- 作成日 : 2022年12月22日
インドネシアで会社設立する方法は?個人事業主として起業できるのかも解説!
インドネシアで起業して、会社を設立したいと考えている人もいることでしょう。人口2億5,000万人のインドネシアは巨大な市場を有しており、中間所得層も急激に増えています。物価や人件費も安いため、日本人が起業するにはメリットが多い国の一つといえるでしょう。その一方、外国資本が厳しく制限されているため、どのような会社形態で起業するかは十分な検討が必要です。
この記事では、インドネシアで日本人が起業するメリット・デメリット、会社設立の方法・費用、個人事業主でも働けるかを解説します。インドネシアでの起業を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
インドネシアで起業・会社設立するメリット・デメリットは?
まずは、インドネシアで日本人が起業・会社設立するメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
インドネシアで起業するメリットは、以下の通りです。
- 巨大な消費市場
インドネシアの人口は、日本の倍以上となる約2億5,000万人で、市場は巨大です。さらに、中間所得層が急激に増えており、この10年で12倍になっています。日本国内の市場は人口減少や少子高齢化で縮小するなか、この巨大かつ拡大が進む消費市場は大きな魅力です。
- 歴史的に親日的
第二次世界大戦後にインドネシアの独立を日本が支援したことから、インドネシアは「世界最大の親日国家」といわれています。調査で「日本が好き・大好き」と答える人は9割以上に上り、日本語学習者数も中国に次いで世界第2位。日本文化や製品への人気も高まっています。そのような日本に対する愛着・理解は、日本人の起業にとって追い風となるでしょう。
- 安価な物価・人件費、豊富な資源
インドネシアは日本と比べて物価・人件費は安く、低税率です。工場を建設するなら、土地代や設備投資の費用は抑えられ、法人税も節約できます。また、農林水産物や天然ガス、石炭など天然資源も豊富です。
デメリット
インドネシアでの起業には、以下のようなデメリットもあります。
- 厳しい外資規制・不安定な法律
ほぼ全ての業種に厳しい外資規制があり、外資が全く参入できない業種もあります。法律は不安定で、予告なしに法令が変更され、法令の受け取り方が役人によって異なることも少なくありません。労働法は労働者保護の傾向が強いため、現地人を正社員で雇用すると解雇は非常に困難です。
- 未整備なインフラ
交通インフラが未整備のため、各地で深刻な交通渋滞が連日発生しています。輸送業務では、渋滞による業務損失が出るケースもあります。電力も、急激な経済発展で需給が逼迫し、各地で停電が頻発している点もデメリットです。
- イスラム教国で文化が異なる
インドネシアは、国民の8割以上がイスラム教徒で、世界最大のイスラム国家であるため、日本とは文化が大きく異なります。豚肉とアルコールが禁じられているため、現地人との交流が難しくなることもあるでしょう。
インドネシアで会社設立する方法は?
インドネシアで会社を設立する方法をご紹介します。
外国資本投資会社(PMA)と国内資本投資会社(PMDN)
インドネシアで現地法人を設立する方法は、外国資本投資会社(PMA:Penanaman Model Asing)と国内資本投資会社(PMDN:Penanaman Model Dalam Negri)の2種類に大別されます。このどちらを設立するかを、まずは決めなくてはいけません。
- 外国資本投資会社(PMA)とは?
外国資本投資会社(PMA)とは、インドネシア人以外の外国人・外国企業の出資により設立された会社です。外資が1%でも含まれればPMAになるため、現地法人との合弁企業を設立する場合でもPMAとして扱われます。
ネガティブリスト(外資規制対象業種リスト)による規制の対象となり、業種によって投資比率などの制限を受けることもあります。事業内容がネガティブリストに該当しなければ外資100%での会社設立もできますが、制限が厳しい場合は現地企業との合弁や、内資100%での会社設立を考える必要があるでしょう。
また、国内資本投資会社(PMDN)と比べて必要な資本や費用が多額となり、最低払込資本金は25億ルピア(約2,500万円)、最低投資金額は100億ルピア(約1億円)となっています。
- 国内資本投資会社(PMDN)とは?
国内資本投資会社(PMDN)とは、インドネシアの現地人・現地企業による100%の出資で設立された会社です。ネガティブリストによる制限を一切受けないため、どのような業種の会社でも設立できます。また、最低払込資本金が1,250万ルピア(約12万円)、最低投資金額の規定はなしと、資本や費用が大幅に軽減されます。
ただし、外国人の出資が一切許されず、PMDN設立にあたってはインドネシア人の株主2人を集める必要があります。会社設立後も日本人は株主になることができず、会社の所有者はインドネシア人のままです。よほど信頼できる現地パートナーを見つけない限り、インドネシア人株主に会社を乗っ取られる大きなリスクを抱えることになるでしょう。
会社設立の流れ
インドネシアで会社を設立する流れは、以下の通りです。
- 1:ネガティブリストについての調査・検討
会社設立にあたってまず必要なのは、ネガティブリストについての調査です。その調査結果によって、日本資本のみ、あるいは現地資本との合弁でPMAを設立するのか、あるいはPMDNを設立するのか、検討しなくてはなりません。
- 2:投資登録の申請・取得
会社設立の手続きとしては、はじめにインドネシア投資調整庁(BKPM)へ投資登録を申請します。審査は「ネガティブリストに抵触していないか」が重要なポイントとなるため、事前に専門家へ確認しておきましょう。
- 3:商号の予約・決定
インドネシア法務省で商号の予約をします。すでに類似の商号が使用されている、あるいは使用禁止の単語が入っているなどの場合は、希望の商号が予約できないこともあります。少なくとも2つ以上の商号を考えておきましょう。
- 4:定款の作成
会社の定款を作成します。定款には以下の項目を記載する必要があります。
- 出資者
- 出資金額
- 取締役
- 監査役
- 会計年度
- 株式数(= 資本金の金額 ÷ 1株の金額)
- 現地不動産の賃貸契約書
定款を作成したら、現地の公証人にチェックしてもらい、認証を取得します。
- 5:納税者番号・課税事業者番号の申請・取得
税務当局に納税者番号(NPWP)の取得を申請します。NPWPが取得できたら、次に課税事業者番号(PNPKP)を申請・取得します。
- 6:銀行口座開設・資本金払込
法人の銀行口座を解説し、資本金を払い込みます。払い込む金額は、「定款に記載した資本金の金額×25%」です。
- 7:会社設立登記
法務省で会社設立の登記をします。登記には以下の書類や情報が必要です。
- 設立証書
- 所在地証明書
- 納税者番号
- 銀行口座と残高証明
手続きが完了すると、法務大臣から「承認証」が発行されます。
- 8:会社登録証の申請・取得
商業証で会社登録を申請します。申請に際しては、法務省で発行された承認証が必要です。手続きが完了すると、「会社登録証」が発行されます。
- 9:原則許可の申請・取得
投資庁で、営業許可に相当する「原則許可」を申請・取得します。原則許可は、「恒久営業許可」を取得するまでの、暫定的な営業許可の位置づけです。
- 10:必要な許認可の申請・取得
必要な許認可を投資庁で申請・取得します。許認可は、投資優遇を申請しない場合には、輸入業者登録証や外国人労働者雇用許可を申請・取得します。投資優遇を申請する場合には、まず投資資本財関税許可・優遇推薦取得手続きを行い、その後に輸入業者登録証や外国人労働者雇用許可を申請・取得します。
インドネシアで会社設立するときに必要な費用は?
インドネシアで会社設立する際に必要な費用として大きいのは、資本金と、銀行口座への払込資本金(資本金の25%)です。それぞれの最低金額は、外国資本投資会社(PMA)と国内資本投資会社(PMDN)とで異なり、それぞれ以下の通りとなります。
外国資本投資会社(PMA) | 国内資本投資会社(PMDN) | |
---|---|---|
最低資本金 | 100億ルピア (約1億円) | 規定なし |
最低払込資本金 | 25億ルピア (約2,500万円) | 1,250万ルピア (約12万円) |
インドネシアでは個人事業主としても働ける?
インドネシアで仕事をするためには、外国人労働許可書(IMTA:Ijin Mempekerjakan Tenaga Asing)の取得が必要です。IMTAは個人では申請できず、資本金10億ルピア(約1,000万円)以上の法人のみが申請できます。従って、インドネシアで日本人が、小売店やカフェなどを個人事業主として開くことは認められず、法人をスポンサーとしてIMTAを取得する必要があります。
IMTA取得の具体的な流れは、以下の通りです。
- 法人が外国人雇用計画書(RPTKA)を労働移住省提出し、承認をもらう
- 労働移住省からの推薦状を申請し、承認をもらう
- 外国人労働者利用補償金基金(DKPTKA)の指定の口座へ1,200ドルを振り込む
- IMTAが取得できる
ただし、インドネシアでリモートビジネスを行い、収入が日本でだけ発生する場合には、家族帯同ビザ(Index C317)でも問題はありません。その場合には日本での確定申告が必要です。
インドネシアで積極的に起業しよう
経済が急成長し、歴史的に親日的なインドネシアは、日本人が起業する場所として有望です。ただし、外資の制限が厳しいため、どのような会社形態で起業するかを十分考える必要があります。
国内資本投資会社(PMDN)を設立する場合には、信頼できる現地パートナーを見つけることが最重要ポイントです。インドネシアで人間関係を構築し、積極的に起業しましょう。
よくある質問
インドネシアで会社設立する方法は?
現地法人として起業する方法には、外国資本投資会社(PMA)と国内資本投資会社(PMDN)の2つの選択肢があります。詳しくはこちらをご覧ください。
インドネシアでは個人事業主としても働ける?
現地法人にスポンサーになってもらったうえで、外国人労働許可書(IMTA)の取得が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
フィリピンで起業・会社設立する方法は?必要な資金や注意点も解説!
フィリピンでの起業・会社設立を検討している方もいることでしょう。外資企業に対する経済特区があり、2050年まで生産年齢人口がそれ以外の年齢層の人口を大きく上回ると予想され、さらに親日的とされるフィリピンは、日本人の起業には大きなメリットがあ…
詳しくみるシングルマザーの起業におすすめの仕事・職種は?失敗しない方法も解説
厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、日本における母子家庭の世帯数は119.5万世帯です。 母子家庭では母親が一人で仕事と家事・子育てを両立しなければならず、収入面や生活面でさまざまな不安を抱えている方が少なくあ…
詳しくみる大学生が起業する方法は?メリットや起業家として成功するポイントも解説!
女性やシニア世代の起業家と並んで、最近増えているのが大学生の起業です。在学中から起業セミナーや実際の成功例を勉強し、なかには在学中に起業する方もいるようです。 今回は、大学生で起業するメリットや資金調達のやり方などについて解説します。 大学…
詳しくみる起業するまでのお金の考え方。会社設立に必要な資金と調達方法を解説
起業する場合、手続きや初期投資、各コストなどでお金がかかります。そこで、自己資金や金融機関・銀行からの融資を受けるなどの方法で資金調達しなければなりません。 本記事では、起業に必要なお金がいくらなのかを個人事業主と会社に分けて紹介してから、…
詳しくみる創業特区に指定!ますます盛り上がる福岡市のスタートアップ支援環境に迫る
起業するなら「ヒト・モノ・カネ」といった経営資源が集中する「東京」が当たり前だった時代は、今変わろうとしているのかもしれません。 産業の国際力強化、国際的な経済活動の拠点の形成を目的に、国は国家戦略特区、創業特区の一つとして福岡市を選定しま…
詳しくみる50代からの起業に向いている職種は?成功するコツや独立開業支援制度も解説!
これまでのビジネス経験や積み上げてきたスキルと知見、そして広く培ってきた人脈などを活かして起業したい、と考える50代のビジネスパーソンは少なくありません。では、50代で実際に起業する場合、具体的な開業方法や事業計画、または資金計画などについ…
詳しくみる