• 作成日 : 2023年1月20日

子会社を設立するメリット・デメリットは?設立手続きや注意点も解説!

子会社の設立には、節税や意思決定がしやすくなるなどのメリットがあります。一方で手間がかかることや過度な節税対策により税務調査のリスクが上がるなどのデメリットもあり、子会社を設立するかどうかには慎重な判断が求められます。

この記事で「子会社とは何か」という基礎的な知識を整理し、設立により得られる具体的なメリット・デメリットを紹介していきますので、会社経営に携わっている方、子会社設立に関心のある方はぜひ参考にしてください。

そもそも子会社設立とは?

「子会社」とは、別の会社に50%超の議決権を持たれている会社です。50%超を持つ別の会社とは「親会社」のことであり、それぞれ支配される会社・支配する会社という性格を持ちます。

会社法では次のように定義されています。

会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。

引用:e-Gov法令検索 会社法第2条第3号

条文にある通り、議決権の過半数を別の会社に持たれているときにだけ子会社になるわけではありません。親会社だけで過半数に満たない場合でも、「親会社と同調して議決権を行使する特定の者」を合わせて過半数に達する場合などには、当該議決権に関わる会社は子会社となります。

関連会社設立との違いは?

子会社と似た用語に「関連会社」があります。関連会社は、会社の議決権の20~50%を別の会社に持たれている会社のことです。子会社ほどではないものの、大きな権限を別の会社に握られている会社を指します。

なお、関連会社においても20%以上の議決権を持たれていることは絶対条件ではありません。1つの会社に20%以上の議決権を持たれていなくても、特定の者と合わせて20%を超えるなら関連会社となります。また、親会社の社員が役員に就任していることなども影響します。

合併との違いは?

「合併」とは、複数の会社が統合して1つの会社になることを指します。吸収される会社は消えて吸収する側の会社が存続する「吸収合併」。既存の会社は消えて新たな会社が生まれるのが「新設合併」です。

いずれにしても別の会社と統合して1つの法人として活動することになるため、別個の法人として成立する親会社・子会社の関係とは異なります。

子会社の種類は?

子会社はさらに細分化できます。「完全子会社」「連結子会社」「非連結子会社」の3つを以下でご紹介します。

完全子会社

完全子会社は、親会社に議決権の100%が握られている子会社のことです。握られている議決権が50%を超えた時点で子会社となりますが、50%超と100%の議決権とでは親会社が実行できることに差があります。例えば定款を変更するときなど、出席株主の過半数の賛成では足らない決議事項もあるからです。

これに対し100%の議決権を持つ「完全親会社」は、完全に子会社をコントロールすることができます。

連結子会社

連結子会社は、連結決算により業績が親会社の財務情報に合算される子会社を指します。連結決算とは、関連会社なども含めたグループ全体でする決算方法のことです。グループ会社全体の貸借対照表損益計算書連結財務諸表として含まれます。

この連結決算の有無に着目したときの呼び名がこの「連結子会社」と、次項で説明する「非連結子会社」です。

非連結子会社

非連結子会社とは、子会社ではあるものの、連結子会社に該当しない会社を指します。「重要性の原則(重要性の乏しいものに関して簡便な会計処理表示を認めること)」に基づいて連結決算から除外されます。

例えば、支配が一時的である会社、連結することで著しい誤認を生むおそれがある会社、連結化することの重要性が乏しい会社である、などと認められた場合の子会社が非連結子会社です。

子会社を設立するメリットは?

子会社設立のメリットとしてよく挙げられるのは「節税効果が得られる」「経営のスピードが上がる」「リスクヘッジになる」といったものです。それぞれの内容を以下から詳しく見ていきましょう。

節税効果がある

子会社設立で節税効果が得られることがあります。例えば、自社の事業の1つを子会社化する場合です。法人税課税所得の大きさに応じて課されるため、親会社と子会社で課税所得を分けた方が全体として納めないといけない法人税を小さくできることもあります。特に、一定以下の所得に対して適用できる軽減税率の仕組みを活用することで、税額を抑えることも可能です。

また、子会社設立に際して親会社から従業員や役員が転籍する場合、形式的には再就職となるため、退職金の支給による経費計上で利益を小さくできることもあります。

経営スピードが上がる

一般的に、会社の規模が大きくなると取締役などの意思決定に関わる人の数が増え、意思決定に時間がかかるようになります。子会社の設立により特定の事業に関する意思決定機能を子会社に移転できれば、意思決定のスピードが上がり、ひいては経営そのもののスピードが上がります。

リスクヘッジになる

親会社と子会社は意思決定の面で強い繋がりを持ちますが、別の法人格であることに変わりありません。別の主体として活動しますので、一方が行政上の処分を受けたからといって他方も処分を受けるわけではありません。

子会社が業務停止等の処分を受けた場合、当該子会社は業務を止めないといけなくなり、評判も落としてしまいます。親会社も一切の影響を受けないわけではありませんが、自社が直接処分を受ける場合に比べれば損失も小さく留められるでしょう。

子会社を設立するデメリットは?

子会社設立の判断において、ポイントになるのはデメリットとのバランスです。次に説明するデメリットが自社にとって大きな問題とならず、メリットの方が大きいと評価できるときに、子会社設立を進めると良いでしょう。

設立に手間がかかる

子会社の設立も、1つの会社を新たに立ち上げることに違いはありません。一般的な会社設立同様、様々な手続きを進めていかなくてはなりません。子会社設立の場合にも、定款の作成、出資の履行、登記申請が必要です。

子会社設立までには多くの手間がかかることでしょう。専門家に依頼することで省力化は図れますが、何もかもを丸投げするわけにもいきません。重要な事項は自社で検討、決定しなければなりませんし、費用の負担も発生します。

損益通算ができない

完全子会社の設立を除き「損益通算」ができません。つまり、赤字を黒字と相殺して課税所得を小さくすることができないという意味です。

1つの法人であれば、赤字が発生してもその分を節税に活用できます。しかし、親会社と子会社は別の法人ですので、原則としてそれぞれの赤字を他方の黒字と相殺することはできません。

グループ全体としては赤字であるにもかかわらず、法人税を納めないといけない状況も生まれる可能性があります。子会社設立のメリットとして「節税効果」を挙げましたが、財務状況によっては逆効果になる可能性もあることは知っておかなければなりません。

税務調査のリスクがある

「損益通算ができないことを考慮しても、節税効果が得られそうだ」という状況であっても、過度に利益調整をしていると税務調査の対象となり、税務処理違反の指摘を受ける可能性が高まります。

特に親会社と子会社との間で行う取引には要注意です。親子会社間で仕入れをしたり売却をしたりすると、容易に利益の調整ができてしまいます。事業遂行のため必要な取引をしたのであれば基本的に問題ありませんが、節税目的で取引をしていると税務調査で不正を疑われる可能性があるでしょう。

子会社を設立する手続き・流れは?

子会社を設立するときも、一般的な会社立ち上げとおおむね同じ流れで手続きを進めていくことになります。①定款作成、②出資の履行、③登記申請の3つのステップに分けて概要を説明します。

定款作成

会社設立のファーストステップは定款の作成です。会社の根本原則として機能する定款がなくては会社を立ち上げられません。

そして、定款に必ず記載しなければならないのが「絶対的記載事項」です。会社名を意味する「商号」、当該会社がする事業内容を表す「目的」、その他「本店の所在地」などの基本情報を定めていきます。

また、作成した定款は公証人にチェックしてもらわなければなりません。この手続きを「認証」と呼びます。なお、株式会社の設立には定款の認証が必要ですが、持分会社である合同会社、合資会社、合名会社では定款の認証は必要ありません。

資本金・出資金の払い込み

資本金・出資金の払い込みも必要です。多く払い込みをした者が多くの株式を持ち、多くの議決権を保有することになります。そのため子会社を設立するのであれば、出資者を分散しすぎないように調整する必要があります。完全子会社の設立であれば、全ての株式を親会社が保有できるように出資しましょう。

登記申請

登記されることで、会社は法人格を得ます。当該会社の本店所在地を管轄とする法務局で申請を行い、その会社の存在を公に示すための手続きを進めましょう。

登記に関しては司法書士に依頼するとスムーズに手続きを進められます。不備があると登記申請ができるまでの期間が長くなってしまいますので、プロに任せることがおすすめです。

また、定款も会社経営に大きく影響を与える存在ですので、後々トラブルが起こらないように弁護士などの法律家からアドバイスを受けておきましょう。節税効果を期待する場合には税理士も活用すべきです。

子会社を設立するときの注意点は?

子会社を設立するとき、定款の「目的」の記載方法には注意しましょう。親会社の目的との同一性がポイントとなります。また、子会社設立による恩恵を最大限活かすには、親子間の関係を良好に保つことも大事です。

会社の「目的」に同一性があること

会社は、定款に記載した「目的」の範囲内で活動を行います。その範囲を逸脱している場合、定款に反した行為をしたことになってしまいます。そして、子会社設立における発起人は親会社となりますので、子会社の事業内容、つまり子会社側の定款に記載する「目的」と親会社の「目的」に同一性が認められなければなりません。

とはいえ、同一性を認めてもらうために、一言一句同じ文言で記載をする必要はありません。

「不動産賃貸業」に対する「不動産賃貸管理業」のように、事業内容がおおむねカバーされていれば、問題ないとされています。

会社間の関係を良好にすること

親会社と子会社の関係を良好に保つことが、子会社設立後の事業を成功させる上でポイントとなります。互いの存在を有効活用できることでシナジー効果が得られるため、グループ全体で企業価値を高められます。

このことは特に他社を子会社化するときに重要なことです。初めから親会社ありきで設立される子会社と異なり、独立して活動してきた会社を子会社とする場合には親子間で衝突が生まれる可能性もあります。

事前に入念な調査を行い、「この会社を子会社とすることにどれだけのリスクがあるだろうか」と慎重に評価を行う必要があります。

専門家の協力を仰いで子会社設立の検討を進めよう

子会社を設立することが全体として利益になるのかどうかは、多方面から評価をしなければ判断ができません。少なからずリスクは発生しますが、デメリットを上回るメリットが得られるのであれば子会社を設立した方が良いと判断することができます。

ただし、その評価は簡単ではありません。弁護士や税理士など、複数の専門家を活用して検討を進めましょう。

よくある質問

子会社を設立するメリットは?

子会社を設立することで、法人税の節税や、意思決定が迅速にできるようになるなどのメリットが得られる可能性があります。詳しくはこちらをご覧ください。

子会社設立の手続き・流れは?

子会社を設立する際、親会社の“目的”との兼ね合いを考慮しつつ子会社の定款を作成し、親会社が過半数の議決権を取得できる形で出資。そして、一般的な会社設立同様に登記申請を行います。詳しくはこちらをご覧ください。


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