• 更新日 : 2023年8月29日

調剤薬局の経営は儲かる?今後成功するためのポイントや注意点を解説!

調剤薬局の経営は儲かる?今後成功するためのポイントや注意点を解説!

「調剤薬局の経営は儲かるの?」とお考えの方もいることでしょう。

調剤薬局は業界全体としては利益が出ており、「儲かる」といえる事業です。しかし、大手チェーンと競合しながら利益を上げていくためには、オンラインでの処方箋受付や在宅医療への注力、経費削減などの経営努力が必要です。

この記事では、調剤薬局が今後成功するためのポイントや注意点を解説します。調剤薬局の経営をお考えの方はぜひ参考にしてください。

調剤薬局の経営は儲かる?

厚生労働省が2021年に行った調査によると、調剤薬局1店舗あたりの売上は約1億7290万円、そこから経費を差し引いた利益は950万円となっています。利益が出ているため、調剤薬局の経営は「儲かる」といえるでしょう。

ただし、薬局業界の将来は決して安泰ではありません。調剤薬局は2006年に約5万2,000店舗だったところから、2020年には約6万1,000店舗と店舗数を伸ばしています。これだけ見れば「調剤薬局の需要は今後も拡大していくのでは?」と思いたくなるところです。

しかし、実際には薬局業界は「すでに頭打ち」といわれています。今後は減少の一途をたどっていくという見通しもあるのです。

具体的には、薬局業界は以下の課題を抱えています。

調剤報酬額が年々厳しく改定される

国は、超高齢化社会となり増え続ける医療費を削減しようとしています。薬局に対しても報酬を減らそうとしているのです。2年に1回行われる調剤報酬改定では、調剤基本料や技術料などの薬局に対する報酬が徐々に減らされてきています。それにより、経営状態が苦しくなり、閉鎖・売却する薬局も決して少なくありません。

慢性的な薬剤師不足・偏在

6年制薬学部の数が増え、薬剤師の数自体は増えているものの、薬局店舗数の増加に追い付いていません。大手薬局チェーンによる薬剤師の新卒大量採用や、調剤併設ドラッグストアの台頭などにより、中小調剤薬局の大多数は慢性的な薬剤師不足に苦しんでいます。

健康サポート薬局への転換

団塊の世代が75歳を迎える2025年に向けて整備が進められている「地域包括ケアシステム」の一環として、2016年に「健康サポート薬局」がスタートしました。健康サポート薬局とは、従来の調剤薬局機能に加え、かかりつけ薬局機能と健康サポート機能を併せ持った薬局です。認定を得るためにクリアすべき要件が多いため、認定を受けられない薬局が淘汰されていくとの予想もあります。

薬局の経営にあたっては、以上のような課題をどう解決していくのか、よく考えていく必要があるでしょう。

調剤薬局の種類は?

調剤薬局には大きく分けて、「門前・門内薬局」と「かかりつけ薬局」の2種類があります。これは医療機関との分業のあり方が「点分業」なのか「面分業」なのかで区別されています。

門前・門内薬局

門前・門内薬局は、特定の医療機関からの処方箋に主に対応する(点分業)形態です。医薬分業の推進で、医療機関の敷地に近接した場所、文字通り「門前」に開設されてきました。2016年からは規制緩和が行われ、医療機関の敷地内にある「門内薬局」も開設されるようになりました。

門前・門内薬局には患者さん、および薬局の双方に対して、以下のメリットがあります。

  • 患者さんに対するメリット:
    医療機関を受診したあと、その足で薬も受け取りに行けるため、利便性が高い
  • 薬局に対するメリット:
    診療科が決まっているため、薬の在庫管理がしやすい

門前薬局・門内薬局は、さらにどの医療機関に対応するかで、以下の3つに分かれます。

  • クリニック:
    調剤薬局の約半数がクリニックの近くに開設されています。クリニックの診療科は比較的限定されるため、その門前薬局も専門性が高くなる傾向です。
    ただし、クリニックの診療時間に合わせて開局しなければならないため、土日や夜遅くまでの開局が必要となるケースもあります。また、クリニックが院長の引退などで閉院すると、クリニックも閉局を余儀なくされかねません。
  • 総合病院:
    総合病院の近くにある調剤薬局は、幅広い診療化に対する知識が求められます。高度医療を扱う特定機能病院の近くにある薬局なら、特殊な症例への対応も必要です。
    一日に対応する処方箋の数が多いため、調剤業務の効率化が求められます。その一方、日曜や祝日は休めることが多いでしょう。
  • 医療モール:
    内科や眼科、皮膚科、産婦人科など、診療科が異なる複数のクリニックが集まった医療モール(ビル)にも調剤薬局が開設されています。患者さんが複数の診療科を受診していても、医療モール内のクリニックなら薬歴を把握しやすいメリットがあります。

かかりつけ薬局

かかりつけ薬局は、医療機関を限定せず広く対応する(面分業)形態の調剤薬局です。駅前や住宅街など、患者さんの利便性が高い場所に開設され、患者さんがどの医療機関で受診しても同一の薬局で薬を受け取ることが想定されています。

患者さんの服用薬に関する情報の一元的・継続的な把握が可能になることから、以下のことが期待されます。

  • 薬の重複投与による相互作用の有無の確認
  • 薬の効果や副作用についての継続的な確認
  • 薬の減量、残薬の解消
  • 在宅医療での丁寧な薬学的管理

厚生労働省はかかりつけ薬局を「患者本位の医薬分業」であるとして推進しています。

調剤薬局を開業する方法は?

調剤薬局を開業する方法を解説します。

1. 保健所へ薬局開設許可申請書の提出

最初に保健所へ薬局開設許可申請書を提出し、内装工事を着手します。提出書類は薬局の平面図や事業内容書、業務体制概要書、薬剤師免許などです。薬局の平面図は、調剤薬局の設計施工に詳しい業者に依頼し、作成してもらう必要があるでしょう。

2. 内装工事後に保健所の検査

内装工事後に、許可基準を満たしているかを確認するための保健所の検査を受けます。検査の時点で内装工事、および調剤機器類の納品・陳列が完了していることが必要です。

3. 厚生局に保険薬局指定申請書の提出

薬局開設許可証が届いたら、厚生局へ保険薬局指定申請書を提出します。許可証、薬剤師免許、法人登記簿謄本の写しなどの必要書類は、漏れのないよう準備しましょう。

4. 厚生局の審査

毎月20日~25日頃、厚生局の審査会が実施されます。

5. 調剤薬局オープン

審査会を無事通過すれば、調剤薬局としての開業が可能になります。開業の準備を始めてから開業するまで、約2ヶ月かかります。開業日から逆算してスケジュールを立て、準備を進めていきましょう。

調剤薬局の経営に成功するためのポイントは?

調剤薬局の経営に成功するためのポイントを解説します。

処方箋を集める

調剤薬局経営の成功にまず必要なのは、処方箋を集めることです。調剤薬局の収益のうち約97%は、保険調剤収益が占めているといわれます。どうしたら処方箋を集められるかを考えることが大切です。

その際に確認すべきことは、国が推進している「地域包括ケアシステム」で求められる薬局のあり方に沿っているかどうかです。地域包括システムとは、高齢者が要介護状態となった場合も、住み慣れた地域で最後までその人らしい生活を送れるよう、地域で医療・介護を一体として提供する体制です。そのなかで、薬局には以下のことが求められています。

  • 服薬情報の一元的・継続的な把握と、その情報に基づく薬学的管理・指導
  • 24時間対応・在宅対応
  • 医療機関との連携
  • 健康サポート
  • 高度な薬学的管理への対応

営業を行う

調剤薬局経営の成功には、営業も必要です。営業は、患者さん向けと医療機関向けの双方を検討するとよいでしょう。

    ■患者さん向け営業の例

  • 地域のイベントなどでお薬相談会を行うなどして、地域に薬局のファンを増やす
  • 患者さんからニーズの高い物販を増やす
  • LINE公式アカウントを作成し、LINE上から処方箋を受付できるようにする
    ■医療・介護機関向け営業の例

  • 薬局の特徴や機能を紹介するリーフレットを作成する
  • クリニックや介護施設などを訪問し、リーフレットを置いてもらえないか頼む

加算を逃さない

保険調剤収益をしっかり上げるためには、取れる加算は逃さずにしっかりと取りましょう。一つひとつの加算は小さくても、それを丁寧に押さえていくことで大きな差が生まれます。

例えば、後発医薬品調剤体制加算や地域支援体制加算を取れるようにする、あるいはトレーシングレポートを作成して服薬情報等提供料を取る、などが考えられるでしょう。

人件費などの経費を抑える

経費を抑えることも必要です。調剤薬局の経費のうち、医薬品の費用が約70%、人件費が約20%といわれています。この人件費をどう抑えられるかが経費削減のポイントです。人手が足りなくなった際には、正社員かパートのどちらを増員するべきか、よく考える必要があるでしょう。

薬価差益を活用する

仕入れ値と薬価の価格差「薬価差益」をできる限り活用しましょう。薬価差益を少しでも増やすためには、共同購入やボランタリーチェーンなどの活用がオススメです。

調剤薬局経営の成功事例は?

調剤薬局の成功事例を、薬剤師と医師に分けて紹介します。

薬剤師が薬局経営に成功した事例

薬剤師であるA氏が開設した調剤薬局は、以下のようなさまざまな工夫を行うことで、順調に収益を上げています。

  • レセコンと連動したPOSシステムの導入で、会計・薬歴管理・服薬指導を一括管理
  • 物販コーナーを設け、小児科門前の立地を生かして育児中に使いやすいオーガニック製品を販売
  • 患者さんに居心地よく過ごしてもらえるよう、待合室は木目調の落ち着いた雰囲気とし、育児コーナーも設置
  • LINE公式アカウントから処方箋受付・お薬相談をすることで、待ち時間短縮や3密回避を実現

夫婦2人だけで始めた薬局ですが、現在では薬剤師・事務スタッフ計3名を雇用できるまでに事業は拡大しています。

医師が薬局経営に成功した事例

医師と薬剤師の両方の資格を持つB氏は、漢方医学に魅力を感じて薬局を開設しました。在宅医療を行うため、薬剤師に対する勉強会・講習会を開催などするうちに、新しい薬剤師も増え、店舗が拡大しています。

複数店舗を運営する現在では、調剤・薬歴管理システムを全店舗で統一。在宅医療の訪問先ではタブレット端末を使用して服薬指導・薬歴チェックを行っています。

これから調剤薬局を経営する際の注意点は?

これから調剤薬局を経営する際の注意点を見てみましょう。

オンライン服薬指導を検討する

LINEの公式アカウントを立ち上げ、処方箋を受付するのとともに、オンラインでのお薬相談、服薬指導を行えるよう検討しましょう。近年では多くの人が当たり前にSNSを利用します。SNSでのやり取りが増えることで、患者さんとの関係構築をより強固に進めることが可能です。

在宅医療への対応がポイント

国が推進する地域包括ケアシステムに沿った薬局経営にしていくためには、在宅医療への対応は大きなポイントです。在宅医療患者数は、団塊の世代が75歳となる2025年には大きく増える見込みとなっています。薬剤師が在宅医療に参加することで、安心・安全な薬物治療が可能になるとともに、医師や介護士の負担軽減が期待されています。

大手チェーンにはできない地域に根ざした経営を

調剤薬局を経営するにあたっては、大手のドラッグストアとの競合が課題です。中小・個人経営の調剤薬局が大手に打ち勝つためには、地域に根ざしていくことが鍵となります。お薬相談や服薬指導などを通した、一人ひとりの患者さんとの丁寧な対応を心がけましょう。

地道な経営努力で収益を上げていこう

調剤薬局の経営は、全体として儲かってはいるものの、薬局業界は今後縮小が見込まれます。大手チェーンと競合しながら収益を上げるためには、在宅医療への注力やSNSを活用した処方箋受付・服薬指導、人件費などの経費節減など地道な努力が必要です。大手チェーンにはできない、地域に根ざした経営をしながら、調剤薬局の収益を上げていきましょう。

よくある質問

調剤薬局の経営は儲かる?

調剤薬局業界全体としては利益を生んでおり、調剤薬局の経営は「儲かる」といえるでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。

調剤薬局の経営に成功するためのポイントは?

在宅医療への注力やSNSを活用した処方箋受付・服薬指導、人件費などの経費節減など地道な努力が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。


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