- 作成日 : 2024年12月13日
産業廃棄物処理業の許認可は?許可の種類や届出の方法、費用を解説
産業廃棄物処理業を始めるには、都道府県知事の許可証が必要です。起業を検討している人の中には、許可証の取得方法をよく知りたいという人もいるでしょう。
本記事では、産業廃棄物処理業の許認可について解説します。産業廃棄物処理業の業務内容や許可申請の種類、許認可の要件・申請の流れ・費用も紹介しますので参考にしてください。
目次
許可申請が必要な産業廃棄物処理業
産業廃棄物処理業を行うには、許可申請が必要であり、認可証なしの業務は違法です。また、産業廃棄物処理業には、産業廃棄物を収集して処分地に運搬する「産業廃棄物収集運搬業」と中間処理や最終処分をする「産業廃棄物処分業」の2種類があります。
産業廃棄物の処理は、廃棄物を排出した企業の義務です。企業自身で処理できないときは、産業廃棄物の運搬や処分を各処理業者に委託します。最初に、産業廃棄物処理業の2種類について解説します。
産業廃棄物収集運搬業
事業活動などで発生した廃棄物は、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に大別できます。一般廃棄物は自治体などが回収・処分してくれますが、「燃え殻」「廃油」「金属くず」などの産業廃棄物は法律に従って収集・運搬・処分しなければなりません。
また、産業廃棄物には、「一般の産業廃棄物」と「特別管理産業廃棄物」の2種類があります。特別管理産業廃棄物は、引火性廃油や感染性廃棄物、廃水銀、アスベストなど一般の産業廃棄物より厳密な管理が求められます。
工場などから出た産業廃棄物を収集して処分場まで運搬するのが、「産業廃棄物収集運搬業」です。産業廃棄物を処分したい企業などから委託を受け、収集運搬業務を行います。
収集運搬業の許認可を得るには、産業廃棄物やその運搬に関する知識や、運搬に使用する車両・車両の保管・洗浄設備などが必要です。
参考:東京都 産業廃棄物の種類
産業廃棄物処分業
産業廃棄物の処分とは、搬入された産業廃棄物を分別・焼却・破砕・脱水などの処理を行い、処理物を埋め立てたり、再生処理したりすることです。産業廃棄物の処分によって、廃棄物の有害性や危険性を除去・削減し環境を守ります。
産業廃棄物処分業の許認可を得るには、産業廃棄物やその処理に関する知識や、廃棄物を法律に従って処理するための設備などが必要です。廃棄物の処理方法については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」などで詳細に定められています。
産業廃棄物処分業は、中間処分業と最終処分業に大別できます。それぞれについて、解説します。
参考:環境省 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)
産業廃棄物中間処分業
中間処分とは、収集した産業廃棄物を最終処分する前に無害化したり、減量化したりすることです。また、再生利用できる廃棄物を選別する作業も含まれます。中間処分によって、最終処分がしやすくなります。
廃棄物を減量化するために行うのが、廃棄物の焼却・粉砕・溶融・脱水などです。また、無害化するために廃酸や廃アルカリを中和(安定化)したり、ダイオキシンやPCBを取り除いたり(無害化)します。
産業廃棄物最終処分業
最終処分とは、中間処分した後の産業廃棄物を、生活環境や自然環境に影響を及ぼさない形で埋め立てるなど、処理をすることです。中間処分しても有害物質が十分に取り除けない場合、隔離するために頑丈な建造物で保管することもあります。
環境省の「令和5年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書」によると、産業廃棄物のうち54.7%が再生利用、43.0%が減量化され、最終処分されるのは2.4%です。
参考:環境省 令和5年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書
産業廃棄物処理業の許可申請の種類
産業廃棄物を処理するには、都道府県知事に許可申請しなければなりません。許可申請には、産業廃棄物収集運搬業と産業廃物処分業それぞれについて次の3種類があります。
- 新規許可申請
- 更新許可申請
- 変更許可申請
各申請について、解説します。
新規許可申請
新規許可申請は、産業廃棄物収集運搬業、または産業廃棄物処分業を始めるときに行います。申請時には手数料の支払いが必要です。
収集運搬業は、廃棄物を収集する場所を管轄する自治体(都道府県知事または政令指定都市の市長)と廃棄物を搬送する場所の管轄自治体、それぞれに許可申請します。別の自治体で廃棄物を一時保管する場合などは、保管する場所の管轄自治体への申請も必要です。
処分業については、処理場の管轄自治体に許可申請します。どちらの業務も事業拡大などで別の自治体で収集運搬作業や処分作業を行う場合、新しい場所の管轄自治体に許可申請が必要です。
更新許可申請
許可証の有効期限は原則5年間(自治体によって異なるケースもある)であるため、有効期限経過後も事業を継続する場合、許可証の更新を申請しなければなりません。更新時にも手数料が必要です。
なお、「優良産廃処理業者認定制度」の適用を受けた場合、許可証の有効期間は7年です。
変更許可申請
新規許可申請や更新許可申請が認められた後、次の変更がある場合には「変更許可申請」をしなければなりません。
- 取り扱う廃棄物の種類を増やす
- 石綿含有産業廃棄物の取扱いを無から有に変更する
- 水銀使用製品産業廃棄物や水銀含有ばいじんなどの取扱いを無から有に変更する
- 「積替え保管を除く」から「積替え保管を含む」許可に変更する など
ただし、役員や会社住所を変更した場合、必要な手続きは変更の届出のみで、自治体の許可は不要です。
産業廃棄物収集運搬業を行う場合の許認可
産業廃棄物収集運搬業を行う場合に必要な許可申請について、要件や手続きの流れ、手数料を解説します。
要件
産業廃棄物収集運搬業の許可証を取得するための主な要件は次の4つです。
- 産業廃棄物収集運搬業を行える知識・技能がある(※)
- 事業を的確に継続して行えるだけの経理的基礎がある
- 廃棄物処理法に定める欠格条項に該当しない
- 飛散・流出・悪臭が発散するおそれのある産業廃棄物を、適切に運搬・保管できる車両や施設を保有している
※公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターの講習を受講していること。
「廃棄物処理法に定める主な欠格条項」は、次の通りです。申請者や申請者の役員、5%以上の株主などが対象です。
- 成年被後見人や被保佐人、破産者で復権を得ない人
- 禁錮以上の刑を受け、執行終了または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない人
- 廃棄物処理法、浄化槽法など生活環境保全を目的とする法令などに違反して罰金刑を受け、執行終了または執行を受けなくなった日から5年未満の人
- 暴力団対策法や刑法、暴力行為等処罰に関する法律に違反して罰金刑を受け、執行終了または執行を受けなくなった日から5年未満の人
- 一般廃棄物や産業廃棄物の収集運搬業・処分業の許可を取り消された日から5年未満の人 など
参考:e-Gov法令検索 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第7条5項4号)
許可申請の流れ
許可申請するためには、最初に「公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター」が行う「産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会」を受講しなければなりません。
受講終了後、管轄自治体の窓口またはホームページで申請書を入手します。申請書の記入と必要書類が準備できたら、原則管轄自治体の窓口で申請書を提出するとともに所定の手数料を納付します。自治体によっては予約が必要なケースもあるため、事前に確認しておきましょう。
審査に合格すれば許可証が交付されます。許可証交付までの期間は、申請書受理後60日程度です。
(許可申請の流れ)
引用:東京都環境局 産業廃棄物収集運搬業許可申請の手引(新規・更新許可申請用)
費用
産業廃棄物収集運搬業の許可申請の手数料は、全国一律で次の通りです。
(許可申請の手数料)
新規許可申請 | 更新許可申請 | 変更許可申請 | ||
---|---|---|---|---|
積替え保管を除く | 積替え保管を含む | |||
産業廃棄物 | 81,000円 | 42,000円 | 73,000円 | 71,000円 |
特別管理産業廃棄物 | 81,000円 | 43,000円 | 74,000円 | 72,000円 |
産業廃棄物処分業を行う場合の許認可
産業廃棄物処分業を行う場合に必要な許可申請について、要件や手続きの流れ、手数料を解説します。
要件
産業廃棄物処理業の許可証を取得するための主な要件は、次の4つです。
- 産業廃棄物収集運搬業を行える知識・技能がある(所定の講習受講)
- 事業を的確に継続して行えるだけの経理的基礎がある
- 廃棄物処理法に定める欠格条項に該当しない
- 焼却施設や破砕施設、中和施設、脱水施設など廃棄物を適切に処理する施設を保有している
許可申請の流れ
産業廃棄物処理業の許可申請の流れは、次の通り産業廃棄物収集運搬業の場合と同じです。
- 講習会の受講
- 申請書の入手
- 申請書の作成と必要書類の準備
- 予約して申請
- 審査に合格すれば許可証が交付される
費用
産業廃棄物処分業の許可申請の手数料は、全国一律で次の通りです。
(許可申請の手数料)
新規許可申請 | 更新許可申請 | 変更許可申請 | |
---|---|---|---|
産業廃棄物 | 100,000円 | 94,000円 | 92,000円 |
特別管理産業廃棄物 | 100,000円 | 95,000円 | 95,000円 |
産業廃棄物処理業の許認可が不要な場合
産業廃棄物処理業の許認可が不要な主な場合は、次の3つです。
- 産業廃棄物を排出した事業者が自ら処理するケ-ス
- 専ら再生利用のみを目的に産業廃棄物を処理するケース
- 国などから別途許可を受けた処理を行うケース
それぞれについて、解説します。
産業廃棄物を排出した事業者が自ら処理するケ-ス
産業廃棄物を排出した事業者には廃棄物処理の責任がありますが、許可証が必要なのは処理の委託を受けた事業者などです。事業者が自ら産業廃棄物を収集・運搬・処分する場合、認可証は不要です。
ただし、法律に従って適切に収集・運搬・処分しなければなりません。
専ら再生利用のみを目的に産業廃棄物を処理するケース
廃棄物処理業許可制度の特例により、「専ら再生利用の目的となる廃棄物のみの処理を行う事業者」などは許可証がなくても産業廃棄物処理ができます。ただし、対象となる産業廃棄物は、古紙・くず鉄・あきびん類、古繊維などに限定されます。
国などから別途許可を受けた処理を行うケース
国などから別途許可を受けた処理を行う次の場合、産業廃棄物処理業の許認可は不要です。
- 国土交通大臣の許可を受けた廃油処理業者
- 広域処理確実として環境大臣の指定を受けた場合
認可証の取得などきちんと計画を立てて開業準備をしよう!
産業廃棄物処理業を始めるには、都道府県知事の許可証が必要です。許可証を取得するためには、事前に所定の講習を受講したり、業務に必要な設備や車両を準備したりしなければなりません。
産業廃棄物の処理を誤ると自然環境や人体に大きな影響を与える可能性があるため、法令に従って開業準備することが重要です。講習受講や申請から許可証交付までの期間、周辺住民の理解を得るための活動なども考慮して、余裕を持った開業計画を立てましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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