• 更新日 : 2024年9月6日

美容室開業で使える創業融資は?融資を受けるコツを解説

美容室・理容室の開業資金の約8割は創業融資で調達します。融資獲得には綿密な事業計画書が欠かせないため、具体的な数値やロジックに基づいた収支計画・明確な売上戦略、差別化ポイントの提示が重要です。

しかし、実際に融資を依頼する際に、どのようなポイントを意識すべきか悩む人もいるでしょう。この記事では、美容所・理容所の主な融資先やチェックされやすいポイント、事業計画書の作成で意識すべき点について解説しました。

ぜひこの記事を参考に、創業融資の獲得に向けた事業計画書を作成してみてください。

美容所・理容所の開業資金は創業融資での調達が8割

美容室や理容室の平均開業資金1,000万円のうち、8割程度は創業融資で調達するのが理想的です。融資を確実に獲得するには、以下のような内容を詳細に記載した事業計画書を作成し、事業の実現可能性を示す必要があります。

  • 創業の動機・目的
  • 取扱商品・サービス
  • 具体的なマーケティング戦略
  • 必要な資金と調達方法
  • 収支計画

また、自己資金の準備も融資獲得の重要な要素のひとつです。開業資金の3割程度を目安に自己資金を用意しておくことで、金融機関からの信用度が高まります。

そのほかにも、複数の金融機関からの融資や出資の活用も検討しておくと良いでしょう。複数の方法を組み合わせることによって、美容室・理容室の開業に必要な資金を効果的に調達できます。

美容所・理容所の主な創業融資先と特徴

美容所・理容所の主な創業融資元は以下の3つです。

  • 日本政策金融公庫
  • 制度融資
  • 民間金融機関

それぞれで特徴が異なるため、自己資金額や金利などを考慮して、自分の事業に合った融資元を選びましょう。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、事業実績がない新規開業の美容所・理容所でも融資を受けられる可能性がある融資元です。創業者向けの相談サービスも充実しており、事業計画の立案から融資後のフォローアップまで、幅広いサポートも受けられます。

主な特徴は以下のとおりです。

  • 無担保・無保証
  • 若者・女性起業家専用の制度がある

それぞれの特徴を理解した上で利用することで、効率よく開業資金を集められるでしょう。

無担保・無保証

日本政策金融公庫は、無担保・無保証で最大7,200万円までの資金調達が可能です。

また、既存事業者も利用できる中小企業経営力強化資金制度を利用することもできます。最大7億2,000万円まで融資を受けられますが、経営革新等支援機関の指導および助言を受けていることが条件となります。

女性・若者・シニア向けの制度がある

日本政策金融公庫には、女性や若者・シニアの起業を支援する制度があります。女性・若者・シニアの対象者であれば、特別利率で新規開業資金制度の利用が可能です。

たとえば、30代の女性が美容室を新規開業する場合、女性・若者・シニア向けの新規開業資金制度を利用すれば、無担保・無保証で最大7,200万円の融資を通常よりも有利な条件で受けられます。そのため、初期投資として500万円を借入、店舗の内装や最新の美容機器の購入に充てるといった活用もできるでしょう。

通常の融資よりも柔軟な条件で資金調達ができる一方、審査では、事業計画の実現可能性や経営者のビジョンが重視されます。

制度融資

制度融資は、都道府県や市区町村と金融機関・信用保証協会が連携して提供している融資制度です。資金調達力が弱い中小企業の支援を目的としており、比較的融資が通りやすい傾向にあります。

主な特徴は以下のとおりです。

  • 地方自治体と銀行が融資を行い低金利
  • 審査に時間がかかる

メリットとデメリットを比較し、計画的に開業資金を調達できるようにしましょう。

地方自治体と銀行が融資を行い低金利

制度融資は、地方自治体と銀行が連携して行う融資制度であるため、一般的な銀行融資よりも低い金利で資金調達できる傾向にあるのが特徴です。

たとえば、東京都渋谷区の制度融資では、表面上の利率が1.7%であっても、区が1.6%を負担するため、実質的に利用者は0.1%という驚異的な低金利で融資を受けられます。

低金利を実現できる理由は、地方自治体が利子補給をする仕組みによるものです。地方自治体が利子補給をすることによって、創業者や中小企業は、資金負担を大幅に軽減しながら、必要な資金を調達できる仕組みとなっています。

審査に時間がかかる

制度融資は、地方自治体・金融機関・信用保証協会の三者が関与するため、審査に時間がかかります。必要な書類の準備や各機関での審査に時間を要するため、融資実行までに数ヶ月かかる場合が一般的です。

そのため、制度融資を利用して美容所・理容所を開業する場合は、時間的余裕を持って申請するのが重要です。開業予定日から逆算して、早めに手続きを始めましょう。

民間金融機関

民間金融機関には、大まかに信用金庫、地方銀行、都市銀行があります。これらの金融機関から融資を受けるにあたり、それぞれどのような特徴があるのか解説します。

信用金庫

信用金庫は、地域経済の活性化を重視した金融機関として、中小企業や個人事業主の支援に力を入れています。そのため、融資の審査では財務状況だけでなく、経営者の人柄や事業の将来性も見られているのが特徴です。

また、信用金庫は組合員制度を採用しており、加入することによってさまざまな優遇や配当金を受けられる可能性があります。創業者に寄り添い、親身になって相談に乗ってくれる傾向にあるので、地域のニーズを理解した適切なアドバイスを受けられるでしょう。

地方銀行

地方銀行は、特定の地域を営業基盤とし、地域経済と強い結びつきを持っているため、地域の特性や需要を理解した金融サービスを提供しています。

中小企業から大企業まで幅広い顧客を対象としており、多額の融資に応じてもらえる可能性があるのが特徴です。地域の実情に即した融資条件を提示できる傾向にあるので、柔軟に対応してもらいやすいでしょう。

都市銀行

資金力が豊富な都市銀行は、大企業向けの融資を中心にしていますが、中小企業向けの融資も提供しています。

融資審査基準が厳しい傾向にあり、財務状況や事業の安定性が重視されるのが特徴です。そのため、新規開業においては、融資実行のハードルが高くなる可能性があります。

一方で、大規模な融資にも対応できる資金力や幅広い金融サービス・国際的なネットワークが都市銀行の強みです。事業計画や必要な融資額を十分に検討したうえで、最適な融資先を選びましょう。

美容所・理容所の創業融資は審査基準が厳格化

美容所・理容所の創業融資は、以下の理由により審査基準が厳格化しています。

  • 美容室・理容室の数が増加して飽和状態
  • 節約志向で客単価が下落

創業融資を利用できるように、事業計画書や収支計画を入念に立て、金融機関に事業の実現可能性を示せるようにしましょう。

美容室・理容室の数が増加して飽和状態

全国には約26.9万店舗の美容室が存在し、美容室・理容室の市場は飽和状態にあるのが現状です。そのため、新規参入者が十分な顧客を確保し、安定した経営を続けるのが難しく、開業した美容室の60%が1年以内、90%が3年以内に廃業しているともいわれています。

市場が飽和状態にあり、新規開業の成功率が低いことからも、金融機関は創業融資の審査基準を厳格化せざるを得なくなっているため、以下のポイントを明確にした計画を立てておくと良いでしょう。

  • どのように顧客を獲得するのか
  • 競合が多いなかで、どのように経営を安定させるのか

具体的で説得力のある計画を立てられれば、厳しい市場環境でも事業の実現可能性を感じてもらいやすくなります。

節約志向で客単価が下落

昨今の経済状況の変化に伴い、美容所・理容所業界では顧客の節約志向が顕著になっており、業界全体で客単価の下落傾向が見られています。

具体的には、カットのみの利用や低価格帯のサービスを選ぶ顧客が増加しており、高額なトリートメントやパーマなどのオプションサービスの利用が減少しているのが現状です。

そのため、金融機関は業界の変化を敏感に察知し、融資審査において収益性や経営の持続可能性をより厳しく評価するようになっています。

客単価下落の傾向を踏まえたうえで、差別化戦略や効率的な経営計画を提示し、より緻密な事業計画を立てる必要があるでしょう。

創業融資の審査で美容所・理容所のここがチェックされる!

美容所・理容所の創業融資の審査では、以下のポイントがチェックされています。

  • 事業計画書が充実しているか
  • 自己資金が十分か
  • 信用情報が良好か

創業融資の審査は年々厳しくなってきています。創業融資の審査のポイントを押さえて、開業資金を計画通りに集められるようにしましょう。

事業計画書が充実しているか

事業計画書を通じて、事業の実現可能性を判断するため、具体的で詳細な内容を記載する必要があります。

たとえば、美容所・理容所の事業計画書の場合、明確なターゲット層の設定が欠かせません。「20代から30代の女性をメインターゲットとし、トレンドを意識したカットとカラーを提供する」といった具体的な戦略を示すことが重要です。

また、提供するサービス内容や競合分析・綿密な収支計画も数字や言葉で具体的に表現し、事業の収益見込みや運営計画の実現可能性が伝わるようにしましょう。

計画が具体的で説得力があるほど、融資の承認を得やすくなります。

自己資金が十分か

一般的に、開業資金の3割程度を自己資金として用意することが望ましいとされています。

たとえば、開業資金が1,000万円必要な場合は、300万円程度の自己資金を準備しておくと良いでしょう。自己資金は、過去の貯蓄や親族からの支援などを活用して確保する場合がほとんどです。

また、自己資金の割合が高いほど、資金管理能力やリスクへの備えを示せるため、金融機関からの評価が高まります。一方で、自己資金が少ないと、融資の承認が難しくなる可能性もあるでしょう。

信用情報が良好か

金融機関は、融資のリスクを評価する上で、信用情報を慎重に調査します。

過去のクレジットカードの利用状況や既存の借入金の返済履歴に問題がないかを調べられるのが一般的です。また、クレジットスコアが高ければ、申請者の信用度が高いと判断してもらえるため、審査にプラスに働くでしょう。

一方で、過去に金融事故の経験がある場合は、審査が厳しくなる可能性があります。金融事故の経験がある人は、その後の改善状況や現在の資金管理能力を示さなければなりません。

美容所・理容所の事業計画書の作成で意識すべきポイント

美容所・理容所の事業計画を作成する際は、以下のポイントを意識しましょう。

  • 収支計画をロジックに基づいて算出
  • 売上予測の達成戦略を明確化
  • 他サロンと差別化できるポイントやコンセプトをアピール

事業計画書を作成する際は、金融機関のメリットが伝わるように具体的で説得力のある内容にするのが重要です。意識すべきポイントを押さえて、融資先の信頼を得られるような事業計画書を作成しましょう。

収支計画をロジックに基づいて算出

収支計画を算出する際は、希望的観測ではなく、具体的なデータとロジックに基づいた計画を立てなければなりません。

たとえば、月間売上の予測では、過去の市場データや地域の人口統計を活用し、平均来店客数と客単価から算出します。具体的には、1日平均10人の来客で客単価5,000円の場合、営業日を20日間とすると月間売上は約100万円と見積もることができるでしょう。

金融機関からの信頼性を高めるには、根拠のある数字を用いた収支計画が重要です。審査では、計画の現実性と論理性が重視されるため、データに基づいた綿密な計画があれば、融資承認の可能性を高められるでしょう。

売上予測の達成戦略を明確化

金融機関は、予測された売上が実現可能かどうかを審査するため、明確な戦略の提示が求められます。

たとえば、新規顧客獲得のために、SNSを活用したプロモーションを計画するのも効果的です。Instagramでビフォーアフター写真を定期的に投稿したり、初回割引キャンペーンを実施したりすることで、月間売上の増加を目指す戦略を立てられるでしょう。

また、地域イベントへの参加も有効な戦略の一つです。地域に根ざした美容所・理容所として認知度を高めることで、安定した顧客基盤の構築につながります。

具体的なマーケティング戦略や実行計画を示すことによって、売上予測の実現性が高まり、融資の信頼性も向上します。

他サロンと差別化できるポイントやコンセプトをアピール

金融機関は、独自性や強みが明確な事業計画を高く評価する傾向にあります。そのため、事業計画書において、ほかのサロンとの差別化ポイントやコンセプトの違いを明確にアピールするのが重要です。

たとえば、オーガニック製品を使用した施術や、プライベート空間を重視したインテリアデザインを採用するなど、具体的な差別化戦略を打ち出しておくと良いでしょう。

「自然派志向の顧客に特化したサロン」といった明確なコンセプトを設定することで、ターゲット顧客層を絞り込み、独自の市場ポジションを確立できます。

独自性や競争力のあるビジネスモデルは、事業の持続可能性や成長性を示す指標となるため、融資審査において有利に働くでしょう。差別化ポイントを具体的かつ説得力のある形で事業計画書に盛り込むことで、融資獲得の可能性を高められます。

計画的に創業融資を利用して美容所・理容所を開業しましょう

美容所・理容所の開業には、創業融資の活用が欠かせません。融資を確実に獲得するためには、綿密な事業計画書の作成が必要となるため、具体的なデータやロジックに基づいた収支計画・明確な売上達成戦略を明確にアピールするのが重要です。

融資先としては、日本政策金融公庫・制度融資・民間金融機関などがありますが、自己資金の準備状況や事業計画の内容に応じた選択をすると良いでしょう。

また、審査基準の厳格化に対応するためには、市場の飽和状態や客単価の下落傾向を踏まえた現実的な事業計画を立てることで審査基準の厳格化にも対応できます。

計画的に創業融資を利用し、綿密な準備を重ねて、美容所・理容所の開業を成功させましょう。


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