• 更新日 : 2023年10月23日

ビジネスモデルの4つ分析方法・フレームワーク

ビジネスモデルとは、企業が商品やサービスなどの付加価値を提供し、事業で利益を生み出す仕組みのことです。企業の存続と成長のためには、収益性に優れ、独創的で面白いビジネスモデルを構築する必要があります。今回は、ビジネスモデルとは何か、自社のビジネスモデルの分析に使える5つのフレームワークと診断方法について解説します。

ビジネスモデルとは?

ビジネスモデルとは、商品やサービスなどの付加価値を提供し、事業で利益を生み出す仕組みのことです。企業が持続的に成長するためには、優れたビジネスモデルを構築することが欠かせません。

ビジネスモデルは、以下の要素で構成されます。

  • 顧客は誰なのか
  • 顧客にどのような価値を提供するのか
  • どのように価値を提供するのか
  • いつ事業を行うのか
  • どの市場で事業を展開するのか
  • なぜその事業を行うのか

主なビジネスモデルの種類は、以下のとおりです。

  • 販売モデル:商品を作り、販売して利益を得る
  • 小売モデル:商品を仕入れ、消費者に提供して利益を得る
  • ライセンスモデル:商標や知財の利用権利を販売して利益を得る
  • 消耗品モデル:消耗品を販売し、継続的に購入にしてもらって利益を得る
  • 広告モデル:広告枠を販売して利益を得る
  • コンサルティングモデル:特定分野の専門知識・スキルを使って利益を得る
  • サブスクリプションモデル:サービスを利用する権利を販売して利益を得る
  • マッチングモデル:出会いの機会を生み出して利益を得る
  • エージェンシーモデル:他社の業務を代行して利益を得る

なお、ビジネスモデルと似ている言葉に、ビジネスプランがあります。ビジネスプランとは、ビジネスモデルを実現するための行動計画や数値計画のことです。

ビジネスモデル分析1.ビジネスモデルキャンバス

ビジネスモデルキャンバス(BMC)とは、ビジネスモデルをわかりやすく可視化するためのフレームワークです。

複雑なビジネスモデルを整理できるため、ビジネスモデルを分析し、どのような戦略を立てるべきかを検討する際に活用できます。競合他社の分析にも役立つのが魅力です。世界的に利用されている、有名な分析方法です。

以下では、ビジネスモデルキャンバスを活用するメリットと9つの要素、使用する際の注意点について解説します。

ビジネスモデルキャンバスを活用するメリット

ビジネスモデルキャンバスを用いるメリットは、以下のとおりです。

  • ビジネスモデルをわかりやすく共有できる
  • どこに注力すべきかが明らかになる
  • 顧客に寄り添った事業の展開に役立つ
  • 競合他社の事業分析にも活用できる

ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルの概要をシンプルに可視化できるため、社内外への共有に役立ちます。経営者自らがビジネスモデルを分析する際も、どこに注力すべきか、スムーズに理解できるでしょう。

また、「顧客との関係」という要素があるため、顧客に寄り添った事業展開について検討する際にも活用できます。

自社だけでなく、競合他社の事業分析に使えるのもメリットです。自社と競合他社、それぞれについて要素を書き出して比較すれば、差別化を図るためにやるべきことが見えてきます。

ビジネスモデルキャンバスを構成する9つの要素

ビジネスモデルキャンバスは、以下の9つの要素から構成されます。

  1. 顧客セグメント:想定される顧客
  2. 価値提案:顧客のどのような課題を解決し、どのような価値を提供するか
  3. チャネル:商品やサービスを販売する経路
  4. 顧客との関係:顧客との関係を構築する方法
  5. 収益の流れ:マネタイズ方法・手段
  6. 主なリソース:事業を展開するために必要なリソース
  7. 主な活動:事業を展開するために必要な活動
  8. 主なパートナー:事業を展開するうえで協業するパートナー
  9. コスト構造:事業を展開するために必要なコスト

上記の順番に、各項目について具体的に記載しましょう。

ビジネスモデルキャンバスを使う際のポイント・注意点

ビジネスモデルキャンバスを使う際は、以下の点に注意が必要です。

  • 9つの要素は全て書き出す
  • 必要な情報をシンプルにまとめる
  • 作成に時間をかけすぎない

ビジネスモデルキャンバスでは、9つの要素が相互に関連しあっているため、全てを書き出すことが大切です。どうしても埋められない項目があっても、仮の情報を記載しておきましょう。

情報量を増やしすぎないこともポイントです。ビジネスモデルがわかりにくくならないよう、必要な情報を絞り、シンプルにまとめてください。

また、1つの情報を記載するのに時間をかけすぎるのではなく、9つ全ての要素を効率的に書き出し、全体を埋めることを意識しましょう。

ビジネスモデル分析2.ビジネスモデルツリー/ビジネスモデルマップ

ビジネスモデルツリーとビジネスモデルマップは、他社の成功要因の分析に活用できるフレームワークです。

ビジネスモデルキャンバスをさらに発展させたものであり、4大経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報に加え、知的資本や組織資本についても分析します。

ビジネスモデルツリーでは、経営環境を土台に、以下の4つのレイヤーに分けて分析するのが特徴です。

  • 汎用
  • 業種
  • 個別事業
  • 管理手法

ビジネスモデルマップでは、ビジネスモデルを構成する要素を以下のように分類し、それぞれ要素をマッピングします。

  • 事業価値
  • 生産性
  • 収益性
  • 消費チェーン
  • 顧客価値提案
  • バリューチェーン
  • 金融資本
  • 設備資本
  • 知的資本
  • 情報資本
  • 人的資本
  • 組織資本
  • 投資家
  • 顧客
  • パートナー

ビジネスモデルツリーやビジネスモデルマップを用いて、成功している企業事例を分析し、自社の戦略策定に役立てましょう。

ビジネスモデル分析3.ビジネスモデル・イノベーション・フレームワーク

ビジネスモデル・イノベーション・フレームワークとは、ラリー・キーリーらが唱えた、イノベーションを起こす10のフレームワークのことです。

<基本的な構造>企業とビジネスシステムの基本的な部分

  • 利益モデル:どのようにして利益を得るか
  • ネットワーク:価値を生み出すためにどのように他と連携するか
  • 組織構造:人材や資産をどのように編成・連携させるか
  • プロセス:自社ならではの優れた方法を使い、どのように業務を遂行するか

<オファリング>製品・サービスによって顧客に提供する価値

  • 製品性能:製品の特性や機能をどのように開発するか
  • 製品システム:補完的な製品・サービスをどのように生み出すか

<経験>製品やサービスの提供を通じて顧客に与える経験

  • サービス:自社のオファリングの価値をどのように維持し、高めるか
  • チャネル:自社のオファリングをどのように顧客に届けるか
  • ブランド:自社のオファリングと事業をどのように描き出すか
  • 顧客エンゲージメント:どのように顧客との信頼関係を構築するか

上記のフレームワークを組み合わせることで、持続的なイノベーションを実現するために何をするべきかが見えてきます。

ビジネスモデル分析4.9セルフレームワーク

9セルフレームワークとは、その名のとおり9つの質問に回答し、セルを埋めていくことでビジネスモデルを分析するものです。ビジネスモデルを、論理的に見える化できます。

9つの質問は、回答する順に以下のとおりです。

<顧客価値について>

  1. 顧客は誰か?(Who)
  2. 顧客に何を提供するのか?(What)
  3. どのように提供するのか?(How)

<利益について>

  1. 誰から利益を得るのか?(Who)
  2. 何によって利益を得るのか?(What)
  3. どのように利益を得るのか?(How)

<プロセスについて>

  1. どのような手順で行うのか?(How)
  2. 自社の強みは何か?(What)
  3. 誰と組むのか?(Who)

上記の9つに回答してセルを埋めることで、ビジネスモデルとして成り立っているか、どこに問題点があるかなどを評価できます。

ビジネスモデル分析5.ピクト図解

ピクト図解とは、ビジネスモデルにおける以下の3つの要素について、ピクトグラムを使ってわかりやすく可視化したものです。

  • エレメント(要素)
  • コネクタ(モノやカネの流れ)
  • オプション(補足)

ピクト図解では、ヒト・モノ・カネといった要素をピクトグラムで表します。ヒトは、個人であれば人間の形のマーク、企業であれば建物のマークを用いましょう。商品やサービスなどのモノは丸で表し、カネは¥マークを用いると、ビジネスモデルをシンプルにまとめられます。

そして、モノやカネの流れ、要素同士の関係性などを矢印で表してください。モノとカネの流れを分けられるよう、矢印の種類を変えるのがおすすめです。

さらに、時間の流れや情報のまとめなど、図解がわかりやすくなるよう適宜補足を加えましょう。

ピクト図解を活用することで、直感的にビジネスモデルを理解できるようになるのがメリットです。

ビジネスモデル診断とは?

ビジネスモデル診断とは、起業時や起業後、ビジネスモデルに問題がないかをチェックする際に利用できるものです。検討すべき項目がリスト化されています。

中小機構に創業や第二創業の相談をする際は、ビジネスモデル診断シートを用いてヒアリングが行われます。有益なディスカッションやアドバイス提供に役立つ、便利な支援ツールです。

具体的には、以下の8つの項目について検討します。

  • ビジネスモデルが成立するか(基本要件は満たしているか、要素は十分か)
  • ビジネスモデルに新規性や独創性があるか
  • ビジネスモデルに優位性や競争力があるか
  • ビジネスモデルに収益性があるか
  • 市場や顧客の認知を獲得し、顧客を増やす仕組みがあるか
  • 品質の確保や継続的な品質向上に向けた取り組みがあるか
  • 他社と連携し、自社にとって有益な関係性を構築できるか
  • 既存事業との関連性・シナジー効果があるか(第二創業時)

経営について経営者自身で分析する際も、ビジネスモデル診断シートを利用するのがおすすめです。創業前に活用することで、事業立ち上げまでの業務課題を明確にできます。また、事業立ち上げ後にビジネスモデルを見返し、対策漏れがないか、効率的に顧客開拓や販売促進を行うためにはどうすればよいか、などの検討にも活かせるのが魅力です。

中小機構がビジネスモデル診断シートを提供しているため、ぜひ活用してください。

参考:中小機構 ビジネスモデル診断シート

ビジネスモデルの分析は企業の存続と成長に不可欠

ビジネスモデルとは、事業で利益を生み出す仕組みのことです。企業の存続と成長のためには、優れたビジネスモデルを構築する必要があります。そのためには、ビジネスモデル分析を通じて、自社のビジネスモデルに問題はないか、成功している企業はどのように利益を獲得しているのかなどを理解しましょう。

ビジネスモデルの分析には、フレームワークを用いることが効果的です。ビジネスモデルキャンバスやビジネスモデルツリー、ビジネスモデルマップなど、分析目的に応じて適切な手法を使い分けましょう。


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