- 更新日 : 2024年6月14日
株式会社の定款変更に必要な手続きとは?費用相場や注意点も解説!
定款変更(目的変更)
株式会社において、会社の基本的なルールである定款の内容に変更があった場合には「定款変更」という手続きが必要となります。定款変更は、株主総会の特別決議が必要であり、事業目的や本店所在地、役員に関する事項などの変更について法務局での変更登記が求められます。
この記事では、定款変更についての流れを追いながら、認証の要不要や司法書士への報酬にも触れつつ、電子での申請を含む申請における注意点を解説します。
目次
そもそも定款の記載内容とは?
定款とは、会社の組織体系や活動内容についての基本的なルールを定めた書面であり、株式会社設立にあたって必ず作成すべきものの一つです。
定款に記される事項については、絶対的記載事項、相対的記載事項、そして任意的記載事項があります。順に見ていきましょう。
絶対的記載事項
定款における絶対的記載事項とは、記載しなければその定款そのものが無効とされる以下の事項です。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
相対的記載事項
定款における相対的記載事項とは、会社法の規定により定款に記載しなければ効力を生じない以下の事項などです。会社法第28条により規定されているものをはじめ、細かく決められています。
会社法第28条により必要とされる事項
- 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数
- 株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
- 株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
- 株式会社の負担する設立に関する費用
上記以外
- 株式の譲渡制限(会社法第107条第2項第1号)
- 取締役会、監査役等を置くことができる旨(会社法第326条第2項)
- 存続期間又は解散の事由(会社法第471条第1号、第2号)
- 公告方法(会社法第939条第1項) 等
任意的記載事項
定款における任意的記載事項とは、会社の任意で定款に記載する事項で、会社法の規定に違反しない事項です。特に記載しなくても問題ありません。
- 定時株主総会の招集時期
- 株主総会の議長
- 取締役や監査役の員数
- 事業年度 等
定款変更の方法・流れは?
会社の設立登記後に、その登記事項に変更が発生した場合には、「変更登記」といって、登記内容を変更する手続きをすることとなっています。
定款変更の場合は、株主総会で変更の特別決議を行った後、議事録を作成します。さらに定款変更の内容に応じて登記申請を行い、会社の設立時に作成した定款である原始定款と共に保存することで、定款の変更が終了します。
定款変更の大まかな流れとしては、概ね次の①~④となります。税務署などへの届出が必要な場合は④の段階で行います。
- 株主総会の特別決議により定款変更内容について決議
- 株主総会の議事録を作成
- 定款変更登記(法務局)
- 変更定款を原始定款と一緒に保管
順に見ていきましょう。
株主総会の特別決議
定款の変更は、株主総会の決議でできるとされています。より厳格な決議である特別決議が必要です。
特別決議とは、株主総会に過半数の株主が出席し、かつ、出席株主の2/3以上の賛成による決議を必要とするものです。定款変更については、株主総会において普通決議よりも要件の厳しい決議が必要になります。
株主総会の議事録作成
株主総会の議事録の一例です。このように、出席株主及び議決権の状況を明示し、どのような状況で株主総会が開催されたのかを正確に記載します。特別決議に足る同意があったことを明らかにします。
定款変更登記
法務局にて定款の変更登記をします。登記申請については次項にて詳細を解説します。
このように、定款の変更には株主総会が必要なため、資料作成や開催後の手続きも多々あります。しかしながら、時期的に早く変更したい場合はこの例のように臨時株主総会を開催します。
変更定款の保存
定款変更の履歴を残すため、会社設立の際の原始定款に、株主総会の議事録を一緒に保管します。しかしながら、定款の変更が多くなる場合には、別に最新の定款内容を反映したものを作成して、最新の定款によって実質的な運用をすることになります。
定款変更で登記申請が必要な場合は?
株式会社においては、設立時に登記をする必要があります。法人登記によって、取引先は会社の概要(所在地、社長や役員、資本金などの情報)がわかり、取引先が実際の取引前に登記簿で確認でき、その後の取引を安心して行えます。
会社法では以下に解説する変更が生じた場合には、2週間以内に変更登記をしなければならないとされています。
変更登記1:事業目的の変更
事業の範囲や事業目的そのものに変更があった場合には、変更登記が必要です。先述のとおり、事業目的は会社の定款における「絶対的記載事項」ですので、定款の変更とともに変更登記をします。
事業目的の変更のための登記には、次の書類等が必要となります。
- 目的変更登記申請書
目的変更登記申請のための「株式会社変更登記申請書」
こちら(法務局のページ)からも、株式会社変更登記申請書の記載例を確認できます。
- 目的変更登記申請書
- 株主総会議事録(株主リストを添付のこと)、取締役会議事録
株主総会において、定款における事業目的を変更する旨の決議がされた議事録が必要です。株主総会と整合した取締役会の議事録も添付します。
- 株主総会議事録(株主リストを添付のこと)、取締役会議事録
変更登記2:本店所在地の移転
株式会社が本店の移転をした場合には、旧本店所在地では移転の登記、新本店所在地では設立登記事項と同じ登記をしなければなりません。事業目的の変更と同様、「絶対的記載事項」ですので定款の変更とともに変更登記をします。
ただし、定款には本店の所在地を全部は書かなくても、市区町村まで記載で問題ないとされていますので、定款変更のない本店移転であれば株主総会は不要となり、取締役会の決定により変更登記ができます。
なお、行政区画等に変更があった場合の所在地変更は、変更登記がないときでも、その変更による登記があったものとされます。
本店所在地の移転による変更登記には、次の書類等が必要となります。
- 本店移転登記申請書
本店移転登記申請のための「株式会社本店移転登記申請書」
こちらから株式会社本店移転登記申請書(管轄登記所外に移転の場合)の記載例を確認できます。
- 本店移転登記申請書
- 株主総会議事録又は、取締役会議事録
株主総会又は取締役会において、本店所在地を変更する旨の決議がされた議事録が必要です。なお、取締役会を設置しない会社の場合には、取締役の過半数の一致を証明する書面が必要です。
変更登記3:役員の変更
株式会社において役員の変更はよくあることですが、通常の取締役の就任、退任については定款変更が不要です。事業規模の縮小などで役員数を減らす場合や定款以上に役員を増やす場合、また、役員の任期を伸ばしたり短縮したりする場合などの役員変更は定款の変更と変更登記が必要となります。
役員変更における登記は、次の書類等が必要です。
- 役員変更登記申請書
役員変更登記申請のための「株式会社変更登記申請書」
こちらから株式会社変更登記申請書(一例として役員変更、氏名変更)の記載例を確認できます。特に、役員変更は選任、任期満了、辞任、解任、死亡等種々のケースが考えられますので、変更役員の内容にあった申請書を選択して記載します。
- 役員変更登記申請書
- 株主総会議事録及び取締役会議事録
株主総会及び取締役会において、役員変更が決議された議事録が必要です。
登記申請書類はその状況によって変わってきますが、原則として株主総会議事録を添付します。役員の選任の場合には株主総会で選任しますが、就任は登記申請によって完了します。
定款変更の費用相場は?
定款の変更費用については、どの程度を見込んでおけばよいのでしょうか?定款変更における費用とは、登記のための登録免許税、司法書士への報酬、その他実費からなります。
これらのうち、その他実費とは、謄本などの取寄せのための費用(1社350円など)や依頼者への郵送料(レターパック費用など)、打合せのための交通費(遠距離の場合、予め確認済みのもの)などです。
登録免許税
登記のための登録免許税として、30,000円かかります。ただし、役員変更において資本金が1億円以下の会社については、10,000円です。
事業目的変更と本店移転とを併せて変更する場合には、本店移転分の登録免許税は別途支払いとなりますので、合計60,000円が必要となります。
司法書士報酬
定款変更について司法書士などに依頼した場合の相場としては、その内容や会社の規模等にもよりますが、一般的に20,000~40,000円といったところです。費用体系については、事前によく確認し、追加報酬等が必要な場合などを聞いておきましょう。
定款変更の注意点は?
定款変更における注意点について、今までの解説を踏まえてまとめましたので、確認しましょう。
株主総会の特別決議が必要
先述のように定款変更においては株主総会の特別決議が必要です。特別決議は、普通決議に比べ、より厳格な要件が求められる決議であり、定款変更以外では次のようなものなどがあります。
- 資本金の減少
- 事業譲渡の承認
- 会社の解散
- 吸収合併 等
これらはほんの一部ですが、どれも株式会社にとって非常に重要なものばかりです。定款の変更は、これらと並ぶような会社にとっても重要な変更なのです。
公証人の認証は不要
会社設立前の定款は作成しただけでは効力が発生せず、公証人からの認証を受けることによって法的な効力を持ちます。しかし、会社を設立したあとに既に認証された定款を変更する場合は、公証人による認証は必要ありません。
会社が組織再編によって合併したり分割したりしてなお、新たに作成される定款についても公証人による認証が不要とされています。
法務局への登記申請には費用がかかる
先述のように法務局への登記には登録免許税がかかり、具体的には、登録免許税は収入印紙又は領収証書で納付することになります。定款変更の手続きを登記まで司法書士等に依頼した場合には、さらに司法書士への報酬がかかります。司法書士への報酬を考えた場合、定款変更はできる限りまとめて行うほうがよいと言えます。
さらに定款変更のために、臨時株主総会を開催する場合にはその開催費用もかかります。
登記申請には期限がある
先に定款変更が生じた場合には、2週間以内に変更登記をしなければならないと述べましたが、この期限内での登記を怠った場合、法人に対し裁判所から100万円以下の罰金を課される可能性があります。
電子定款を変更する場合のルールは?
電子定款とは、電子文書(PDF形式など)で作成された定款を言います。電子定款についても、原則として紙文書の定款と取扱いは同様ですが、申請は早く済むでしょう。
電子定款においても、設立時の原資定款は変更せず、変更された部分についての内容を添付します。株主総会の議事録などを電子文書にして添付し、保存します。
定款変更にかかる費用や時間を事前に確認しましょう
定款変更にはその内容の検討・決定から変更手続きまである程度時間を有しますし、登録免許税などの費用もかかります。また、法務局への申請については、その申請書及びそれぞれのケースに必要な添付書面を提出しなければなりません。
変更登記事項によって、必要な添付書面は異なるため、現本店所在地を管轄する登記所に事前に照会しておくのがよいでしょう。
よくある質問
定款とはなんですか?
定款とは、会社の組織体系や活動内容についての基本的なルールを定めた書面であり、株式会社設立にあたっては必ず作成しなければならない書類の一つです。詳しくはこちらをご覧ください。
定款変更のための流れとは?
まず、株主総会の特別決議を行い、株主総会の議事録を作成し、次に法務局で定款変更登記をした後、その株主総会の議事録などを原始定款と一緒に保管しておきます。詳しくはこちらをご覧ください。
定款変更では登記が必要?
定款の変更は会社の根幹を変更するものとなり、株主総会で定款変更決議がなされた議事録を添付して、法務局にて登記申請をする必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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