• 作成日 : 2025年1月28日

会社(法人)と個人事業主どちらが良い?違いや一人で会社を作る方法を解説

会社(法人)とは人と同じ権利や義務が法律で認められた組織、個人事業主とは個人で事業を営んでいる人のことです。起業や独立をするなら、法人を設立するか個人事業主として開業するか選択する必要があります。

法人と個人事業主の違いは他にも様々にあるため、どちらか決める前にメリット・デメリットなどを知っておきましょう。

個人事業主・会社(法人)とは?

個人事業主とは、会社(法人)を設立せずに個人で事業を営んでいる人のことです。開業届を提出することで個人事業主になれます。個人事業主に似た「フリーランス」がありますが、フリーランスは特定の会社・団体に属さず業務を行う働き方のことです。

会社(法人)とは、人と同じく権利を持つことや義務を追うことを法律で認められた組織を指します。法務局にて法人登記の申請をすることで法人設立が可能です。法人には、株式会社・NPO法人・一般社団法人など様々な種類があります。

個人事業主・会社(法人)との違い

個人事業主と会社(法人)の主な違いは以下の通りです。

個人事業主会社(法人)
開業・起業方法税務署に開業届を提出法務局で法人登記の申請
税務署に法人設立届出書を提出
形態個人事業主のみ
設立費用0円
  • 株式会社:約17万円〜
  • 合同会社:約6万円〜
税金
  • 所得税
  • 個人住民税
  • 個人事業税など
  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税など
社会保険
  • 健康保険
  • 厚生年金
  • 介護保険
  • 子ども・子育て拠出金
経費の範囲経費となる範囲が比較的狭い経費となる範囲が比較的広い
資金調達の方法
  • 融資
  • 補助金や助成金
  • クラウドファンディングなど
  • 融資
  • 補助金や助成金
  • クラウドファンディング
  • 株式の発行
  • 社債の発行など
会計年度暦年単位事業年度単位
社会的な信用度比較的低い比較的高い
責任の範囲無限責任
  • 株式会社と合同会社:有限責任
  • 合資会社:有限責任と無限責任が各1人以上
  • 合名会社:無限責任
事業の承継事業資産の相続・贈与・譲渡等
  • 株式の相続・贈与・譲渡
  • 事業の譲渡等
事業の廃止方法税務署に廃業届を提出法務局で解散登記の申請、
税務署に異動届を提出など

設立費用・税金など、個人事業主と会社(法人)の違いは非常に多いです。上記のような違いをきちんと比較して、個人事業主と会社のどちらで起業するか検討しましょう。

個人事業主のメリット・デメリット

個人事業主の主なメリット・デメリットを紹介します。個人事業主として開業することを考えている人は、しっかり確認してください。

個人事業主のメリット

個人事業主のメリットは主に以下の3つです。

  • 開業が簡単にできる
  • 事業の収益がほぼ収入となる
  • 必要な手続きや事務作業が少ない

1つ目のメリットは、個人事業主として簡単に開業できることです。基本的には税務署に開業届を提出すれば完了します。法人のような設立費用も発生しません。

2つ目のメリットは、事業の収益がほぼ個人収入となることです。収益の中から税金・保険料を納めたり必要経費を確保したりすれば、残りは自由に使えます。能力次第では、会社員の平均年収以上の収入を得ることもできるでしょう。

3つ目のメリットは、必要な手続きや事務作業が少ないことです。個人事業主の主な事務作業は契約書の取り交わし・請求書の発行・確定申告などで、そこまで多くありません。必要な手続きに追われて、事業に費やせる時間がかなり減るような心配もないでしょう。

個人事業主のデメリット

個人事業主のデメリットは主に以下の2つです。

  • 所得税の負担が重い
  • 社会的信用が低い

1つ目のデメリットは、個人事業主の所得が増えると税金の負担が重くなることです。最低でも5%、最大で45%も所得税を納めなければなりません。所得の半分近くが税金で引かれてしまうため、所得が一定額を超える人は法人化した方が節税になります。

2つ目のデメリットは、法人よりも社会的信用が低く見られる可能性があることです。法人は、登記を誰でも閲覧できるので透明性が高く、事業面や財務面での信頼を得やすい傾向にあります。

対して個人事業主は、事業実態が確認しにくいです。取引先の考え方によっては、個人事業主だと契約できないこともあり得ます。

参考:国税庁

会社(法人)のメリット・デメリット

会社(法人)のメリット・デメリットを紹介します。会社の設立を考えている人は、しっかり確認しましょう。

会社(法人)のメリット

会社(法人)の主なメリットは、以下の3つです。

  • 節税効果に期待できる
  • 社会的信用を得やすい
  • 会社が倒産した時の負担が少ない

1つ目のメリットは、節税効果に期待できることです。個人事業主が払う所得税は累進課税のため、所得が増えるにつれて税率も上がります。一方、法人が払う法人税は比例課税のため、基本的には15%〜23.4%となり所得が増えても税金の負担はほぼ変わりません。

2つ目のメリットは、社会的信用を得やすいことです。法人登記は誰でも確認できるため事業内容の透明性が高く、法人の方が新規契約や融資などスムーズに進むこともあるでしょう。人材も個人事業主より集まりやすい可能性があります。

3つ目のメリットは、会社が倒産した時の負担が少ないことです。法人は有限責任であるため、倒産しても責任を負うのは出資した金額までとなります。負債額が膨れあがっても、出資額を超える額を返済する義務はありません。対して個人事業主は無限責任なので、負債額は全額払う必要があります。

※参考:国税庁

会社(法人)のデメリット

会社(法人)の主なデメリットは、以下の2つです。

  • 起業の手続きに手間がかかる
  • 役員報酬を超える金額は受け取れない

1つ目のデメリットは、起業の手続きに手間がかかることです。実印を作る・定款を作成し認証を受ける・登記申請をする、など手順が多く時間もかかります。また、法人設立の費用も発生し、株式会社なら約22万円、合同会社なら約10万円が必要なので余裕を持って準備しておきましょう。

2つ目のデメリットは、役員報酬を超える金額は受け取れないことです。個人事業主だと税金や経費以外の収益は全て個人収入にできますが、法人だとそこまで自由がききません。会社の収益が大きく伸びても基本的に役員報酬の分しかもらえず、報酬額も1年間は固定です。

※参考:総務省

個人事業主から会社を設立した方が良いケース

ここからは、売上や事業拡大の点から法人化した方が良いケースを紹介します。

売上高が1,000万円を超えている

個人事業主としての売上高が1,000万円を超えている場合は、会社の設立を検討してみましょう。

消費税の納税義務は、原則として基準期間における課税売上高によって判定されます。基準期間における課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の納税義務者となります。基準期間とは、個人事業主であれば前々年、法人であれば前々事業年度です。

個人事業主が新たに開業した場合、開業初年度から課税売上高が1,000万円を超えたとしても、その売上を元に消費税の納税義務者となるのは2年後です。

そして2年後のタイミングで法人化すると、今度は法人の基準期間の課税売上高で納税義務を判定するため、引き続き2年間は消費税の納税義務が発生しません。

ただし、2023年10月から始まったインボイス制度の影響により、インボイス登録をしなかった場合、取引先から取引条件の見直しを求められる場合があります。

インボイス登録ができるのは消費税の課税事業者だけなので、消費税の負担を抑えるためだけに法人化を検討した場合、思った通りの結果が得られないケースもあるため注意が必要です。

参考:国税庁

年間所得が800万円を超えそう

年間所得が800万円を超えそうな個人事業主も、会社の設立を視野に入れるのがおすすめです。800万円を超えると、法人化した方が税金が安くなる可能性があります。

年間所得所得税法人税
700万円97万4,000円105万円
800万円120万4,000円120万円
900万円143万4,000円143万2,000円
1,000万円176万4,000円166万4,000円

※参考:所得税の税率法人税の税率、法人税は「資本金が1億円以下」かつ「適用除外事業者以外」の税率で計算

上記のように、法人税の方が安く済むことが分かります。年間所得が800万円なら4,000円、900万円なら2,000円、1,000万円なら100,000円の差が生じます。

※今回は単純に所得税と法人税の税率のみを使って比較しています。役員報酬にかかる所得税や法人化した場合の社会保険料なども加味して比較した場合、異なる結果になる可能性がありますのでご了承ください。

従業員を雇って事業拡大をしたい

従業員を雇って事業を拡大したいと考え始めたタイミングで、法人化を検討する個人事業主もいます。

例えば、法人化をすると株式や社債の発行など資金調達の選択肢が増えるため、多額の資金を用意しやすくなり事業の発展にも役立てられるでしょう。

また、採用活動をした時に求職者が集まりやすいというメリットもあります。個人事業主よりも法人という形態の方が、給料や社会保険などがしっかり準備されていると思われる傾向にあるためです。

法人相手の事業を行いたい

法人相手の事業を行いたい個人事業主も、会社の設立を考えてみるのがおすすめです。

個人事業主でも法人相手の事業は行えますが、企業によっては取引を法人に限定している場合もあるでしょう。

法人向けの事業をメインでやっていきたい場合は、会社を設立した方が社会的信用度が上がって営業がうまくいく可能性があります。

個人事業主が1人で会社を設立するには?

個人事業主が1人で会社を設立する手順を解説します。

  1. 会社の基本情報を決める
  2. 実印を作る(任意)
  3. 定款を作成し認証を受ける
  4. 資本金を払い込む
  5. 登記申請書類を作成し提出する

最初に、商号・資本金の額・所在地といった基本情報を決めます。後に作成する定款へ記載する情報でもあるので、一つずつ丁寧に決めていきましょう。

登記申請で必要な会社用の実印を作成します。令和3年2月15日から、登記申請をオンラインで行う場合は印鑑の提出が任意となりましたが、設立後に使用する可能性もあるので作っておくのがおすすめです。

会社の基本的なルールを定めた定款を作成します。商号や事業目的などの「絶対的記載事項」は法律で記載することが義務付けられているため、必ず記載してください。作成できたら公証役場にて認証を受けます。

認証を受けたら、発起人の口座に資本金を払い込んでください。登記申請で資本金の払い込みを証明する書類が必要となるため、通帳の表紙・通帳の1ページ目・払い込み内容が印字されたページを印刷しておきましょう。

最後に登記申請書類を作成し法務局で提出します。定款や資本金の払い込みを証明する書類なども添付してください。申請すると約7日〜10日後に登記が完了し、会社設立となります。

さらに詳しく知りたい人は「会社設立マニュアル」をご参照ください。

※参考:法務省法務局

1人で会社を設立する際の注意点

個人事業主が会社を設立する際に注意すべきことがいくつかあります。法人化を決定する前に確認しておきましょう。

社会保険(健康保険・厚生年金)に切り替える

法人化した場合、社会保険を切り替える必要があります。個人事業主が加入するのは国民健康保険と国民年金ですが、法人が加入するのは健康保険と厚生年金です。

法人設立から5日以内に、会社所在地を所轄する年金事務所で手続きをしてください。

売り上げに関わらず法人住民税が発生する

法人化すると、赤字でも法人住民税を払わなければなりません。法人税や法人事業税は免除となりますが、法人住民税は最低でも7万円は納める必要があります。

個人事業主の収益が赤字の場合も住民税を納めますが、法人住民税ほど高くありません。例えば、東京都民は4,000円です。

他にも、消費税や従業員がいる場合は源泉所得税なども免除されません。

※参考:主税局

役員報酬のルールを確認する

会社を設立したら役員報酬を決めなければなりません。役員報酬とは、取締役や監査役などの役員に支払われる報酬のことです。

役員報酬は会社設立から3ヶ月以内に決める必要があり、3ヶ月を過ぎると損金として計上できません。

また、役員報酬は定款もしくは株主総会で決定し1年間は固定です。決定した後は、毎月同額の役員報酬が支払われます。

会社(法人)と個人事業主の違いをしっかり確認しましょう

会社(法人)と個人事業主の違いは、設立費用や納める税金の種類など様々です。どちらにもメリット・デメリットがありますが、売上が1,000万円を超える場合や所得が800万円を上回る場合は、法人化の選択も検討しましょう。

会社(法人)と個人事業主の違いを踏まえて、どちらの形態で起業・独立するか検討してください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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