保証金、前払い賃料、仲介手数料などが含まれます。参考までにテナントの場合、敷金は一般的に賃料の1ヶ月から3ヶ月分、礼金は賃料の1ヶ月から2ヶ月分が目安です。さらに、保証金として賃料の6ヶ月から12ヶ月分が目安と言われています。

内装工事費用

内装工事費用は、患者が快適に過ごせる環境作りに直結します。一般的に30坪規模の歯科医院で1,000万円から2,000万円が目安です。この費用には診療室や待合室の設計・施工、給排水や電気工事が含まれます。また、建築基準法(第28条)に基づく居室の採光および換気に関する基準の遵守や、消防法(第17条)の消防設備の設置が求められます。

内装工事で失敗しないポイントは、設計段階で将来の拡張も見据えた計画を立てることです。専門業者と綿密な打ち合わせを行い、予算超過を防ぐための見積もり精査が重要です。

医療機器費用

歯科医院の中心となる医療機器の費用は、設備の充実度によって大きく異なります。診療台1台あたり250万円から500万円、レントゲンやCTスキャンなどの画像診断機器は500万円から2,000万円程度が相場です。医療機器の導入には薬機法(医薬品、医療機器などの品質、有効性および安全性の確保などに関する法律)の規制を遵守する必要があります。

(※医療機器の相場に関しては、「医療機器 歯科医院 相場」と検索すると目安の情報

がわかるため、各自でご確認することをおすすめします)

費用を抑える方法の一つとして、中古機器の活用やリース契約が挙げられます。ただし、長期的な耐用年数やメンテナンス費用も考慮して選定することが重要です。

運転資金

開業後しばらくは収益が安定しない可能性があるため、運転資金の確保が不可欠です。スタッフ給与や光熱費、材料費などの固定費に加え、予期しない出費にも対応できるくらいの金額が必要です。一般的には開業後6ヶ月分の運転資金は1,000万円程度を準備するのが適切と言われています。運転資金の調達には、日本政策金融公庫の新規開業資金制度や、地方自治体の融資制度が活用可能です。金融商品を選択する際には、利率や返済期間を事前に精査することが成功のカギとなります。

求人・広告費用

スタッフ募集や患者獲得のための広告費用も重要な初期投資です。ご参考までに歯科衛生士の求人費用は一人あたり10万円から100万円、広告費用はホームページ作成やチラシ配布で100万円から200万円が目安と言われています。特に、インターネット広告やSNSを活用したマーケティングは、近年の集患手段として効果的です。

求人広告では、職業安定法に基づいて募集する労働条件の明示が必要です。また、効果的な広告を行うにはターゲット層を明確にし、専門業者と連携して戦略を練ることが成功のポイントです。

歯科医院の開業資金を調達する方法

歯科医院の開業には多額の資金が必要です。一般的に5,000万円から1億円程度と言われていますが、立地や規模によって金額が異なります。ここでは、歯科医院の開業資金を調達するための主な方法について詳しく解説しましょう。

自己資金

自己資金は、開業資金の基盤となる重要な部分です。開業資金全体の20%から30%を自己資金として準備するのが一般的とされ、目安として500万円から1,000万円が推奨されます。自己資金の割合が高いほど、金融機関からの融資を受けやすくなる傾向があります。

自己資金を準備する際には、生活費を無理に削って過剰に積み立てるのは避ける形で長期的な運営の視点を持つことが重要です。また、融資制度にしておくことで、税務署からの指摘を回避できます。

金融機関からの融資

金融機関からの融資は、歯科医院開業の資金調達で最も一般的な手段です。また、後述の日本政策金融公庫の「新規開業資金」や民間銀行の事業融資が利用できます。特に、政策金融公庫の融資は低利率で長期返済が可能で、自己資金が少ない場合でも融資が受けやすい特徴があります。

申請時には、事業計画書や資金計画書の提出が必要です。事業計画書には収支予測や集患戦略を具体的に記載することで、審査が通過しやすくなるでしょう。さらに、利息控除を受ける際は、利息の正確な計上が求められます。

補助金・助成金

補助金や助成金は返済不要の資金調達方法として魅力的ですが、申請には条件が伴います。代表的なものに、中小企業庁が提供する「ものづくり補助金」や地方自治体独自の助成金があります。これらは、クリニックの設備投資やIT導入に活用できます。

申請書類には、具体的な事業計画と費用見積もりが求められ、審査には時間がかかるため、早めの準備が必要です。申請にあたっては、補助金など適正化法を遵守し、不適切な費用請求が行われないよう注意が必要です。

親族や知人からの援助金

親族や知人からの援助は、利息や返済義務が発生しない場合が多く、柔軟性のある資金調達方法です。ただし、援助を受けた際には贈与税の課税対象になる可能性があるため注意が必要です。贈与税の基礎控除額は年間110万円であり、これを超える援助については、相続税法第21条に基づく申告義務があります。

また、援助を受ける際にはトラブルを防ぐため、金銭貸借契約書を作成し、条件や返済計画を明確にしましょう。この際に、弁護士や税理士に相談して法的・税務的なリスクを最小限にすることが重要です。

ビジネスローン

ビジネスローンは、金融機関以外のノンバンク系企業から資金を調達する手段です。担保不要で迅速な融資が可能なため、急な資金ニーズに対応できます。ただし、金利が高めに設定されている場合が多く、計画的な返済が求められます。ビジネスローンを利用する際には、利息制限法第1条の上限金利を確認し、不当な金利設定を回避することが重要です。また、契約前に返済条件や手数料を十分に確認し、短期的な資金調達として利用するのが効果的です。

歯科医院の開業資金に活用できる融資の種類

歯科医院の開業には、さまざまな融資制度を活用することが資金調達のカギとなります。ここでは、歯科医院の開業資金に活用できる主な融資の種類について、それぞれの特徴や注意点を解説します。

日本政策金融公庫による公的融資

日本政策金融公庫の「新規開業資金」は、歯科医院の開業資金に広く利用されています。低金利かつ長期返済が可能で、担保や保証人の要件が緩和されているのが特徴です。融資額は最高7,200万円(うち運転資金4,800万円)で、自己資金が少ない開業希望者にも門戸が開かれています。

融資の申請には、詳細な事業計画書や資金計画書の提出が必要です。また、融資後、利益率や雇用に関する一定の目標を達成した場合、利率を0.2%引下げる「創業後目標達成型金利」もあります。公庫の融資は、特に初期投資が大きい開業時に適した選択肢です。

信用保証協会による制度融資

信用保証協会の制度融資は、地方自治体や金融機関が連携して提供する融資制度で、特に信用力が不十分な場合でも利用できるのが強みです。信用保証協会が融資の保証人となるため、金融機関が融資を実行しやすくなります。

利用には保証料が発生しますが、多くの場合、自治体が一部を負担する助成制度を設けています。例えば、「中小企業信用保険法」(第3条の2)に基づく保証枠が適用され、無担保でも8,000万円を上限とする融資が可能です。また、地方自治体の特定産業支援プログラムにより、融資条件が優遇されるケースもあります。申請前に自治体窓口や税理士に相談するとよいでしょう。

銀行や信用金庫によるプロパー融資

プロパー融資とは、銀行や信用金庫が自らの判断で実行する融資で、信用保証協会の保証が不要なものを指します。この融資は高額な資金調達が可能ですが、審査が厳しく、自己資金比率や事業計画の実現可能性が重視される傾向があります。

プロパー融資を成功させるには、しっかりとした事業計画書を作成し、具体的な収益モデルや返済計画を提示する必要があります。また、銀行法(第13条)に基づき、金融機関が提示する契約条件や金利を事前に確認し、不利な条件を回避することが重要です。特に、長期的な返済負担を考慮し、低金利の融資を優先的に検討しましょう。

リース会社などによるノンバンク融資

ノンバンク融資は、銀行以外のリース会社やファイナンス会社が提供する資金調達手段で、医療機器の購入や内装工事費用に利用されることが一般的です。リース契約と組み合わせることで、初期投資を抑えつつ必要な設備を導入できます。

ただし、ノンバンク融資は銀行融資に比べて金利が高い傾向があります。利息制限法(第1条)に基づき、法定金利を確認することが重要です。また、契約時には返済期間や総支払額を精査し、短期間で完済できるプランを選ぶと、コストを最小限に抑えられます。ノンバンク融資は、迅速な資金調達や特定用途への資金充当を希望する場合に適しています。

歯科医院の開業資金調達で失敗しないためのポイント

歯科医院の開業資金調達は、将来の経営を左右する重要な要素です。失敗すれば、開業後の経営に大きな影響を及ぼす可能性があります。ここでは、歯科医院の開業資金調達で失敗しないための重要なポイントを詳しく解説します。

開業に必要な資金を把握する

開業資金を正確に把握することは、成功する資金調達の第一歩です。必要な資金は主に賃貸契約費用、内装工事費用、医療機器費用、運転資金などに分かれ、それぞれの項目で適正適切な見積もりを行う必要があります。例えば、内装工事費用は30坪規模で2,000万円、医療機器費用は500万円から2,000万円が一般的な目安です。

また、資金の内訳が不明確だと、融資審査での信用度が低下します。したがって、中小企業等経営強化法第2条に基づく経営力向上計画を立てることで、金融機関への説明が容易になり、審査通過率が向上します。専門家に相談して詳細な資金計画を作成することが大切です。

資金調達後の返済計画を作成する

資金調達後の返済計画を明確にしておくことで、長期的な経営リスクを回避できます。そのため、返済計画では、融資額、金利、返済期間を考慮し、毎月の返済額が無理のない範囲に収まるように設定する必要があります。一般的に開業後の収益が安定するまでの期間(6ヶ月から12ヶ月が目安)は、手元資金を厚くしておくことが推奨されます。

また、返済期間や金利を交渉する際には、借入先の契約条件を詳しく確認し、利息制限法(第1条)の範囲内で計画を立てることが重要です。さらに、収益予測を基にキャッシュフロー計算を行い、収益と返済額のバランスを確認することで、健全な運営を目指せます。

自己資金0の開業はなるべく避ける

自己資金を全く用意せずに開業を目指すことは、融資審査の難航や経営リスクの増加につながります。前述の通り。一般的に開業資金の20%から30%を自己資金として準備するのが望ましいとされています。例えば、開業資金が3,000万円の場合、600万円から900万円の自己資金を目安にします。

自己資金があると、金融機関に対する信用度が高まり、融資条件が有利になる可能性があります。また、贈与や援助で得た資金については、贈与税(相続税法第21条)の対象となる場合があるため、正確な記録と申告が必要です。無理のない範囲で自己資金を積み立て、資金調達の計画を立てることが成功への第一歩です。

綿密な計画と適切な資金調達で歯科医院開業を実現しよう!

歯科医院の開業資金調達は、必要な費用を把握し、自身に適切な調達方法を選ぶことが成功への近道です。自己資金の準備や融資制度の活用、返済計画の明確化など、各ステップで適切な判断を下すことで、スムーズな開業が可能になります。

また、専門家の助言を受けることで、法的リスクを回避し、より有利な条件で資金を調達できる可能性が高まります。本記事を参考に、事前準備を万全に整え、自信を持って歯科医院の開業を目指しましょう。


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