- 作成日 : 2024年6月14日
取締役会・監査役会設置会社の定款とは?ひな形を基に書き方や記入例を解説
取締役会・監査役会設置会社の定款とは、取締役会と監査役会を置く株式会社の基本的なルールを定めた文章です。事業の目的や株主総会の旨、取締役および代表取締役、監査役および監査役会などの事項を記載します。
本記事では、会社設立を検討している方に向けて、取締役会・監査役会設置会社の定款の概要や記載内容、定款変更の方法、電子定款について解説します。
目次
取締役会・監査役会設置会社の定款とは?
定款とは、会社設立時に必要な書類です。企業の根本原則が記載された「会社の憲法」とも呼ばれており、発起人全員の同意のもとで定められます。
取締役会設置会社と監査役会設置会社の定款の場合、取締役会、監査役会を置く文言を記載する必要があります。
取締役会を設置する場合は3人以上の取締役が必要であり、さらに監査役もしくは会計参与の設置も必要となります。
取締役会非設置会社では、定款に定めがない限り、各取締役が会社業務の執行権限を有しています。しかし、取締役会設置会社では、代表取締役や取締役会で選定された取締役のみが会社業務の執行権限を有します。
定款の必須項目(絶対的記載事項)
会社を設立する際には、以下の項目を記載する必要があります。
- 商号(社名)
- 目的(会社の事業目的)
- 本店所在地(会社の住所のうち、最小行政区画まで記載)
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名および住所
定款に絶対的記載事項の記載がない場合、公証人からの定款認証を受けられず、会社を設立できません。
定款作成~会社設立の流れ
定款作成から会社設立の流れは以下のとおりです。
1.会社概要の決定
設立する会社の事業目的や商号、本店の所在地などを定めます。会社の概要を明確にしましょう。
2.定款の作成
次に、定款には以下の事項を記載してください。
記載事項 | 例 |
---|---|
絶対的記載事項 | 事業の目的、商号(会社名)、本店所在地、資本金額(出資財産額)、発起人の氏名・住所、発行可能株式総数 |
相対的記載事項 | 金銭以外の財産出資に関する事項、株式譲渡制限に関する規定、取締役会・監査役・会計監査人に関する規定、公告方法 |
任意的記載事項 | 株主総会の開催規定、役員報酬に関する事項、配当金に関する事項 |
3.資本金の払込み
発起設立の場合は発起人が、募集設立の場合は出資者全員が、所定の銀行口座に出資金を払い込みます。定款の認証前に資本金の払い込みを行っても問題ありません。
4.定款の認証
正当な手続きを経て定款が作成されたことを、本店所在地近くの公証役場で認証を受ける必要があります。
5.法人登記
登記申請書を作成し、定款、資本金の払込証明書、役員の就任承諾書などの必要書類を添付して、法人の本店又は主たる事務所を管轄する法務局に提出します。
各ステップを進めることで、会社設立ができます。
会計参与と監査役の違い
会計参与と監査役は、取締役会・監査役会設置会社における重要な役割を持ちますが、役割と責任範囲に違いがあります。
監査役は株主によって選任され、4年の任期で取締役の職務執行と企業会計に関して監査する役割を担います。そして、監査報告を作成します。
一方で、会計参与は取締役と協力し、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表の作成に関与する役割です。
会計参与には、外部の専門家である税理士(税理士法人を含む)や公認会計士(監査法人を含む)が就任できる点も特徴です。会社設立を検討している方は、違いを理解し、自社のニーズに合わせて適切な体制を整えましょう。
取締役会・監査役会設置会社の定款テンプレート・ひな形

取締役会・監査役会設置会社の定款テンプレート・ひな形は、以下ページより無料でダウンロードできます。
1から作成するよりも楽に作成できるので、ぜひお気軽にご活用ください。
取締役会・監査役会設置会社の定款の書き方
取締役会・監査役会設置会社の定款を書く際には、商号や事業目的などを記載しましょう。また、発行可能株式総数、株主総会の招集・決議などについても記載する必要があります。
さらに、取締役会・監査役会設置会社の場合は、3人以上の取締役と1人以上の監査役の選任が必要な点も考慮して、記載するようにしましょう。
本記事では、 取締役会・監査役会設置会社の定款の書き方について解説します。
総則
会社設立時の定款には、以下の内容を記載します。
- 商号
- 事業の目的
- 本店の所在地
- 設立に寄与する財産の価額もしくはその最低額
- 発起人の名前と住所
上記の情報は、会社の総則として定款に明記されます。
株式
会社を設立する際には、定款に発行可能な株式の総数を記載する必要があります。これは、取締役会・監査役会設置会社にとっても例外ではありません。
将来の資本政策や株式の管理において基礎となる情報であるため、慎重に決定し、定款に明記することが重要です。
株主総会
毎事業年度の終了後3ヶ月以内に召集すべき株主総会を定時株主総会といい、開催時期について定款に明記することが求められます。株主総会を臨時に開催する必要性が生じた場合は、随時招集が可能です。
株主総会での決議は、定款に別段の定めがある場合を除いて、議決権を有する株主の過半数の出席と、出席した株主の議決権の過半数によって成立します。また、特別決議には、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
取締役および代表取締役
取締役と代表取締役の旨も定款に記載しましょう。代表取締役は取締役を代表し、会社を代表する役割を担います。
取締役会・監査役会設置会社においては、取締役会を構成するためには最低でも3人以上の取締役が必要です。同時に、監査役もしくは会計参与の設置も必要となるため、取締役を含めた役員の人数は4名以上となります。
代表取締役の選任は、会社の方針や運営に大きな影響を与えるため、適切な人選が重要です。
監査役および監査役会
取締役会や監査役会を設置する会社における監査役に関しては、最低でも1名の監査役を設けて、定款に記載する必要があります。
監査役は株主総会の普通決議で選任され、選任には議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款で3分の1以上の割合も可)を有する株主が出席し、その議決権の過半数の賛成が必要です。
監査役は会社の財務諸表の正確性や取締役の業務執行の適正性を監査する重要な役割を担っています。したがって、会社設立を考える際には、監査役の選任や監査役会の機能について、しっかりと理解しておくことが大切です。
計算
定款の計算の項目には、会社の事業年度を明記することが必要です。例えば、毎年4月1日~3月31日までの1年間を定めます。
会社設立を考えている方は、事業年度の設定が会社の運営や財務報告に重要な影響を与えるため、期間の設定に注意を払う必要があります。
附則
附則には、設立時に出資される財産の価額に関しても明記しておきましょう。例を挙げると「発起人の決定書で定められた金額がそのまま適用される」などの文言です。
会社を立ち上げる際には、出資財産の価額設定が資本構成において重要な役割を果たします。
取締役会・監査役会設置会社の「事業目的」の記載例
取締役会・監査役会設置会社の事業目的は、会社設立時に定款に必ず記載するべき内容です。設立する会社がどのような事業を行うのかを具体的に示すものであり、将来行う可能性のある事業も含められます。
特定の業種については許認可が必要なため、許認可業種に関連する事業目的は、定款に必ず記載しなければならない規定があります。
例えば、以下のとおりです。
業種 | 事業目的 |
---|---|
不動産業 | 不動産の売買、賃貸、管理およびこれらの仲介 |
旅行業者代理業 | 旅行業法に基づく旅行業者代理業 |
事業目的の記載ルールは厳格に運用されていますので、事業目的の書き方がわからない際は、同じ業界の企業の法人登記簿を参考にしながら記載しましょう。法務局で登記事項証明書を取得できます。
取締役会・監査役会設置会社の定款の変更方法
取締役会・監査役会設置会社の定款を変更するには、特定の手続きに従う必要があります。
まず、普通決議よりも厳しい要件が課されている特別決議によって、株主総会での決定が必要です。株主総会への過半数の株主の出席と、出席株主の3分の2以上の賛成が条件です。
次に、株主総会の議事録を作成します。その際には、事業の目的や商号、本店の所在地など特定の事項を変更する場合は、変更登記の申請手続きが求められます。事業の目的の変更時には実際の事業内容と相違がないように注意しましょう。
定款の変更に関しては、詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
取締役会・監査役会設置会社の定款を電子申請するには
通常、定款は紙で作成されることが多い傾向にあります。公証役場保管用や法務局登記申請用、会社用などがあり、それぞれの保管期間は異なるため、3通の定款が必要です。
しかし、電子定款を利用すると、定款を役場で認証を受ける際に必要な収入印紙代約4万円の節約が可能です。電子定款はPDF形式で作成し、電子認証を受けることで公証役場への持ち込みが不要になります。
ただし、申請の際にPDFファイルへ電子署名するため、電子署名ソフトやICカードリーダライタなどの専用機材・ソフトが必要になり、書面よりも手間や費用がかかる場合があります。
会社設立を検討している方で、コストを抑えつつ正確に定款を作成したい場合は、マネーフォワード クラウド会社設立の利用を検討するとよいでしょう。
取締役会・監査役会設置会社の定款を理解して、間違いなく作成しよう
取締役会・監査役会設置会社の定款とは、取締役会と監査役会を置く株式会社を設立する際、基本となる会社のルールを定めた文章です。定款の必須項目である絶対的記載事項だけでなく、取締役および代表取締役、監査役および監査役会の項目も記載する必要があります。
定款の詳しい内容や変更方法は、以下の記事で詳しく解説しているため、参考にしてみてください。
取締役会・監査役会設置会社の定款を理解して、スムーズな作成につなげましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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