- 作成日 : 2025年1月30日
風力発電事業の許認可とは?建設に必要な手続きや資金調達方法を解説
再生可能エネルギーとして、洋上風力などの風力発電事業が注目されています。風力発電設備を設置するには、設置条件を満たした建造物を準備するとともに、法令で定められた手続きが必要です。
本記事では、風力発電設備の建設や運営における許認可や受付窓口などを紹介します。
目次
風力発電事業の許認可や手続きとは?
風力発電事業を開始するには、複数の許認可の取得や手続きが必要です。主要な手続きについては次の4つが挙げられます。
環境影響評価(環境アセスメント)
風力発電所の設置場所には、一定基準に達した風速と、広大な敷地が必要です。立地場所の特性上、規模を問わず環境への影響が懸念されるため、環境への配慮が十分に行われたうえで設置することが求められます。
風力発電所の設置に伴う影響を測るために設けられているのが、「環境影響評価(環境アセスメント)制度」です。環境への負荷が大きい場合に適用され、具体的には第一種事業(発電規模5万kW以上)、第二種事業(発電規模3万7,500kW以上5万kW未満)に義務付けられている制度となります。
風力発電所の設置事業者は、計画段階環境配慮書や環境影響評価方法書、環境影響評価書などを作成し、それらを公開したうえで、住民などの一般の意見をヒアリングして周知しなければなりません。第二種事業においては、簡易的な手続きが認められています。
土地に関する許認可
風力発電所において、土地に関する許認可は重要なポイントです。特に注意すべきポイントは、設置する土地によって許認可を取得する窓口が異なることが挙げられます。土地によって、自然公園法、農地法、都市計画法、森林法、海岸法などのほか、自治体の景観条例などが適用される場合もあります。そのため、土地に関する許認可を受ける際には、土地の用途などを確認することが必要です。また、森林法などで保護されている土地もあるため、設置場所については事前の調査が求められます。
電気に関する許認可
風力発電設備は、出力規模に応じて扱いが異なります。電気事業用以外の風力発電設備の設備であっても、20kW以上の規模のものは自家用電気工作物として発電所扱いとなるため注意が必要です。例えば、自家用電気工作物に該当する場合、以下の義務を履行するための手続きを行う必要があります。
- 技術基準に適用する電気工作物を維持する義務
- 保安規程を定め、それを届け出る義務
- 電気主任技術者を選任して届け出る義務
自家用電気工作物で、500kW以上の出力になる場合は、設置工事の30日前に工事計画届出書を提出する義務も負います。
建設工事に関する許認可
風力発電設備の建設や運用は、周囲にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。例えば、風力発電の建設資材を運搬する場合、道路自体や道路の占有への影響が考えられます。建築基準法、道路法、道路交通法、電波法、航空法、消防法などのさまざまな法令の規定をクリアしなければなりません。
風力発電事業の土地に関する許認可・申請
風力発電事業の土地に関する主な許認可や手続きは、下記の通りです。
手続きなど | 許認可の窓口 | 概要 |
---|---|---|
行為許可申請等手続き | 国立公園:環境省 国定公園:都道府県 | 風力発電設備の事業計画地が国立公園や国定公園に該当する場合 |
農地転用許可 農用地区域除外の手続き | 都道府県 | 風力発電設備の事業計画地が農地法に定めた農地や採草放牧地、農用地区域内の農地に該当する場合 |
地すべり防止区域内の許可 | 都道府県 | 地すべり防止区域内において制限されている、地すべりを誘発などの行為をする場合 |
海岸保全区域の占用許可 | 都道府県 | 海岸保全区域で、海岸法に規定された占用を使用する場合 |
海岸保全区域等の風力発電施設設置許可 | 海岸管理者 | 海岸保全区域あるいは一般公共海岸区域に設置する場合 |
伐採及び伐採後の造林の届出 | 市町村 | 地域森林計画対象民有林(保安林など除く)の立木を伐採する場合 |
森林の土地の所有者届出 | 市町村 | 売買などで森林の土地を取得した場合 |
林地開発許可 | 都道府県 | 地域森林計画の対象である民有林で、一定以上の開発行為をする場合 |
土砂災害特別警戒区域内の特定開発行為の許可 | 都道府県 | 土砂災害の発生リスクの高い地域で特定の開発行為をする場合 |
採石業の登録 採取計画の許可 | 都道府県 | 事業計画のある土地から土砂を搬送する場合 |
都市計画区域等の開発行為の許可 | 都道府県または市町村 | 都市計画区域内で一定規模以上の開発行為をする場合 |
土地の形質変更の届出 | 都道府県または市町村 | 一定規模を超えた構築物の建設や土地の形質変更が生じる場合 |
風力発電設備を設置する土地の種類によって、必要な手続きや窓口が異なることがわかります。例えば、森林に風力発電設備を設置する場合は、森林の土地の所有に関する届出や伐採に関する届出や、森林の開発に関する許可が必要です。地すべりや土砂災害といった危険性があるエリアについては、開発行為などの許可の取得が求められます。まとめると、特定のエリアや開発により危険が生じる可能性があるエリアでは、何らかの届出や許可が必要になるということです。
風力発電事業の電気に関する許認可・申請
風力発電設備は、電力供給にも関わりがあります。そのため、下記の表の通り、電気事業法などに関連する届出や手続きが必要です。
手続きなど | 許認可および詳細に関する問い合わせ窓口 | 概要 |
---|---|---|
技術基準適合の確認 | 経済産業省 | 計画・設計段階において行われる確認機関による技術基準適合性の確認 |
工事計画届出 使用前自己確認の届出 基礎情報届出 | 経済産業省 | 一定規模以上の風力発電設備の設計・施工段階では「工事計画届出」、一定以下の規模では「使用前自己確認の届出」、小規模事業用電気工作物に該当する場合は「基礎情報届出」が必要 |
主任技術者選任の届出 保安規定届出 | 経済産業省 | 一定規模以上の風力発電設備の設置や運用において必要な届出 |
溶接自主検査手続き | 経済産業省 | 設備の溶接部について、使用開始前に行う技術基準の適合を確認するための手続き |
定期安全管理審査手続き | 経済産業省 | 設置者の検査体制が技術基準の適合を適切に実施できるかどうか審査する手続き |
使用前安全確認審査手続き | 経済産業省 | 設備の使用前に行う安全面に関する検査手続き |
供給計画の届出 | 経済産業省 | 全ての電気事業者に義務付けられた今後10年間の需給見通しを記載した計画書 |
電気事業法に関する手続きは、多岐にわたっています。計画の段階、設計や施工の段階、設備完成の段階、運用開始の段階などによって、必要な手続きが異なります。電気事業者に該当するか否か、または風力発電の出力がどのくらいの規模になるかでも異なるため、要不要について確認しておきましょう。
風力発電事業の建設工事に関する許認可・申請
風力発電事業の建設工事に関する主な手続きには、以下のようなものがあります。
手続きなど | 申請窓口 | 概要 |
---|---|---|
建築確認申請 | 市町村または都道府県 | 建設基準法に定める建築物を建設する場合に、工事着手前に求められる確認手続き |
防火管理や消防用設備等に関する届出 | 計画地を管轄する消防本部 | 発電所施設で防火管理などが必要になる場合の手続き |
土地の形質の変更の届出 | 都道府県 | 掘削、造成、盛り土などで土地の形質が変わる場合の工事前に必要な手続き |
特定建設作業の届出 | 建設現場の所在地を管轄する市区町村 | 騒音規制法や振動規制法に定める作業についての手続き |
風力発電施設の設置届 | 都道府県 | 環境省による風力発電施設から発生する騒音に関する指針に基づく手続き |
特殊車両の通行許可 | 道路管理者 | 風力発電所の建設に必要な資材の搬入などで特殊車両を使用する場合 |
道路区域内占有の許可 | 都道府県または市区町村 ※道路の管轄先によって異なる | 資材の搬入などで道路区域を占有する場合 |
道路工事施行承認の申請 | 都道府県 | 出入り口の設置などにより道路構造物の変更が必要な場合 |
工事計画の届出 | 所轄の産業保安監督部 | 電波障害防止区域内に風力発電設備を設置予定の場合 |
航空障害灯の設置義務 | – | 風力発電設備は、高さに合わせた航空障害灯の設置が必要 |
風力発電設備の建設で注意したいのが、建築物の高さや土地の形質の変更、建築資材の運搬、工事に伴う騒音などです。建設工事は、法律で定められた規制や、規定が密接に関わっています。これらの規制に対応するため、基本的に計画段階や工事開始前に必要な手続きを済ませておきましょう。工事を円滑に進めるには、事前の準備を行うことが重要です。
風力発電設備の設置にはさまざまな手続きが必要
風力発電設備を設置するには、土地に関する手続きや電気事業に関する手続き、建設工事に関する手続きなど、さまざまな手続きが必要です。設置を予定している場所や、規模などによって必要な手続きや許認可が異なるため、計画段階で法令や自治体の条例などを十分に確認したうえで設置を考えてしておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
ドローンビジネスで起業するには?フランチャイズで開業する方法も解説
ドローンビジネスの国内における市場規模が拡大しており、将来性の高い事業です。農薬散布や測量、インフラ点検などさまざまな分野で事業化されています。 本記事ではドローンビジネスの概要や起業する方法、分野の一例について解説します。起業のメリット・…
詳しくみる会社設立の際に経費になるものは? 勘定科目や仕訳、節税ポイントを解説
会社設立にかかった費用は、経費に計上できます。本記事では、会社設立の際に経費にできる費用の一覧をはじめ、経費計上するにあたって用意すべきものや注意点などについて解説します。 経費計上する際の仕訳の例も一緒に取り上げるため、興味を持った方はぜ…
詳しくみる起業家とは?実業家や企業家との違いや意味・特徴を解説!
起業家を目指す方は多いです。しかし、実業家や企業家・経営者と起業家の違いを理解している方は少ないのではないでしょうか。 また、起業にあたっては、起業家の年収や向いている人の特徴について理解することが大切です。この記事では、起業家とは何か、意…
詳しくみる田舎で起業するメリット・デメリットは?向いている業種や成功例も解説!
田舎での起業を考えている方もいることでしょう。 田舎での起業は、コストを抑えて開業できる、固定費を抑えられる、助成金・補助金を活用できるなど、さまざまなメリットがありますが、その一方でデメリットもあります。メリットを最大に活かせるビジネスの…
詳しくみる日本人が台湾で起業するメリットは?ビザ更新の条件や成功事例も解説!
台湾には小籠包やパイナップルケーキなど日本人の口にも「おいしい」と感じられる人気グルメが多く存在していますね。最近では海外旅行先としてだけではなく、起業や経営を始めるのにふさわしい地としても注目されています。本記事では日本人が台湾で起業する…
詳しくみるたこ焼きの原価はどれくらい?原価率や計算方法、目安を解説
たこ焼き店経営の重要なポイントの1つは、原価の管理です。本記事では、材料費・人件費・出店料など実際の内訳から、店舗型とキッチンカー型の原価率計算の実例、さらには原価率を抑えるための実践的なポイントまで、具体的な数字を交えて解説します。 たこ…
詳しくみる