- 作成日 : 2024年9月4日
古物商許可に開業届は必要?どちらを先に申請すべき?
古物商許可とは、「古物」の売買や交換、貸付を事業として行う古物営業をする場合に必要な許可のことです。古物営業の際に必要な「古物商許可証」と事業開始の際に提出が必要な「開業届」について、どちらを先に提出すべきなのでしょうか?この記事では、「開業届よりも先に古物商許可を申請すべき」であることを分かりやすく解説します。
目次
古物商許可の申請に開業届は必要?
古物商許可と開業届、どちらも古物営業を始めるときに必要となる手続きです。それぞれの手続きの考え方と提出タイミングについて考えましょう。
そもそも開業届とは?
開業届(正式名称:個人事業の開業届出・廃業届出書)は、新たに事業所得、不動産所得、山林所得を生ずる事業を開始した個人が提出すべき書類です。一般には古物営業の取引を始める準備が完了した日を開業日とし、開業届は事業開始の事実があった日から1月以内に提出することとなっています。
なお、開業届の提出に合わせて「青色申告承認申請書」を提出することが可能です。青色申告は税務上の特典を受けられるため、開業時から始めるのも一案です。
古物商許可とは?
古物とは、一度使用されたものや新古品などを言います。古物営業には古物の売買等を行う営業(古物商)や古物同士が取引をする古物市場の営業(古物市場主)などがあります。古物商などとして、国内で古物の「売買」「交換」「委託売買」などを行う古物営業を始める際には、古物営業の許可が必要です。
許可申請は管轄の警察署となっており、必要書類と手数料(19,000円)を添えて申請します。申請から約40日以内に許可・不許可の連絡があります。通常は警察署の生活安全課などに申請しますが、警察によって申請する部署が異なるため確かめておきましょう。
参考:古物商許可申請|警視庁
申請書類は、次のような書式になっています。
引用:申請届出様式等一覧|警視庁、「古物商・古物市場主許可申請書」
古物商は、外部での古物営業にあたっては許可証を携帯し、またホームページなどを含めて店舗には許可標識を掲載しなければなりません。
参考:相談・申請・手続き|和歌山県警察、「古物営業の手引き」
古物商許可は開業届がなくても取得できる!
古物営業は、許可を受けたことを取引相手に明らかにする必要があります。古物営業は許可がないとできないので、開業届を先に出しても営業ができません。したがって、古物を取り扱う事業をする場合、古物商許可は開業届に先だって取得すべきです。
また、古物商許可申請先は警察署となっています。古物営業法第1条には次のように書かれています。
この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もって窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。
つまり、古物商許可申請先が警察署となる理由は、古物営業で取り扱う「古物」に盗品等が流れやすいためであり、犯罪防止の観点からと言えます。古物を取り扱うことにより、盗品の流通防止や犯罪の捜査協力などの社会的責任も伴います。
さらに、古物のうち貴金属等の売買を行う古物商(特定古物商)等については、特定事業者として別途確認義務や届出義務が課せられます。
参考:
古物営業・質屋営業について|警察庁
宝石・貴金属等取扱事業者|経済産業省
古物商許可と開業届のどちらを先に提出すべき?
古物商を開業する手続きとしては、以下の順序で行うとよいでしょう。
- 古物商許可を取得する
- 開業届を提出する
なお、開業届は「届出」であり、申請ではありません。「届出」とは行政庁に対し、一定の事項の通知をするものであるため一方通行と言えます。一方で「申請」とは、法律に基づいて行政庁の許可、認可等を求める行為であるため、行政庁からなんらかの応答があるものと言えます。
古物商許可を警察署に申請し、許可が降りたら、次に税務署に開業の届出書を提出する流れになります。
古物商許可を取得したらすぐに開業する必要がある?
古物商許可を得ても、すぐにその許可にかかわる営業を行っていない場合にはどうなるのでしょうか?
6ヶ月以内に営業開始しないと古物商許可を取り消される
古物商許可には取消制度があります。古物営業法第6条の1には次のような記載があります。
公安委員会は、第三条の規定による許可を受けた者について、次に掲げるいずれかの事実が判明したときは、その許可を取り消すことができる。
(中略)
許可を受けてから六月以内に営業を開始せず、又は引き続き六月以上営業を休止し、現に営業を営んでいないこと。
引用:古物営業法|e-Gov
したがって、古物商許可を得ても6ヶ月以上営業をしていない場合には、許可の取消をされる可能性があるため注意しましょう。
実際の中古品取引がなくても営業活動をしていればOK
大きな取引を想定している古物営業では、営業はしていても実取引が6ヶ月ないこともあり得ます。しかし、営業とは売買取引だけではなく、営業活動全般を指します。つまり、顧客へのアプローチやチラシ配布なども営業に入ります。ただし、その場合は営業の形跡が分かるように管理しておきましょう。
古物商許可を取得し、開業届を提出するまでの流れは?
簡単ではありますが、古物商許可を取得し、開業届を提出するまでの流れを紹介します。
1. 古物商許可条件の確認
先だって確認すべきことは、許可の取得条件です。次の人等については、古物商許可をとることができないため注意してください。
- 破産手続等の決定を受けている者
- 禁固以上の刑に処せられたことがある者
- 集団的または常習的な暴力的不法行為等の恐れがある者
- 暴力団員
- 住居の定まらない者
- 古物商の許可を取り消されて5年を経過しない者など
- 心身の故障により古物商業務を適正に実施できないと認められる者
- 未成年者
- 営業所のない者
2. 古物商許可申請書の作成、添付書類の準備
申請は個人か法人かで申請書類が異なるため、あらかじめ決めておきましょう。また、古物商許可の申請をする際、1つの申請書において取り扱う古物については、13品目から1つを選択しなければなりません。許可申請書の古物13品目は以下のとおりです。
- 美術品類
- 衣類
- 時計・宝飾品類
- 自動車
- 自動二輪車・原付
- 自転車類
- 写真機類
- 事務機器類
- 機械工具類
- 道具類
- 皮革・ゴム製品類
- 書籍
- 金券類
参考:申請届出様式等一覧|警視庁、「古物商・古物市場主許可申請書」
個人申請の場合には、添付書類として次のものが必要です。経営者のほか営業管理者が別にいる場合には、1~4については営業所の管理者分も必要となります。
- 履歴書
- 本籍が記載された住民票の写し
- 誓約書
- 身分証明書
- URLの使用権限があることを疎明する資料(ネット販売などの営業形態のみ)
3. 古物商許可申請 (申請先:警察署)
手数料(19,000円の都道府県証紙にて支払)を添えて、必要書類とともに提出します。場合によっては、営業所や駐車場の賃貸借契約書等の写し等が必要となることもあるため、事前に警察署に相談しておくとスムーズに進みます。なお、警察署は自宅でなく、営業所を管轄する警察署です。
4. 審査後、許可証取得 → 標識設置
許可証を取得後、古物営業を開始します。古物商許可とは別に、古物商の標識を自分で準備し、営業所の見えるところに貼っておくことも忘れないようにしましょう。
また行商(出張買取など営業所以外で古物営業を行うこと)がある場合は、従業者証についても準備しましょう。
5. 税務署に開業届
古物営業の開始日から1ヶ月以内に、税務署に開業届を提出します。
古物商許可は副業でも取得できる?
副業においても古物商許可は可能です。古物営業法を遵守し、本業が会社員等であれば会社の副業ルールを守り、かつ必要な確定申告等を行えば問題はありません。しかし、副業において「営業所」を持つことができるかどうかを事前に検討する必要があります。
自宅を営業所とすることも可能ですが、自宅が賃借物件であった場合には貸主の許可が必要となる場合があります。不明な場合は大家さんに確認しましょう。
古物商許可を先に取得し、開業届を提出しよう!
古物商許可は、扱う商品の内容から警察署が申請先になります。古物商許可について、行政書士などに委託することも可能ですが、その後、古物商が遵守すべきルールなどは自分で管理していかなければなりません。
また開業届を提出したら、確定申告もあります。事業が軌道に乗って取引が増えてくる前に古物商として、個人事業主としてやるべき内容について準備をしておきましょう。
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