
事業を始めるときには、個人事業主として開業する方法と、会社を設立する方法の2パターンがあります。また、会社であっても、株式会社と合同会社では設立費用や手続きが異なり、どういった事業形態にするかは、従業員の雇い入れや取引先の条件、資金調達の必要性など、状況に応じて決めることになります。
この記事では、個人事業主としての開業と会社設立、それぞれの開業費用や手続き、税金などを比較してご紹介していきますので、選択する際の参考にしてみてください。
目次
それぞれにかかる費用・手続き
個人事業の開業と会社設立での大きな違いは「開業費用」と「手続き面」です。
個人事業の開業費用と手続き
個人事業主として開業する場合は、特に申請費用はかかりません。開業届を税務署へ提出すれば開業手続きは完了します。
株式会社・合同会社の設立費用と手続き
会社を設立する場合、定款作成にかかる費用や登録免許税などが必要になります。株式会社は約24万円、合同会社は約10万円です。また会社設立時には、定款認証のために公証人役場へ出向く、登記をするために法務局へ出向くなど、書類の準備から登記申請までおおよそ1週間はかかると考えておきましょう。
それぞれの形態でかかる税金の違い
個人事業の開業と会社設立での大きな違いは「開業費用」と「手続き面」です。
個人の儲けにかかる所得税・住民税の税率
個人事業主にかかる税金には、所得税・住民税があります。所得税は、所得が高くなればなるほど税率が高くなり、最大税率は45%。また住民税は、所得に対して10%。そのため、高収入となる場合には、住民税の所得割と合わせて収入の半分を税金として納めなければならないこともあります。
会社の利益にかかる法人税の税率
会社が得た利益に対して課せられる税金が法人税です。個人事業主でいうと所得税にあたると考えていいでしょう。
法人税は所得税よりも最大税率が低く24%程度です。これに法人住民税を合わせるとトータルで約36%となり、利益が大きい場合は会社形態の方が、税率は低くなることがわかります。
個人事業主は信用力に問題がある
会社形態とした場合、一般的に個人事業主より社会的な信用力は高いと言えます。個人事業の場合、資金面や手続き面で容易に事業を開始できるため、事業撤退も容易と考えられ、信用力が低く見られがちです。なかには、個人事業主とは取引をしないといった企業もあります。
したがって、取引相手が企業なのか、個人の顧客を相手に商売をするのかということも、会社形態とするか、個人事業主にするかの判断基準になります。
個人事業主と会社、どちらが有利か?
では具体的に、個人事業主と会社でどちらが有利と考えられるかについて見ていきましょう。
税金面
所得(利益)が少ない場合は、個人事業主として事業を開始したほうが、税金面では有利となります。所得が少ない範囲では所得税の税率のほうが、法人税の税率より低いからです。
目安として、おおよそ800~900万円以上の利益が安定してでるようになれば、法人化を検討してもいいでしょう。なお、法人税や消費税等、社会保険等については、株式会社であろうと、合同会社であろうと、どちらかが有利ということはありません。
信用面
社会的な信用力の面から考えると、個人事業主より会社形態の方が信用力は高いということは上述した通りです。では、株式会社と合同会社ではどちらが信用面で高いと言えるでしょうか。
合同会社は、設立手続きの簡素化を目的に2006年に創設された制度です。まだ15年ほどの歴史しかなく、認知度はまだまだの状況と言えます。こういった背景もあるため、信用面では株式会社のほうが高いと言えるでしょう。
設立費用、手続き面
当初からある程度の信用力が必要な場合には、会社形態にするのが適当です。上述したとおり、設立に関して要する費用は株式会社の場合で約24万円、合同会社で約10万円となっており、少ない費用で設立できる分、合同会社のほうがお得です。
合同会社は、設立手続きの面でも株式会社より簡素化されており、安い費用でスピーディーに設立することができます。設立費用を安く抑えながらも、最初からある程度の信用力が必要な場合は、合同会社が適当でしょう。
資金調達面
研究開発費などに多くの資金が必要になるといった、資金調達の必要性がある場合も、会社形態にするのが適当です。このとき株式会社であれば、株式の発行による資金調達が可能です。合同会社は株式というものがないので、資金調達という面では、選択肢の幅が狭くなります。
また、会社を大きくして「いずれは株式上場」までを考えるなら、株式会社です。株式を発行しない合同会社の場合、株式上場することはできません。資金調達の必要性がある場合は、選択肢が多い株式会社が適当でしょう。
まとめ
それぞれ、メリット・デメリットがあるので、事業開始時の自分のノウハウや資金力も含めて、今回解説したいくつかの面から検討してみてください。ここでは、事業開始時のことだけで検討するのではなく、事業の将来像をイメージした上で検討することが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。