- 更新日 : 2024年12月2日
レンタルオフィスで法人登記できる?デメリットや費用、手続きを解説
レンタルオフィスの運営会社が許可している場合は、所在地の住所での法人登記が可能です。レンタルオフィスで法人登記をするメリットや、業種ごとの注意点、実際にかかる費用や手続きの流れについてまとめました。また、レンタルオフィスでの法人登記が向いている事業者の特徴や、オフィスの選び方も紹介します。
目次
レンタルオフィスで法人登記はできる?
レンタルオフィスの住所を使って、法人登記をすることは可能です。ただし、レンタルオフィスの運営会社が法人登記の住所としての活用を許可している場合に限られるため、法人登記を予定しているときは事前に運営会社の方針を確認しておきましょう。
なお、法人登記には、次の情報や書類が必要です。
法人登記に必要な情報・書類
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レンタルオフィス以外にも、オフィスとして活用できる場所やサービスがあります。いくつか紹介します。
シェアオフィスとの違い
シェアオフィスとは共用型のオフィスのことです。レンタルオフィスは1室単位で借りますが、シェアオフィスは1名ごとに料金が発生する体系となっています。たとえば、従業員を含めて3名いる場合、レンタルオフィスなら1室のみ借りれば問題ありませんが、シェアオフィスでは3名分の料金が発生します。
また、レンタルオフィスは1室全体を借りるためプライバシーを比較的守りやすいといえますが、シェアオフィスには専有スペースがなく、あまりプライバシーを守りやすい環境ではありません。単に机と椅子を借りて業務をするといったスタイルのため、個室を借りたいときにはレンタルオフィスを選びましょう。
なお、シェアオフィスでも法人登記は可能です。ただし、レンタルオフィスと同じく、運営会社が許可しているときのみ可能なため、借りる前に確認しておきましょう。
バーチャルオフィスとの違い
バーチャルオフィスとは、住所や電話番号だけを借りるスタイルのサービスです。実際のオフィスはないため、業務スペースは別に準備しなくてはいけません。
実空間を伴わないため、安価に借りられる点はバーチャルオフィスのメリットです。また、名刺に事業所の住所と電話番号を記載できるため、自宅の住所やプライベートの電話番号を知られたくないときにも活用できます。
ただし、レンタルオフィスと同様、法人登記できないバーチャルオフィスもある点に注意が必要です。運営会社が法人登記を許可していない場合は、名刺上では住所・電話番号を記載できますが登記手続きはできません。
レンタルオフィスで法人登記をするメリット
起業するときは、まずは事業をする場所を決めなくてはいけません。事業所にレンタルオフィスを選ぶメリット、また、レンタルオフィスを本店所在地として法人登記するメリットについて解説します。
自宅住所を公開しなくてよい
レンタルオフィスの住所を会社の住所とすれば、自宅の住所を公開する必要がありません。取引先にもレンタルオフィスの住所のみを伝えるため、プライバシーに関わる情報の流出を抑えられます。
また、名刺にもレンタルオフィスの住所を記載するため、自宅住所や個人の携帯番号を知られずに交流関係を広げることが可能です。
初期投資を抑えられる
自宅住所や個人の電話番号を公開したくないなら、賃貸物件を借りて事業所とすることもできます。しかし、オフィスを借りる場合は敷金(保証金)や礼金、仲介手数料、火災保険料などが必要です。物件にもよりますが、家賃の4~6ヶ月分の初期費用がかかるといわれています。オフィスの貸主次第では、保証金だけでも3〜12ヶ月分かかる場合もあります。月10万円の物件なら初期費用として最低でも40万~60万円は必要です。
賃貸物件を借りる場合、机や椅子、パソコンなどもすべて自分で準備しなくてはいけません。また、インターネットを導入する費用や、月々の利用料金も見積もっておきましょう。
一方、レンタルオフィスなら、月々の利用料金だけで借りられます。敷金や仲介手数料などがかからない分、起業時の負担の軽減が可能です。
また、レンタルオフィスは机や椅子などの基本的な家具がそろっているところが多いため、設備代も節約できます。レンタルオフィスによってはパソコンやプリンターなどのオフィス機器の貸し出しも実施しており、初期費用を大幅に抑えられるでしょう。
都心に住所を持つこともできる
起業するなら、都心部やオフィス街として知られた場所などがよいと考えている方も多いのではないでしょうか。知名度の低い場所を選ぶと、「自宅で開業している?」「経営状態が思わしくないから、家賃が低い場所を選んでいる?」などと取引先から誤解されるかもしれません。
都心部や有名オフィス街で事務所を借りるのは高くつきます。しかし、レンタルオフィスなら、月々の利用料金だけで借りられるため、比較的手が届きやすいでしょう。また、駅から近い立地のレンタルオフィスを選べば、取引先が来社しやすくなるというメリットもあります。
節税効果につながる
レンタルオフィスの利用料は経費計上が可能です。個人事業主として経営する場合でも経費計上できますが、法人として経営する場合も経費計上できます。
なお、法人税の税率は15~23.2%ですが、所得税は累進課税のため税率は最大45%です。将来的に所得が増えると見込まれるなら、法人登記をして法人化しているほうが節税できます。
参考:国税庁 No.5759 法人税の税率、国税庁 No.2260 所得税の税率
レンタルオフィスで法人登記をする際の注意点
レンタルオフィスを法人登記することには、いくつか注意点もあります。主な注意点を紹介します。
法人登記ができないレンタルオフィスもある
法人登記できないレンタルオフィスもあります。レンタルオフィスの住所を法人住所として登記する予定のときは、借りる前に確認しておきましょう。
運営会社が廃業する可能性がある
レンタルオフィスの運営会社が廃業する可能性もあります。廃業するとオフィスを利用できなくなるばかりか、事業所の住所を変更しなくてはいけなくなります。
名刺の変更や登記の変更、取引先への連絡など、業務が増えることにもなるため、運営会社の経営状態や実績なども調べてから借りるようにしてください。
すでに同一商号の会社が法人登記されている場合もある
商業登記法第27条では、既存会社と商号と本店所在地を同一とする内容の登記はできないと定められています。
レンタルオフィスに複数の企業が入居している場合、自社と同一商号があるかもしれません。その場合は登記ができなくなるため、商号を変更するか、別のレンタルオフィスを借りる必要があります。法人登記を予定している場合は、レンタルオフィスを借りる前に同一商号の事業所がないか確認しておきましょう。
銀行口座が開設できない場合がある
近年、悪用対策のために口座開設が難しくなっています。小規模企業では口座開設できないこともあるかもしれません。また、金融機関ごとに審査基準は異なりますが、本店登記地としてレンタルオフィスの住所を利用していることが判明すると、審査に不利に働く可能性はあります。
もし銀行口座を開設できないときは、別の金融機関で相談してみましょう。審査基準は金融機関によって異なるため、ある銀行で断られても、別の銀行や信用金庫などでは口座を開設できることがあります。
レンタルオフィスでの法人登記に向いている事業者
次のいずれかに該当する事業者は、レンタルオフィスの利用や、レンタルオフィスの住所を法人登記することを検討してみてください。
- 初期投資を抑えたい
- すぐに開業したい
- 内装や設備にこだわりがない
- 従業員を増やす予定はない
レンタルオフィスなら、事務所や設備にかかる初期費用を抑えられます。起業にかかる費用を抑えたいときは、レンタルオフィスを検討してみましょう。また、すでに家具や通信環境が整っているため、比較的短時間で開業できるのもレンタルオフィスの特徴です。すぐに開業したいときも、レンタルオフィスを検討してください。
ただし、レンタルオフィスでは内装や設備を自由に変えられないことが一般的です。こだわりがあるときは、内装を変更できる賃貸物件を借り、自分で購入した設備を設置するほうがよいでしょう。
また、従業員が増えると、レンタルオフィスが手狭に感じるかもしれません。別のレンタルオフィスに引っ越す方法もありますが、登記や名刺を変更したり、取引先に連絡したりする必要が生じます。
近い将来、従業員が増える可能性があるときは、オフィスのサイズを選べるレンタルオフィスを選んでみてはいかがでしょうか。部屋から部屋への引っ越しは必要ですが、住所は変わらないため、登記や名刺の変更は不要です。
レンタルオフィスで法人登記する費用や手続き
レンタルオフィスで法人登記するときには、以下の費用がかかります。
法人登記に必要な費用 |
※定款認証手数料は、資本金や条件によって1.5~5万円かかります。詳しくは定款認証にかかる費用の記事で解説しています。
なお、定款認証手数料と定款謄本手数料、定款印紙代は公証役場、会社設立登記の登録免許税は法務局で支払います。また、募集設立の場合は、払込保管証明書の費用として別途25,000円ほどかかることがあります。
その他にも、法人登記には代表者印が必要です。印鑑の作成費用も準備しておきましょう。
参考:日本公証人連合会 Q3. 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。
オンライン申請
法人登記手続きは管轄の法務局で実施しますが、オンラインでも実施できます。以下の手順で申請してください。
- 事前準備
- 申請書の作成
- 添付書面への電子署名の付与
- 添付資料作成・添付
- 申請書への電子署名の付与
- 申請書類の送信
- 登録免許税の納付
- 添付書面・印鑑証明書の送信
代理人による申請
書類作成に不安があるときは、司法書士に法人登記手続きを依頼してはいかがでしょうか。ただし、実費に加え、司法書士報酬がかかります。法人登記手続きを専門とする司法書士に相談してみましょう。
事業に適したレンタルオフィスの選び方
レンタルオフィスを選ぶときは、次のポイントに注目してください。
- 立地(アクセスのしやすさ、オフィスの住所としての価値など)
- ビルのクオリティや設備、セキュリティ
- 利用料金
- 付帯サービス
- 個室・会議室の有無
- 営業時間
- 法人登記が可能か
- 運営会社の信頼性
取引先が来社することが多いなら、アクセスのしやすさやビルのクオリティ、会議室の有無は重要な要素です。また、早朝深夜や土日祝日も業務をする場合なら、営業時間の長さも確認しておきましょう。
ただし、すべてのポイントが理想どおりの物件は見つからないかもしれません。あらかじめ優先順位をつけておき、納得できる物件を選ぶようにしてください。
レンタルオフィスで法人登記する際の注意点
レンタルオフィスの住所を法人登記するなら、運営会社で法人登記を許可していることが前提となります。まずは運営会社のルールを確認しておきましょう。
また、業種によっては事務所の条件が決められていることがあります。たとえば、人材派遣業なら面積20平米以上、不動産業なら独立した専用の出入口があることなどが必要です。開業する事業の業種ごとのルールを調べ、利用したいレンタルオフィスが条件を満たす物件なのか確認してください。
ビジネスに合うオフィスを選ぼう
事業所の住所として都心の住所が望ましいときや、起業時の初期費用を抑えたいときは、レンタルオフィスを一つの選択肢として検討してみてはいかがでしょうか。机や椅子、パソコンなどを備えているレンタルオフィスなら、開業までの時間を短縮できます。
ただし、業種によってはオフィスの広さやドアなどに制限があるため、あらかじめ確認しておくことが必要です。また、レンタルオフィスによっては法人登記が不可能な物件もあります。法人登記を前提で物件を探している場合は、運営会社のルールを確認しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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