• 更新日 : 2023年8月10日

経営層とは?役割や経営者・管理職との違いも紹介

経営層とは?役割や経営者・管理職との違いも紹介

経営層は、組織の上層部に位置する人たちのことを指し、さまざまな役割を担っています。この記事では、経営層と経営者または管理職との違い、経営層の仕事内容や求められるスキルなど、経営層にとって必要なことを紹介します。

経営層とは

経営層とは、経営責任があり、経営資源を配分する権限を持つ人たちのことをいいます。代表取締役(社長)、常務や専務といった取締役など、役員を表すのが一般的です。会社によっては業務執行を担う執行役員を含めて経営層という場合もあります。

経営層と経営者の違い

経営者は、最高意思決定者として、業務執行の指揮監督をする人のことです。

「経営層」も「経営者」も会社の最高意思決定の権限を持っているという面は共通しています。それぞれの言葉が使われる場面は異なり、経営層は役員など経営責任がある複数の人を表すとき、例えば、ある会社の役員をまとめて表すときによく使われます。経営者は多くの場合、経営責任を持つ特定の人物を指します。

経営者の意味や経営者になるための勉強方法については以下の記事で詳しく解説していますので、こちらも参照ください。

経営層と管理職の違い

管理職は、目標達成のために組織の内部でチームを管轄する人たちのことです。部長や課長などが代表的な管理職に挙げられます。

一方、経営層とは将来に向けて事業をどのように運営していくか事業の道筋を立て、事業全体での経営判断を行う人たちのことです。

管理職は一つの部署など組織の一部を管轄するのに対して、経営層は組織全体を管轄している点が大きく異なります。

経営層に求められる役割

経営層にはどのような役割が求められるのでしょうか。経営学の権威の示す役割から、経営層が果たすべき役割について見ていきましょう。

ヘンリー・ミンツバーグの経営上の10の役割

ヘンリー・ミンツバーグは、次に紹介するピーター・ドラッカーと肩を並べるマネジメントの権威として知られる、世界的な経営学者です。

ミンツバーグは、1973年に発表した博士論文の中でマネジャー(ここでは経営層など経営の意思決定を持つ人のこと)の役割を定義しています。ミンツバーグの定義によると、以下のようにマネジャーには10の役割があり、それぞれ3つのカテゴリーに位置づけられています。

カテゴリー役割
対人関係
  1. フィギュアヘッド(看板)
  2. リーダー
  3. リエゾン(仲介)
情報関係
  1. モニター(監視)
  2. ディセミネーター(周知伝達)
  3. スポークスマン(広報)
意思決定
  1. アントレプレナー(企業家)
  2. ディスターバンス・ハンドラー(障害対応、障害処理)
  3. リソース・アロケーター(資源配分者)
  4. ネゴシエイター(交渉者)

役割1:フィギュアヘッド(看板)

組織を代表する看板または象徴的な役割のことです。組織内部で表彰やスピーチなどの儀礼的な役割を持つほか、外部からも代表として見られるため、マナーや身だしなみ、コンプライアンスを遵守する姿勢などが求められます。

役割2:リーダー

チームや部署、あるいは組織全体をまとめて、メンバー全員のパフォーマンスを管理することです。メンバー同士とのコミュニケーションや仕事をしやすい環境づくり、人員構成や人員配置の決定もマネジャーの役割とされます。

役割3:リエゾン(仲介)

マネジャーには、社内のメンバーとのコミュニケーションのほか、顧客や協力会社との関係の構築や交渉など、社内と社外の両方で関係を構築する役割があります。

役割4:モニター(監視)

内部分析による組織内の強みや弱みの把握、競合の新技術や動向の把握、組織を取り巻く環境の変化の把握など、有効な施策を打ち出すために社内外を監視する役割があります。

役割5:ディセミネーター(周知伝達)

組織に役立つ情報を内部に向けて伝達することです。マネジャーには、有益な情報を伝達して組織力を高めたり、組織としての価値を共有して判断基準を統一したりする役割があります。

役割6:スポークスマン(広報)

組織を代表して、社外に向けて自社商品やサービス、最新情報などの提供を行い、組織としての価値を高めていく役割があります。

役割7:アントレプレナー(企業家)

組織に変革を起こし実行に移していく役割のことです。組織変革を計画し、変革のための人材の捻出やリソースの確保、組織内での調整などを行います。

役割8:ディスターバンス・ハンドラー(障害対応、障害処理)

組織内でトラブルが起きたときやクレームを受けたとき、社外の出来事により脅威にさらされたときなどに、組織を代表してトラブルに対しての責任を負う役割のことです。マネジャー自らが調停などを行って対処することもあります。

役割9:リソース・アロケーター(資源配分者)

資金配分や人的配分、モノの配分など、組織全体でどこにどの資源を配分すべきか、適切な配分を決定する役割をいいます。

役割10:ネゴシエイター(交渉者)

組織の利益になるように、組織内外で重要事項についての交渉に責任を持つ役割があります。

ピーター・ドラッカーの経営者の条件

ピーター・ドラッカーは、生涯を通して数々の著書を発表し、コンサルタントや大学教授としても活動した、近代の経営哲学に大きな影響を与えた人物です。

ドラッカーの著書の中でも、有名なのが『経営者の条件』です。成果を上げるためには、ドラッカーは次の5つの習慣が必要だとしています。

  1. 時間が何に割かれているか把握して時間を管理する
  2. 努力ではなく顧客への貢献に意識を向ける
  3. 弱みではなく強みを引き出す
  4. 重要度を適切に判断して一つの仕事に集中する
  5. 何が正しいかを見極め意思決定をする

また、ドラッカーは、経営者や経営層の役割について、事業策定をすること、資金配分をすること、人材配置をすること、とも述べています。

経営層の主な仕事内容

経営層の役割をベースに、経営層が主に担うことになる仕事内容を5つ取り上げます。

経営方針やMVVの設定・浸透

経営層の主な仕事の一つが、経営方針やMVVの設定です。経営方針とは、企業の存在意義である経営理念を実現するための考えや目標のことをいいます。

MVVはミッション・ビジョン・バリューの略称で、使命、理念、行動指針のことです。どのような使命を持って、どのような理想を追求し、どのように理想を実現していくかを表します。

経営方針やMVVの設定は、企業が共通事項としてどのような方向性を持って事業を進めていくかを明らかにするものです。

経営層は組織を正しい方向に導くためにこれらを定め、社内に浸透させていく役割が求められます。社内に浸透させる方法としては、社内報での周知、経営層による動画での発信、人材育成への組み込みなどがあります。

組織の整備

事業をうまく回すには、組織としての仕組みを適切に整備することが必要です。誰が組織の中で指示命令を出すのか、誰にどこまでの権限を持たせるのか、組織内でどのように分業していくかなどを明らかにするため、経営層は会社の組織構造を決めていきます。

代表的な組織構造は、職務別で組織を編成する職能別組織、プロジェクトごとに組織を編成するチーム制組織、事業内容ごとに組織を編成する事業部制組織です。

どの組織構造が適しているかは事業内容や会社の規模によって異なります。経営層は組織がうまく回るように、指揮命令や権限などを意識して組織構造を決定し、必要に応じて組織構造の見直しを行います。

社員の採用・育成・評価

人材は重要な経営資源の一つです。経営理念を実現していくためには、経営層も社員の採用や育成、評価に携わる必要があります。

まず、社員の採用に関して経営層に求められるのは、会社が必要としている人物像の明確化です。どのような人材が欲しいかを具体化して人事と情報を共有していくことで、必要な人材の確保を進めていきます。

採用した人材が会社での役割を果たせるように育成方法を検討したり、育成が十分にできるような制度を取り入れたりして、社員教育の基盤を構築するのも経営層の役目です。

さらに、獲得した人材の社外流出を防ぎ、社員のモチベーションを維持するためにも、個々が正しく評価される人事評価制度の整備も求められます。

事業推進

事業拡大に取り組むことも経営層の仕事です。事業の問題点の洗い出しと改善に向けての環境整備、M&Aの推進、中長期計画の策定などが主な仕事内容になります。

小規模な組織では、経営層自らが顧客ニーズ把握のために市場調査や分析を行ったり、新製品やサービスの考案や社内案の最終的な意思決定を行ったりすることもあります。

資金繰り

会社の資金繰りを把握して、必要に応じて経費削減や資金調達などのアクションを行うのも経営層の仕事です。

資金繰りとは、金銭による収入と支出を管理することで、金銭の収支は必ずしも会社の損益とは連動しません。例えば、商品引き渡しから入金まで数カ月後かかる場合、会計上は利益が出ていても現金が不足してしまうケースもあります。

資金繰りを把握して健全な経営を維持することは取引先との信用関係を維持するためにも重要です。経営層には資金繰りが悪化しないように資金調達の計画を立てたり、資金繰りが悪化した場合に原因を把握して対策を講じたりする役割があります。

経営層に求められるスキル

会社をよりよい方向に導くために、経営層はどのようなスキルを持つべきか、経営層に求められる5つのスキルを取り上げます。

会計知識

日々の会計処理は経理担当者に、税務は税理士に依頼できます。そのため、経営層が専門的な会計知識を深掘りする必要はありませんが、会社を運営する上で会計が大きく関係してくるのもまた事実です。

会社の財政状況などを適切に把握して適切な経営判断を下せるようにするには、少なくとも決算書を理解できるほどの会計知識が求められます。

決算書の中でも特に重要なのが、会社の財政状況がわかる「貸借対照表」、会社の経営成績がわかる「損益計算書」、会社の金銭の流れがわかる「キャッシュ・フロー計算書」です。

それぞれの決算書で表示されている科目は何を表すのか、それぞれの数字の意味は何か、数値を組み合わせてどのような財務分析ができるか、などの会計知識は身につけておいた方がよいでしょう。

ヒューマンスキル

ヒューマンスキルは、良好な対人関係を構築するためのスキルです。経営層の役割でも取り上げたように、経営層は社内とのコミュニケーションだけでなく、社外関係者などとのコミュニケーションも求められます。ヒューマンスキルが高いことも経営層が仕事を遂行していくために重要です。

ヒューマンスキルは対人関係を構築するための総合的な能力のことで、リーダーシップやコミュニケーション力、プレゼンテーション力、ヒアリング力、交渉力、コーチング力、ファシリテーション力(進行力や調整力)、向上心などで構成されます。

リーダーシップなど特定の能力が高ければよいわけでなく、経営層にはヒューマンスキルを構成する各要素において高い能力が求められます。

戦略的思考力

戦略的思考力は、事業計画実現のための合理的な考え方をいいます。戦略的思考力を構成するスキルは、ビジョンを編み出し伝える力、多角的に物事を見る力、過去に捉われず発想する力、適切な仮説構築力、論理的なシナリオ構想力、意思決定力です。

近年、ビジネスのスピードはその速さを増していっています。日々生まれるアイデアやトレンドの中、よいタイミングでビジネスチャンスを掴むには、戦略的思考で経営に従事することも経営層には求められます。

決断力

経営のかじ取りをする経営層には決断力も必要です。近年、グローバル化が進んできたこともあり、早期に決断を迫られる場面も増えています。質の高い決断をスピーディーに下すことも経営層には必要なスキルです。

しかし、決断がときに悪い方向に進んでしまうこともあります。早期に軌道修正を図ることで改善できるので、なかなか決断せずに後手になるよりは、迅速に決断する習慣を身につけることが経営層には求められます。

先見力

技術革新やグローバル化など、ビジネスは日々激しく変化しています。このような世の中で事業を維持し、さらに拡大していくには、時代がどのように変化していくのか先読みする先見力が経営層には求められます。

しかし、将来には不確定要素も多いこと、手探りで進めていく必要があります。実践のためには複数の問題があることから、先見力を発揮して事業を推進できる経営層は多くないとされています。

先見力を発揮することはビジネスを有利に進めていくために重要なことに変わりはありませんので、洞察力を磨くなどして先見力を磨いて実践できるようにすることが重要です。

部長職を経営層に引き上げるためのポイント

部長職は、組織の広い範囲を管理し、より組織を意識した働きかけをする、次の経営層候補のポジションに位置します。しかし、部長職は経営層の一翼を担うポジションであるものの、経営層とは役割や求められるスキルは異なってきます。

部長職を経営層に引き上げるには、部長職と経営層の仕事内容や必要なスキルの違いを早い段階から教育することが重要です。

そのためにも、部長の前である課長など、早い段階から経営層となり得る候補者を選定し、育成の方向性を決めていきます。それぞれのスキルや適性は異なるので、把握した上で不足する部分を補う教育や経営層研修を実施し、部長職の人が経営層に昇格した後に経営層としての役割を着実に実行できる環境を構築するようにしましょう。

企業の維持や拡大を図るには、今いる経営層だけでなく、次世代の経営層にも目を向け、人材教育に力を入れることが重要です。

経営層にはさまざまな役割がある

ヘンリー・ミンツバーグやピーター・ドラッカーが唱える経営層の役割でも取り上げたように、経営層は、最高機関としての意思決定だけでなく、社内外での対人関係の構築や経営資源の配分など、さまざまな役割を有しています。

経営層に求められる役割を担い事業を発展させていくには、求められるスキルを有する人が経営層となって、経営層としての仕事を着実に遂行していくことが重要です。

また、組織を維持・拡大していくには、次世代の経営層への教育についても目を向けていくことが求められます。


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