- 作成日 : 2022年9月22日
新設法人は消費税が免除になる?特定新規設立法人の落とし穴を解説!
設立したばかりで資本金1,000万円未満の法人が新規設立法人、1,000万円以上の法人が新設法人です。新設法人は、消費税が免除となりません。たとえ新規設立法人であっても、特定要件に該当すれば、納税義務が生じます。
うっかり課税事業者にならないように、新設法人や特定新規設立法人の要件をチェックしておきましょう。
目次
新設法人は消費税の納税義務がある?
原則として、基準期間(個人事業者の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下であれば消費税納税義務が免除されます(消費税法第9条1項)。つまり、新設法人であろうとなかろうと、売上高が一定額を超えない限り納税義務は生じません。
また、設立したばかりで基準期間がなく、資本金が1,000万円未満の法人(新規設立法人)も、設立1期目、2期目は納税を免除されます(社会福祉法人を除く)。一方、設立したばかりであっても、資本金が1,000万円以上である法人(新設法人)は、納税義務の免除はありません。
つまり、新規設立法人は設立1期目、2期目に納税が免除される一方で、新設法人は売上高次第で消費税の納税義務があるということです。混同しやすいため注意しましょう。
本記事をより深く理解できるように、まず消費税とはどのようなものなのかを解説しておきます。
参考:国税庁 No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例
参考:国税庁 No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき
参考:国税庁 [手続名]消費税の新設法人に該当する旨の届出手続
そもそも消費税とは
消費税とは、消費一般に対して広く公平に課される税です。消費税は、課税事業者の売上に対して課されます。
個人の1年間の利益(所得)にかかる所得税や法人の利益(所得)にかかる法人税、亡くなった人から財産を相続した際にかかる相続税などは、納税の義務がある人(納税義務者)と税金の実質負担者が同じため直接税です。一方、消費税は、納税義務者と実質負担者が異なるため、間接税に分類されます。
消費税はさまざまな取引に課されますが、一部の取引(非課税取引)は消費税の性格や社会政策上の配慮から課税対象外です。以下が、非課税取引の例として挙げられます。
- 土地の譲渡や貸付(一時的なもの除く)
- 有価証券、支払手段の譲渡
- 住民票、戸籍抄本等の行政手数料
参考:国税庁 消費税のしくみ
消費税の納税義務者とは
消費税の納税義務者とは、事業者や外国貨物を保税地域から引き取る者のことです。そのため、事業者でなければ消費税納税の義務はありません。
事業者とは、事業をおこなう個人事業者や法人のことです。株式会社のみならず、公共法人や公益法人なども法人に含まれます。個人であっても、事業をおこなっていれば消費税の納税義務者になりえるため、注意しましょう。
また、国内で事業者が事業として対価を得ておこなう資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供が、消費税の課税対象となります。つまり、商品の販売や運送、広告など、対価を得て取引をおこなうほとんどの事業者が消費税を納税しなければなりません。
なお、売上高などの理由から、納税義務を免除される事業者のことを免税事業者と呼びます。
特定新規設立法人の納税義務免除の特例とは?
資本金1,000万円以上の新設法人は消費税納税義務があるのに対し、資本金1,000万円未満の新規設立法人は納税義務が免除されます。しかし、要件を満たす新規設立法人は消費税の納税義務が免除されないという「特定新規設立法人の納税義務免除の特例」に注意が必要です。
自社が特定新規設立法人に該当するか判断する際は、まず他の者に支配されている状態かチェックします。他の者に新規設立法人の出資の50%超を直接または間接に保有されているケースが「支配」の具体例です。
他の者に支配されている場合、他の者や他の者と特殊な関係にある法人の課税売上高がそれぞれ5億円を超えているかチェックします。課税売上高が5億超えの法人があれば、特定新規設立法人となるため、消費税の納税義務は免除されません。
新設法人や特定新規設立法人に該当する場合、別途手続きが必要です。新設法人は「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」、特定新規設立法人は「消費税の特定新規設立法人に該当する旨の届出書」を所轄の税務署に提出します。
参考:国税庁 No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例
参考:国税庁 No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき
参考:国税庁 特定新規設立法人の納税義務免除の特例
参考:国税庁 特定新規設立法人の納税義務免除の特例(特定要件の判定)
会社設立時に消費税の免除を受けるには?
設立予定の会社が資本金1,000万円未満かつ、特定新規設立法人に該当していなければ、消費税の納税義務は生じません。消費税の申告義務自体が発生しないため、会社設立時に特段手続きなしに消費税の免税を受けられます。また、会社設立から数年経過してからも、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であれば消費税免除の対象です。
ただし、消費税の免税を受けられる免税事業者に該当していても、2023年10月1日開始のインボイス制度の影響で、取引先との関係性から課税事業者にならざるをえない可能性もあります。免税事業者が課税事業者になることを選択する場合は、所轄の税務署に消費税課税事業者選択届出書の提出が必要です。
うっかり課税事業者にならないよう注意しましょう!
新規設立法人と異なり、新設法人には消費税の納税義務が生じます。また、新規設立法人であっても、特定新規設立法人であれば消費税の免除を受けられません。
資本金が1,000万円以上かどうかによって、新規設立法人か新設法人かが決まります。また、他者に支配されているかどうかが特定新規設立法人にあたるかのポイントのひとつです。
消費税が免除されると思っていたのに、後で課税事業者であることが発覚することがないよう、各種要件を事前に押さえておきましょう。
よくある質問
新規法人に消費税納税義務はある?
基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者や、資本金が1,000万円未満の新規設立法人であれば、原則として設立後2年間は納税義務が生じません。詳しくはこちらをご覧ください。
特定新規設立法人の納税義務の特例とは?
新規設立法人であっても、特定要件を満たす場合には消費税納税義務が発生するという制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
会社設立時に消費税免除を受ける方法は?
「資本金1,000万円未満」かつ「特定新規設立法人に該当しない」事業者であれば、そもそも消費税の納税義務が生じません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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