更新日 : 2020年5月8日 定款を変更するために必要な3つの知識 会社が組織として活動するために必要な定款は、経営方針や事業内容、社会情勢などによって変更する場合があります。また設立登記前であったとしても、一度認証を終えた定款に対して変更を加えることも考えられます。ここでは定款を変更するために知っておきたい3つの知識を紹介します。 目次定款変更に認証は必要ない定款変更によって再度定款認証が必要になる場合の対応方法定款をもってしても変更することのできない事項役員の選任及び解任の株主総会の決議(会社法第341条)特殊な決議における軽減措置の無効(会社法第309条第3項)まとめ 定款変更に認証は必要ない 会社設立前の定款は作成しただけでは効力が発生せず、公証人からの認証を受けることによって法的な効力を持つことになります。しかし会社を設立したあとに既に認証された定款を変更する場合は、公証人による認証は必要ありません。 会社が組織再編によって合併したり分割したりしてなお、新たに作成される定款についても公証人による認証が不要とされています。 なぜ会社設立後の定款変更は、公証人による認証不要であるにもかかわらず、法的な効力を持つことになるのでしょうか。それは、会社設立後の定款変更は、株主総会の特別決議によって行われるからです(会社法第309条第2項)。 株主総会の決議方法には「普通決議」と「特別決議」の2種類があり、株主総会の普通決議は出席株主の過半数をもって可決となりますが、特別決議は2/3以上の多数がなければ決議することができません。定款を変更するためには、株主総会の普通決議よりも決議要件の厳しい特別決議が必要となります。 したがって、会社設立前の原始定款には公証人による認証を受けることによって紛争を抑止する効果を保持することになり、会社設立後の定款変更は株主総会の特別決議が公証人の代わりとして機能し、法的な効力が維持されることとなったのです(会社法第466条)。なお会社設立中においては、株主総会の前身となる創立総会で定款変更することが認められています(会社法第65条から第86条)。 そのため、株主総会の招集方法などに不正があった場合は、株主総会決議取消の訴えを提訴される恐れがあり、決議取消判決が出た場合の決議内容は無効となります。 会社設立前後による定款取扱比較表 定款認証機関定款認証権者 会社設立前公証役場公証人 会社設立中創立総会設立時株主 会社設立後株主総会議決権のある株主 定款変更によって再度定款認証が必要になる場合の対応方法 これまで解説してきたように定款は、 ・会社設立前は公証人による認証(会社法第30条) ・会社設立中は創立総会による決議(会社法第73条) ・会社設立後は株主総会の特別決議(会社法第468条) によって法的効力が認められることになるため、定款の内容を変更したとしても原則として公証人による認証は一度だけでよいということになります。 定款は会社組織や株主といった内部を拘束する主旨が原則となりますが、例外的に会社登記前における「会社の本店所在地」は会社組織や株主以外に影響を及ぼす要因となり、再度の認証が必要となります。 定款を認証するための公証人は全国約300箇所の公証役場で公証事務を行なっていますが、公証人自身が所属する法務局の管轄区域内で公証役場を設置しています。 そのため自身の管轄区域外の本店所在地の定款は認証することができず、定款に記載された本店所在地の変更によって管轄区域に変更が生じれば、変更後の本店所在地を管轄する公証人によって新たに認証を受けなければなりません。 本店所在地変更前に認証された定款では設立登記は受理されないため、本店所在地変更後に再度定款が認証されなければ、会社を設立することができないということになります。 会社を設立している段階、とくに登記前における「本店所在地」を変更する場合は、手続きが煩雑になるため注意が必要です。 定款をもってしても変更することのできない事項 原則として定款に定めた事項に従って会社組織を形成することになるため、定款に追加事項を記載したり、既に定めた期間や要件、定数などを加重または軽減したり、撤廃することも可能です。しかし、定款で定めたとしても会社法の規定により変更することのできない事項があります。 役員の選任及び解任の株主総会の決議(会社法第341条) 取締役、監査役、会計参与といった役員の選任及び解任に関する決議は、議決権を行使することのできる株主の議決権を1/3未満の定足数に引き下げることは、定款に定めたとしても変更することができません。 議決権や定足数を引き下げることは認められていませんが、加重することによって要件を厳しくすることは認められています。 特殊な決議における軽減措置の無効(会社法第309条第3項) 会社法第309条第3項で定められた以下の3事項については、定款によって可決要件を厳しくすることができますが、軽減することは認められていません。 ・発行する全部の株式の内容として譲渡制限を定款で定める定款変更の株主総会決議 ・吸収合併契約等に関する消滅会社の株主総会決議 ・新設合併契約等に関する消滅会社の株主総会決議 まとめ 会社設立時に公証人による認証を受けた定款は、会社設立後は株主総会の決議によって変更することが原則となりますが、設立登記前に本店所在地が変更されることになった場合は例外的に再度認証を受ける必要があります。 また定款を変更することは法的な手段として認められていますが、違法性のある定款変更や適切な手続きを経ていない変更決議は無効原因となり、提訴されるリスクを抱えることになります。定款変更は適切な方法で行なうようにしましょう。※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。自分で会社設立の準備をはじめませんか? 「マネーフォワード 会社設立」を利用すれば、会社設立に必要な書類を無料で作成でき、会社を設立するまでのコストや時間も大幅に削減できます。 会社設立に必要な情報をフォームに沿って入力するだけで、簡単に書類作成が可能! 会社名や代表・事業目的などの情報を入力することで、会社設立に必要な書類を自動で作成できます。書類の作成、提出場所、必要な持ち物もわかるので、迷わず簡単に設立までの手続きが可能です。 会社設立後に必要な手続きもサポート 設立後は、年金事務所、税務署、都道府県税事務所に提出する書類を作成できるほか、法人銀行口座、クレジットカード、バックオフィスサービスなど、会社運営に必要なサービスがお得にご利用いただける特典もご用意しております。 「マネーフォワード 会社設立」で会社設立をもっとラクに 詳細を見てみる無料で試してみる 監修:加賀爪 優作 (司法書士) 税理士法人ゆびすい ゆびすいグループは、国内8拠点に7法人を展開し、税理士・公認会計士・司法書士・社会保険労務士・中小企業診断士など約250名を擁する専門家集団です。 創業は70年を超え、税務・会計はもちろんのこと経営コンサルティングや法務、労務、ITにいたるまで、多岐にわたる事業を展開し今では4500件を超えるお客様と関与させて頂いております。 「顧問先さまと共に繁栄するゆびすいグループ」をモットーとして、お客さまの繁栄があってこそ、ゆびすいの繁栄があることを肝に銘じお客さまのために最善を尽くします。 お客様第一主義に徹し、グループネットワークを活用することにより、時代の変化に即応した新たなサービスを創造し、お客様にご満足をご提供します。 関連記事 一人社長でも加入は必須! 法人の社会保険加入ルール 会社設立後に法務局で行う手続き~印鑑カードや証明書の取得について解説~ 会社設立したら青色申告の届出を!提出期限やメリットついて解説 法人設立届出書の書き方とその提出先 【会社設立後の手続き保険関係編】保険関係の手続きが必要な書類とは 【会社設立後の手続き税務編】税務署・自治体で行う6つの手続きと必要書類