- 更新日 : 2023年12月5日
ゲストハウス経営の成功のコツとは?必要費用や準備について解説!
コロナ禍で行われた入国規制の解除などによって、訪日外国人観光客の数は以前の水準に戻りつつあります。需要を見越して、ゲストハウスを経営するのも良いでしょう。今回は、ゲストハウスはどのようにして開業するのか、開業に必要な資格や許可、ゲストハウスの始め方、資金調達、失敗しないためのポイントなどを取り上げます。
目次
ゲストハウス経営とは?
ゲストハウス経営とは、ゲストハウスと呼ばれる宿泊施設を準備し、利用者から宿泊料金を得て収益とするスタイルのビジネスです。そもそもゲストハウスとは何か、民宿と何が違うのかを解説していきます。
そもそもゲストハウスとは?
ゲストハウスとは、一般的に設備を共有(シェア)するタイプの宿泊施設をいいます。共有する設備はゲストハウスによってさまざまです。
ドミトリータイプで他の宿泊者と部屋を共有するタイプ、リビングやバスルームなどの設備の一部を共有する形で個室を別に設けるタイプがあります。
一般的なホテルは、部屋にトイレやバスルームなどが備わっており、基本的に他の宿泊者と設備を共有することはありません。その点、ゲストハウスは設備を共有することでコストを抑えているため、安価で宿泊が可能です。バックパッカーや人との交流を楽しめる人、やや長期の観光を楽しむ海外からの観光客などに人気があります。
ゲストハウスと民宿はどう違う?
民宿は、旅行者が利用できるように民家の一部を開放したのが始まりといわれており、その多くは個人経営の小規模な宿です。
ゲストハウスとは異なり、民宿には所有者兼経営者が住んでいることがあります。昔ながらの家屋や地元の料理など、その土地の暮らしを感じられる雰囲気があるのが特徴です。一般的に、風呂場などの設備は、ゲストハウスのように共同となります。
ゲストハウス経営を始めるうえで必要な許可および資格
ゲストハウス経営に必須なのが、旅館業法に基づく営業許可です。また、ゲストハウスの運営形態によっては、その他の資格や許認可が必要になることがあります。
【必須】旅館業法に基づく許可
旅館業法では人を宿泊させる旅館業を、ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業の4つに区分しています。これらの旅館業を営業する場合は、都道府県知事(一部の自治体は市長または区長)の許可が必要です。
この他、事業として人を宿泊させる場合には、民泊新法(住宅宿泊事業法)に定められた民泊や特区民泊を選択する方法もありますが、営業日数または宿泊日数に制限がありゲストハウス経営にはあまり向いていません。
ゲストハウス経営では、設備を共同で利用する宿泊施設を運営することから、旅館業法に定める簡易宿所営業の許可を取得することが一般的です。
営業許可を取得するには、施設基準を満たした上で管轄の保健所で申請を行い、施設検査を受けて合格する必要があります。
【必須】消防法令適合通知書交付申請
消防法令適合通知書交付申請は、消防署から検査を受けるために必要な書類です。ゲストハウスのような旅館業や民泊を営む場合、保健所から簡易宿泊業の営業許可を受ける前に、管轄の消防署で申請し、消防調査を受けます。消防法に適合した設備かどうか検査を受ける流れとなります。調査後に受け取る消防法令適合通知書は、営業許可の申請の際に添付が必要とされる書類となります。
建物に関する手続き
既存の建物を利用する際、ゲストハウスを経営するために用途変更を行わなければならない場合は、建築基準法による用途変更手続きが必要です。さらに、一定規模のゲストハウスを経営する場合は防火管理者の選任をしなければなりません。
ゲストハウスで食事を提供する場合
ゲストハウスで食事を提供する場合は、旅館業の営業許可とは別に、食品衛生法に基づく飲食店営業許可が必要です。食事を提供できる設備を整えた上で、保健所の検査を受け、許可を受ける必要があります。
さらに、食品を提供する場合は食品衛生責任者になる資格を有した人を選任しなければなりません。食品衛生責任者になる資格は、都道府県の定める講習会を定期的に受けることで取得(栄養士や調理師など、特定の資格保有者は受講不要)できます。
なお、アルコールを提供する場合は、一般酒類小売業免許など、経営形態に応じて免許や許認可が必要になることがあります。
ゲストハウス経営を始めるまでの流れ・準備
ゲストハウス開業までには、さまざまな準備が必要です。状況によっては多少前後することもありますが、おおむね以下のような流れで開業に向けた準備を進めていきます。
コンセプトの決定
まず、ゲストハウス経営のために必要なのがコンセプトの設定です。
宿泊先を安価で探している国内の若い層をメインターゲットにするのか、海外からの旅行者をメインターゲットにするのか、などによって必要な設備や提供するサービス、イメージが大きく変わってきます。
ゲストハウスを主に利用する層をイメージしたで上で、どういった層にアプローチしたいのか、どのような雰囲気にしていきたいのか、どのような目的でゲストハウスを経営したいのか、しっかりイメージしながらコンセプトを決めていきましょう。
例えば、ゲスト同士がコミュニケーションを取れるリビングやキッチンを充実させる、アクティビティーも楽しめるゲストハウスにする、などのアイデアがあります。
予算計画と資金調達
コンセプトを決めたら、どのような設備が必要になりそうか、どういった内装工事が必要か、ある程度固まってきます。ゲストハウスの開業までにかかりそうな費用を予想し、予算を振り分けていきましょう。
開業までの資金が不足する場合は、資金調達についても考える必要があります。資金調達の方法については後述しますので、そちらを参考にしてみてください。
物件探し
ゲストハウス経営のための物件探しは、土地から探して新しく物件を建設する方法、中古の物件を用途変更するなどして活用する方法が考えられます。
宿泊施設にできる用途地域は制限されるため、物件が問題はないか確認することが大切です。また、地域の条例によって制限が異なるので、条例も確認し、コンセプトに合う物件を探していきましょう。
ゲストハウス経営に必要な旅館業に規定される許認可も関わるので、行政書士などの専門家に相談するのもおすすめです。
工事の着工
消防法に定める消防法令適合通知書の取得や、旅行業法に定める営業許可取得のためには、法に定める構造や設備の基準を満たす必要があります。
許認可を申請する前に、保健所や消防署に相談をするのが一般的です。事前に相談することで、どういった整備が必要かわかり、施設基準を満たせないような場合は指摘してもらえます。
事前に相談することで、その後の内装や配管などの設備に関わる工事もスムーズに進めやすくなります。必要な設備を確認して、工事や建設を進めていきます。規模などによっては工事に時間がかかる可能性もありますので、その点も考慮して早めに準備しましょう。
設備の導入
キッチンやリビングに設置する家具、ゲスト用のベッド、机、椅子、などコンセプトに沿って設備の整備や導入を進めていきます。
許認可の申請
申請に必要な書類がそろった時点で、旅館業法に基づく許認可の申請を保健所で行います。許認可の申請にあたり、消防法令適合通知書が必要ですので、消防法調査を先に済ませておきます。
立ち入り検査
許認可の申請を受けて、基準が満たされているかどうかを確認するため、施設への立ち入り検査が実施されます。立ち入り検査は、工事も設備の導入も完了した段階で行われるものです。保健所の検査では、設備基準に問題がないか、衛生面に問題がないかのチェックが入ります。
オープン
許認可が下りたら、ゲストハウスのオープンに向けて最終的な準備を進めていきます。なかでも重要なのが集客です。
開業直後から高い稼働率で営業できるようにするためにも、まずはゲストハウスの存在を知ってもらえるようにしましょう。
具体的な方法として、ゲストハウスの雰囲気が伝わるホームページの開設、Google マップ上で探せるGoogle ビジネス プロフィールの登録、利便性の高い予約サイトやアプリの利用などがあります。拡散力のあるSNSへの投稿などもおすすめです。
特に、宿泊先を探す利用者の多くは、予約サイトやアプリを利用する傾向にあります。アプリや予約サイトは開業直後の集客効果が高いため、積極的に活用すると利用者を集めやすくなります。
ゲストハウス経営を始める上での資金調達方法
ゲストハウス経営には、ゲストハウスの営業ができる規模の物件が必要です。規模によっては数千万円以上の資金を要することもあります。中古物件を取得する場合は、建設が不要なため初期費用を抑えやすいですが、それでもある程度の資金の準備が必要です。
自己資金以外でまとまった資金を用意するには、日本政策金融公庫や民間金融機関などからの融資を利用するのが一般的です。自治体によっては創業者向けに創業資金の援助や融資を行っている場合もあります。
例えば、日本政策金融公庫の新規開業資金では、7,200万円(うち運転資金4,800万円)を上限に融資を受けられます(融資限度額はあくまでも最大値です。審査によって借りられる額は異なります)。うまく利用しつつ、資金調達を進めると良いでしょう。
他にはないユニークなゲストハウスのアイデアがあるなら、ビジネスに賛同する個人から資金を調達できるクラウドファンディングもあります。
それぞれメリット・デメリット、調達できる金額などに違いがありますので、ビジネス形態や必要額などとも照らし合わせながら事業に合った方法で資金調達をしましょう。
ゲストハウス経営で成功するポイント
ゲストハウス経営でつまずかないためにはどうすれば良い、成功のために押さえておきたいポイントを5つ紹介します。
明確なコンセプトを決める
ゲストハウスは、民宿やホテル、旅館などさまざまな宿泊施設が競合になるため、コンセプトが定まっていないと差別化を図れず、埋もれてしまいます。
周辺の環境や需要なども把握した上で、将来の展望、ターゲット、独自の強みなどを明確に定めて経営を始めましょう。明確なコンセプトがあれば、導入する設備やサービス、集客方法の選択なども迷わずに済みます。
施設環境の整備
居心地が良く、利用しやすい環境であることも、ゲストハウス経営における成功のポイントです。例えば、ゲストハウスでは共同で利用するトイレやバスルームなどをいかに清潔に保つかなども考えて経営しましょう。
また、Wi-Fi環境を求める利用者も多くいます。セキュリティー対策なども含め、Wi-Fi環境の整備も検討します。
海外からの宿泊者を多く迎える予定がある場合は、日本語表記だけだと戸惑ってしまう可能性が考えられます。設備の利用の仕方を外国語で表記するなど、利用しやすい環境づくりをしましょう。
計画的な資金繰り
「すぐに人気が出るだろう」「1日にこのくらいの宿泊者が入るだろう」など、甘い見通しは資金繰りの悪化を招き、事業存続の危機に陥れることもあります。
特にゲストハウスの開業初期は、宿泊者が集まりにくいため、運転資金としてある程度の資金を手元に残しておくことが重要です。
そのためにも、どの程度の資金であれば初期投資に回しても問題ないか、開業直後にあまり宿泊客が入らなかったとして軌道に乗るまでどのくらいの資金が必要かなど、資金計画をしっかり立てて、計画的な資金繰りを実行しましょう。
稼働率を増やす
ゲストハウス経営の売り上げは、平均客単価、客数、稼働率、リピート率などで決まります。ゲストハウスは、ホテルや旅館などと比べて宿泊料金が低く設定されていることが多いため、平均客単価は低くなりがちです。そのため、新規客数やリピート客数を増やして稼働率を上げられるかどうかが成功の分かれ目となります。
稼働率を上げるには、まずターゲット層にとって利用しやすい場所にゲストハウスがあることが重要です。ターゲット層やコンセプトに沿った物件探しに注力しましょう。その上で、イベントを開催するなど、利用したいと思ってもらえるような施策を打ち出していきます。
閑散期を避けるなど適切なタイミングでオープンする
ゲストハウス経営を成功させるには、オープンから数カ月の間にいかに集客できるかが重要なポイントだとされています。集客が多いと、口コミも集まりやすくなるためです。口コミが増えると新規利用者の増加も期待できます。
しかし、周辺であまりイベントが開催されない時期にオープンすると集客しにくくなり、稼働率が落ちてしまいます。ゲストハウス周辺における閑散期を避けるなど、オープン時期を考えて開業することも重要なポイントです。
ゲストハウス経営によって想定される年収
ゲストハウス経営による年収は、ゲストハウスの規模や収容人数(最大どのくらいの人数が利用できるか)、宿泊料金、稼働率で変わってきます。
ゲストハウスの宿泊料金はホテルや旅館よりも安価に設定されていることが多く、目安は2,500~5,000円程度です。
例えば、宿泊料金3,000円で、ベッド数10のゲストハウスを、60%の稼働率で、年中無休で運営したとしましょう。この場合、以下の計算式が成り立ちます。
3,000円×10×60%×365日=657万円
なお、上記はあくまで売り上げの計算であって、ゲストハウスの経営に必要な経費は考慮されていない点に注意が必要です。
民泊・ゲストハウス開業向けの事業計画書テンプレート(無料)
こちらから自由にお使いいただけるので、ぜひご活用ください。
開業に向けてゲストハウス経営の準備を進めよう
小中規模で宿泊業を営む場合、ゲストハウスも選択肢に入ってきます。ゲストハウスは、ホテルや旅館などと比べると簡易的な設備も認められますが、旅館業法による営業許可は必須です。
ゲストハウス開業までの流れを理解した上で、適切なタイミングで開業できるように、必要な手続きや準備を進めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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