• 作成日 : 2025年1月28日

創業融資は個人事業主も対象?いくらまで借りられる?審査・手続きを解説

創業融資は個人事業主も対象です。また、融資額や手続きの方法は、借入先によって違うので下調べをした上で把握することが大切です。

この記事では、個人事業主が申し込める創業融資の種類や審査にかかる目安期間、提出書類など、個人事業主が融資を受けるために必要な情報を総合的に解説します。

創業融資は個人事業主も対象?

創業融資は、事業開始に向けた資金の調達手段です。事業を始めるためには多くの資金が必要です。自己資金を用意して臨んでも、資金が足りなくなるかもしれません。創業融資はそのような場合に備えた融資制度です。

融資の種類によっては、事業において過去の実績がない個人事業主でも利用が可能です。個人事業主は法人のように融資を受けるのは難しいと考えがちですが、融資機関から事業者としての信用を得ることで融資制度を受けられます。

創業融資とは

創業融資についてさらに詳しく解説します。

個人事業主が受けられる創業融資には以下の3つがあります。

日本政策金融公庫とは、国が100%の株を保有している金融機関です。民間の銀行からの融資が困難な場合に、創業時の融資を支援してくれます。

ほかにも、自治体ごとに定める制度融資や、民間の金融機関が提供している融資もあります。

個人事業主が申し込める創業融資の種類

各機関が提供している創業融資の特徴や、融資を受ける条件などを見てみましょう。

日本政策金融公庫の創業融資

日本政策金融公庫の創業融資は、国民生活事業として提供されている融資制度です。新規事業を始める方や事業開始後税務申告を2期終えていない方でも、融資を受けられます。

新規事業者は、実績が確立されていないという理由で、民間の銀行から融資を断られる場合があります。一方、日本政策金融公庫の創業融資は、実績がなくても無担保・無保証人で融資を受けられるのが特徴です。

さらに、女性や若者、シニアなど一定の条件に当てはまる方は、「新規開業資金」という制度を使えます。この制度は、年利が基準利率(2.60~3.70%)よりも低い特別利率(2.20〜3.30%)で融資を受けられるというものです。融資の上限額は7,200万円なので、高額の借入が難しい個人事業主の方にとってメリットが大きい制度です。

自治体の制度融資

自治体の制度融資とは、各自治体が金融機関や信用保証協会と連携し、個人事業主や法人の事業資金を調達する制度です。自治体の経済発展のために設けられた制度で、低金利で融資を受けやすくしているのがポイントです。

自治体によって対応が異なり、自治体が金利の一部や全額を負担してくれるケースもあります。また、融資開始から最初の3ヶ月〜1年間は据置期間に設定されている場合が多く、期間中はビジネスを軌道に乗せるため、営業に集中できるというメリットがあります。

デメリットは、申請から融資を受けられるようになるまでの期間がほかの融資と比べて長いことです。制度融資は自治体・金融機関・信用保証協会の3つの機関で審査が必要なためです。制度融資を検討する場合は、期間に注意して手続きを進めましょう。

信用金庫の融資

地域に密着した信用金庫も、創業資金の調達先のひとつです。

融資額や条件は信用金庫ごとに条件が違います。横浜信用金庫では、個人事業主が営業地区内に新たに創業を計画している場合、連帯保証人がいなくても500万円以内の融資を受けられます。

条件には、「初期投資(必要資金)の20%以上の自己資金を準備することができる事業者の方」とあるように、ある程度のまとまった自己資金がある方が対象です。

連帯保証人の有無や融資上限額は信用金庫によって異なるので、違いを抑えた上でどの信用金庫にするか検討しましょう。

創業融資にかかる審査期間

前記した各融資の審査期間の目安は以下の通りです。必要書類の準備に時間を要する場合は、期間が延びる場合もあることを念頭に、計画的に準備を進めましょう。

創業融資の種類審査期間(目安)
日本政策金融公庫の創業融資約2週間
自治体の制度融資約2ヶ月~3ヶ月
信用金庫の融資約1ヶ月~2ヶ月

個人事業主が創業融資を申し込む際に必要な書類

以下に創業融資を受けるための代表的な書類を4つ記載しました。

実際は、創業融資をどこから受けるかによって必要な書類は違います。融資を受ける機関に相談をした上で、必要書類を用意しましょう。

1. 創業計画書

創業計画書とは、事業内容や販売戦略、創業の動機などが書かれた文書です。ほかにも記載が必要な項目として、資金計画、経営者の略歴、収益予測、取引先情報などがあげられます。創業計画書をもとに、金融機関は事業の将来性や成功性を判断し、融資をするに値するかどうかが審査されます。

創業計画書の内容が直接融資結果に反映されるので、綿密な下調べを行い、説得力のある内容を記載しましょう。

2. 借入申込書

日本政策金融公庫から融資を受ける場合は、借入申込書が必要です。借入申込書には、個人の基本情報や、借入金の希望額、借入希望日などを記入します。

申込書用紙は日本政策金融公庫の各支店でもらうか、ホームページからダウンロードして準備しましょう。

3. 信用保証委託申込書

信用保証委託申込書は、自治体の制度融資のように、信用保証協会と連携して融資を受ける際に必要な書類です。業種や住所などの基本情報をはじめ、希望の資本金額や返済方法、使い道などを記載して提出します。

地域ごとの信用保証協会によって必要な提出書類が違うので、各信用保証協会に問い合わせて確認しましょう。

4. 確定申告書(創業後の場合)

創業後に融資を受ける場合は、確定申告書が必要です。直近2期分の確定申告書を用意するのが一般的ですが、事業を開始して2年経過していない場合は1年分でも大丈夫です。

また、創業後に日本政策金融公庫から融資を受ける場合は、「企業概要書」の提出を求められる場合があることも覚えておきましょう。

個人事業主が創業融資を受ける際の自己資金の目安

個人事業主が用意する自己資金の額は、借入先によって条件が違います。日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」のデータによると、資金調達額における自己資金の割合は、約24%という結果が出ています。創業融資を申し込む個人事業主の方は、2〜3割ほどの自己資金が必要だと考えておくのがいいでしょう。

また、横浜信用金庫や福岡市では、以下のような条件が提示されています。

横浜信用金庫 創業支援融資「創る」初期投資(必要資金)の20%以上の自己資金を準備することができる事業者の方
福岡市「創業支援資金」創業予定者又は税務申告1期未終了者に限り、創業資金総額の1/10の自己資金を有すること

参照:横浜信用金庫 創業支援融資「創る」

参照:福岡市「創業支援資金」

自治体や信用金庫の融資を申し込む場合は、一定額の自己資金が必要な場合があります。

個人事業主が創業融資の審査に通るポイント

創業融資の審査は以下の5つのポイントを踏まえる必要があります。

1. 自己資金の割合

前述した通り、融資総額の2〜3割を目安に用意しましょう。自己資金の割合が高いと返済能力があるとみなされます。また、自己資金をしっかり用意していると、事業の準備を本気で行ってきたという証やリスク管理能力が高いという証明にもなります。

2. 過去の業務経験

事業に関わる業務経験が豊富なほど、事業の成功が高いと判断されます。まったく経験のない事業は廃業の確率が高くなるとみなされ、審査が通らない可能性があります。

必要な経験年数に関して具体的な数字は出ていません。業務経験はある方が有利ですが、長いからといって絶対に融資が通るとは限りません。経験が浅くても創業計画書から成功の確率が高いと判断され、融資を受けられることもあり得ます。

3. 信用情報

過去のクレジットカードの支払履歴や預金通帳のチェックが入ります。過去に支払の延滞や未納をしていると信用情報に悪い影響を及ぼします。お金の管理にだらしない部分があると、融資を受けるのは難しくなるでしょう。

また、自己資金がしかるべき方法で集められたのかどうかも見られます。家族や友人に一時的にお金を借り、いきなり口座に多額のお金が振り込まれると、融資を得るためだけに用意された「見せ金」と捉えられる場合があります。

4. 返済の可能性の高さ

税金を引いた後の利益が、毎月の返済額より上回らなければいけません。創業計画書の内容が現実的なものであり、返済の可能性が高いかをチェックされます。

5. 融資の使い道

融資を何に使うか明確に提示できるようにしておきましょう。購入予定のものの見積書や賃貸物件などのチラシなども証明資料として使用します。

また、融資を受けた後、実際の使用用途が申請内容と一致しているかも確認が入ります。

創業融資の審査に落ちてしまった場合

審査に落ちた理由を対象の機関に聞いても、明かされないことがほとんどです。審査に落ちた場合は、なぜ落ちたのかを冷静に分析することが大切です。

まず、前記した「創業融資の審査に通るポイント」と反対のことをしていないかチェックしましょう。

  • 自己資金が足りていない
  • 関連する業務経験が浅い
  • 信用情報に傷がついている
  • 創業計画書が詳細に書かれていない
  • 融資の使い道に整合性が取れない

上記のどれかに問題があれば、それが審査に通らなかった理由として考えられます。これらの修正は、1日2日ですぐできるものではありません。審査に落ちた原因を分析して修正し、綿密な準備を進めましょう。次の審査まで、少なくとも半年間の期間を空けるのがいいでしょう。

個人事業主が創業融資で借入した場合の勘定科目

創業融資で借入した場合の仕訳方法は、借入時と返済時で異なります。また、借入時の勘定項目として、主に「預金」「租税公課」「支払手数料」が使用されます。以下に両方のケースについてまとめました。

【借入時の仕訳(100万円を借入し保証料が1万円発生したケース)】

借方金額貸方勘定科目金額概要
普通預金980,000借入金1,000,000事業用資金借入
租税公課10,000印紙代
支払手数料10,000保証料

【返済時の仕訳(毎月3万円返済し利息が1000円発生するケース)】

借方勘定科目金額貸方勘定科目金額概要
借入金30,000普通預金31,000借入金返済
支払利息1,000利息の支払額

個人事業主が経費として計上できるものは、オフィス代や水光熱費、通信費などの売上を作るために使った経費に限られます。創業融資の借入金は、金融機関から借りたお金を返済するだけのものになるので経費になりません。一方、借入金を返済する際に発生する利息は経費として計上できます。

個人事業主が創業融資を受けた際の確定申告

個人事業主が創業融資を受けた年も通常と変わらず、基礎控除などの所得控除後に、課税所得金額が出る場合は確定申告が必要です。

前記した通り、融資で得た資金は「借入金」として計上するため、経費にはなりません。返済時の支払利息を経費として適切に計上するために、借入金と支払利息は別々に仕訳しましょう。

【業種別】創業融資に役立つ事業計画書のテンプレート

以下から、業種別に作成した事業計画書・創業計画書のテンプレートをダウンロードが可能です。事業計画書・創業計画書に決まったフォーマットはありません。これから事業を始める方もすでに始めている方も、どちらも使用できるテンプレートなのでぜひお役立てください。

事業計画書・創業計画書のテンプレート(Word/Excel/PPTX)一覧

事業計画書とは?書き方・作り方を簡単解説!テンプレ70個以上!

個人事業主の創業融資は綿密な準備が必要

個人事業主が創業融資を受ける際、融資審査を受けるための準備を入念に行う必要があります。どこの機関から融資を受けるかによって用意する書類が違うため、自分の状況に合った借入先を決めてから書類の準備に取り掛かりましょう。

融資審査を通過するためには、創業計画書が整っているだけでは不十分です。自己資金の割合や個人のお金の扱い方など総合的に判断されることを覚えておきましょう。


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