- 更新日 : 2024年4月12日
起業にクラウドファンディングは使える?他の資金調達との違いも解説
起業の際に必要な資金調達には、クラウドファンディングも利用できます。インターネットを通じて不特定多数の人から資金を調達するサービスで、従来の方法では資金調達が難しい場合でも利用が可能です。
本記事ではクラウドファンディングの概要やメリット・デメリット、他の資金調達方法との違いなどを解説します。
目次
クラウドファンディングとは何か
クラウドファンディングとは、インターネットで不特定多数の人々から資金を調達する方法です。
ここでは、クラウドファンディングの概要をみていきましょう。
個人から幅広く資金調達できる
クラウドファンディングとは、インターネットを通してプロジェクトへの支援を呼びかけ、共感した人から資金を集める仕組みです。支援は購入・寄付・融資といった方法があり、個人から少額の資金を幅広く集めます。
発信者は集まった資金を使い、プロジェクトを実現するという流れです。これまで資金調達といえば、金融機関から融資を受けるといった方法が一般的でした。しかし、インターネットの普及により個人から少額の出資を集めることが可能になり、手軽で拡散力も高いといった点で注目を集めています。
複数の運営会社がある
クラウドファンディングは2000年代のアメリカで始まり、日本では2011年にサービスが開始されました。
現在は複数の会社が運営し、調達方法の形態もさまざまです。会社によって手数料やユーザー数、得意なジャンルなどが異なるため、選ぶ会社によって集まる資金も違います。利用する際はよく比較検討し、自社に合うところを選ぶようにするのがよいでしょう。
クラウドファンディングの主な種類
クラウドファンディングはさまざまな種類がありますが、代表的なのは以下の3種類です。
- 購入型
- 寄付型
- 融資型
それぞれの特徴をみていきましょう。
購入型
プロジェクトに対して支援者が資金を出し、そのリターンとして商品やサービスを受け取る仕組みのクラウドファンディングです。支援をした見返りとしてさまざまなリターンが得られるため、購入する感覚で支援ができます。
購入型には、募集期間内に目標金額を達成した場合のみプロジェクトが成立する「All-or-Nothing型」と、一人でも支援者が出れば目標金額に達していなくてもプロジェクトが成立する「All-In型」があります。
寄付型
プロジェクトに対して支援者がお金を寄付をする仕組みです。一般的な寄付と同じく、支援に対してリターンは発生しません。主に公益的な活動を行っている団体が利用できるクラウドファンディングです。寄付型の一例として、被災地域の復興支援に向けたプロジェクトがあげられます。
一般的な寄付と異なるのは、インターネットなどでプロジェクトの進捗状況を報告するため、支援したお金の使途がわかりやすいという点です。
融資型
プロジェクトに対し、融資を行うクラウドファンディングです。事業者が仲介して個人投資家から少額の資金を集め、まとめて企業に融資します。支援者はリターンとして利息を受け取るという仕組みです。
これまで、日本では法律の規制により出資が認められず、クラウドファンディングは寄付という形式が一般的でした。しかし、2014年に金融商品取引法の改正で規制が緩和され、1人あたり50万円を上限として総額1億円未満の資本調達がしやすくなりました。
参考:金融庁「金融商品取引法等の一部を改正する 法律(平成26年法律第44号)に係る説明資料」
クラウドファンディングを利用するメリット・デメリット
クラウドファンディングは、従来の手段では資金調達が難しかった場合でも調達できる可能性が広がるなどのメリットがあります。その一方で、デメリットな側面も少なくありません。
クラウドファンディングを利用するメリット・デメリットについてみていきましょう。
クラウドファンディングのメリット
クラウドファンディングは、起業したばかりで実績がなく、銀行融資などを利用できない場合でも資金調達が可能です。資金調達の可能性が広がったことはメリットだといえます。
また、クラウドファンディングは、商品・サービスの企画段階でテストマーケティングができるのもメリットです。まずインターネット上に企画段階にある商品・サービスを掲載し、一定額以上の資金が集まれば開発するという流れで行われます。
市場に商品が出回る前にユーザーの反応を知ることができ、在庫を抱えるリスクを減らすことが可能です。
クラウドファンディングのデメリット
クラウドファンディングのサイトにはまだ市場に出ていないアイデアが掲載されるため、資金調達前にアイデアを第三者に盗まれる可能性があります。対策として、サイトに掲載する前に特許申請しておくことも必要です。
また、プロジェクトには目標金額があり、目標に達成せず資金調達できない可能性があります。さらに、サイトにプロジェクトを掲載するときは手数料がかかり、購入型の場合は一定額以上のリターンを用意しなければなりません。そのため、クラウドファンディングの利用では、採算も考えた金額設定が必要です。
他の資金調達方法との違い
クラウドファンディングは、他の資金調達を利用しにくい企業や個人でも利用できるのが特徴です。
クラウドファンディングと他の資金調達方法はどのような点が異なるのか、代表的な調達方法の特徴をみていきましょう。
制度融資
制度融資とは、都道府県などの自治体や金融機関、信用保証協会が連携して提供する融資制度です。中小企業や小規模事業者に対し、資金調達面でサポートすることを目的としています。
制度融資への申し込みを行うと、金融機関は保証協会に保証の申し込みをします。保証協会が信用保証をすることで、企業・事業者は融資を受けやすくなるという仕組みです。
自治体は、企業・事業者の信用保証料を補助します。金融機関に対しては融資の貸付資金を一部預託し、利用者の金利負担を軽減する役割もしています。
制度融資は低金利・長期間の借入れが可能で、審査のハードルも低いのがメリットです。
他企業からの融資
信販会社や消費者金融会社など、ノンバンクから融資を受ける方法です。「事業者向けビジネスローン」などの名称で融資を行っています。銀行よりも審査の時間が短めで、資金調達を急ぐ場合に便利です。ただし、基本的に利息は高めに設定されています。
なお、会社としてノンバンクから融資を受けると、勘定科目内訳書でノンバンクからの借入れがわかり、銀行からの評価が悪くなるというリスクがあります。そのため、個人名義で借りるなどの対策も必要です。
銀行からの融資
銀行融資は基本的に審査が厳しく、銀行からの信用が高い場合に利用できる融資です。創業まもない会社の場合は利用が難しく、制度融資や政府系金融機関(日本政策金融公庫)からの融資を受けるのが一般的です。
銀行融資は都市銀行と地方銀行からの融資に分かれ、都市銀行は主に大手企業を融資先とします。一方、地方銀行は、地元の中小企業を主要な融資先としています。
信用金庫
信用金庫を利用するためには、利用資格に該当していなければなりません。信用金庫は会員制度により運営しており、融資を受ける場合もその地域で事業を行っていることが要件のひとつです。
中小企業は、信用金庫の営業エリアに事務所があるか、個人事業主は営業エリアに居住または勤務しているかどうかで利用の可否が変わります。
信用金庫は地域に根差した金融機関であり、創業時に口座開設することで経営や資金に関する相談をすることも可能です。資金繰りの相談もできるため、まずは口座を開設してみるとよいでしょう。
ここまで説明した金融機関の融資は、審査が通れば必ず資金調達できるという点でクラウドファンディングとは異なります。クラウドファンディングは期待通りの資金が集まらない可能性もあり、一定の期間までに必ず資金を調達した場合には向いていません。
また、金融機関からの融資は借り入れた資金について利息をつけて返済する必要はありますが、購入型・寄付型のクラウドファンディングは返済義務がないという点も異なる点です。
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルとは、成長が見込まれる未上場企業に投資を行う会社です。投資した未上場企業が上場したときなどに保有していた株を売却し、売却益を得ることを目的に出資を行います。
資金提供のほか、企業価値を高めるために経営のアドバイスや役員派遣などを行うのが特徴です。金融機関からの融資と異なり、ベンチャーキャピタルから調達した資金の返済は必要ありません。
ベンチャーキャピタルは多額の資金を一度に調達できるのに対し、クラウドファンディングの規模はそれほど大きくなく、場合によっては目標額に達しない場合もあります。
また、ベンチャーキャピタルは経営に参画してくるのに対し、クラウドファンディングは資金調達のみである点が異なります。
補助金や助成金
補助金や助成金は、国や地方公共団体から支給されるお金のことです。一定の要件に該当する場合に申請を行い、審査に通過すると支給されます。
返済の必要がない点で、購入型・寄付型のクラウドファンディングと共通しています。ただし、補助金や助成金を受け取るためには必要書類を揃える必要があり、事務処理などの手間が増えるでしょう。また、補助金の多くは後払いのため、自社の資金による支出が必要です。
資金面のリスクヘッジのために
起業でクラウドファンディングを利用する場合、いくつか注意したい点があります。
詳しくみていきましょう。
クラウドファンディング利用のメリット・デメリットをしっかりと理解する
クラウドファンディングは、従来の資金調達方法が利用できない場合にも利用できる点がメリットですが、デメリットな側面も少なくありません。必ず資金調達できるとは限らず、調達までに時間もかかります。アイデアが盗まれるなどのリスクもあるでしょう。
メリットだけに目を向けず、デメリットやリスクもよく理解してから始めることが大切です。
複数の資金調達方法を組み合わせる
デメリットでお伝えしたように、クラウドファンディングは目標の金額を集められるとは限りません。クラウドファンディングだけで必要な資金を調達できない可能性もあるため、そのほかの調達方法も考えておきましょう。
制度融資や政府系金融機関などを利用すれば、起業したばかりでも融資を受けられる可能性はあります。確実に資金を集めるには、複数の方法を組み合わせることがポイントです。
クラウドファンディングを有効活用して起業しよう
企業にあたって銀行融資などの資金調達が難しい場合でも、クラウドファンディングであれば調達が可能です。購入型や寄付型、融資型などさまざまなタイプがあり、自社に合わせて選べます。
目標の金額が集まらない場合もあるなどデメリットな側面もありますが、制度の内容も含めて全体をよく理解し、上手に活用するようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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