• 作成日 : 2024年9月6日

美容室開業に許認可は必要?必要書類・開業準備のまとめ

美容室・理容室を開業するには、保健所からの確認を得る必要があります。届出なしに営業を始めると法律で罰せられる可能性もあるので、注意が必要です。しかし、具体的にどのような準備が必要なのかわからない人もいるでしょう。

この記事では、保健所から確認を得る際の手順や必要な書類について解説しました。美容室・理容室の開業を予定している人は、ぜひこの記事を参考に、開業準備を進めてください。

美容室・理容室の開業には保健所の確認が必須

美容室・理容室を開業する際には、顧客の安全と公衆衛生を守るために保健所からの確認が求められます。以下のように許認可とは異なるので注意しましょう。

  • 確認:法律で定められた基準に適合しているかを行政機関が確認すること
  • 許認可:行政機関が特定の行為や事業を許可または認可すること

保健所の確認は、衛生管理の確保を目的として、美容師法および理容師法に定められています。そのため、保健所は施設の衛生状態や設備の安全性を確認しなければなりません。

保健所への届出なしに美容室・理容室を営業することは、法律で禁止されているので、必ず確認を受けましょう。開業後も、衛生管理状況の監督を受けるために、定期的に保健所の立入検査を受ける必要があります。

保健所の検査・確認を受ける

美容室・理容室の検査・確認を受ける際は、不備や漏れがないように管轄の保健所に手続き内容の確認をしておきましょう。検査・確認の主な流れは、以下のとおりです。

  1. 美容所・理容所の開設届を提出する
  2. 保健所の立入検査を受ける
  3. 構造設備・衛生設備の確認を受ける
  4. 従業員の資格確認を受ける

すべての基準をクリアすると、検査確認済証が発行され、晴れて美容室・理容室の営業を開始できるようになります。

美容室・理容室の開業時、あわせてこちらも申請を!

美容室・理容室を開業する際は、保健所からの確認に加えて、開業届と青色申告承認申請書の申請もしておくのがおすすめです。

開業届と青色申告承認申請書を提出することで、税制上の優遇措置を受けられるようになります。経営基盤を安定させるためにも、開業時にあわせて手続きを進めましょう。

開業届

美容室や理容室を開業する際は、税務署に対して事業開始を正式に通知する開業届の提出が必要です。開業届を提出することで、事業開始時期を明確に示せるため、適切な納税管理ができるようになり、将来の税務調査にも備えられます。

また、取引先や金融機関・創業支援等の行政窓口から、開業届の提出を求められる場合もあるので、開業時に申請をしておきましょう。創業支援をはじめとする行政サービスを受けられれば、事業の基盤も固めやすくなります。

青色申告承認申請書

青色申告承認申請書を提出することで、以下のような税制上の優遇措置を受けられます。

  • 最大65万円の特別控除が受けられる
  • 赤字の繰越控除ができる
  • 家族従業員の給与を経費算入できる

一方で、青色申告をするには、詳細な帳簿作成が求められるため、開業初期から適切な経理習慣を身に付ける必要があります。また、美容機器や店舗設備の減価償却に関しても有利な特例が適用できるケースがあるため、経営面でのメリットを感じやすいのも特徴です。

美容室・理容室の法律上の呼び方

美容室・理容室の法律上の正式名称は「美容所」「理容所」です。開設届を始めとする公的書類で使用されるため、覚えておきましょう。

美容所と理容所では、以下のような違いがあります。

美容所

美容師法で定められた美容室の正式名称

美容所開設届の提出が求められる

平成27年の法改正により、美容所でも軽い顔そりが可能になった

2名以上の美容師が勤務する美容所では、管理美容師の設置が義務付けられている

理容所

理容師法で定められた理容室の正式名称

理容所開設届の提出が求められる

2名以上の理容師が勤務する美容所では、管理理容師の設置が義務付けられている

理容師がパーマやヘアカラーをする場合でも理容所として扱われる

美容と理容の両方のサービスを提供する場合「美容所」と「理容所」それぞれの開設届を提出する必要があります。

美容所・理容所の開業準備手順1:要件を整える

要件を満たすことで、衛生的で安全な美容室・理容室の開業ができるようになります。具体的な数値や基準は、地域によって異なるため、管轄の保健所に確認しましょう。

免許と資格について

美容所・理容所を開設するには、美容師・理容師免許と管理美容師・管理理容師資格の取得が欠かせません。美容師・理容師免許と管理美容師・管理理容師資格の違いは、以下のとおりです。

  • 美容師・理容師免許:美容師や理容師として働くために必要な国家資格
  • 管理美容師・管理理容師資格:2名以上の美容師・理容師が勤務する店舗で設置が義務付けられている資格

管理美容師・管理理容師資格を取得するには、3年以上の美容師・理容師としての実務経験が求められます。プロフェッショナルとしての技術と責任を証明するのにも効果的であるため、開業を目指す際は資格取得も計画的に進めていくのがおすすめです。

床面積と椅子の台数

美容所・理容所の開業する際に、床面積と椅子の台数の基準を満たしていないと保健所の確認が受けられません。床面積と椅子の台数の基準は、以下のとおりです。

  • 1作業室につき最低13平方メートル
  • 美容師が安全かつ効率的に作業できるスペースの確保

1作業室における椅子の台数に関しては、自治体や美容所・理容所の種別によっても異なります。

たとえば、東京都の場合、美容所は13平方メートルにつき6台までの椅子を設置することが可能です。一方で、理容所は、13平方メートルにつき3台までしか設置できません。

顧客にも快適な空間を提供できる床面積と椅子の台数に関する要件を満たすことで、保健所の確認を受けられるようになります。

待合場所

保健所の確認を受ける際には、衛生管理と顧客の快適性を確保するために、待合スペースと作業エリアを明確に分ける必要があります。パーテーションや家具を利用して物理的に空間を分けるのがおすすめです。

また、待合場所は、来店する顧客数に見合った十分なスペースを確保しなければなりません。たとえば、施術用の椅子が3台ある美容室なら、最低でも4㎡程度の待合スペースを確保すると良いでしょう。

待合場所の設計にも気を配ることで、顧客に快適な待ち時間を提供できるようになります。

その他設備

美容所・理容所を開業するには、作業スペース以外にも以下の設備が必要です。

換気設備1時間に必要な換気回数を確保できる機械換気設備を設置する
照明設備作業エリアに100ルクス以上の照度を確保できる照明器具を設置する
消毒設備紫外線消毒器や煮沸消毒器を設置し、使用済み器具の適切な消毒ができるようにする
洗髪設備温水が出る洗髪台を設置し、排水設備を整える

快適で衛生的なサービスを提供できるように、必要な設備を整えておきましょう。

美容所・理容所の開業準備手順2:保健所からの確認を得る

保健所からの確認を受けるには、手順に従って手続きを進めるのが重要です。手順に従うことで、法令に適合した安全で衛生的な美容所・理容所を開設できます。事前相談と立ち入り検査の段階で、細かい指導を受けることが多いため、保健所の指示に従って適切に対応しましょう。

設計業者から構造設備の図面を取り寄せる

保健所の審査官が店舗の衛生管理や安全性を評価する際に、必要な以下の図面を設計業者から取り寄せます。

  • 店舗平面図(作業スペース、待合室、洗髪設備の配置を含む)
  • 給排水設備図
  • 換気設備図
  • 照明設備図

図面を確認することで、適切な作業空間の確保や衛生設備の配置が一目でわかるため、検査をスムーズに進められるようになります。

図面を持参して保健所へ工事前に相談する

美容室や理容室の工事を始める前に、管轄の保健所へ事前相談をすることで、スムーズに開業準備を進められます。保健所に相談する際は、以下の内容を確認するのがおすすめです。

  • 作業スペースの面積が基準を満たしているか
  • 待合室と作業スペースの区分けに問題はないか
  • 換気設備の能力や照明の明るさは基準を満たしているか

図面を持参して相談することで、具体的なアドバイスを受けられます。不備が見つかった場合は、速やかに設計業者に連絡をし、必要な修正をしましょう。

開設届と書類を保健所へ提出する

開業予定日の1ヶ月前を目安に、保健所へ開設届と必要書類を提出します。

書類の準備には時間がかかる場合もあるため、余裕を持って取り組むのがおすすめです。保健所が店舗の衛生状態や安全性を事前に確認するために必要な平面図や各設備の概要は、設計業者に早めに依頼しておきましょう。

保健所の立ち入り検査を受ける

保健所の担当者が、実際に店舗を訪問し、基準を満たしているかのチェックをします。確認される項目は以下のとおりです。

  • 図面通りに設備が設置されているか
  • 紫外線消毒器や煮沸消毒器などの消毒設備の設置状況に問題がないか
  • 消毒済み器具と未消毒器具の保管場所が区別されているか

適切な衛生管理が実施できることの証明として、消毒作業の実演を求められる場合があります。事前に十分な準備をし、立ち入り検査に備えましょう。

保健所長からの確認を得る

美容室を開業するには、保健所長の確認が必要です。保健所の立ち入り検査の結果、問題がなければ確認済証が発行されるため、営業を開始できます。

万が一、検査で問題が発見された場合は、改善指示が出され、再度検査を受けなければなりません。顧客の安全性や衛生状態を守るためにも、保健所の指示に従って適切な対応をしましょう。

美容所・理容所が保健所から確認を受けるために準備する書類

美容所・理容所の確認を受けるために必要な書類は、管轄の保健所によって異なる場合があるため、各自治体のホームページを確認しておく必要があります。スムーズに確認を受けるためにも、必要な書類を適切に準備しておきましょう。

美容所開設届

美容所を開業するには、以下の基本情報を記入した美容所開設届を提出する必要があります。

  • 店舗名
  • 住所
  • 電話番号
  • 開設者名
  • 営業時間

美容所開設届は保健所で無料で入手できます。手続きをスムーズに進めるためにも、必要な情報を事前に揃えておくようにしましょう。

なお、理容所を開業する際は、理容所開設届を提出します。

施設の平面図

保健所の確認を受ける際には、施設の平面図の提出が求められます。作業スペースや待合室、洗髪設備の配置などの詳細な店舗のレイアウトが示された図面を用意しておきましょう。

設計業者に施設の平面図一式の取り寄せを依頼する場合は、5万〜10万円程度の費用がかかる傾向にあります。保健所の立ち入り検査や手続きをスムーズに進めるためにも、正確な図面を用意しておくのが重要です。

構造設備概要書

保健所の検査・確認を受ける際に、給排水や換気、照明設備などの詳細が記載された構造設備概要書が必要です。構造設備は、以下の基準を満たしているかを確認しておきましょう。

  • 1時間あたりの必要換気回数を確保できる換気設備が設置されているか
  • 作業エリアで100ルクス以上を確保できる照明設備が設置されているか

平面図と同時に設計業者に作成を依頼する場合、2万〜5万円程度の追加費用がかかるのが一般的です。設備設計が適切であれば、スムーズに進められるでしょう。

従業者名簿(免許証・診断書)

美容所を開業する際には、以下の内容を記載した従業者名簿を作成する必要があります。

  • 従業員の氏名
  • 資格情報(美容師免許番号や管理美容師の資格番号)
  • 健康状態

健康状態を記載するには、健康診断を受ける必要があります。診断書の取得は医療機関によっても異なりますが、3,000〜5,000円程度の費用がかかるのが一般的です。

従業者名簿の作成や美容師免許証のコピーに費用はかかりません。

登記事項証明書(法人の場合)

美容所や理容所を法人として開業する場合は、法人の名称や所在地、代表者名などを証明する登記事項証明書が必要です。登記事項証明書は法務局で取得できます。

取得方法と費用は以下のとおりです。

  • 法務局の窓口で手続きをする:600円/通
  • オンライン請求をする:500円/通

登記事項証明書を提出することによって、事業の正当性を示せるようになるため、ほかの手続きを進められるようになります。

美容所・理容所が保健所から確認を受けるためにかかる費用

美容所・理容所が保健所からの確認を受けるには、総額120,000〜300,000円程度の費用がかかる傾向にあります。内訳は以下のとおりです。

項目詳細
開設届の手数料約10,000〜20,000円

自治体によって異なる

構造設備の図面作成費約50,000〜150,000円

設計事務所に依頼すると100,000円程度

従業者の健康診断費1人あたり約3,000〜5,000円
管理美容師講習受講料(管理美容師を置く場合)約10,000〜20,000円
登記事項証明書取得費用(法人の場合)窓口:600円/通

オンライン:500円/通

 申請書類作成代行費用(行政書士に依頼する場合)約50,000〜100,000円

費用を抑えるためには、可能な限り自分で書類を作成したり、必要最小限の設備から始めたりするなどの工夫が必要です。ただし、衛生管理に関わる部分については、法令を遵守し、お客様の安全を第一に考える必要があります。

必要な書類を用意してスムーズに開業準備を進めましょう

美容室や理容室の開業には、保健所からの検査・確認が必要です。確認を得るためには、美容師法および理容師法に基づき、衛生管理や設備基準を満たす必要があります。

保健所への申請を始める前に、施設の平面図を持参のうえ、管轄の保健所に要件を満たしているか相談をしましょう。事前に相談しておくことで、スムーズに進められます。

必要な書類の用意には時間がかかるものもあるため、早めに準備を始めるのがおすすめです。また、費用が高額になる可能性もあるため、削減できるポイントはないか検討しておくと良いでしょう。

美容室・理容室の開業を予定している人は、この記事を参考に、開業準備を進めてみてください。


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