- 更新日 : 2026年7月15日
焼き菓子屋を開業するには?必要な資格や資金、小さな店舗や個人でも儲かる戦略を解説
焼き菓子屋の開業は菓子製造業許可と食品衛生責任者の設置が必須で、初期費用は店舗型500万〜1,500万円、工房・ネット販売型300万〜800万円程度です。
- 菓子製造業許可と食品衛生責任者が必要
- 店舗型は500万円、工房型は300万円から
- ギフト需要とネット販売で売上拡大
Q. 特別な資格は必要?
A. 製菓衛生師等は不要ですが、食品衛生責任者の設置と菓子製造業許可は必須です。
「自分だけのこだわりの焼き菓子を多くの人に届けたい」という想いを胸に、小さな焼き菓子屋の開業を夢見ている方は少なくないでしょう。しかし、実際に一歩を踏み出すには「開業資金はどのくらい必要なのか」「特別な資格はいるのだろうか」「そもそも店舗がなくても始められるのか」といった多くの疑問や不安が生じます。
この記事では、焼き菓子屋の開業に必要な準備や手順を具体的に解説します。資金計画から販売戦略、必要な手続きまで解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
焼き菓子屋の開業形態は?
焼き菓子屋は、店舗を構えて販売する方法だけでなく、店舗を持たずにネット販売やイベント出店から始める方法もあります。必要な資金、許認可、販売導線、製造場所が変わるため、自分の資金力や販売したい商品に合う形態を選ぶことが重要です。
【店舗を持つ場合】販売店・カフェ併設・工房併設型
店舗を持つ焼き菓子屋では、路面店や商業施設内の販売店として開業する形が一般的です。焼き菓子を陳列して販売するだけでなく、製造工房を併設して焼きたて感を打ち出す方法もあります。また、ドリンクを提供してカフェスペースを設ければ、客単価を上げやすくなります。ただし、物件取得費、内装費、製造設備費、人件費がかかるため、初期費用は大きくなりやすいです。立地や客層に合う商品構成を決め、販売数を見込んでから物件を選びましょう。
【店舗を持たない場合】ネット販売・委託販売・イベント出店
店舗を持たない焼き菓子屋では、ECサイトやSNSを使ったネット販売、カフェや雑貨店への委託販売、マルシェやイベント出店などが考えられます。固定店舗を持たない分、家賃や内装費を抑えやすく、小さく始められる点がメリットです。一方で、焼き菓子を製造するには、原則として菓子製造業許可を受けた製造場所が必要です。自宅で製造する場合も、家庭用キッチンとは区分された設備が求められることがあるため、事前に保健所へ確認しましょう。
焼き菓子屋の開業に必要な資格・許認可は?
焼き菓子屋を開業する際、製菓衛生師や調理師の資格が必須というわけではありません。ただし、焼き菓子を製造・販売する場合は、食品衛生責任者の設置や菓子製造業許可などが必要です。販売方法やイートインの有無によって必要な許可が変わるため、事前に保健所へ確認しましょう。
食品衛生責任者
焼き菓子屋を営業するには、店舗や製造施設ごとに食品衛生責任者を置く必要があります。食品衛生責任者は、施設・設備の衛生管理や食品の取扱い、従業員への衛生指導などを担う責任者です。調理師、栄養士、製菓衛生師などの資格を持つ人は食品衛生責任者になれる場合があります。資格がない場合でも、食品衛生責任者養成講習会を受講すれば取得できます。
菓子製造業許可
クッキー、マフィン、パウンドケーキ、フィナンシェなどの焼き菓子を製造して販売する場合は、原則として菓子製造業許可が必要です。東京都保健医療局の営業許可種類一覧でも、菓子製造業は食品衛生法上の許可業種として示されています。許可を受けるには、製造場所の区画、手洗い設備、シンク、冷蔵設備、保管設備など、施設基準を満たす必要があります。
参考:改正食品衛生法の営業許可と届出(令和3年6月1日から施行)|東京都保健医療局
飲食店営業許可
焼き菓子の販売だけでなく、店内でドリンクや軽食を提供するカフェ併設型にする場合は、飲食店営業許可が必要になることがあります。飲食店営業は、食品を調理したり、設備を設けて客に飲食させたりする営業が対象です。イートイン、ドリンク提供、ランチ提供などを行う場合は、菓子製造業許可だけで足りるかを保健所に確認しましょう。
参考:営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報|厚生労働省
焼き菓子屋の開業に必要な資金は?
焼き菓子屋の開業資金は、店舗を持つか、製造工房のみで始めるかによって大きく変わります。店舗販売を行う場合は物件取得費や内装費がかかり、ネット販売や委託販売中心の場合でも、菓子製造業許可を取得できる製造場所と設備が必要です。
初期費用は店舗型で500万〜1,500万円程度が目安
焼き菓子屋を店舗型で開業する場合、初期費用は500万〜1,500万円程度が一つの目安です。販売スペースを小さくし、居抜き物件を活用できれば500万〜800万円程度に抑えられる場合もあります。一方、カフェ併設型やスケルトン物件から内装を整える場合は、1,500万円を超えることもあります。
主な内訳は、以下のとおりです。
- 物件取得費:100万〜300万円程度
- 内装工事費:150万〜500万円程度
- オーブン、ミキサー、冷蔵庫などの製菓設備費:150万〜400万円程度
- ショーケース、陳列棚、レジなどの販売設備費:50万〜200万円程度
- 型、天板、ボウル、包装機材などの備品費:30万〜100万円程度
- 小麦粉、バター、卵、砂糖などの初期仕入れ費:20万〜80万円程度
- 箱、袋、ラベルなどの包装資材費:20万〜80万円程度
- 看板、Webサイト、SNS広告などの広告宣伝費:20万〜100万円程度
工房・ネット販売中心なら300万〜800万円程度で始められる場合がある
店舗を持たず、製造工房からネット販売や委託販売を行う場合は、初期費用を300万〜800万円程度に抑えられる場合があります。ただし、自宅の台所をそのまま使えるとは限らず、菓子製造業許可を取得できる専用設備が必要です。シンク、手洗い設備、作業台、保管設備、冷蔵設備などの基準を満たすため、改修費が発生することがあります。家賃を抑えられる一方で、ECサイト制作、写真撮影、梱包資材、配送資材、広告費など、販売導線にかかる費用も見込んでおきましょう。
ランニングコストは月50万〜200万円程度を見込む
開業後は、家賃、人件費、材料費、水道光熱費、包装資材費、広告費などが継続して発生します。店舗型では月80万〜200万円程度、工房・ネット販売中心では月50万〜120万円程度が一つの目安です。
主な内訳は、以下のとおりです。
- 家賃:10万〜50万円程度
- 人件費:20万〜100万円程度
- 材料費:15万〜80万円程度
- 水道光熱費:5万〜25万円程度
- 包装資材費:5万〜30万円程度
- 広告宣伝費:3万〜20万円程度
- ECサイト、決済、配送関連費:数万円〜数十万円程度
- 借入金の返済:借入額・返済期間によって変動
焼き菓子は比較的日持ちしやすい一方、材料価格や包装資材費の上昇が利益を圧迫します。開業時には、初期費用とは別に3〜6か月分の運転資金も確保しておきましょう。
焼き菓子屋の開業の手順は?【店舗型の場合】
店舗型の焼き菓子屋を開業するには、商品づくりだけでなく、コンセプト設計、資金計画、物件選び、設備準備、営業許可、集客準備まで段階的に進める必要があります。特に菓子製造業許可に対応できる製造スペースを確保することが重要です。
1. コンセプトと販売商品を決める
まず、どのような焼き菓子屋にするのかを決めます。クッキー、フィナンシェ、マドレーヌ、スコーン、パウンドケーキ、ギフト商品など、主力商品によって必要な設備や客層が変わります。日常のおやつ向け、手土産向け、ギフト向け、素材にこだわる高単価型など、ターゲットも具体化しましょう。
2. 事業計画と資金計画を作成する
次に、開業費用と毎月の運営費を見積もります。店舗型では、物件取得費、内装工事費、オーブン、ミキサー、冷蔵庫、ショーケース、陳列棚、包装資材、材料費、広告費などが必要です。あわせて、商品単価、原価率、1日の販売数、月商、利益、借入返済額を試算し、資金不足が起きない計画を作ります。
3. 物件を探し、保健所へ事前相談する
焼き菓子屋では、販売スペースだけでなく、製造スペースの条件が重要です。駅前、住宅街、商店街、百貨店周辺など、ターゲットが来店しやすい立地を選びましょう。物件契約前には、菓子製造業許可に必要な設備基準を満たせるか、図面を持って保健所に相談します。シンク、手洗い設備、作業台、保管設備、換気設備などを確認しましょう。
4. 内装・製菓設備・販売備品を準備する
物件が決まったら、内装工事と設備導入を進めます。オーブン、ミキサー、冷蔵庫、作業台、天板、型、ショーケース、陳列棚、レジ、キャッシュレス決済端末などを準備します。あわせて、箱、袋、ラベル、リボン、保冷材などの包装資材も用意しましょう。焼き菓子は見た目も購買意欲に影響するため、陳列方法も重要です。
5. 営業許可を取得し、開業告知を行う
設備が整ったら、食品衛生責任者を設置し、保健所へ菓子製造業許可を申請します。カフェ併設やドリンク提供を行う場合は、飲食店営業許可が必要になることもあります。許可取得後は、Googleビジネスプロフィール、Instagram、LINE公式アカウント、チラシ、ショップカードなどで開業を告知しましょう。開業後は、売れ筋商品、客単価、廃棄ロス、リピート率を確認しながら改善します。
焼き菓子屋が儲かるための販売戦略は?
焼き菓子屋で利益を出すには、単においしい商品を作るだけでなく、客単価、リピート率、廃棄ロス、販売チャネルを意識した戦略が必要です。焼き菓子は比較的日持ちしやすいため、店舗販売だけでなく、ギフトやEC、法人需要にも広げやすい点を活かしましょう。
ギフト需要を狙った商品設計をする
焼き菓子は、手土産、内祝い、季節の贈り物、会社の差し入れなど、ギフト需要と相性がよい商品です。単品販売だけでなく、詰め合わせ、価格帯別ギフト、季節限定パッケージを用意すると客単価を上げやすくなります。たとえば、1個300円の商品だけでなく、1,500円、3,000円、5,000円のギフトセットを用意すれば、購入目的に合わせて選びやすくなります。
店舗販売とEC販売を組み合わせる
店舗販売だけに頼ると、立地や天候、人通りに売上が左右されます。焼き菓子は配送しやすい商品も多いため、ECサイト、SNS販売、予約販売を組み合わせると販売機会を増やせます。特に、Instagramで商品の写真や製造風景を発信し、オンライン注文につなげる方法は有効です。ただし、通販では梱包資材費、送料、破損リスクもあるため、利益が残る価格設計にしましょう。
法人・イベント需要を取り込む
焼き菓子屋は、個人客だけでなく法人需要も狙えます。会社の手土産、展示会のノベルティ、結婚式のプチギフト、地域イベント、マルシェ出店などに対応できれば、まとまった注文を獲得しやすくなります。法人向けには、請求書払い、名入れラベル、予算別セット、納期の明確化などを用意すると取引しやすくなります。
リピーター施策で継続購入を増やす
焼き菓子屋で安定した売上を作るには、再来店を促す仕組みが欠かせません。ポイントカード、LINE公式アカウント、季節商品の先行案内、誕生日クーポン、予約限定商品などを活用しましょう。購入履歴をもとに、母の日、バレンタイン、クリスマスなどのイベント前に案内できれば、再購入につながりやすくなります。
焼き菓子屋の原価計算と価格設定のポイントは?
焼き菓子屋で利益を残すには、材料費だけで価格を決めないことが重要です。バター、小麦粉、卵、砂糖などの材料費に加え、包装資材、人件費、光熱費、廃棄ロス、販売手数料まで含めて原価を把握し、無理なく利益が残る価格を設定しましょう。
1. 1個あたりの材料原価を計算する
まず、商品ごとに1回の仕込みでかかる材料費を計算します。フィナンシェを20個作る場合、バター800円、卵300円、砂糖200円、小麦粉150円、アーモンドパウダー500円を使うなら、材料費は合計1,950円です。20個で割ると、1個あたりの材料原価は97.5円になります。材料価格は変動しやすいため、仕入価格が上がったら定期的に再計算しましょう。
2. 包装資材費・人件費・ロスも含めて考える
焼き菓子は、箱、袋、ラベル、リボン、乾燥剤などの包装資材費がかかります。たとえば、材料原価100円の商品でも、袋20円、ラベル10円、乾燥剤5円が加われば、直接原価は135円になります。さらに、製造時間や販売時間にかかる人件費、オーブンの電気代、売れ残りによる廃棄ロスも考慮が必要です。特にギフト商品は包装費が高くなりやすいため、単品とは別に価格を設計しましょう。
3. 原価率を決めて販売価格を設定する
販売価格は、目標原価率から逆算すると決めやすくなります。原価率30%を目標にする場合、直接原価が150円の商品は「150円÷30%=500円」が販売価格の目安です。原価率40%なら375円になりますが、家賃や人件費を考えると利益が残りにくくなる可能性があります。日常向け商品は買いやすい価格にし、ギフト商品や詰め合わせは付加価値を乗せて利益を確保しましょう。
4. 競合価格と顧客の納得感も確認する
原価から価格を決めても、周辺店舗やEC上の相場とかけ離れていると売れにくくなります。競合の焼き菓子の価格、内容量、包装、ブランド感を確認し、自店の商品が高くても選ばれる理由を作りましょう。素材のこだわり、手作り感、限定性、ギフト包装、ストーリー性を伝えられれば、単純な価格比較を避けやすくなります。
焼き菓子のネット販売から始めるのもおすすめ
オンラインでの販売は、店舗の家賃を抑えつつ、全国配送やECを活用すれば広域の顧客に届く可能性がある一方、集客にはマーケティングや物流の工夫が不可欠です。
送料や決済手数料を考慮した価格設定
お菓子のネット販売では、送料や決済手数料といった特有のコストが発生するため、それらも販売価格に反映させる必要があります。定期便やギフトセットなど、客単価を上げる工夫を取り入れることで、儲かる仕組みを強化できます。
食品表示法の遵守
個人がインターネットでお菓子を販売する際には、食品表示法を遵守しなくてはなりません。商品には、以下の情報を明記したラベルを貼る義務があります。
- 名称
- 原材料名、アレルギー表示
- 内容量
- 賞味期限
- 保存方法
- 製造者の氏名と住所(営業許可を受けた施設の所在地)
この表示は、お客様の安全を守り、作り手としての信頼を構築する第一歩です。
SNSを活用した情報発信
オンラインショップを作っても、誰にも知られなければ商品は売れません。InstagramやX(旧Twitter)などのSNSを活用して、積極的に情報を発信しましょう。焼き上がりのシズル感あふれる動画や、新商品の開発秘話などを投稿することで、潜在的な顧客の興味を引きます。フォロワーとの交流を楽しみながら、未来のお客様を育てていきましょう。
焼き菓子屋の開業の夢を叶えましょう
焼き菓子屋の開業は、情熱や憧れだけで乗り越えられるものではなく、現実的な課題も伴います。しかし、開業の形態を自分の状況に合わせて慎重に選び、必要な資金計画を緻密に立て、資格や許可を確実に取得することで、その夢への道筋は具体的に見えてきます。
特に、初期投資を抑えられる店舗を持たないお菓子屋としてネット販売を主軸に据える方法は、個人の小さな挑戦を力強く後押ししてくれるでしょう。この記事で紹介した情報が、あなたが理想とする素敵な焼き菓子屋を開くための、確かな一歩につながれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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