- 更新日 : 2024年12月9日
子会社とは?種類や設立するメリット・デメリット、会計のポイント
子会社とは、親会社に支配されている会社のことです。定義は会社法で定められており、「完全子会社」「連結子会社」などいくつかの種類があります。
今回は、子会社について詳しく解説します。子会社の設立方法や会計について知りたい方はぜひ参考にしてください。
目次
子会社とは?
子会社(英語表記:Subsidiary company)は「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう」と会社法第2条3項で定義されています。通常は、株式の50%超を他の会社に保有されている会社を子会社と呼びます。
親会社との関係を簡単に図で確認してみましょう。
子会社を管理する会社「親会社」との関係、そして、子会社を表すときによく使われる「傘下」の意味について理解しましょう。
親会社と子会社の関係
先に紹介した会社法では、親会社についても「株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう」と定義しています。(会社法第2条4項)
会社法での定義をわかりやすくいうと「親会社は子会社を支配する立場にある」といえます。何をもって「支配」というのかは後の章で詳しく解説します。
傘下とは
親会社と子会社の関係を表す際に頻出する「傘下」という言葉は「支配下に入る(入れる)」という意味で用いられます。
例えば「A社がB社を傘下に入れた」というのは、「A社がB社を支配下に入れる」という意味で使われます。より具体的に解説すると、「A社がB社と資本関係を結び、経営権を自社に移動させた」ということです。
子会社の種類
子会社の種類を3つご紹介します。それぞれの特徴を確認しましょう。
- 完全子会社
- 連結子会社
- 非連結子会社
完全子会社
議決権がある株式の100%を親会社が保有する子会社のことです。経営権は親会社に完全に支配されています。完全子会社の場合、経営方針や事業方針については全て親会社が握っているといってよいでしょう。
連結子会社
議決権がある株式の過半数を親会社が保有する子会社のことです。連結子会社の決算は連結決算の対象となるため、子会社の業績が親会社の財務に大きな影響を及ぼす可能性もあります。
非連結子会社
連結決算の対象ではない子会社のことです。親会社が支配していてもグループ企業への影響度が低い子会社、支配が一時的な子会社は非連結子会社とすることが認められています。
非連結子会社のメリットは、業績が悪くなっても親会社の財務に影響を及ぼすことがないという点です。
特例子会社とは?
子会社には「特例子会社」という種類もあります。障がい者雇用の促進・安定のために作られる子会社のことです。
特例子会社を設立する際は、以下の要件を満たす必要があります。
- 親会社が子会社を支配している
- 親会社から役員派遣があるなど、親会社との人的関係が緊密である
- 雇用される障がい者が5人以上で全従業員に占める割合が20%以上
- 雇用される障がい者に占める重度身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者の割合が30%以上
- 障がい者の雇用管理を適正に行える能力がある
子会社の設立方法
子会社の設立方法には「子会社を設立する」以外に、「既に存在する会社を子会社化する」という方法もあります。
子会社を設立する
親会社が新たに子会社を設立するという方法です。簡単には以下の流れとなります。
子会社の設立方法は「子会社を設立する流れ」の章で詳しく解説します。
子会社化する
子会社を一から設立する以外に、既に存在する会社を子会社化するという方法があります。主な3つの方法を押さえておきましょう。
株式譲渡
既存の株主が所有する株式を親会社となる会社に譲渡するという方法です。親会社は既存株主に対価を支払います。
会社分割
会社の一部門などを分割し、他の企業に承継するという方法で、M&Aで使われている手法です。また、事業の承継先により以下のように分類されます。
事業の承継先が新設会社:新設分割
事業の承継先が既存会社:吸収分割
株式交換
他の会社の全ての株式を親会社となる企業が取得するという手法です。株式交換の場合、全株式が取得できるため、完全子会社化を目的としたものとなります。
子会社を設立するメリット
子会社を設立するメリットは、次の通りです。
- リスク分散
- スピーディーな経営
- 節税効果
- 事業承継がしやすい
リスク分散
子会社を持つことで企業のリスク分散ができます。例えば、1つの企業で新規事業にチャレンジし失敗した場合、その企業が大きな損失を抱える可能性があります。しかし、子会社を設立し、そちらで新規事業を立ち上げた場合、仮に失敗しても、親会社の受ける損失は限定的です。
また、さまざまな分野の事業を行う企業が1つの事業を終了したいという場合、その事業を担当する子会社を売却し、切り離すこともできます。
スピーディーな経営
子会社は親会社の支配下に置かれます。そのため、親会社の方針や意思決定を子会社にそのまま反映させることも可能です。子会社の設立はスピーディーな経営を目指している企業にも最適だといえます。
節税効果
親会社は子会社から株式の配当金を受け取れますが、完全子会社の場合、配当金については源泉徴収されず、益金不算入となります。
さらに、子会社の資本金が1億円以下であれば、軽減税率の適用対象になります。1つの企業で事業を行うよりも親会社・子会社のグループにしておいた方が、節税効果が高くなるのです。
事業承継がしやすい
企業にとって事業承継は非常に重要な問題です。後継者の人材不足はもちろん、選択を誤った場合、企業の将来に悪影響を及ぼす恐れもあります。
しかし、子会社を設立し、それぞれで後継者に引き継ぐという方法であれば、後継者の負担は軽減できます。
子会社を設立するデメリット
以下の子会社設立のデメリットも押さえましょう。
- 損益通算ができない
- 経費やコストの増加
- 経営や会計が複雑になる恐れ
損益通算ができない
1つの企業の場合、ある部門で利益が出ても、他の部門で損失が出ていれば損益通算ができ、法人税を節税することができます。
しかし、子会社を設立した場合、親会社と子会社の間では損益通算はできません。そのため、子会社で損失が出ている場合でも、親会社で利益が出ていれば、課税されてしまいます。
※ただし「グループ通算制度」を導入した企業グループであれば、グループ間での損益通算も可能です。
経費やコストの増加
子会社の設立・運営には、金銭面だけではなく「時間」「人材」「労力」などのコストがかかります。子会社が増えれば増えるほど、経費やコストが増加する点にも注意しましょう。
コスト減のためにも、経理システムや総務システムの集約化などの検討も必要になってきます。
経営や会計が複雑になる恐れ
企業内の部門・部署とは異なり、子会社は別の会社扱いになります。子会社の経営陣や従業員に親会社の方針がうまく伝わらず、運営が難しくなる可能性があるため、注意しましょう。
また、親会社と子会社の会計処理の方法は統一させる必要がある点も気を付けてください。特に、連結決算を行うグループの場合、親会社は子会社の会計処理のスケジュールや作業進捗も把握しておく必要があります。
子会社を設立する流れ
子会社成立までの流れは、通常の会社設立時ほぼ同じです。
- 定款の作成
- 資本金や出資金を払い込む
- 法務局で登記する
定款の作成
まずは定款を作成します。定款には以下の項目の記載が必須となります。
- 商号
- 事業内容などの目的
- 本店の所在地
定款が完成したら、公証人に認証してもらいましょう。ただし、設立する子会社が、合同会社、合資会社、合名会社といった株式会社以外の場合、公証人の認証は不要です。
資本金や出資金を払い込む
資本金・出資金を払い込みます。完全子会社の場合、全ての株式を親会社が持てるように出資する必要があります。
法務局で登記する
子会社が法人格を得るために登記を行います。本店の所在地を管轄する法務局で手続きを行いましょう。
子会社と関連会社・関係会社・グループ会社との違い
企業グループの中には、「子会社」以外にも「関連会社」「関係会社」「グループ会社」というものもあります。それぞれの特徴は、以下の表の通りです。
子会社 | 親会社が50%超の議決権を持つ会社 |
---|---|
関連会社 | 親会社が重要な影響力を持っているが子会社ではない |
関係会社 | 親会社・子会社・関連会社など、関係がある会社のこと |
グループ会社 | 関係会社と似た意味で使われる |
関連会社とは?
関連会社とは「会社計算規則第2条3項21」により「会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該他の会社等(子会社を除く。)をいう」と定義されています。
わかりやすく言うと、子会社以外の会社に重要な影響を与えられる会社のことです。具体的には、以下のどちらかの条件に当てはまれば、関連会社になります。
- 議決権(株式)の20%以上を親会社が所有しており、親会社が経営に関して大きな影響を及ぼすことができる
- 議決権保有比率が15%以上、20%未満でも、①~⑤のいずれかに該当する場合は関連会社とみなされる。
- 役員等への就任
- 重要な融資を実施
- 重要な技術を提供
- 重要な販売・仕入れ等、事業上の取引がある
- その他財務・事業の方針決定に際し重要な影響が推測される事実がある
なお、議決権の過半数を親会社が保有すると、子会社となります。
関係会社とは?
関係会社については「会社計算規則第2条3項25」により「当該株式会社の親会社、子会社及び関連会社並びに当該株式会社が他の会社等の関連会社である場合における当該他の会社等をいう」と定義されています。
親会社・子会社・関連会社など、関係性のある会社全体のことです。
グループ会社とは?
グループ会社に法律の定義はありません。よって、使う企業により意味合いが少々異なる場合もありますが、多くは、関係会社と同じ意味で使われています。
子会社の会計処理方法
子会社の会計処理方法を押さえておきましょう。なお、親会社・子会社の会計処理は煩雑になりがちです。適切な会計システムを利用し、間違いなく処理できるようにしておきましょう。
親会社・子会社で会計処理を統一させる
特に連結決算を採用している親会社では必須になりますが、親会社と子会社で会計処理を統一させておく必要があります。
グループ会社との取引も要確認
子会社はグループ会社間の取引を把握する必要があります。親会社との取引は確認していても、グループ会社間の取引は把握していないという子会社もあるため、注意しましょう。
親会社への報告は必須
グループ会社との取引の詳細など、子会社は取引の内容を親会社に報告する義務があります。
会計処理について確認する前に子会社と親会社の関係も把握しておこう
企業グループでは「親会社」「子会社」「関連会社」「関係会社」「グループ会社」などさまざまな用語があります。それぞれ意味が異なりますので、覚えておきましょう。
また、会計処理に関しては、連結決算を行う場合、親会社と子会社の会計処理を統一させておく必要があります。そして、子会社はグループ間の取引を親会社に報告しなければなりません。企業単体で会計処理を行う場合より煩雑になりますが、きちんと理解しましょう。
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