- 更新日 : 2023年6月29日
SDGs経営に取り組もう!経営戦略に採用するメリットや課題を調査
SDGsは、主に貧困撲滅と地球環境保護を目的としており、2015年9月に国連加盟国の全会一致で採択された世界共通の17つ目標のことを指します。持続可能(sustainable:サステナブル)でより良い世界を目指す国際目標は17のゴールと169のターゲットで構成され、地球上に住むの全ての人を対象が対象です。また、SDGsを企業経営に取り込む「SDGs経営」を志向し、実践しようとする企業が増えてきています。本記事ではSDGs経営に取り組むメリットやSDG Compassの5つのステップなどを含めて解説します。
目次
SDGs経営とは何か?
SDGs経営についての一般的な定義はありませんが、SDGsを志向するか、SDGsの実践を目指す経営スキームといってよいでしょう。SDGsは「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指すとしています。SDGsが目指す方向を同様に目指し、その実現を経営目標に定めた経営がSDGs経営です。
SDGsについて
SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年9月の国連サミットで国連加盟国の全会一致で採択された、2030年を年限とする17の国際目標です。2001年に国連で策定されたミレニアム開発目標(Millennium Development Goals, MDGs)を前身としており、貧困、飢餓、教育、ジェンダー、水・衛生、エネルギーなどの人類共通のテーマで構成される国際目標です。MDGsで未達成とされた課題なども含めて改めて策定されました。
SDGs経営ガイドとSDG Compass
SDGs経営ガイドは2019年5月に経済産業省が発行した、企業のSDGs活用に関する方法論などをまとめた報告書です。企業経営へのSDGsの取り込みを推進するために経済産業省が招集したSDGs経営/ESG投資研究会が取りまとめました。「企業にとってのSDGs」「投資家にとってのSDGs」「SDGs経営の実践」など、具体的かつ実務的な内容で構成されています。
SDG Compassは、国連の関連団体であるUNGC(国連グローバル・コンパクト)を含む3団体が共同でまとめた、企業のためのSDGs経営実践のためのフレームワークです。企業がSDGs経営を実践するための具体的な5つのステップで構成されています。
CSRやESG経営との違い
CSRとはCorporate Social Responsibilityの略語で、企業の社会的責任という意味です。企業が事業活動を展開する上で社会に対して負うべき責任のことで、SDGsのような人類共通のテーマにおける目標を定めたものではありません。CSRを重視した経営においては、企業が守るべき倫理や規範、コンプライアンス、モラルなどが定められます。
ESG経営のESGはEnvironment、Social、Governanceの略語で、企業経営を環境、社会、ガバナンス(企業統治)の側面から評価、展開する経営スキームです。ESG経営とSDGs経営は共通するテーマがあり、類似した経営スキームであるといえるでしょう。
SDGs経営に取り組む理由
企業がSDGs経営に取り組む理由は、SDGsが定めたゴールを達成することなしに企業が持続可能な成長を確保しにくくなった点が挙げられます。企業は社会や地球コミュニティの一員でなので、地球や人類全体の目標を実現するために努力する必要があります。また、SDGs経営に取り組むことで、企業が負っているCSRを果たすことが可能になり、同時にESG経営も実践することになります。現在、世界の投資トレンドはESG経営にシフトしてきており、SDGs経営に取り組むことで投資家などのステークホルダーの評価と共感が得られます。
SDGs経営に取り組むメリット
企業がSDGs経営に取り組まない最大のデメリットは、持続可能な成長を確保しにくいことです。また、SDGs経営に取り組まない、またはSDGs経営に積極的ではない企業は、社会やステークホルダーの評価や共感を得ることが難しくなるでしょう。一方で、企業がSDGs経営に取り組むことで、以下のメリットが得られます。
消費者からの共感
企業がSDGs経営に取り組むことで得られる第一のメリットは消費者からの共感が得られることです。電通が2023年に行った第6回「SDGsに関する生活者調査」によると、調査対象となった消費者の87.3%がSDGsをポジティブに捉えており、特に食品ロス(92.6%)、ジェンダー間の平等(90.2%)、再生可能エネルギー(90.1%)といったテーマに高い関心を持っていることがわかります。また、79.3%の人がSDGsを経営に取り込んでいる企業をポジティブに評価すると答えています。
ステークホルダーの共感
消費者からの共感に加え、株主や従業員、取引先といったステークホルダーの共感が得られることもメリットです。特に株主の共感は企業のファイナンス戦略にも大きな影響を与えます。また、企業が実際にSDGsにコミットすることで、株主にとっての大きなビジネスチャンスが生まれます。国連開発計画の試算によると、全世界の企業がSDGsにコミットすることで年間12兆ドル(約1,680兆円、※2023年6月時点のレート)もの新規事業市場が誕生するとしています。
優秀な人材の獲得
また、企業が優秀な人材を獲得しやすくなるのも企業がSDGs経営に取り組むメリットです。特に若い世代の優秀な人材を獲得しやすくなります。広島大学が2021年に全国の大学生を対象に行った調査によると、調査対象となった大学生の56%が、給料が高くSDGsマインドがない企業よりも、給料が安くてもSDGsマインドが旺盛な企業への就職を希望すると答えています。さらに給料が高くSDGsマインドが旺盛な企業に対しては、87%が就職を希望するといった回答でした。
SDG Compassの5つのステップ
SDG CompassはSDGs経営実践のためのフレームワークです。企業がSDGs経営を実践するための具体的な5つのステップで構成されています。SDG Compassを活用することで、企業の経営戦略をSDGsの方向性と合致させ、SDGsを実現するためのマネジメントや評価をすることが可能になります。SDG CompassはSDG Compassのオフィシャルサイトに公開されており、誰でもダウンロード可能です。
ステップ1:SDGsを理解する
最初のステップはSDGsを理解することです。SDGsが掲げた17の目標や169のターゲットを正しく理解するとともに、SDGsの前身であるMDGsが生まれた背景などについても学ぶと良いでしょう。また、17の目標がそれぞれ達成されたことで自社のビジネスにどのような影響があるのか、市場や競合をどう変化させるのかといったテーマで議論をし、問題意識を共有しておくことも重要です。
ステップ2:優先課題を決定する
第二のステップは優先課題の決定です。SDGsが掲げた17の目標は全て同じ重要度ではなく、企業との関連性もさまざまです。よって、17の目標が自社のビジネスに与えるポジティブなインパクトとネガティブなインパクトを自社のサプライチェーン全体において評価する必要があります。可能であればインパクトを受けるエリアをマッピングするなどして可視化すると良いでしょう。また、ポジティブなインパクトについては「増加・拡大する方法」を、ネガティブなインパクトについては「最小化する方法」をそれぞれ考えておきましょう。
ステップ3:目標を設定する
ステップ2で明示されたインパクト・アセスメントをベースに目標を設定します。ここでのポイントは、それぞれの目標に数値とスケジュールを盛り込むことです。例えば、17の目標の第5目標「ジェンダー平等を実現しよう」が自社のビジネスにポジティブなインパクトを与えると評価した場合、「2030年までに我が社の取締役の40%を女性にする」「2025年までに女性マネージャーの数を2023年より30%増加させる」といった風に設定します。また、目標にKPI(Key Performance Indicator)を盛り込んでもいいでしょう。
ステップ4:経営へ統合する
4つめのステップは設定された目標の経営への統合です。例えば、「2025年までに女性マネージャーの数を2023年より30%増加させる」という目標に対しては、「女性社員のマネジメント研修時間を現在の倍にし、女性社員のマネジメント能力を向上させる」「人事部に女性社員専用メンターを配置し、女性社員のモラルとモチベーションアップを図る」など、具体的な実行策を策定します。このステップにおいては、マネジメント層が主導的に組織を動かす必要があります。
ステップ5:報告とコミュニケーション
最後のステップは報告とコミュニケーションです。自社のSDGパフォーマンスについての情報を社内で十分に共有するとともに、株主や取引先を含むステークホルダーに対するレポーティング(報告)とコミュニケーションを密に行う必要があります。また、最近は投資家が企業に対してSDGsに関する情報を公開するよう求めており、多くの企業が自社のSDGsへの取り組み状況やパフォーマンスなどを自社ホームページなどで公開しています。
SDGs経営に起こりがちな課題
SDGs経営は今や世界的なトレンドになりつつありますが、全ての企業がSDGs経営に成功しているわけではありません。中にはSDGs活動が停滞してしまったり、頓挫してしまったりするケースもあります。また、社長を含むマネジメントレベルのスタッフのやる気はあるものの、一般社員のモチベーションが低く、SDGs経営が部分的にしか行われていないといったケースもあるようです。一般的にSDGs経営には、どのような課題が起こりがちなのでしょうか。
社員に浸透しない
SDGs経営にありがちな第一の課題は、SDGs経営が社員に浸透しないことです。中小零細企業の場合、業種や業態によっては環境リテラシーが低く、社員の環境問題などに対する関心がそもそも低いケースが少なくありません。そのような企業においては、いくら経営トップが声高にSDGs経営を宣言したとしても、社員が行動を起こさない可能性が高いでしょう。またそうした企業においては、SDGsの存在や内容について積極的に知ろうという社員は多くないかもしれません。
実感がわかない
SDGs経営における第二の課題は、企業がSDGs経営をしているという実感がわかないことでしょう。例えば、SDGs経営としてSDGsの目標3にあたる「全ての人に健康と福祉を」を掲げたとした場合、自分たちの仕事が果たしてどれだけ多くの人に健康と福祉をもたらしているかを実感としてつかめません。SDGsが掲げた17の目標は、いずれもテーマが壮大なものが多く、個々の企業の存在や活動とリンクしてイメージしにくいかもしれません。
課題がわからない
企業がSDGs経営を行う上で、そもそも課題が何であるかわからないというケースも多いでしょう。特に製造業で下請けの仕事をしている企業の場合、サプライチェーンにおける自社のポジションが固定化していて、自発的なアクションを取れる余地が少ないケースが少なくありません。そのような企業では経営の自由度が低く、事業の自己完結性も低いので、経営上の課題が見えにくい、または実際に経営上の課題が見えていないのかもしれません。
経営方針と整合性が取れない
また、企業の経営方針とSDGs経営との整合性が取れないというケースも少なくありません。例えば、業界や業種によっては男性社員の割合が非常に高い企業などもあり、その場合、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」と整合性が取れない可能性が高くなります。また、日本の中小製造業者の多くが、SDGsの目標4「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の2030年までの実現を困難とするかもしれません。
今こそSDGs経営を取り入れてみませんか
SDGs経営に取り組むメリットやSDG Compassの5つのステップなどを含めて解説しました。SDGs経営の取り組み状況は国によって違うようですが、少なくとも日本においては導入の機運は高まってきているようです。日本の消費者には環境意識が高い人が多く、そうした消費者が企業にSDGs経営に取り組むよう暗に促しているのかもしれません。その意味では、今こそSDGs経営に取り組むいいタイミングかもしれません。
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