- 更新日 : 2022年10月3日
定款に定める「公告方法」はどう選ぶのが正解?費用等から検討!
会社の設立に際して決めなければならない事項のひとつに、公告の方法があります。会社が設立を公告をする方法は、定款の絶対的な記載事項ではありませんが、ほとんどの定款に記載されています。
そこで今回は、公告が必要になる場合や公告方法の種類、おすすめの公告方法など、定款に定める公告方法について解説していきます。
目次
会社には公告義務がある
会社法第440条で、株式会社は貸借対照表を公告しなければならないと定めています。いわゆる決算公告です。この公告を怠ったり、不正な公告をしたりした場合には、100万円以下の過料というペナルティが用意されています。
そのほか、合併や分割や資本金の減少など、会社の債権者に不利益が出るおそれがある場合にも公告をする義務があると規定されています。これらの公告は、債権者に異議を申し出る機会を与えるためのものであり、債権者保護手続きとして行われています。
公告をするタイミング
会社法には、決算公告は定時株主総会後「遅滞なく」行う必要があると記されています。「遅滞なく」というのは、「直ちに」や「速やかに」ほどの即時性は求められず、急ぐ必要はあるが、やむを得ない理由があれば、多少遅れても仕方がないというようなイメージです。
一方、合併や資本減少など債権者保護手続きのための公告は、当該事項を決定した時点で行います。
3種類の公告方法
会社の公告方法には、次の3種類があります。
- 官報
- 日刊新聞紙(時事に関する事項を掲載するもの)
- 電子公告
どの公告方法を選ぶかは自由ですが、日刊新聞紙または電子公告によって公告する場合には、その旨を定款で決めておかなければなりません。定款で公告方法を決めなければ、自動的に、官報によって行うものとみなされてしまうからです。
電子公告の場合、公告を掲載するアドレスを定款に記載する必要はありませんが、登記は必要です。なお決算公告などは、定款に定めた方法で行いますが、合併時などの債権者保護手続きに関する公告は、必ず官報で行う必要があります。
官報公告とは
官報は、政府が毎日発行している新聞のようなもので、約9割の会社が公告方法として官報を選択しているといわれています。
官報は、独立行政法人国立印刷局が発行しており、法律・政令・条約などの公布や公告などが掲載され、国民に広く知らせる役割を担うものです。土日・祝日と年末年始以外は毎日発行されます。会社の合併や吸収分割・新設分割、組織変更、資本金や準備金の減少、解散についての広告は、会社法で官報による公告が義務付けられているのです。
官報に会社設立を公告する場合は、官報販売所に連絡をして掲載を依頼しましょう。官報販売所のサイトから、インターネットで申し込みも可能です。必要事項を記入し、広告の原稿を入力します。その後、原稿を校正し、問題なければ校了、掲載となります。
官報掲載ルールとして、以下のようなものがあります。
- 番地には漢数字の「千」「百」「十」は使用しない。ただし、丁目には「十」を使用する。
- 日付には漢数字の「十」を使用する。
- 官報の掲載頁中3桁には「十」を使用しない。
また、決算公告で官報を利用する場合、貸借対照表や損益計算書の要旨のみの掲載で良いとされています。
いつまでに会社設立を広告する必要があるのか、については、明確に定められているわけではありません。しかし、前述のとおり決算公告は定時株主総会後「遅滞なく」行う必要があると定められています。基本的には、設立から1〜2ヶ月以内に公告することが多いです。
日刊新聞紙とは
日刊新聞紙とは、会社法第939条第1項第3号で定められている「時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙」のことです。日本経済新聞などの全国紙はもちろん、東京新聞などの地方紙でも問題ありません。ただし、スポーツ新聞や隔日・週刊などの新聞は、日刊新聞紙として認められていないため、注意が必要です。
日刊新聞紙に公告を掲載してもらう場合は、上記のような新聞を発行する新聞社に依頼しましょう。決算公告の場合、官報と同様に貸借対照表や損益計算書の要旨のみの掲載で問題ありません。ただし、官報より掲載に費用がかかる点は、要注意です。
電子公告とは
電子公告とは、会社のホームページや帝国データバンクなど、インターネット上で情報を公開することによって行う方法です。
平成17年2月1日から施行された「電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律」により、電子公告が新たに認められました。
自社のホームページであれば費用はかからず、すぐに掲載できるのがメリットです。しかし、電子公告の場合は、決算公告であっても貸借対照表や損益計算書の要旨だけではなく、全文を公開する必要があります。また、5年間公告を掲載する必要がある点に注意が必要です。
おすすめの公告方法は?
では、どの公告方法を選択するのがよいのでしょうか。
それぞれの公告方法の費用
まず日刊新聞紙による公告ですが、掲載費用が50万円以上必要と、非常に高額であるため、この方法を採用する会社はごく少数しかありません。したがって、これから会社を設立するのなら、官報または電子公告の二択ということになります。
債権者保護手続き等の公告とは異なり、決算公告は毎年必要であるため、公告にどの程度の費用がかかるのかは、公告方法を選ぶ際のひとつの目安になります。官報公告であれば、1年間の費用は6万円程度です。
一方、電子公告は、会社のホームページ上などに掲載すれば良いので、ほとんど費用はかかりません。つまり、決算公告に限れば、電子公告が圧倒的にお得ということになります。
ところが、債権者保護手続きに関する公告については事情が異なります。電子公告の場合、「法律で定められた公告期間中、継続的に公告が掲載されていた」ことを証明しなければならず、そのため、専門の機関に調査委託する必要があります。そして、この費用が10万円以上することもあり、多くの場合、官報よりも高額になります。
決算公告は電子公告、債権者保護手続きは官報公告
つまり、決算公告は電子公告で行い、債権者保護手続きについては、官報で行うというのが理想的※といえます。いかにも都合の良すぎる考え方ですが、会社法はそれを認めています。
※決算公告を電子公告で行い、債権者保護手続を官報で行う方法は、マネーフォワード クラウド会社設立では対応しておりません。
具体的な方法としては、まず定款に定める公告方法を「官報に掲載する方法により行う」とします。その上で、「貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項」として、公告を掲載するアドレスを登記するのです。
こうすることによって、決算公告には費用をかけず、債権者保護手続きの際にも最低限の費用で公告を行うことができるようになります。
ただし、官報等による決算公告では、貸借対照表の要旨を掲載するだけで良いところ、電子公告による場合は、貸借対照表の全てを、5年間掲載しなければならないため注意が必要です。
なお、合同会社の場合には、決算公告の義務がなく、電子公告を選択するメリットがないので、官報公告がおすすめです。
公告方法の変更の仕方
会社の公告方法を変更することは可能ですが、ほとんどの会社では定款に記載されているため、株主総会の特別決議が必要です。
また、登記事項であるため、変更するには変更登記を申請しなければならず、その際には登録免許税3万円を納付しなければなりません。
しっかり検討して、会社に合った公告方法を選択しよう!
公告方法によっては、思わぬ費用がかかったり、余計な手間が必要になったりするおそれがあります。ほとんどの会社が官報を選んでいるからと安易に考えるのではなく、これから会社を設立するのであれば、公告方法もしっかりと検討して決めるようにしましょう。
よくある質問
おすすめの公告方法は?
決算公告は電子公告で行い、債権者保護手続きについては、官報で行うのがおすすめです。詳しくはこちらをご覧ください。
公告方法の変更はできる?
会社の公告方法を変更することは可能ですが、ほとんどの会社では定款に記載されているため、株主総会の特別決議が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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